03-001-02 俺君剣聖、六ヶ月夏。争奪! ホッペプニプニ
にょーーーーーにょーーーー……。じょーーーーーーーーー……。
「お師様」アリムルゥネの目尻が下がる。意味ありげな溜息。
──勘の良い皆様方にはもうお気づきだろうが、うん。俺は温かい心に包まれた瞬間、気が緩んで……漏らしたんだ。
「はーい、お締め換えましょうね~! ルシア、ロバのロシナンの背から換えの|お締め(君主の聖衣)と天花粉を取ってくれない?」
「いいぜ、ちょっと待ってな」
「うー、臭ってますね、これは」といいつつも、アリムルゥネはお締めの汚れていない部分で運をしていたお尻を綺麗に撫で拭く。
──ああ、極楽極楽……俺様ヘヴン。
と、アリムルゥネの手から素早くルシアに渡される汚れ。替わりにアリムルゥネに渡されるクリーニング後のお締め。ルシアは汚れを手に持ち、右の眼帯を上げて呟く。
「輝け邪眼! 轟け我が名! 天衣を浄化し白き花の香りと共にあれ! 極めろナノ洗浄+ナノ消臭酵素、永久に輝け銀イオンクリーニング! シャーイニングフレアーーーーーーーーー!」
一瞬その場が真白き閃光に包まれると、うん●、し●こで汚れた洗濯物が、綺麗サッパリふんわり仕上げに。どこの空中宮殿で外干ししたのかと勘ぐられるほどにお日様の贈り物と間違うほどの最高のクリーニング仕上げであった。
「……ちょっとルシア、掛け声だけはバビ●ン王の空中庭園を一撃で粉砕できそうな大魔法ね。イオ……って何?」
ルシアは問いには答えず、意味不明な言葉でアリムルゥネを嗜める。
「なにを言う! アリムルゥネも気をつけろ。恐れ多くも御互いこの剣聖ライエン様に師事する者。ライエン様にはいつも手抜き無き最上の待遇で接するべきだ!」
「寝顔をツンツンするのに?」
「それはお前も一緒だろ!? 自分の事は棚に上げて、私には許さないなんて……ッ! ──私だって、私だって、ライエン様のホッペをプニプニする権利はあるはずだ! そうだろ!? それを禁止……それってどんな苦行なんだよ!」
二人が俺を挟んで固まった。
お互いばつの悪い顔をしている。
そして無言のまま、アリムルゥネが背負い紐で俺を背負う。
「あ……」
ルシアの言葉になら無い声。アリムルゥネは無言でくるりと回る。そしてルシアに向ける自分の背中。
アリムルゥネは後ずさりをしながら、ホッペをつつけとばかりに俺の頭をルシアに向けて差し出した。
「いいのかよ」
「構わない。こんな事でわたしとルシアが争うなんて、お師様もきっと嫌がる」
「そうか? そう、そうだよな。うんうん、わたしもそうじゃないかと思っていたところだ。仲直り、仲直りな? アリムルゥネ」
「うん、あなたとわたしはこれで仲直り。今までどおり、お師様を師匠と立てていきましょ?」
「やった、うんうん、私も心行くまでやってみたかったんだ。それ、プニプニ~、プニプニ~。 ライエン様プニプニ~」
ルシアが俺のホッペをツンツンする。「プニプニ……」
そして、囁くルシア。「ライエン様、これからもよろしくな」
暫くルシアがそうしていると、やがて納得してくれたようでルシアが俺君を解放してくれた。ルシアのホッペには朱がほんのりのっている。
──至福の顔。……他になんと例えよう。
そしてアリムルゥネ、気遣いありがとう。ルシア、これからもよろしく!
「……ルシア、気が済んだ? さっきはごめんね」
アリムルゥネはルシアの背中に声を投げる。
「別にいいよ。その話は済んだだろ?」
「まあね。でも、まだ一人で何か考えてこんでいるのかと思って」
ルシアは振り向いた。
「そんなことな──」プニ。
「あ……」プニプニ。びよーん。ルシアの両のホッペがアリムルゥネの手によって引っ張られた。
「なひぃをしゅるんだよ!」ルシアが両拳をブンブンと振る。ネコパンチがアリムルゥネの平たい胸を何度も叩く。
ルシアの頬に朱が走る。
その怒り。決して本気では無いであろう怒り。
「──あはは!」
アリムルゥネはルシアの手を払いつつ笑う。
「なんだってんだ!」
「変なルシア。もっと正直になればいいのに」
ルシアの眼が見開かれる。
「それなら……それなら、もう一度わたしにライエン様を貸せ」
「うん、どうぞ」
──俺は、アリムルゥネの硬い背中から、二人の弟子の手により、ルシアの柔らかい背中に引っ越した。
えへへ、ところが俺君六ヶ月は、
「でろん……」
と、心なし喜びを隠そうとして失敗していたルシアに、さっそく涎を彼女の背中に付着させたのである。
涎がルシアの肩口に染みる。
──OH......。
ルシアは泣いた。ライエン様よと、さめざめと泣いた。俺はヨシヨシとすべく、とルシアの頭に手を伸ばし精一杯のヨシヨシをしたのである。
──
ここで一句。
指プニプニと つつく夏は 六ヶ月 (ライエン)




