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02-004-03 俺君剣聖、北の森へ。目指せエルフの里!

 旅は続く。

 俺君六ヶ月は二人と二匹と共に道の石畳舗装が荒れてきた街道を北を目指す。

 一日夕食のスライムミルクと共に取る糊状の離乳食も美味い。そう、俺君六ヶ月、離乳食が解禁なのだ!

 一日五食の食事はミルクだけ。夕飯に糊状のお粥がつく。


 もはや弟子二人に背負われながら、その背に食べ物を吐き出すことはなくなっていた。

 もっとも、そのかわりに涎がベットリつくことはあるけどな!


 そして俺は、その味に次第に慣れつつあった。

 二人の弟子は俺のため、ことあるごとに「エルヴンロイヤルゼリー」を手に入れようと、奮闘しているようだ。ああでもない、こうでもないと、お互い議論を戦わせている。


 そして、その『エルブンロイヤルゼリー』を手に入れられずに数週間になる。

 しかし諦めぬ弟子たち。


 弟子たちの話を寝物語代わりに聞くに、それは長老や女王などの食事であり、大変に滋養ある食べ物らしい。


 ──そしてついに俺達は北への街道が途切れ、替わりに南への街道は東西に向かう街道と交わっている箇所へと辿りついた。これ以上北へ向かうとなれば、下草やシダ、広葉樹が目立つ獣道となっている。


 ◇


 眼前には森。

 針葉樹と広葉樹の混じった森だ。鳥の声がピピピと。また別の鳥がホゥホゥと鳴いている。地面を見る。豊富な木の実が沢山転んでいた。木々を見ると、どの木にも柔らかそうな木の葉が枝の先についている。


 ──豊かな森だ。


 それは二人の弟子たちも感づいていただろう。弟子二人の表情が明るい。

 危険が無い証拠に、ロバのロシナンやスポットスライムのスラぶーに怯えの色が無いのである。


「お師様、この森にエルフの里があると思います。エルフが森を維持しているのなら、この森の危険は少ないはずです」

「『迷いの森』の魔法だ。とりあえず入り口を探すか、そうでないときは魔力で強引にこじ開けるぜ? アリムルゥネ、構わないよな?」


 ──俺はコクンとうなづく。弟子の思うがままなのだ。……だけど。


 俺は弟子の好きにさせてみようと思う。


 ──さあ、俺を背負ったアリムルゥネが一歩森へと踏み出した。果たして俺にエルフ王族ご用達のご馳走を分けていただくことは出来るであろうか。頑張れ、踏ん張りどころだ弟子たち!



 ◇


 街道から森へ分け入って半日ほど離れた森の中。緑の匂いが濃い。俺はアリムルゥネに代わり、ルシアに背負い紐でおんぶされている。

 この辺りは下栄えが伸び、シダが茂り、謎のキノコがそこかしこにキノコが生えていた。

 そして、木漏れ日の集う小径には、意味ありげに薬草が繁茂している。

 そうした役に立つ物を、摘んだり伐採したりしながら、そうして得た品をルシアは魔法で保存し軽量化の魔法もその上にかけ、ロバのロシナンの背に負わせる。


 ほとんど反則である。その辺りの薬草取りもお手上げだ。ルシアとアリムルゥネの通った後には特別な効用を持つ植物が残っていない。二人の弟子の凄まじい貪欲さ、そして生への執着を垣間見たような気がする。


 ──魔法って便利だな。

 

 俺たちの目的。それはエルフの里にあると言うその幻のゼリーをてに入れようと見知らぬ森へと踏み込んだのだる。


 街道から道祖神を目印に、森へと続く獣道へ入ること数刻。

 アリムルゥネが下生えや蜘蛛の巣をことごとくライトソードで切り払い、ルシアもアゾットに魔力を溜めて、枝葉を払って歩みゆく。


 ──ロバを()く地面についた足の数は四本、頭は三つ。そんな存在ってなぁに?


 などと俺君は赤い房髪を心地よい風に揺らしつつ、アリムルゥネの背でまどろんでいた。

 そんな彼女が一言。


「ルシア。この辺りの『迷いの森』だけど、魔力が強くない?」

「ちょっと待てよ。今私の邪気眼がジクジクと疼いていた所だ」

「はいはい。どうでも良いから早く鑑定かけてよね」


「弾けろ魔力、広がれパワー! 我は神より閉ざされし封印を解き、我が右目に全てを知る力を与えん! ……鑑定!」


---


 鑑定;森、エンチャント『迷いの森』A+ とある地形全体を迷路と化す。森や廃墟の住人が自らのテリトリーに外敵除けとして魔法をかけることが多い。


---


「いつもより仰々しい呪文だけど、何か違いが?」おお、アリムルゥネよその質問はいい質問だ!


 ──だけど。


「気分だ」とルシアは銀色の瞳、オッドアイを空気に晒したままにして豊かな胸を張った。


「……弾けるのはあなたの魔力じゃなくて、あなたの(もちもの)のようね」

「ふん、私の魔法の恐ろしさに震え怯えろ」

「はいはい。それでルシア、『迷いの森』はいつ解除できるの?」


 ルシアの済ました顔。「てへ」とこめかみを掻く。


「それが出来れば一番早いんだがな」

「え、ルシア! なんですと!」

「いや、なんとなく。今回ばかりは無理筋……とはいくか! ライエン様のため! 私はゼリーを必ず手に入れて見せる!」


 しかし、二人の間に空っ風。沈黙が通り過ぎた。


「回れ右! 帰る! ヒューマンの街に行きましょう?」


 アリムルゥネが泣き言を言う。


「えー。エルブンロイヤルゼリー」


 ルシアは引き下がらない。


「どうやって手に入れるの?」


 もはや泣きそうなアリムルゥネ。


「正当な取引だ。宝石と交換するんだよ!」


 ルシアがもう一度胸を張る。そして自分の胸を拳で一度叩いた。

 自分に気合を入れているようだが……。


「むー……」アリムルゥネは目を瞑る。そして、喚いた閃いたのだ!


 妖精騎士の大音声。


「エルフの里の人、同胞よ! わたしは妖精騎士アリムルゥネ! そしてこちらは剣聖ライエン様とその弟子。今回は商談に来た! 『迷いの森』を解除するか、私たち三人をあなた方の集落まで導いて欲しい!」


 ──沈黙が迎える。森エルフの気配も無い。


「ぎゃー! (迷いの森……そうだ、魔力? 魔力がいるのか!?)」


 俺は二人に聞いた。なにごとかとルシアがアリムルゥネが背負う俺の顔を見る。

 アリムルゥネはアリムルゥネでなんとも思って無いようだ。それどころか。


「お師様、こんな所でお締めですか? ……ちょっと今は取り込んでいるんですけど」

「ライエン様?」


---


ここで一句。


 森の夏 自然な住処に なに思う (字余り ライエン)


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