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09-009-02 俺君剣聖、 三才三ヶ月。レンクール共同墓地、骨頻出の謎

『バー&イン 三本松』レンクールの真珠こと、給仕娘兼用心棒のマドレスは、俺君達に大公の依頼なるものを持ちかけていた。

 俺君達三人、奥まったテーブル席でエビ料理を食べている。俺君海老アレルギー……ううん、違うんだい! 俺君海老アレルギーは無いもんね! だからこの料理も俺君綺麗にいただくのだ!


「大公さまは墓地にアンデッドが増えている事、そしてライエン様たちが遭遇なさった巨大な化け物が現れたことを非常に憂慮されておられます。そこで大公様は、墓地の調査をライエン様たちに依頼したいとのことでした」


 黒髪をぴょこぴょこさせて、マドレスが大公の言葉を伝える。


 ──ブロンズゴーレム『大福四号』の試験も物足りない。格闘能力なども俺君は見たいのだ。

「アリムルゥネ、ルシア、どう思う?」

「ん、街のピンチということですから助けましょう! それでこそ剣聖!」

 スープにパンを浸し、そのパンを頬張りつつアリムルゥネ。

「この前のお化けに敵う化け物が現れるとは思わないな。でも、墓地の見回りに行くこと自体は否定しないぜ」


 ──そうとも! 俺君、街を代表しての大公の依頼、成功裏に達成すると、俺君が頑張った噂がさらに広まる!

 うん、やるぜ、やってやる!


 ◇


 相も変らぬ曇天。

 俺達三人と、青銅の(ブロンズ)ゴーレム『大福四号』は港湾都市レンクールの一角、共同墓地にいた。


「霊廟から調べるか? まさか墓石を一つ一つ調べるなんて言わないよな?」

「一つ一つ調べられるのか?」

「人海戦術で?」

「いや、ルシア。お前の魔法で」


 ──あー……と、言葉を濁すルシア。

「そいつは全く無理なことじゃないんだが……本当に実地するか?」

「簡単に分かるなら、やってみるのも面白いんじゃないの?」

「面白いか、だって? そりゃ、一度に全数検査をすると、面白すぎる結界煮ると思うんだけどな? うん」


 ──ルシアがいつにも無くしり込みしているようにも感じ取れる。


「ルシア、魔法で検査だ! アリムルゥネ、異常に備えろ!」

 俺君は叫ぶ。一方でアリムルゥネは光の剣を抜いた。


 ──ルシアは右目の眼帯を外してその下の銀の瞳をあらわにしては、


「届け邪気眼、見通せ死せども生けるもの! ──さあライエン様、アリムルゥネ、目を瞑れ!」


 ルシアの掛け声。

 俺君とアリムルゥネは急いで目を瞑る。


 瞼の上からでも感じ取れる鋭い光!

 その輝ける時間は無限にも思えた。

ブロンズゴーレム『大福四号』? もちろんこいつは動かない。


「眩しいです!」とアリムルゥネ。

 俺は瞼からの刺激がおさまるのを待って、目を開ける。


 すると、いくつかの墓石が輝いていた。

 そして、その直後に──!


「ライエン様、アリムルゥネ! 目を開けてくれ! 戦闘開始の時間だぜ!」


 土の中から墓石を押し上げてでてくるのはボロを着た骨、骨、骨。

 この世に何か言い知れぬ未練があるのか、その骸骨の眼窩には赤や青のかすかな炎が揺らめいていた。


「骨……これほどまでに多くの者が化け物に」俺はミスリルの小太刀を抜き放つ。輝く刃がギラリと光る。

「まるで大軍勢です……」アリムルゥネはライトソードを構えた。


 ──そしてルシアは。


「遠慮は要らないぜ、ライエン様、アリムルゥネ。彼らは奥のヤツが持っている大きな負の力によって動いている。全て片付けて平穏と静寂を取り戻すんだ!」

「ああ、ルシア。その大きな負の力元凶とは奥の赤いローブを羽織った骸骨か? 禍々しい宝石の光。どこかの魔導師の成れの果てだろう!」

「違……違うぜライエン様! こいつ以前、私達が森の砦、ほら、四階の塔で出会った奴だ! まさか拠点付きでこんなに早く復活してくるなんて!」


「おお、これぞ神の恩寵よ、こんなに早くこの私に復讐の機会を設けてくださるとは! ジャングルの砦では遅れをとった。今度こそ逃がさん。我が主は私を見捨て裏切ったが、更なる力の持ち主、真に血から持つお方から私は再起の力を頂いた! 蘇りし我が力、思う存分食らうがいい!」


 赤いローブの骨の手が、天にかざされたかと思うと次の瞬間振り下ろされた。

 膨大な量の骨と、俺君達の間を流れる生温い風。曇天。湿った空気がただただ恨めしい。


 ──おおお、おおおおおお!

 成長した俺君の技を食らうがいい! 俺君は赤い魔力を拳に溜める。そして息を大きく吸い込んでは吐き出した。


「ファイヤーボール!」


 収縮した俺君の魔力は赤い弾頭となって物言わぬ骨の軍団に吸い込まれる。


 ──着弾。膨大な火炎流をなって墓地の地面を嘗め尽くす。炎の洗礼に、崩れ落ちる骨多数。


「やったぜ!」俺君は右手を上げる。

「ライエン様さすがだぜ!」と俺君に続き、三つの赤い玉をお手玉していたルシア。彼女は俺君に続き、同じく火球の魔法をブチかます。


 ──三方で大爆発。小さく圧縮されたルシアの炸裂弾はその炎の舌を伴って、無数にいた骨を根こそぎ粉砕する。

 立ち上がる炎と煙。

 そして仲間が行動不能になろうとも、にじり寄ってくる骨骨骨の数。


 ブロンズゴーレム『大福四号』が強靭な腕を振り回す。その度に砕け散る骸骨。

 アリムルゥネの光の一刀。左右に分かたれる骨。剣が振るわれるたびに骨が溶断される。


 ──おおお、おおおおお! 骨と言う骨が偽りの命を絶たれる。曇天の隙間から差し込む光。

 

 赤いローブの骨の頭、頭蓋骨が陽光に(きらめ)く。

 そう。残すはあと一体だ。それは赤ローブ。


「ほほう、私が神より授かった軍団を良くぞ(くだ)した。これでは私も本気を出さねばなるまい」


 骨の隙間を風が渡る。カラカラと音まで聞こえるようだ。それは骨の笑いのよう。


 ──俺君は。


「やってやるぜ、成仏してな!」と、一声吼えるのだった。


---

 ここで一句。

  骨林 ヒュウヒュウ鳴って 隙間風 (ライエン)




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