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02-005-02 俺君剣聖、北の森へ。俺君魔力を集め与える


「ぎ、ぎゃーー! (違うわ、この馬鹿弟子があ!! ルシア手伝え、こんな結界、俺様とお前と二人で突破するぞ!)」


 俺はこんなときでもボケるアリムルゥネを無視して、ああでもないこうでもないと魔力の筋を束ね、大きな流れにし、現在のルシアの魔力の元である銀色の右目に魔力を流しゆく。右目を探して合わせて波長を重ねる。


「ライエン様、む! 私の邪気眼がライエン様の魔力の異常を拾い……」


「ぎゃー!(よし、重ねた!)」

「いえ、収束とは! 私の邪気眼のチャージ五十パーセント、七十五パーセント、凄い、百パーセント、百五十パーセント! 嘘だろ!?」


 ──アリムルゥネ。驚いた顔をしたままだ。


「わかったぞライエン様。魔力の開放は私がやるから私への魔力の供給を続けてくれ」


 ──ちょっと違うけどルシアが俺のやりたい事をわかってくれた!


「魔力充填二百五十パーセント! 目標『迷いの森』の迷宮コアへ! いざゆけ邪気眼、全ての(ウッド)エルフよ、封印から解かれし我が魔力、思い知れ! そうれ次元弾ディメンジョン・バレット!!」


 俺は魔力の集中だけを考えた。魔力と言う魔力を全身から吸われ、ルシアの元へ怒涛のように俺の魔力が流れ込む。

 次第に光り輝くルシアの右目、今、膨大な魔力を湛えた白き邪気眼(バロールの目)が開放される!


「ぎゃー!(やったか!?)」


 場を白き光が埋め尽くした。


 ……──パリン。音なき音がした。


 俺君は見た。世界にひびが入る。


「凄い魔力……ルシア大丈夫?」とルシアに寄るはアリムルゥネ。


 眼帯を直しながらルシアは肩で息。


「いや、凄いのはライエン様だ。ライエン様の潜在魔力は凄まじい、まさかこれほどとは思わなかった。『迷いの森』まさか完全に破壊したわけじゃ……いや、エルフ達がどうにかするだろ。私も疲れた」


 鳥や昆虫が鳴き始めた。柔らかな風に木々の枝葉が摺ってそれぞれに囁き声を放し始める。森の中にいつもの命豊かな静寂が戻っていた。


 ──あ。

 俺、今なにを思った?


 そう、天恵。木々の枝葉が歌を歌い始めたのだ。そう、これこそ精霊の言葉。俺は今、植物や風、そして光の精霊力を感じているのだ! 精霊の声が聞こえる! やったー! これが精霊の言葉か! ヒューマンとは全く違うな……。


「ぎゃー! ぎゃー! (うおお、やったぞ! 今度こそ俺君レベルアーップ!!)」


 俺の声に、アリムルゥネが溜息をつく。


「お師様、またお締めでも)?」

「力を使ったようだから、ミルクじゃないのか?」

「うーん、どだろ」


 と、アリムルゥネが俺を背中から降ろし、俺のお締めを確認し始める。


「……何も無いんですけど!」

「ぎゃー!(俺のせいじゃねえ!)」

「ライエン様、疲れだろ? 眠いんだよな? そんな目を細くして」


 俺はアリムルゥネが再び俺を背負った。俺君? 俺君はほら。弟子の背で涎を垂れながら、うつらうつら。


 ──良いご身分である! でも俺今回主役級に頑張った! 少しは怠けて良いよな!? じゃ、お(あと)は頼むぜ弟子たちよ!


『迷いの森』を除いて、普通の森が三人の前に広がっていた。枯れた葉の匂いと茂り湿った森の匂い。

木々の歯の隙間から差し込むのは優しき陽光。


 三人はアリムルゥネを先頭に歩いていく。

 

 しかし、柔らかい風が流れる。


 そして、枝が揺れる。太陽の光が前を開いていく。アリムルゥネの呼びかけが、この先にあるらしき里の者の心を動かしたのだろう。


「むー(おお?)」


 俺は違和感に気づいた。


「魔力が変質した。村だぜ」


 ルシアの言葉にアリムルゥネが目を見張る。


 そこにはクリスタルが何本も土から生える、木々やマント植物からなる樹上都市が広がっていたのだ。

 そして地上。

 木製の柵の外に森エルフの歩哨が二人、立っていた。萌黄色のシャツの上から柔らかそうな革鎧を着て、手に弓。それに柵に立てかけられた数本の投げ槍。

 もちろん、彼らの年まではわからなかったが、若すぎる、と言う事は無いだろう。


 ……たぶん。

 俺達が入り口で呆けていると、俺達三人は、あっという間に続々と出てきた戦士階級のエルフに取り囲まれてしまっていた。

 一人、金の髪に鳥の羽を一本極彩色の鳥の羽を刺した男が進み出る。彼らの中から進み出てくる。きっと彼は彼らのリーダーなのだろう。

 

「来たな旅人よ。知らぬ里の同胞よ。我らの静かな歓迎に去りもせず、押し入ってこようとは、どういう理由によるものか」


 ──あれ? 俺君ら、あまり歓迎されていない? どうなんだ!?


 ルシアがアリムルゥネにこぼす。


「おい、この妙な雰囲気はどうした。話が違うぞアリムルゥネ」


 槍を持ったエルフ達が包囲の輪を一歩縮める。

 俺君剣聖六ヶ月、敵意を浴びて頭が自然とクリアになり始める。


 ──戦いになるときは、リーダーを倒せば良い──などと、物騒な事を考えていた。

 果たして弟子たちが求めるゼリーは手に入れる事が出来るのであろうか。


---


 ここで一句。


 木漏れ日の 中で弾ける 思い一つ (ライエン)

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