第0話 伊織英太郎
#4 伊織英太郎 中学三年
166cm 57kg ポジション シューティングガード
彼はかなり強いピュアシューター(シュートのフォームや動作が綺麗なシューターのこと)だった。
しかし、彼が在籍していた中学校のバスケ部は、弱小のクラブだった。
彼らの中学校は万年地区予選1回戦負けだった。伊織が入ったことで、戦果が期待されたが、それでもこれまでの伊織がいた二年とも準決勝で負けている。伊織にとって最後の中学校の大会への挑戦も、今終わろうとしていた。
※ ※ ※
5月、よく晴れた今日、準決勝が行われている体育館では、バッシュのスキール音が鳴り響いている。
ダム・ダム・ダム・ダムと規則正しくボールの弾む音が聞こえる。
電光掲示板には30-58の文字が光っている。
伊織がスリーポイントシュートを放つ。宙を舞うボールは美しい弧を描き、リングに触れず綺麗に吸い込まれていった。
「パツンッ」といい響きの音を出してボールがネットをくぐる。
33-58
電光掲示板の表示が変わった直後、
「ビーーーーーーーーーーーーッ」
と試合終了を告げるブザーが鳴り、同時に伊織の中学校におけるバスケは終わりを迎えた。
「終わった……」
伊織は自分でも気付かないうちに頬に涙を流していた。
それから10ヶ月後桜の咲いた4月、伊織は高校バスケの強豪校、川島高校の門をくぐった。今度こそ夢の全国大会の舞台に立つために。
伊織の新しいバスケと挑戦が今始まる。
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