表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

148/203

09-008-02 俺君剣聖、 三才。弟子と剣の道

 港湾都市レンクールの街、晴れた日の郊外。そんな場所に俺君達はいる。

 

 ストーンゴーレム『大福二号改』二体、そして挟まれるように丸めた紙を持ったアリムルゥネ。

 見慣れた光景だ。多が、アリムルゥネが俺君を見据える視線は厳しい。

 その証拠は丸められた紙。そう、そこを起点に蒼い闘志がこれでもかと立ち上がっている。


 ──アリムルゥネ。本気である。


 俺はそんな一人と二体をしかと見る。


 アリムルゥネは中段構え、その視線は鷹のよう。

 蒼き紫電が、大地と天を繋ぐかのように、何条もアリムルゥネの足元から迸る。


「お師様、覚悟は良いですか!」

「覚悟ってなんだアリムルゥネ、俺君剣聖、俺君は負けない!」


 おお、おおおおおおお! アリムルゥネ、滅多に見せない全力である!

 だが俺君、負けるわけにはいかない!


 俺君は剣を握り締める。軽い木刀だ。

 腹に溜まる赤い魔力、それを練りに練って体全体に行き渡らせる。


 ──そして俺君看破する。

 アリムルゥネから迸る紫電、あれこそ練気の最終形態、それこそ闘気。恐るべし、俺君の弟子よ。


 ──全力かよ。


 いきなり奥義とは恐れ入る。

 俺君も中段に木刀を構えた。


 ──さぁ、し合おう。生ある限り、戦って戦って戦って栄光を掴むのだ! いくぞ、俺君!


 俺君はアリムルゥネから出入りする青い線の流れを見る。磁力線のようだ。

 自己生産し、自己消費する。生産量が多ければ、今の弟子のように練気、闘気が溢れ出る。


 俺君も真似てみる。一瞬輝き、瞬時に霧散する蒼き光。


「お師様?」アリムルゥネが眉を寄せる。アリムルゥネがニヤリと笑い、噴出させる蒼き闘気を波に、そして鋭くさせる。

「覚悟!」

 アリムルゥネが無骨な両腕を振り上げ迫る『大福二号改』二体をともなって、蒼き刃を振り下ろした。


 1・2・3、多段攻撃三段! アリムルゥネの丸めた紙は、一度しか得物を振らなかった彼女から、続く真空刃三回の攻撃を生む。そして遅れてストーンゴーレムの拳が迫る!


 俺君、土を蹴って右に流れる。

 アリムルゥネの多段攻撃を、俺君コロコロ地面転がり回避で避けまくる!

 そして、土砂が舞う。狙ったように同時に放たれた叩きつけられるストーンゴーレムの拳。


 ──くぅおおおおおお! 頑張れ俺君!


 俺君は素早く起き上がる。相手はアリムルゥネ、その距離は三メルテ。

 ち、距離が無い!


 俺君は腹筋と両膝をバネに飛び上がる。

 木刀の切っ先、はるか彼方に弟子の体。


「避けきった……」

 アリムルゥネが一瞬呆け、俺君を睨む眼が眼が丸くなる。


「お師様、流石お師様です!」


 言葉と共に、確信の笑み。


「でも……それ、行きます!」

 弟子が飛ぶ。俺君との距離は縮まり、丸めた紙は鋼鉄の刃のように鋭く、その衝撃波はまたしても三重の真空刃となって俺君を襲う!

 俺君、木刀を防御に使い、スパスパスパン! と切り刻まらる音を聞く。

 だが、俺は会心の笑み。


 ──弟子の懐に飛び込んだのだ。

 俺君、お腹で暖めていた赤い魔力。


 ──驚くアリムルゥネ。その眼は俺君の正面から背中を見る形へ。

 弟子は背後へ飛ぼうとするも、間にあわず。


「勝機! 俺君は力の限り叫び、「おおお!」と弟子の鳩尾に俺君は一撃入れる。


 溜めに溜めた俺君の魔力撃! 赤い魔力が革の鎧で覆われた弟子の鳩尾へ突き刺さった。


「ぐ……ッ!」


 当然倒れるものと思っていた俺君、倒れるどころか突き込んだ俺の右手を掴み、力技で俺君の打撃を跳ね除ける弟子!


「なんだとう!?」アリムルゥネが笑う。

 今度は俺君が驚く番だった。俺君の体が宙に浮く。回転する!


「おお、おおおおお!?」


 アリムルゥネが一瞬呆けた俺君の腰と背中を掴み、背中から投げ飛ばしたのである。


 そして着地点にはストーンゴーレム二体が待つ。


 直地点、俺君に蹴りを入れようとするその二体に対し、俺君はズルを使った。


「ストーンゴーレム『大福二号改』! 双方止まれ!」


 ストーンゴーレムがそのままの姿勢で硬直し、バランスを崩して二体は地面に倒れこむ!

 俺君の言葉。瞬間、二体のゴーレムの命令を書き換えた。


 ──そう。この二体のストーンゴーレムは製作者である俺君の指示を聞かなければならない。


 つまり、俺君の赤い魔力を紡ぐ糸は、俺君作のストーンゴーレムに対し不動の縄となったのである。


「えー!? そんなの有り!?」

 と、体の動きを止めたアリムルゥネ。

 これこそ絶対の隙である。

 俺君は木刀の柄を投げた。すると、木刀の柄は弟子のおでこに物凄い速さで命中したのである。


「あ痛あ! こんなのも有りですかお師様!! もう、わたしの負けです。負けでいいです! ルシア、おでこの傷を診てくれない!?」


 と、途端に膨れるタンコブおでこを擦りながら、涙目で俺君とルシアに訴えたのであった。


「あはは、はは。……有りかよ」

 乾いた笑いのルシア。

 「さすがライエン様。自分が負けそうになると、使う手段が容赦ないぜ」


 ──やったー! 俺君大勝利!

 うんうん、俺君頑張った! 俺君凄い、俺君やった! できる限りの手段で、三対一で勝利した!


「うん……」

「やられました、お師様。でも次は負けませんからね」と、悔し涙。おお、よいよし。

「だな、ライエン様、その調子で私達をいつも勝利へ導いてくれ! もちろん私も手伝うから! あはは!」


---

 ここで一句。

  蒼練気 俺君欲しい 使いたい (ライエン)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