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09-012-08 俺君剣聖、 三才七ヶ月。さあ、喜んで俺君ゴーレムの材料になれ!

 松明と『ライト』の光を反射するものがある。

 それは俺たちの目の前に広がる地底湖の水面。


 ──地底湖。

 松明の明かりを反射する、巨大な泉である。

 だが、何かが変だ。


 俺君はスラぶーに小石を投げて、湖に異変が無いだろうか指示する。


「投げろスラぶー! 炎の魔球だ!」


 すると、スラぶーの駆る『大福六号』は小石を投げた。

 小石は俺君の赤い魔力を帯びて赤熱する。


 ──ひょい! と赤熱した小石は見事な放物線を描いて……。

 こつん。と表面に。そしてコロコロコロ……と転がって湖の縁へ。やがて、赤くなっていた小石は灰色に戻った。

 湖面が少しばかりフルフルと震える。


 ──うん。これは違う。湖と違う。

 やばいヤツだわ。


「お師様、これは──」アリムルゥネが目を開く。そして松明を通路に投げて、刃輝くライトソードを握りなおした。

「強敵だな。というよりも、面倒な敵だぜ。この粘体……シルバースライム。今の石ころで燃え上がらないとなると、燃えそうに……無いな」

「逆にこの場で燃えられても、わたしたちみんな窒息しちゃいそう」


 ──そう。それは、巨大スライムだった。

 銀色のスライム。


 ルシアは右目の邪気眼を輝かせる。


---


 鑑定

  精霊。銀の精霊王たるシルバースライム。無機物である銀の他に、有機物をも溶かし栄養にする。体に取り込んだエサを元に、核融合で銀の体を形成。ただし死の光線、死の灰を放つことは無い。


---


「『銀の精霊王』だとよ」


 ──精霊。物質の体を持つ精神体だと!?

 この湖全体が、一体のスライムだとすると、途方もな敵だ。


 ──銀の精霊王!?

 

「ああ、そうだぜ、私の邪気眼が告げている! 兜の()を締めていこうぜ!」


 おおお、おおおおお! しかし俺君は倒す前に皮算用。俺君にはこの強敵が凄まじい宝に見える。

 とてつもなく多くの銀塊。この先、『大福六号』向けの銀の心配をする必要が無いほどの量。


 多量だッ!


 湖が震える。

 いや、シルバースライムが二枚貝の足のようなノロマな速度で俺君達三人に近づこうとする。

 それを目にした俺君達、一歩二歩とジリジリ下がる。


 どうする? どうする? 俺君どうする!?

 俺君は考える。そして……。


 俺君は体に魔力を回す。魔力をお腹で編み上げる。赤い灼熱の魔力が、沸騰するまで俺君は魔力を練った。


 ──そして。俺君は深呼吸。


「俺君がスライムを蒸発させるぞ、ルシア、一気に冷やせ! スライムから伸びる触手はアリムルゥネ、全て切り伏せろ!」

「あいよ、ライエン様!」

「お師様、心配ご無用です!」


 ──おおお、おおおおおお!

 俺は頭の血管が千切れそうになるほど大きく、大きな火球を眼前に生む!


 俺君が抱える赤熱球。


 ──うおおおおお! 

「食らえ、俺君特製巨大ファイヤーボール!」

「すご、お師様」と、二本三本、五本六本と絡めに来る銀の触手をことごとく切り捨てながらアリムルゥネ。

「ライエン様、いつでも準備は良いぜ!」と、凄まじい冷気に包まれ、両手の表面に霜を張り付かせながら……いや、皮膚の極表面に、冷気を遮断するシールドを生みながら氷結球を掲げるルシア。


 と、俺君は目を見張る!

 俺君目掛けて銀の触手、それは投槍のよう!


 ビュン! 飛んでくる槍を『大福六号』が両手をクロスさせて銀の触手の切っ先を防ぐ。


「おお、銀の化け物、これでも食らえ!」

 俺君は真っ赤に輝いた。膨大な熱気が湖に向けて吐き出される。

 表面から蒸気が上がる。ボコリボコリと表面が泡立つ。

 俺君の投げた火球でスライムの(ふち)という淵から順にもうもうと煙を上げながら蒸発していく。


「よし」

 と、呟いたのはルシアだった。

 俺君はその声を聞き逃さない!


「いけ! ルシア!」俺君叫ぶ。

「おうよライエン様!」


 と、ルシアの裂ぱくの気合と共に吐き出される氷結弾。氷の玉は炎の中で直ぐに炸裂して(ほ・の・お)を凍らせる。

 ポトポトと地面に落ちる、白く凍りついた極小さな銀の砂。

 それはサラサラとすべり、小山……いや、ゴーレム何機分になるのだろう。とにかく、辺り一面に広がる銀の砂山を築いたのである。そして姿を現す一際大きな丸いモノ。

 それはスライムの心臓ともいえる核。


 剣閃が走る。


 単細胞生物の細胞核にアリムルゥネのライトソードが食い込み、捻り、Vの字の三つに引き裂いていた。


 ──いわゆる、止めである。アリムルゥネに白星。


 ──おお、おおおおお。シルバーゴーレム『大福六号』の肩の俺君。熱と冷気に包まれて、熱いやら寒いやら。ルシアから盗んだ空調魔法も何のその、今回は熱量の桁が違う。体のあちこちが火傷と低温火傷にまみれていたのであった。


「敵はどうなった?」俺君は弟子に尋ねる。

「お師様、敵に動きありません」

「ああ、ライエン様の作戦は成功だ」


 ──おおお、おおおおお!


「やった、勝利だ! この勝利はみんなの勝利! アリムルゥネ、ルシア! もう化け物はいない、銀は全て回収だ!」


---

 ここで一句。

  鉱脈を 見つける前に 銀長者 (ライエン)

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