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09-012-09 俺君剣聖、三才八ヶ月。作るぞ! シルバーゴーレム二号機

 お酒の神様、この都市の守護女神の女神ナナン。

 見た目、彼女は見目麗しき黒髪碧眼、そして赤い肌の少女だ。

 しかしそんな姿は仮の姿。本当の彼女は信者にお酒を提供する代わりにこの街を守る、守護女神である。

 そんな彼女の宮殿前に近づく。

 彼女の作るいお酒の芳香を覚えつつ、その甘い香りに口の中へ唾液が溜まる。


 俺君達は宮殿前を横切り、俺君達は街の一角に。今回の目的地である。


「お師様、場所はどこですか?」

「もうすぐだ。赤い民のリーダー、キットが知らせてくれた。その一角なら木々の伐採と草刈りが進んでいるはずだ。ただ、自分達だけでは手に負えない怪物がいるから後始末を頼む、と聞いている。一番の強敵、ボス退治の手伝い込みだ」


 革鎧のアリムルゥネ。赤く熟れたリンゴの実を齧っている。


「赤い民もやるもんだな、私達の助勢無しに化け物どもを追い詰めるなんて」ルシアもリンゴを食べていた。

「彼らにも戦士階級がいるからな、それなりに頑張ったんだろ。むしろ、赤い民に怪我人が出ていないかどうかが心配だ」

 俺君は薄情にも俺君は適当に考える。いや、俺君は赤い民を嫌いじゃないよ? ほんとだよ? 頼りにしているし。

 まあ、事がすんだ後で、よく聞けばそれなりの実力なり戦法なり、学ぶべき事があったのかもしれない。


 俺君一同、クスライエンの街外れにむかっていた。。

 俺君は見る。

 知らせどおり、草刈りも終わりって、ちょっとした広間が確保されている場所である。


 ……だったのだが。

 燃やされた草の葉が、煤になり灰と成っても元の形を維持していた。

 それが風で細胞壁のみの、スケルトン構造と成っているようだ。


 どう見ても枯れている。いや、刈られ燃やされている。


 ──おおお、おおおおお。

 風が一陣、俺君の頬に灰が撫でて数秒。


 タラーリ。俺君思わず手を見る、雫となった、赤い液を見る。


「なんじゃぁこりゃあ! ち、血、血だぁ!」


 俺君興奮、なんたること!? 俺君のモチモチホッペに傷一つ!


 ──ゆ、許さん!


 俺君は瞬時に魔力を練った。濃密な魔力の赤は俺君の目前で球体となる。


「食らえ化け物、葉骨の刃め! ファイヤーボール!」


「って、お師様何を!?」どかーん! アリムルゥネが炎に巻かれる。もちろん足元の植物だか不死者(アンデッド)だか分からぬ存在もろともである。


「ライエン様、派手にやったな、ケホケホ」

 とはルシア。今回ルシアも巻き込んだ。ルシアの周囲に赤い魔力の膜。ルシアはとっさの防御膜を張る魔法で被害を最小限に押さえ込んだと見た。


 ──炎と爆風が止むと、草を起源とする(あやかし)は滅びたようで、見渡す限り、周囲に怪異は残っていない。

 うん、やったぜ俺君! 俺君の魔術も中々のものだろう。始めの内は、ポスッ! とした火花のカスしかでなかったのに。

 うんうん、さすがだ俺君! でも、もっと、もっとだ。

 そう、あくなき力への渇望こそ、最強の代名詞である大天位に相応しい。

 うん、今後は魔力の腕をもっと磨きつつ、剣術がある程度できるようになれば、アリムルゥネの技を盗んで練気を使えるように訓練するのだ!


 ──おおお、おおおおお。幾ら俺君とは言え、この考えは素晴らしい。

 さすが俺君、やったぜ俺君! 俺君最強化計画! おお、甘美な響き!


「で、ライエン様よ」

 ヘブンな心を平常心に戻したのはルシアの一言。


「この場所で良かったのか?」

 と、ルシアが見渡すのは、俺君やアリムルゥネも見ている灰と黒く焼けた土の広がる空き地。

「ゴーレムだろ? とりあえず一体分で良いか?」

「ライエン様?」とルシア。

「ああ、そうだ。ここに銀塊を広げてくれ」

 俺君は『大福六号』にどう改良を加えようかと考えていると、


「ああ、なるほど。なぜ銀塊かと思いましたが、ゴーレムですね?」

「んあ?」


 俺君の思考が中断される。

 おおお。おおおおお。

 アリムルゥネが今さらな事を言っている。


「銀塊と言う事は、今回は『大福六号』(シルバーゴーレム)ですか? わたしはもう『大福二号』ストーンゴーレム造りに飽きました」


 ──まあ、今まで作ってきた人型ストーンゴーレム『大福二号』の数を考えるとそうなるな。なにせ、八十体以上になる。



「今回は違うぞ? うん、アリムルゥネ」

「そうなんです?」

「そうとも。今回は先の冒険で思わぬ大量、山ほど準備できた銀塊でシルバーゴーレム造りをするぞ!」

「うーん、そうかよライエン様。しかし、大福六号と言えばスラぶーだよな。いわゆる操縦者。今回も操縦席作るのか?」

「ああ、操縦席付だ。スラぶーを見て思った。操縦者がいたほうが、操縦者がいないゴーレムよりも動きが優雅だ」

「何をのせるんです? (()()では無い)」

「ふふん♪」

 アリムルゥネの問いに鼻で笑ってみせる。

「まさかライエン様が? サイズ的に?」

 ルシアの左目の赤い瞳が細まった。


 と、俺君は二対の冷たい視線──いやいや、生暖かい視線を浴びた。

 なんだよなんだよ、その『また始まった』みたいな愛の薄い視線は!


「そうだ、今回は俺君が乗って操縦する!」


 俺君は自分の胸をドンと叩き、二人の弟子にドヤ顔をする。


「あー、それならお師様の生育状況を見まして、少々大きめに、操縦ユニットだけでなく、全体的に拡張の余地を残されては?」

「ああ、改造前提かよ。まあ、構わないんじゃないか? ……幼児のおもちゃにしては、少々高価な気がするけどな!」

 ルシアがカラカラと笑い、笑みはアリムルゥネに移る。


 うう、なんだかバカにされているようで俺君……くそう、なんだか両手を揚げて喜べないぞ!?


---

 ここで一句。

  銀人形 あれこれ見直す 心臓部 (ライエン)

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