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Swish ースウィッシュー  作者: 青空 翔
第二章 ゴールデンウィーク
16/26

第14話 合宿二日目

昨晩は夕食の後、自主練の時間が設けられた。

各自シュート練習などをして、スキルの上達を図る。

そのあとは疲れていたこともあり、軽くシャワーを済ませた後は、部屋でのおしゃべりなどはあまりせず、みんなすぐに布団を敷いて寝てしまった。


ちなみに部屋はチームで一部屋。


この合宿所は五階建てで、一階一部屋である。部屋を分けたいときは、仕切りをつけることができる構造だ。


一階には大浴場と会議室などの部屋がいくつか備わっている。二階から五階は全て和室になっていて、ここで寝泊まりする。

俺たちは二階だ。

同じ日程で合宿を行っているサッカー部、バレー部、野球部が他の階を使用している。




今朝は、大音量のアラームに起こされた。

でも、こんなアラーム音聴いたことないし。

そもそもスマホも時計も持ってきてないんだけど……。


何かと思ったら、天井についているスピーカーからだった。


こんな機能もあるのか。

この合宿所すげぇな。


アラームに起こされて、みんなしっかり起きることができた。


起きたらまず着替えてランニングだ。


昨日と同じ校舎外周のコースを走る。


5kmをきっちり走った後は朝食だ。


走ってる時は忘れたけど、そういえば朝食は俺らで準備しないといけないんだった。


家庭科室を貸してもらって朝食を作る。

8人1班となってだ。俺の班のメンバーは昨日の夕飯の時と同じだ。

メニューは白飯、味噌汁、焼き鮭、サラダに納豆、ヨーグルトとなっている。

白飯は走っている間に、時間を合わせてマネージャーが炊飯器のスイッチを入れてくれたらしい。

炊飯器があるのには驚いた。

昔の部員が持ってきたのがずっと残っているらしい。

この部、不思議だらけ。


っていうか、走った後なのに朝食を用意しないといけない辛さだ……。


こう考えると、母さんって毎日大変なんだよな……。

帰ったらしっかりお礼言おう。


心の中でそう決めつつ、鮭を焼く。


隣では武田がサラダを作るためにキャベツを切っている。


他にも味噌汁を作っていたり、皿を並べていたり。

部員がみんな協力しながら朝食の用意を進めていく。

なんかすげー楽しい。


……おっと、鮭が焦げる!!


慌ててひっくり返す。


その後しばらくしてちょうど良いタイミングで蓋をし、蒸し焼きに。


こうすると身がふっくらして焼き上がる。


出来上がれば皿に移す。


そして、他の料理も出来上がって……。


「「「いただきます!」」」


早速鮭を一口。

我ながらうまく焼けたと思う。


「鮭美味いぞ伊織!」

「どうしたらこんなに美味くできるんだよ」

「俺前に焼いたことあるけどさ、こんなに柔らかくなかったぞ……」


「ははっ、ありがとう。小林の味噌汁もうまいぞ!」

「そうか?!あざっす!」


楽しく朝食を取った後は午前の練習だ。


午前中は前半がフットワークで埋め尽くされていた。


「植原先輩……話が違うぞ……」


隣でゼハーゼハーと息をつく武田。


そんな感じのこと昨日言われたな。

安心しろとか言ってたな……。


あ、あれかな。先輩なりに励ましてくれた……?


……ないか。


とりあえず必死に足を動かす。


そして午前の残りはスリーメン(3人組でコートの端から端を走りつつパスを回し、ゴールを目指す速攻の練習の一つ。最後にボールを持った人はレイアップシュートを打つのが一般的)と、ゾーンディフェンス(特定の選手につかず、自分の守備範囲を決めて、自分の受け持つ範囲に侵入してきた相手選手に守備を行う戦術のこと)の練習だ。


スリーメンはいいのだが、ゾーンディフェンスは中学校では禁止されてることもあり、最初はよく分からなかった。

(中学校ではゾーンディフェンスを行うとファールになる。15歳以下はゾーンディフェンスとついになる、マンツーマンディフェンスという、特定の一人を守るディフェンスをしなければならない)


