君と僕との始まりの関係と地
僕、松田陸斗は旅が大好きな高校1年生だ。と、言っても今は中学校を卒業しまだ高校には入学していない時期である。扱い的には春休みになるこの時期に、僕は北海道の網走にいる。網走と言えば刑務所や流氷などが有名であるが、そのような地で何をしているのか。それはもちろん旅行である。今回は網走の砕氷船から流氷を眺めるために遥々足を運んだのだ。しかし「道の駅流氷街道網走」に着いて衝撃の事実が発覚する。なんと流氷が1つも無かった。それには酷くがっかりしたが、砕氷船は能取岬への遊覧船として運行している様なので、それに乗船することにした。流氷がある時より安く、800円余った。なので特別席に座ることにした。さらに船内の売店で和牛肉まんと流氷飴も購入した。戦利品を片手に特別室へと乗り込む。空いていたので最前列に座る事にした。そして先程購入したものを早速いただく。
「この肉まん美味しいな。(独り言)」
「やっぱり美味しいですか?」
「!!!???。美味しいですよ…。」
知らない人に話しかけられた。声の聞こえた方を見ると自分と同じくらいの少女が、羨ましそうな目でこちらを見ていた。そして瞬きをした瞬間に消えた。
「あれ、幻想かな?」
と思って瞬きをした直後、肉まんを持った少女が目の前に立っていた。
「買ってきたよ。これ美味しいね。」
「あ、はい。そうですね…。」
僕はあまり女子とは話さないので返事が曖昧になってしまった。しかしその子の美味しそうに頬張っている姿を見ると勧めたのは正解だったと思った。そしたらまた話しかけてきた。
「どこからいら来たんですか?」
「横浜…。」
「あ、私も!」
「私、桐谷朱音って言うの。君の名前は?」
「僕は松田陸斗」
僕は彼女の名前を聞いた瞬間違和感を感じた。
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「桐谷朱音…。どこかで聞いた事あるような?」
中々思い出せなかった。
「松田陸斗…。名前は聞いた事あるような。なんでだろう?」
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彼女もまた同じ事を思っていた。
「いつか横浜で会えたらいいね。」
「そうだな。」
「私今度の4月から高校生なんだ。あなたは何年生?」
「僕も桐谷さんと同じ新高1だよ。」
なんと彼女とは同い年だった。ここでふとした考えが頭を過る。
「まさか彼女と同じ学校だったりしないよな??」
そんなラノベみたいな事はありえないだろうと思ったが、それを聞くのは恐ろしくて出来なかった。彼女がまた声をかけてきた。
「そろそろ能取岬に着くみたいだけど外に出てみない?」
北海道はいくら3月の下旬とは言え冬の関東並みに寒いので少し迷いはしたが、
「行ってみるか。」
結局ついて行くことにした。
外に出ると案の定冷たい風がゴォゴォ吹いていた。
「寒いね」
「うん…。」
と、僕はここに来るまでに見つけたとあるものについての話題を振ることにした。
「船内に置いてあった流氷見た?触れるみたいだよ。」
「え、ほんとに!?行ってみよ!」
そして例の場所にたどり着いた。
「松田君、流氷って大きいんだね。」
「うん…。そうみたいだね。」
互いの感想を述べあっていると、桐谷さんが流氷に触りだした。
「キャ。松田君、これ意外と冷たいよ!?」
「…。」
当たり前であると思った。だが、そんな無邪気な顔をして笑っている桐谷さんにドキリとしてしまった。そして照れ隠しのため、目を逸らし無言になってしまった。それから一言二言交わしてその場はお開きとなった。
「連絡先くらい聞いておくべきだった。」
今になって後悔しているのであった。
今日は網走に札幌から日帰りで訪れる計画だったため、帰りは網走を17時25分に出発する特急オホーツク4号を利用する。この特急はなんと札幌-網走を結ぶのに5時間もかかる。そのため札幌に着くのが23時近くになる。中々の長旅のため、今回はグリーン車を利用する。僕以外の利用者はいなかった。少し寂しいと感じた。
「こんな時に桐谷さんでもいたらな。」
ダメだ。僕は何を考えているんだ。