09-007-03 俺君剣聖、 三才。辺境の村発見
──そして道なき道を西へと向かい、また今日何度目かの小川を渡るのであった。
飛び石がある。もっとも、石など無くとも、川は浅く、そう濡れずに渡れそうだ。
──どちらにせよ。
俺君達にはルシアの魔法の加護があるのだ!
と、俺君ジャンプ渡り!
って!?
──ビシュン! ビシュン!
清流から高速で飛来する圧縮水。
「あ痛ぁあ!?」
俺君痛む、おでこが痛い!?
「ライエン様も、お甘いようで」ルシアは笑う。
「お師様!」
──ビシュン! ビシュン!
でえい、命中すると痛いのだ! 俺君怒った!
両手に魔力集めるはパー!
手の先指の先まで魔力が巡る。
「いけぇ!」
俺君は両掌を水面に当てて、魔力を一気に放出する。
──ドゴゥ!!
と、俺君の掌、指の先から放った振動波。
水面から魚が無数に飛び上がる。
そして腹を見せて浮かび上がる魚が十数匹、川の岸に打ちあがってピシピシ跳ねているのが数匹。
よし! 俺君やったぜ一人でやった!
俺君凄い、俺君偉い!
やったー! 自慢!
「流石ですお師様。先ほどの無礼をお許し下さい」と、俺君に頭を垂れるアリムルゥネ。
「あはは! ライエン様の魔法もそれなりのレベルになって来たんじゃないか?」と、どこか満足顔のルシア。
──ともあれ。
俺君達は鉄砲魚を撃退したのだ。
「──あーライエン様? 鉄砲魚、塩焼きにするぜ? 食うよな?」
◇
獣道に沿い、緩やかに丘を越えようとした、そんな時。向かう方角──西に、複数の煙の匂いがする。時は中天。昼時だ。
「お師様、あの煙、かまどから昇る煙だと思います。人里です」
俺君はスラぶーに鉄砲魚の開きを食わせていた。嫌いなものが無く、石でも肉でも、もちろん草でも何でも食べる、スポットスライムのスラぶーである。
「だな、同族だ。ただし、私ら流の文明が行き届いてない感じだ。危険な匂いがプンプンするぜ」
「でも、ルシア、そういった集落の事を調べて大公へと報告するのが今回のたびの目的だろ?」
「まあね。さすがライエン様。目的を忘れていないとは頭が下がる」
「ですよ! お師様のいつもの気まぐれが無いだけで助かります!」
──なんだとアリムルゥネ! いつも気まぐれを起して場をメチャクチャにするのはお前、アリムルゥネやルシアだろ!?
「アリムルウネ、あれ買って来たか?」
「ああ、あれ。沢山買ってきた。どう使うの?」
「なあ、アリムルゥネ。私、お前に似合うと思って買っていた宝石つきの指輪があるんだが……欲しいか?」
と、掌にはダイヤモンド付きの銀の指輪。
見た途端、アリムルゥネの眼が細まる。
「え? くれるの!? 高かったでしょう!」
「あーやるやる、幾らでも。──そんなものでよかったならな!」
アリムルゥネの小指にその指輪があった。アリムルゥネがうっとりしている。
「で、満足か? アリムルゥネ」
「え? くれるんでしょ──って、待って。この輝き……あー……」
アリムルゥネはガッカリ、
「ニセモノじゃない! 安物の石に、銀メッキの指輪!」
「あはは! 『あれ』はそんな事に使うために買ってきたんだよ!」
ルシアが笑う。
だが、許していいのかそんな事。
「ルシア。騙すのはいけない」
「え? ガラス玉、と言う新しい宝石を、メチャクチャ御得な売価で売るんだぜ? 気に入らないか? ライエン様」
「ルシア。お前が同じ目に合い、嘘の……ニセモノを掴まされた時、お前ならどうする? 笑って見過ごすか?」
「──そんな訳無いだろう。私を騙したんだ。そんな相手、それなりの代価を頂いて、二度とそんな気が起きないようにしてやるぜ」 俺君はルシアを見つめる。
「そういうことだ、ルシア」
「ん──、そういうことか、そういうことだなライエン様。悪かった。ライエン様の名声に泥を塗るようなこと、考えただけで私の罪は思いな。──ごめんなさい」
「うん、わかってくれれば、俺君も満足だ。わかってくれてありがとう」
「いや、こんな私なんだ。破門にはならないのかライエン様」
俺君は静かに言った。
「──誰がお前を破門になどするものか。お前は昔も、今も、そして未来もこの剣聖ライエンの弟子だ! 迷ったときには俺君が導く。なんでも相談しろ!」
「あ、ありがとうライエン様!」
ルシアが俺君を抱きしめる。柔らかく、暖かい抱擁だった。
俺君はそんなルシアの頭を撫でる。よしよし、よしよし、と。
そしてそんなルシアの目には──コメントすまい。弟子ルシアの面子にかけて。
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ここで一句。
ガラス玉 涙を見れば 宝石に (ライエン)




