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09-010-02 俺君剣聖、 三才五ヶ月。大公の思いと、俺君のシルバーゴーレム

「でも、どうして大公はストーンゴーレムがそんなに沢山欲しいんだ?」とルシア。

「以前も献上したのに?」

「大公に渡した数は確か十……いや、十一体か? 何か大規模戦闘でもあったのか? ストーンゴーレムを相手にするとなると、そこそこの強敵のはず。それを圧倒する敵となると……」

 この街を良く知るマドレスが答える。

「この港湾都市レンクールは、ここのところ帝国本国との間がうまくいっていないのです。傭兵募集の一環として、強力な戦力となるストーンゴーレム、ひいてはライエン様たちを味方につけておきたい、と使者様は申されておりました」

 帝国の本国艦隊。平時は海賊行為も行う私掠船団だという。

 だが、幾ら艦隊が精強でも、上陸のときに一筋縄で入られまい。上陸する本国の兵士の相手は兵士ではなく多数の石人形なのだ。敵も驚くばかりか、その威圧感と強大無比な暴力に二の足を踏むであろう。いや、本国の兵士はそもそも戦闘どころかストーンゴーレムに有効な攻撃手段を持たないかもしれない。

 そう、本国艦隊はゴーレムを見ただけで本国艦隊は上陸を諦め、攻撃を諦める可能性だってある。


 ──うーむ。俺君考える。

 本音を言えば、どちらにも協力したくない。化け物ではなく、人相手である。大義と正義がどちらにあるにせよ、戦争には参加したくない。だが、俺君が太守にゴーレム兵団を提供せずに、帝国本国はもちろん、この殖民都市の太守である大公との仲が喧嘩しても面白いことは何も無い。本国軍に掴まる? 大公に軟禁される? 冗談ではないのである。俺君は弟子たちと修行を重ね旅し、なにより世界の温泉と言う温泉を堪能したいのだッ!


 ──ううう、うおおおおお! 考えろ俺君!


 俺君は考えた。考えに考えて、ダルマ(達磨)さんのように転んだ。

 そして俺君は断ずる。でも疑問。


「大公はストーンゴーレム、何体ほど欲しいんだって?」


 俺君は目を細める。頷くマドレス。


「大公様は──」





 ◇


 銀人形の胸と腹の中の銀を抉り出す。

 俺君は銀塊を人型に整えた人形に操縦席をつけることにしたのだ。

 二人乗り、とも考えたが、銀塊も足り一人用である。

 運転手、その操縦者と言うのが──。


「おお、俺君すげー、もしかして俺君に不可能なことなど無いのではなかろうか」

「はい? お師様? 知恵熱ですか?」

「あーライエン様、最近気が緩んでるだろう。ちょっとばかり怖い目にあってみるか? な、ライエン様。あはは!」


 俺君、二人の弟子の言葉に戦慄が走る。弟子二人が血も涙も無い存在になってゆく! ……物騒極まりない。

 まあ、それはそれ、置いておくとして、シルバーゴーレムである。

 操縦席は胸。操縦者はスポットスライムのスラぶーである。最近スラぶーの出番がなかったので、良いトコ見せるチャンスを造ってみた。

 俺君は胸の操縦席にスラぶーを押し込む。

 そして、俺君の魔力を流すことで、スラぶーの肌とゴーレムの内壁を馴染(なじ)ませた。


 俺君は眺める。

 うん、ゴツイ。操縦席の胸がそこだけ無様に大きいという事も無い。

 スラぶーは元々不定形だしな!


 ──俺君、初期不良のチェックを始める。


「右、左、右、止まれ! 回れ右! 回れ右! 敬礼! 休め!」

 うん、運転はスラぶーに任せても大丈夫のようである。

 そして、変な動きもしなかった。


 ──良し!


 銀色に輝く人型シルバーゴーレム、試作型『大福六号』の完成である。『大福五号』はいまだ造ってないが、このナンバーはまだ見ぬアイアンゴーレムのために取ってあるのであった。


 ◇


 俺君、迷いに迷った末、大公の味方をすることにした。

 レンクールから街道を南に向かった先に大きな岩の採石場……俺君が権力者に無許可でやった事業です! えへへ──でもその成果であるストーンゴーレムを十一体もレンクール一番の権力者である大公に献上したんだ、大目に見てくれよ! もっとも、大公が腹黒かったときの備えとして、ストーンゴーレム以上の戦力を提供するつもりはないけどね!


 採掘場の岩。始めは 岩魔人などという精霊か悪魔かわからない生き物に悩まされた。

 岩を切り出すときの注意点はその程度だ。

 この場はロケットパンチをオミット(取り外)した量産型ブロンズゴーレム『大福四号』と、スラぶーが操縦する試作シルバーゴーレム『大福六号単座型』を、万が一の歩哨(みはり)に立たせている。


「お師様、帝国本国艦隊は精強です。上陸部隊に宮廷騎士(テンプルナイト)が出てこられては劣勢です。中でも帝国が誇る数多な騎士団の中でも|暗黒騎士団や|薔薇十字騎士団でも出て来ようものなら、ストーンゴーレムごとき瞬殺ですよ! お師様やわたしとルシアならともかく、そのしもべであるストーンゴーレムが敵国騎士団に勝てるとは到底思えません。炸裂弾を抱いて自爆テロでもさせる気ですか、もっともその場合でも肝心要のストーンゴーレムの数が足りませんけどね!」

 



 俺君は酒場のマドレスの言葉を思い出す。必要な数を聞いたのだ。するとなんとストーンゴーレムを三十体ご所望だと言う。


 ──でも。

 アリムルゥネの言うとおりである。勝機は無い。

 ──大公に俺君が味方しなければな! 帝国艦隊、そして騎士団何するものぞ、俺は爆炎の剣聖、大天位のライエンだい!


「ライエン様、大公は私らのことどう思ってくれているんだろうな?」


 俺君考える。いや、考えるまでも無い。


「都合のいい傭兵」

「ま、そうなるな」

「なんだか面白くないです」

「俺君達は代金に金銀財宝を頂く。頂くものはいただいて、『必須の傭兵』になってやろうぜ。そうすりゃ大公も目を覚ますだろ」



 俺君は岩を切り出す。もちろんアリムルゥネとルシアの二人にもに切り出させた。

 ふえー、三十体分となると、一仕事。うん。俺君、心地よい汗をかく。

 で、ストーンゴーレム『大福二号』改だけれども、デザインはシンプル。四角形と円筒を基調とした人型デザイン。

 その重量の生み出す両腕の破壊力は一般兵士に比べ圧倒的だ。

 その大柄な体の威圧感、意外にも素早い細かな動き。反復横跳びでもさせちゃうぞ?


 ──ともあれ。


 ──うん、俺君頑張った。


 三十体ものストーンゴーレム『大福二号改』が整列している。

 それはもう、言葉にならないほど見事なものだ。……自慢(じまーん)!。

 俺君みずからの手になるゴーレムである。きっと様々な戦闘で敵を圧倒してくれるに違いない。


 俺君の脳裏に『大福二号』改が敵の攻撃をものともせず、はじき返し、突き飛ばし、押し込み、潰し、跳ね飛ばし、踏みつける姿が眼に浮かぶ。


 ──俺君製ゴーレム軍団、無敵に進軍す! なのだ!


 え? 弟子たちが言っていた騎士団?


 お、おおおおお。


 ──今からそんな事を考えても仕方が無い。出て来て大公様に泣きつかれたその時にでも考えようぜ!

 

---

 ここで一句。

  石人形 踊りかかるは 整然と (ライエン)

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