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09-010-04 俺君剣聖、 三才五ヶ月。機動ゴーレム。逆襲のスラぶー?

 俺君はありったけの銀を使って、人型シルバーゴーレム『大福六号』の修理・強化を行った。

 その曲線と曲線の合体。分厚い装甲。

 英雄的な黄金比。全長三メルテはある雄々しき巨人。


 かつて、ゴーレム兵団を率いて世界を席巻したと言う大魔導師がいたとか何とか。

 彼も今の俺君のような、凄いぜ俺君、ヤッター俺君、無敵だ俺君! ……などと、一人自慢(じまーん)の境地に身を委ねていると、心地よいヘブンの波がやってきた。


 おおう、いけないけない。寝てしまうところだった。


 操縦席も修復した。

 操縦者は他でもない、今までどおりスポットスライムのスラぶーである。


 ◇


 ──そして砂浜。


 俺君の最高傑作(自称)シルバーゴーレム『大福六号』がスラぶーの操縦の元に浜辺、砂浜に立つ。その重量の証拠に『大福六号』が動くたびに足元の砂浜にめり込む。


 対するは、石切りに行くのが面倒なので、大公に廉価版を売りつけようとして作成した、俺君の中では半ば世界の駄作機と並ぶほどの駄作、サンドゴーレム『大福三号』を五体、そしてさらに性能がイマイチであったウッドゴーレム『大福一号』を五体用意した。この二種十体のゴーレムはルシアの指揮に入る。──いや、させられた。俺君もルシアも過重労働だが、俺君は師匠で役員扱いなので残業代は出ない。むしろ、宝を集めて『剣聖ライエン一行』の資本金を上積みする使命があるのだッ。


 サンドゴーレム『大福三号』。ただの砂人形である。絶えずボロボロと崩れ、同時に人型へ修復される表面。頭部に黒い穴があり、その中で赤い眼が横並びに二つ揺れている。


「粉砕しろスラぶー! 頑張れシルバーゴーレム『大福六号』!」

 俺君はスラぶーに魔物の餌を食わせて気合を入れた。


 対するはルシア。彼女はカラカラと笑う。


「ライエン様、前回の反省は無いのか? 戦いは数だぜ!」


 俺君反論。


「いいやルシア、個の圧倒的能力が戦場を支配するのだ!」


 俺君断言。


「おお、いいねライエン様のその表情。負けを知らない認めない、若さの証だ。ライエン様もやっとその小さな体に馴染んできたか」

 などと言われてしまった。


 ◇


 スラぶーが駆るシルバーゴーレムが砂浜の砂を撒き散らしてオーク『大福一号』の集団に突撃する。

 すると『大福一号』の背後に位置したサンドゴーレムが砂浜に融ける。

 五つの僅かな起伏が砂浜の下を蠢く。


「ゆけ、スラぶー!」


 俺君の指示に従うように、俺君はオーク『大福一号』の壁を破壊してゆく。

 胸を貫き、脚を圧し折り、腕を握りつぶす。

 木屑が舞い、樫の木の部品がバラバラになる。

『大福一号』の攻撃など物ともしない。


 ──そうだ! 火力だ! 瞬間最大火力こそ敵戦力を殲滅する定理!


「やったー! そこだスラぶー!」


 シルバーゴーレム『大福六号』は樫の木『大福一号』を相手に獅子奮迅。


「よし、行けスラぶー! その調子だ!」


 俺君は応援に右手を振り回す。

 俺君やった、さすが俺君、凄いゴーレムを造ったぜ!


 ──との俺君。しかし違和感。

 そうだ、サンドゴーレム! どこだ!? どこに隠れた! って……あいつら砂浜の中──シルバーゴーレムの真下じゃないか!


「スラぶー! 真下だ真下! 攻撃来るぞ!」


 と言うが早いか砂浜の砂が大きく、すり鉢上に凹む。

 そいてその穴にバランスを崩して転がり込む、スラぶーの駆るシルバーゴーレム。


「な、な、なんですとー!?」


 俺君は砂浜に自重で沈み行く『大福六号』の姿。

 俺君は二の句も告げない。「ぎえーーーーーー!」と俺君の驚愕が砂浜に満ちた。


「あはは! 『大福六号』など埋めてしまえ『大福三号』! なにがシルバーゴーレムだ。サンドゴーレムの恐ろしさ、ライエン様の心に刻め!」


 関節を動かすたびにジャリジャリ音を立てるシルバーゴーレム。

 穴から抜け出ようとしても、すり鉢の深さが四メルテ、すなわちシルバーゴーレムの体長を越えた。

 何とかしようと踏ん張るシルバーゴーレム。しかし『大福六号』が動くたびに砂の斜面が崩れる。


 ──うおお、おおおおお。

 俺君の、俺君の最強ゴーレム計画がッ! なぜだ? いや、地形の勝利かルシア! それとも数か、数の勝利かルシア!


「お師様。砂浜に開いた、すり鉢の上のほうから砂が大量に零れてきてますよ?」

 とはアリムルゥネ。冷静な分析ありがとう。


 ──って俺君なにをそんな、のん気な事を!


「あはは、シルバーゴーレムは首まで砂に埋まったぜ!」

「ぐぐぐ、ぐおおお! うう、うう、お前は悪魔かルシアめ! 生き埋めのスラぶーが可哀想だろ!? ……どうせスラぶーは無事だろうが……畜生めルシア! いつか仕返ししてやる!!」


 ──行き場の無い怒りに俺君は、太陽に向かって吼えた。


 ◇

 

 ──とはいえ。

樫の木『大福一号』は二メルテ級の壁として。

石『大福二号』は材料集めがやや容易な固い二メルテ級の前衛戦士として。

砂『大福三号』は戦う三メルテ級の固い戦士として。

銀『大福六号』は三メルテ級のしなやかな動きもとれる、操縦士の意のままに動く柔軟な戦士として。


 ──そして空欄の『大福五号』のナンバーは、いまだ製造していない鉄、アイアンゴーレムに。


 全て、人型ゴーレムである。


 うん、俺君は順番に作成、試験、模擬戦を行い、それぞれのゴーレムの特徴をあぶりだし、いつか最強のゴーレムを造って見せるのだ! 俺君大福ラインナップは凄いんだ。コイツらを世界の駄作機とは言わせないぞ! 

 ゴーレム作成にこだわる俺君の理由の一つとして、俺君にとってゴーレム作成は魔力の出し入れもハンパ無い事が挙げられる。これは魔法の練習、すなわち魔力拡大縮小の良い練習代でもあったのである。


---

 ここで一句。

  金銀胴 どれが一番 輝くか (ライエン)




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