しっかり理解し、練習をしたところで昼食に。


食事の時間はやっぱり楽しい。今日は武田も一緒だ。

「俺も行ってみよう」だってさ。


今日はカレーライスにしよう。サラダもつけて。和風ハンバーグ定食と迷ったが、結局ど・ち・ら・に・し・よ・う・か・なでカレーにした。

ちなみに武田は豚の生姜焼き定食。


ほんのりピリッとする中辛のカレーを食べた後は再び練習だ。


引き続きゾーンディフェンスの練習。

先輩を相手にディフェンスをしたりするが、やっぱり上手い。

必死で足を動かし、仲間とコミニュケーションを取ってディフェンスをする。

反対にオフェンス役をしたりするが、先輩たちはディフェンスも上手い。

ほんの少しでも油断すれば終わりだ。


その後ハーフコートでオフェンスの練習。

それからオールコートでもオフェンスの練習をする。

やっぱりオールコートの方がしんどい。

しっかり走って練習に取り組んでいく。


そして一日の最後は5対5で締めくくり。

最後まで走って体力を使い切りにいく。


そうなれば当然……。


「は、腹減った……」

「俺もっす……」


練習後の監督の話とミーティングの後、河田先輩と武田が絞り出すように声を出して嘆いた。


河田先輩……。

腹を押さえてげっそりしたような顔を見せてくる河田先輩に俺は思わず笑ってしまう。

っていうか演技じゃなくてほんとにげっそりしている気がする。


そこへ……。


「あ!!言い忘れていた!!今日の夕飯も朝と同じように作ってもらうので。よろしく!!」


無常にも河田先輩の方を向いてそう声を放った監督。


「お、おおう……。うっ」


「河田センパーイ!!」


って、またかよ!!

いや、文句じゃないけど、前もって伝えておいてほしいっていうか……。


「あっ」


まだ何かあるんですか監督……。


「メニューはカレーだから。よかったな」


その瞬間俺は膝から崩れ落ちた。


昼飯、カレーにしなかったらよかったぁー!!


「い、伊織、大丈夫……?」


「ああ、佐々木……。大丈夫……」


全然大丈夫じゃない。

あれだけハンバーグと迷った俺の時間を返してくれ……。


仕方ない。作らないと主将が死んじゃう。


みんなで協力してカレーを作る。


植原先輩はジャンケンに負けて近くのコンビニにルーを買いに行った。


監督が「何分で帰ってくるかなー」とタイマーで時間を測っている。


その間進められる班はどんどん進めていく。


そして、全行程1kmと少しの道のりを、買う時間も合わせて3分ちょっとで帰ってきた俊足の上原先輩にひとしきり驚いた後、全班の調理が終了した。


「「「いただきます!!」」」


全部員の声が家庭科室にこだまして、すぐにスプーンのカチャカチャという音が聞こえ始める。


カレーは一日二回食べてもやっぱり上手いということを認識した。


そして食べ終わったら体育館に戻って自主練。


シュートを打ちまくる。


打って打って打ちまくる。


打たないと入るようにならないから、もっと上手くなるために打って打って打つ!


しばらくそうしていると、

「一対一しようぜぇ」


同じシューティングガードである二年生の谷口先輩に声をかけられる。


ちょっとびっくりした。


「い、いいで……わかりました」


なんて言えばいいか一瞬わからなかった……。

やっぱり先輩と話すのってあんまり得意じゃないな……。


「あははっ!堅苦しくすんなって!」


柔らかーくとでもいうように手で円を描きながら笑っている。


「ただ、ただの一対一じゃなくてさ、スリーポイントシュートで勝負しようぜ」


な、なるほど……。


それなら自信がある!


「了解です」


「んじゃ、ジャンケンな。勝った方が先攻。ジャーンケーン」


「「ホイッ」」


「やった、勝ったー」


「お前、全然嬉しそうじゃねぇな」


「ジャンケンに勝って勝負に負けました」


ジャンケンは俺が勝ったが、後攻の方が有利だったりする。


まあいい。

決めればいいんだ……。


精神統一をし、丁寧にシュート。


スパン


「さすがぁ」


「ありがとうございます」


「負けないよ?」


谷口先輩もシュート。


あ、すげ。入るよ。


スパッ


「さすがです」


「ありがとう」


俺も打つ!!


スパッ


「なんのっ」


スパッ


うえー、谷口先輩も外さないか。


これは外せないぞ……。


「よっ」


パシュッ


よしっ!!


スパッ


またかーい!!また入れるのか……。

こう言っちゃ悪いけど、早く外してほしい。





「あの二人ヤベェな」

「外さねえ……」

「ヤバすぎだよほんと……」

「どっちかが外せば終わりだな、あれは」


体育館は伊織と谷口のつくりだす異様な雰囲気に包まれていた。


***



「あーっ!!負けたー!!!!!!!」


谷口先輩はそういうなり床に倒れ込んだ。


「くっそー、なんでそんな入るんだよ」


「え……、なんででしょうか……」


「わからねぇのかよ!」


数十本打ち続け、決着がついた。

俺が決め続けて勝利した。


だって負けるの嫌だし。



そして時間が来たので、合宿所の大浴場に移動。

しっかり汗を流し、部屋に。


俺が部屋に戻ると、寝ている人もいたが、昨日と違って話し込んでいる人もいた。


バスケの話でもしてるのかなぁと思ったら、恋バナしていた。武田も一緒に。


あほらし。

そのまま怒られても知らないぞ……。


「伊織ー。お前もこっち来いよー」


「やだー。おやすみー」


さっさと布団に潜り込んだ。


すぐに深い眠りに落ちた。




その後、誰を1番彼女にしたいかという話題でヒートアップした恋バナ組はしっかり監督に怒られたことをここに記しておく。

待ってくれていた方、本当にお待たせしました。

いなかったらごめんなさい。

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