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09-009-08 俺君剣聖、 三才四ヶ月。女神の珍味を頂くぜ

 急に辺りが静かになった。アリムルゥネとルシアが武器を下ろす。


「私、ナナンはお客様にはお酒と珍味で歓迎することにしているの。でも、あなた達が正体を自ら語ってくれたのなら、の話だけど!」


 ナナンと名乗り、同時に神を称する少女は俺君達三人に向け、ビシッと俺君達三人を順に指差した。


「アハハ!」ルシアがやれやれと笑い、イヤリングを取り外す。すると白かった肌は銀髪も映える褐色に染まる。薄紅色の唇が艶かしい。これが、(ダーク)エルフの魅了の術か、と俺君が誤解するほど、このルシアは美しかった。


「あー、ナナンさんか? いいぜ、教えてやるよ。私はルシア。褐色の肌のエルフはヒューマンに好かれていなくてな。余計ないざこざを避けるため、普段は元の肌の色を隠しているんだ。分かったかい? お嬢ちゃん」

「ええとルシアさん、ごめんなさい、貴殿は苦労されておいでなのですね。許してください。私はこれでも──こんなチビっこの姿でも、神代に生を受けた女神です! 神々の戦でほとんどの力を失ってはいますが……私はまだ再起のときを諦めておりません! 日々徳を積み、遠くかつての時代、神代の力を取り戻したいと思っています」

「あー、ナナン様? あなは自分が神様だと?」

「そうです。私は正しく神族に連なるものです。かつては赤き民の守護神をしていました」


 ──かつては?


 ともあれこの少女はナナン。神様らしい。──自称だ。

 

 それは目の前にいる白のトーガ姿の少女。

 自称赤い民と仲違いした神らしいのだが。彼女が言うに。


「私は赤い民のために外敵から守る。赤い民は私に美味しいお酒を差し出す。そういった両者両得の関係でした」

 ナナンは少し寂しそうに微笑む。


「ナナンさん。わたしは妖精騎士アリムルゥネ。だけどわたしはみんなと一緒に船であちらへ行かなかったよ。わたしはみんなと行くより、お師様みたいな人について、ずーと冒険して回るほうが面白いとも思ったんだ! そして事実、お師様やルシアといると毎日が面白いもの!」アリムルゥネが笑顔で語る。

 俺君、ちょっとあちこち(かゆ)い。

「俺君は剣聖ライエン! 爆炎の剣聖とは俺のことだ! ナナン、お前は神なのか? 今は赤い民の守護を行っていないのか?」

 俺君が『剣聖』と口にしたところで、一瞬ナナンの眼が光った気がした。

 ナナンが噛んで含むように口にする。

「ご覧になったでしょう、この都市の荒れたさまを。私はほんの少しだけ、献上されるお酒の量を増やして欲しかっただけですのに! でも、それが赤い民の皆さんには気に入らなかったようです」


 ふむ。

 御供え物に不満があったので、捧げてくれる赤い民に追加を要求すると、断られた挙句、『お前なんかもう崇めない』と見捨てられたと。……そんなことで本当に神を捨てるものだろうか。


「まあ、この街を訪れてくれたライアンさんたちに、珍味とお酒をご馳走して歓待したいと思います。この街へおいで下さったお三方のどなたもが、武芸や魔術を修められている方と見ました。ですが、せっかくの御食事の時間。だれにも邪魔されたくは無いと思います。この広間は私の領域。私が目を光らせますので外部の存在の邪魔は入りませんので安全です。ご存分にお召し上がり下さい」


 と、ナナンが右腕を一振り。

 ふかふかの絨毯が石畳の上に広がる。

 そして、何だが大きな黄色のプルプルにダイコンをおろした、みぞれソースが乗っている大きな銀の皿が三枚と、甘い香りが漂ってくる白い酒──濁り酒だろうか──の入った銀のカップが三人分だった。


「さぁ召し上が──」


 ナナンが言いかけて、アリムルゥネの大声に消えた。

「うんまうま! なんですかこのプルプル!」と、はしたなくもアリムルゥネ。銀のスプーンを手にがっついている。

「お! 本当に美味いや! まあ、アリムルゥネが言うんだから間違いは無かったろうけれど! 口に入れると甘さが広がる、ゆっくりと広がって旨みが口全体に広がって……これは美味いや!」ルシアもプルプルのとりこだ。

「ゴホン、召し上がれ」女神ナナンは言い直した。


 ──俺君は……。


 プルプルを一匙(ひとさじ)(すく)った銀のスプーンを口に持ってゆく。

 そして、口の中に入れた。

 絡み付く旨みの固まり。


 う、美味すぎる……。俺君、言葉も出ない。

 この品、伝統のピーナッツ豆腐というらしい。


 三人が珍味、ピーナッツ豆腐をいただき、ルシアが酒に手を出そうとしたところで。

 ナナンは口を開いたのである。


「実は頼みがあるんです。つい最近街の旧宮殿に外れ住み着いた赤いローブの吸血鬼を倒して欲しいのです。旧宮殿は私の家ですのに!」


 俺君考える。

 赤ローブ? 俺君が知っている赤ローブは動く骸骨だった。

 また復活でもしたのだろうか。

 あれだけやられても、叩いても叩いても復活してくるのだ。邪な神に気に入られていてもおかしくは無い。


「ナナン様も強いんだろう? ナナン様、あなたのその力ははぐれ吸血鬼の一人も直接倒せないほど弱っていらっしゃるのか」

「私の力は都市の維持にも使われております。信者のいなくなった今、私の力など、その辺りで小さな勢力を張って王様ごっこをしている九十九(つくも)神の一体にも及びません」


 ──うーむ。俺君考える。

 恐らく女神ナナンの力が衰えているという話は、俺君の優秀の弟子の気配察知を潜り抜け、俺君にしか気配を察知させなかったことで、眉唾だといえる。だが、ナナンの力の天井が分からない。なので、全くの嘘であるという事も無いだろう。


「いかがでしょうか、お受けしていただけるなら、謝礼の金銀と共に、ピーナッツ豆腐をまたご馳走しますが」


---

 ここで一句。

  ナナン様 俺君を見て 餌で釣る (ライエン)



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