02-006-02 俺君剣聖、六ヶ月。俺君、盗んだ技で魔力を練る
「ぎゃーーーー!(ぼやっとするな、敵だ弟子ども! こらルシア、お前の邪気眼の出番だぞ!」
「お師様? お締めですか……? って、なにこの異臭は!? 影? っ、怪物! 敵じゃありませんか!」
爛々と輝く黄色い目玉。そう、目玉の怪物だ。大きな一つの目玉にアンコウのような、たらこ口。口を開けばびっしりと細かいノコギリ刃が数列も並んでいる。
そしてその目玉の体から生える、数ある触手の全ての先に目玉が一つづつ。
「ぎゃーーーーー! (め、目玉の化け物! どうしてこんな洒落にならない魔神将級の化け物がこんなときに、こんな場所へ!)」
アリムルゥネの目が見開かれる。
「お師様、大人しくしていてください、しっこもう●こも我慢! 今は決して油断できる相手ではありません!」
「ぎゃーーー!(ち、が、う! 俺のお締めじゃねぇよ。アリムルゥネ、小鉄で目玉を抉れ!)」
だが、そんな俺の言葉か聞こえたか聞こえてないのか。はたまた無視か……純粋に言葉が伝わっていませんね。戦いの邪魔をしてごめんなさい、弟子よ。
「お師様、しっかり私の肩に掴まっておいてください。お願いだから騒がないでくださいね!」と背負い紐を締めなおす。うん、そうだ、行け! 自分の腕であの怪物を倒して見せろ! 心意気に相応しい活躍を俺に見せてくれ! さあ駆けろ! 俺の弟子!!
「アリムルゥネ、土煙で煙幕を張る! ライトソードをキルモードで乱射しろ! 相手に視線の先を収束させるな!」
「うん、わかったルシア」
「ぎゃーーーー! (バカ、違うぞアリムルゥネにルシア! でかい目玉を先にやるんだよ! ああ『迷宮の森』をちょっとこじ開けたばっかりに! 時限の檻が必要以上に緩んだか? それにそれに、俺を背負って勝てる相手じゃないぞ!)」
アリムルゥネが俺を背負いながらライトソードを抜き放つ。
すぐさま輝くビーム、キルモードで刃が生える。そして剣から何条ものビームが放たれ、辺りを土炎と轟音に包み、ルシアの邪眼以外の視線は全て遮られる……と思いたい!
「ぎゃー!(なにしてる、そうじゃない!)」
──そう、アリムルゥネよ違うんだ。
目暗ましではなく、直接あのでかい目玉を串刺しにして、もっと言えば真っ二つに切り裂いて欲しかった!
くそ、となれば、魔力の槍で貫け! って。ここでどうして邪気眼!?
「開け暗黒、輝け瞳! 弾けろ私の秘されし邪気眼よ!! ──我に立ちはだかる愚か者どもを全て焼き切るがいい!」
「ぎゃー! (ルシアいったいなんのマネ!? 我流にもほどがあるんですけど!)」
眼帯を外したルシアの輝く右目がもうもうと上がる土炎を切り裂き目玉の化け物をその目に大映しにする。
してルシアの右手、目玉に投擲! 赤く輝けるアゾット剣が大目玉に深々と突き刺さる。革の厚い瞼が閉じられようとするが、刺さったアゾットが邪魔をして締める事が出来ない。迸る透明な体液。それと……見える、見える、俺にも見えるぞルシアの魔力の流れ。ルシアは遠距離でアゾット剣に全ての魔力を流し込んでいる。あと一押しで押し切れると俺様は思ったが、事態は違った。
俺様は見た。ルシア、息切れしてるじゃないか!
「うぎゃー!(さては俺の出番だな!? こうなっては仕方が無い。弟子の不始末は師匠の不始末。俺だって毎日魔力を練るだけ練って練習してたんだ! 驚くなよルシア!)」
俺が魔力を練り、ルシアの見よう見まねでルシアのアゾットの刃にルシアの魔力の上から俺の魔力も注ぎ始める。
──そして俺と弟子の同調が始まる。俺とルシアの鼓動が被る、そしてルシアの命の伊吹を感じる!
「ライエン様!? この湧きあがる力はライエン様の魔力。凄い! 感謝するぜ、私が至らぬばかりに!」
──ルシアの叫び。よし、そして安定する二人の揺るがぬ魔力。俺の魔力はルシアの魔力を補強した。
そして二重、三重の魔力に包まれたアゾットは目玉に深々と突き刺さり、まるで推進装置がついていたかのように、深く深く、刃が全て埋まる。すると怯んだ目玉の化け物にアリムルゥネが追撃!
「ぎゃー!(いけぇ!)」
「たーーーーー!」 ライトソードで串刺しにせんと、アリムルゥネは大地を蹴った!
「ぎゃ(よし!)」と俺は思ったが。
……
──と、簡単にうまくいくはずが無い。
ずる、ずざざ! ッ! ステン! と、アリムルゥネは地面にまかれていた砂を踏んで見事に滑って転んだのである。ヘッドスライディング!
「痛あ! わたしのただでさえ薄い胸が削れてしまいますぅーーーーー!」
「ぐきゃー!(アホかー! この馬鹿弟子が!! お前の胸は超合金だ、立派なものだ! 思い出せアリムルゥネ、お前の強靭さはピカ一なのだ! お前の胸が簡単に削れるわけがない! 自信を出せ、わたし最強と念じ信じろアリムルゥネ! 頑張れ俺の弟子!)」
──そう。お前の胸は修行に次ぐ修行でまな板から謎の超合金になっている。安心しろ。師匠である俺が保証する。
──でも。
アリムルゥネにはできる限り転ばないで欲しい。今は俺、お前に背負われているんだ。お前が転ぶと、その衝撃で俺の首がぐるんぐるんと回り、カックンカックン前後左右に酷いんだ。胴と首とが千切れそうになるのが問題で、俺は身を縮めて小さな頭を必死で押さえ!
「ぎゃー!(来るぞ弟子ども敵の怪光線だ!)」
敵の目玉が輝き出した。黄色い光が温度を上げたのだろう、光は白色まで絞られる! 俺君、なんだかヤバイ気がする。アリムルゥネはまたもや転んだ。もしかして、砂のせいではなく重力制御? ……わからない。
今起きようとするアリムルゥネ。そして、視線を大目玉に向けるルシア。「そこの外道、ちょっと待って!」ルシアの無駄な制止の声に、俺君の毛が総毛立つ。
──そして、目玉は瞼をこれでもかと開き白き光が集い来た。
「ぎゃ(あ)」
──怪物の目から( ・∀・)∩ ビ━━━━━━━━━━━━━━ム!!!!!
開靴の巨大な目の玉が光り、白条が俺達に迫る!
──こなクソ! 間に合え俺の魔力、ルシアに全部届け、大サービスだ!
「ひ!?」とっさにアリムルゥネの腰が引ける。
「嘘!?」ルシアが固まった。だが、俺には見える見える。俺にも見える。目玉に刺さったアゾット剣に再びルシアの魔力が流れ出すのが!
ルシアの顔色が、手に汗握ったアゾットの柄が。流れ来る温かな魔力に染まる!
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ここで一句。
大きな一つ目や いつもウィンク (ライエン)




