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09-011-06 俺君剣聖、 三才六ヶ月。廃棄都市、再び

 滝より南下することしばらく。

 俺君達先遣隊は、ジャングルの中、俺君ご機嫌。

 俺君はスラぶーの駆るシルバーゴーレム『大福六号』の肩で、頭に捕まり揺り揺られ。

 先頭のアリムルウネはライトソードで木を草を切り払いながら進む。

 どこへ見ても緑、差し込む木漏れ日は心地よく、やや冷たい空気も気持ちがいい。

 ビバ、マイナスイオン。


 俺君は早速、水エルフのフェイル達が持ってきてくれたエルヴンロイヤルゼリーを宝石や塩と交換した。

 そしてそれを俺君はおやつのように口の中へ放り込む。


 甘露甘露パチパチパッチン!

 俺君の口の中で弾けるエルブンロイヤルゼリー。

 ああ、美味い。

 

 ──そんなこんなしていると、シルバーゴーレム『大福六号』が不自然に揺れた。

 俺君は「ん?」と足元を見る。


 すると、黒い土の層が剥げ、その下に設えられていた石畳の道路の跡が姿を現していた。

『ドスン、ドスン』から『カツン、カツンへ』。

 しかし俺君作の大福六号、スラぶーの操縦もあってか、つまずいたのは一回のみ。そこから先は静かなものだ。まるで水平器でもついているように、変な傾げ方や、つまづきも無い。


 ──おおお、おおおおお。

 凄いぞ俺君、やったね俺君! そしてそして、凄いぞスラぶー!

 うんうん、俺君のゴーレム作成スキルも成長しているのかもしれない。そしてスラぶーの運転技術も。


 ──俺君凄い! やったぜ俺君!


「廃棄都市へ通じる遺構だッ! もうすぐだぞみんな!」

 俺君は『大福六号』の上から号令を賭ける。

 気のせいか、みなの歩く速度が早くなった。


 ◇


 巨石の石組みが、しかも人工的に加工されたとしか思えないものがジャングルの木々に包まれ、マント植物に覆われているのが見えた。

 ──おおお、おおおおお……。

 久しぶりである。俺君達一行は廃棄都市に着いたのだ。俺君達は二度目の来訪となる。


 ──俺君は思い出す。女神ナナンは元気だろうか。

 赤い肌、黒髪蒼眼。白いトーガを金の帯止めで留めた少女の姿。


 ──カランコロン。

 そんな乾いた物がぶつかる音がした。見た。少女が腰にぶら下げた二つのひょうたんがぶつかった音である。


「ああt、あなた達は!」

 その舌ったらずの声は石組みの上から聞こえた。


「剣聖ライエン、そしてそのお仲間達! ……それに水エルフ、赤い民まで!」

「女神ナナン! 俺達はこの廃棄都市への移住者を連れてきた! よろこべ、お前の民だぞ!」

 ナナンの眼が大きくなる。


「そう。ともだちライエンのいうとおり、かこの おたがいのあいだの かんちがいで めがみさまと おれたちは わかれた。だが、おれたちは おもいなおした。めがみさまに にごりさけを ほうのうする。めがみナナンさま、おれたち あかいたみは ふたたび あなたさまを しんこうする。どうだろう。おれたち あかいたみを ふたたび あなたさまの かごのもとに いれてほしい」

 と、赤い民の青年隊長キットが頭を下げ、メディチを初めとする大福二号らに担がせていた酒樽を下ろした。


 ──ん? 俺君は見た。

 ああ、はしたない。女神ナナンの口の端から涎が垂れるのを。でも、人間的。きっと女神ナナンの感性が、俺君達に近いのだろう。

 ──俺君がそんなナナンの姿に見入っていると、水エルフのリーダーが女神ナナンに向けて口を開いた。


「俺は水エルフのリーダーのフェイル。俺達、水エルフは女神ナナン、今日よりお前……いや、あなたを信仰し、この街の民となろう。受け入れてくれるか?」

「なんと! 赤い民だけでなく、そなた達水エルフもか!」

 ナナンの顔が驚きに包まれる。

「ああ、受け入れて欲しい。女神ナナン」



 女神ナナンの顔が、朱に染まってゆく。そいて、体中を震えさせ、わなわなと呟くように口を開き、水エルフに答えた。


「も、もちろんだ! お前達は私を信仰してくれると言う。これ以上喜ばしいことは無い!」

「ああ、めがみナナンさま! 赤い民に以前と変わらぬ祝福を!」とキット。

「女神ナナンよ、俺達水エルフに祝福を」とフェイル。


 ──そして献上される、エルフが担いで持って来たエルフ製の酒。

 ナナンの喉がゴクリとなった。

 そして、彼女の視線がライエンを向く。


「礼を言うわ、剣聖ライエン、今日よりこの都市は「クスライエン」、そして都市を再び開いた中興の祖は剣聖ライエン、あなたよッ!」

「ああ、めがみナナンさま! おお、 このまちに われらの ともだちライエンの なまえとは!」キットが涙する。

「剣聖ライエン、ここから新たに始まる、お前達の武勇を俺達エルフは語り継ごう」


 ──え? クス……ライエン? 俺君の名前を取った街?

 それってなんだか凄くね? 神公認。うん、凄い。凄すぎる。


 ううう、うおお、俺君凄い! 神様から認められた!

 俺君の名前が地図に載る! 秘境伝説に謳われる! すごい、凄すぎる……!


「それ、まずは広場に。そして荷を解いてお休み下さい。今日は宴です! 肴もお酒も私が用意します。 ああ、皆から力が流れ込んでくる。来た、来ましたみんなの力! 私の信者になってくれてありがとう! そんな皆をこの私、ナナンが新たな魔力で造った御神酒(ソーマ)と、特製ピーナッツ豆腐とで歓迎します!」


 白いトーガが舞った。広場を舞った。


 そして女神が手を一振りすると、食膳、料理、酒壷、杯が現れる。


 赤い民も、水エルフも、みな驚く。──そう、これが神の力、その一部なのだ。


---

 ここで一句?

  赤い民 水の民結ぶ 女神の宴 (ライエン) 



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