02-006-04 俺君剣聖、六ヶ月。エルフの珍味を試す
村の皆さんは遠巻きに戦いを見守っていた。そして、俺たちの勝利に喜ぶ。確かに、少々槍や初期の精霊術が使えたとして、勝てる相手ではなかったと思われる。
やがて、今も広間に立ち尽くす俺たちに、住民達が四大の精霊が四柱で宝玉を抱えた像を持った一抱えはある不思議な像を持って来た。
「微弱な魔力……これが迷宮核?」ルシアは水筒の水を一口飲んでいたところであった。そしてその水筒をアリムルゥネに渡す。
「えー。お師様泣いてるけど、お締めじゃないよ?」
「早く魔力を込めて、結界をどうにかしないとまた先ほどの魔王級の化け物が出るってわけか」
「ルシアお願い」
「やってやるとも。私の邪気眼は魔力の源泉、そん所そこらの魔王や封印なんて相手じゃないね」
「ぎゃー!(ルシア、懲りない強気なやつ)」
ルシアは村人の手にしていた像に両手を当てる。するとルシアの両手に光が灯る。
「ぎゃあ(手伝ってやるよ。まだこんなことしか出来ないけどな)」
ルシアの手の光が二倍にも三倍にも膨らんだ。もうお察しだろう。俺君がルシアに魔力を供給しているのである。ルシアと俺の魔力の波が同期する。同期させたのはルシアのセンス、つまり力だ。
そして、数分もしない頃。
──ガチリ。
「世界が……」「封印が戻った?」「次元が固定されて……」「ああ、ありがたき力。われらであれば、もっと時間が掛かったでしょうし、その途中にも次元の狭間に生きる魔王が溢れ出てきたかもしれない。ありがとう、旅人よ」
「いえ、良い取引が出来て本望です」
「ああ。剣聖ライエンの弟子たちは師匠である剣聖ライエンの遺志を継ぎ、立派な人物であったと、われらは折々に語り伝えよう。ありがとう。妖精騎士とその一行よ」
「ありがとう」
「ぎゃー! (遺志ってなんだよ、俺はここに生きているだろ!?)」
◇
その後、エルフの村の者から歓迎の宴があった。
野菜とチーズを中心とした料理と白酒。
俺は食べる事はできない。──まだちっちゃいから、俺の食べ物や飲み物は無いけどな!
今日もウマウマすぽっとスライム、スラぶーのミルクだけさ! あ、パチパチパッチのエルヴンロイヤルゼリーもたらふく食った。妙な食感に驚いたものの、不味いものではなく、逆に美味い。癖になる味と食感だった。
多くの村の者が光のクリスタルを囲み、一歩二歩と輪の中心に進んだアリムルゥネが大きなキノコの傘に座って小話を始める。
寝物語にちょうど良かった。
──まだ天空に、大空に浮かぶ浮遊城が沢山存在した頃。
地上を支配しようとした城があった。
地上のものは抗った。
山の民が斧を鍛え。
森の民が弓を鍛え。
銀の民が剣を鍛え。
闇の民が魔を鍛え。
彼らは抗う。だが、天空を舞うその城の主には勝てなかった。
そして、次々と地上の民は天空の民に支配されていった。
そこで、彼らは一計を案ずる。
献上品として、酒を山ほど献上しよう、瓶の中に数名の有志を紛れさせ、刺客を送ろうと。
酒が献上された晩のこと。
天空の民はその酒で大宴会を開いた。
そして、地上の舞姫ケルフメーリヤが見事に皆の目を奪う。
そんな彼女が大きくステップを踏んだとき。
瓶の中から刺客が世闇に紛れ出る。
天空の民は、酒の美味さに見事さに酔っていた。
──だから、彼らはケルフメーリアの豹変に気づかない。
白き白刃が、赤い血潮を弾けさせる。
勇者たちの雄々しい声が場に乱入する。
──勝負はついた。
なぜそれがわかるですって? それは容易な事。
その後、天空の民の話を聞かないためでございます。
──俺はその物語を背景に、うつらうつらし始めたのである。
◇
ルシアが『迷いの森』を修復し、獣道を辿って街道に出る。ゼリーの入った瓶はもちろんルシアの魔法で小型軽量化を果たしてロバ、ロシナンの背の上だ。
俺がアリムルゥネの背でウトウトしていると、突如として口の中にサジが差し込まれる。さじに乗っていたのはもちろんエルブンロイヤルゼリーである。
──一舐め。
瞬間、脳天から尾てい骨まで突き抜ける強烈なエナジー。眠気など吹き飛んだ。
「ぎゃー!(痺れるエナジー、弾ける弾丸! こんなの食って俺君大丈夫なの!?) 」
「ああ、驚かせちまったな、ライエン様。……でも、美味いだろ? 苦労して探した理由がわかるだろ?」
「ぎゃー!(効きすぎだ!)」
「そうか、美味いか! よし、今日は特別、もう一口!」
「うぎゃー!(まだ口の中でペチペチしてるんだよ、ちょっと待て、ペースがはぇええよルシア!)」
「うん、右目の邪気眼がライエン様の魔力の増幅にバシバシ揺れるぜ! さ、ほら、約束のもう一口だ」
ルシアがサジを俺に突き出した。
「あーん」
「ぎゃーーーーーーーーーーーー!(まだはええよ、まだ口の中残ってる。うま痛い、ウマウマ弾け跳んでペチペチペッチン凄く効く! けど痛い!」
「あはは! ライエン様。そんなに美味かったか! あっはっは!」
ルシアが笑う。
「ああ、危険を承知でエルフの里に寄ってよかったぜ!」
街道沿いの森の入り口、星空の綺麗な晩に、俺達三人と二匹は野宿したのである。
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ここで一首。
うまうまと 転がし舐めて 天の飴玉 ペチペチペッチン パチパチパッチ (散文 ライエン)




