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09-003-02 俺君剣聖、二才十ヶ月。ケンタウロスとゴブリンと!? その一

 俺君と弟子二人、そしてロバのロシナンとスポットスライムのスラぶー、ストーンゴーレム『大福二号』の三匹をつれ、港湾都市レンクールの東門から、ジャングルに分け入って行ったのである。


 そして急に鳥の声が聞こえなくなった、太陽が中天にあろうかというその時。


 ──俺君、生き物の群れに気づいた。群れは二つ。

 漂ってくるこの匂い。どちらも人外であろうと思われた。


 大勢と大勢が大地を踏み鳴らす音がする。

俺君達は茂みに隠れ、その音の発生源を刺激しないように、静かに森の中の陽だまりを見つめたのである。

 アリムルゥネの肩車。俺君は見た。


 ──その、二つの陣営を。


 ◇


 ──雄叫びにも似た、だみ声が聞こえる。


「やるぞゴブ! 世の中全て俺たちのものゴブ! ケンタウロスをやっつけろ!」と、他のゴブリンより二まわり、いや。三まわりは大きいゴブリンのがなり声だった。彼は広刃の剣と革の鎧で武装している。彼が率いるのは武器も防具もまちまちな、ろくに手入れされている気配など欠片も無い連中である。大きさはアリムルゥネの腰よりもやや大きい。それが彼らゴブリン兵士の姿だった。


 ──俺君達のつい目の先鼻の先、馬人間ケンタウロスの集団と小鬼ゴブリンの集団が向かい合っていたのだ。数にして、ゴブリン側がケンタウロスらの三倍。


 俺君はゴブリン集団に視線を流す。


 ──人間の大人よりも立派な体つき。戦闘のために生まれたといっても過言ではない、はち切れんばかりの筋肉。

 チャンピオンだ。あの生育の様子、チャンピオンゴブリンに違いあるまい。

 俺君は弟子たちに小声で伝える。

「チャンピオンがいるぞ! それにあの頭から昆布でも被ったような変なの。あれはシャーマンだ。シャーマンは頬に黄色化粧をしているのと青化粧をしている者と。全部で二体だ」


 ──「でも、ゴブリンでしょう?」


 そう。アリムルゥネとルシアの腕なら、ゴブリン程度、出会った瞬間相手が逃げ出すほどの実力差があるだろう。

 と、言うよりもルシアの魔法一撃で片がつく。しかし、それでは面白くない。俺君としてはストーンゴーレム大福二号の実力も見てみたい。


「ゴブリン、数がいると厄介だ。大福を突撃させる。混乱して散ったゴブリンをアリムルゥネは剣技で削れ、ルシアは範囲魔法を派手に食らわせろ!」

「お師様、範囲ですけど大福二号を巻き込んでもよろしいですか!」


 ───俺君は一瞬ためらいの気持ちが生まれたが、俺は即決断する。


「もちろんだ。模擬戦の手間が省ける」

「はいお師様!」

 アリムルゥネが静かに小さく返事をした。


「じゃあ、私はアリムルゥネも巻き込んでみるかな」ルシアが口の端を二ィッ、と釣り上げる。

「──止めてくださいお願いします我らが軍師ルシア様」と、はアリムルゥネであった。

「だ・か・ら・模擬線は実践に近いほうが後々私達の血と成り肉と成る。──そうだよな、ライエン様!」

「おおう! もちろんだルシア。アリムルゥネもその点踏まえて何でも試せ!」

「はーい、お師様」アリムルゥネの体から力が抜けていた。

 そして彼女は小鉄を抜く。

 美しい波紋の刀である。人ではなく魔を切る剣。正しくその系統を持つ対魔刀だ。


 ケンタウロスの三倍数いるゴブリンがが武器で鎧を叩いて打ち鳴らす。威嚇しているのであろう。

 大してケンタウロスは、先頭の三匹のみが全面に出、|《堰月刀》を持ってゴブリンの二倍の背丈を持って見下ろしていた。

 彼らに続く他のケンタウロスは、木々に隠れ、弓に矢をつがえ、それぞれゴブリンに狙いをつけているようだ。


 そして──充分に予想されていたことだが、ゴブリンのほとんどは、自分達が森からの射線に狙われていることに気づきもしない!

 そして俺君はもう一方、ケンタウロス側に視線を向ける。


「あの生意気なゴブリンを俺たちの領域から追い払うぞ! いや、目指すは殲滅だ! 野郎ども、準備は良いか!」

 と、短い弓を装備した人馬の大将ケンタウロス。


「ケンタウロスもヤル気だな」俺はリーダーらしき者の言葉を聞き、一言零す。


「ライエン様、ゴブリンの場合はそれで良いとして、敵がケンタウロスだった場合はどうする?」

「とりあえず『矢の守り』だ。お互いの実力を知ったのに、それでも引かない場合……そうだな、交渉のテーブルにつかないようなら決戦になる。ケンタウロスが相手なら、俺君と相手のリーダーと二人で一騎打ちでもいいぞ! ……ゴブリンは、話し合いにはならないだろうからな」

 俺君考えた。


「え? お師様決闘するんですか?」

「例えだ、例え」

「ライエン様の決闘、見てみたいようなきもするが……ライエン様二才十ヶ月か。良い見世物になるな」

「ちょっとルシア! ダメじゃない、そんなこと言っちゃ!」

「でもアリムルゥネも面白いと思っただろ?」

 アリムルゥネは目を伏せる。

「ほら見ろ!」ルシアは笑いに笑う。そしてそんな彼女にアリムルゥネが食いついた。

「だって、面白いかと問われたら、そんなの面白いに決まってるじゃない! お師様の雄姿が見れるだけでわたしは満足!」


---


 ここで一句。

  潜む者 今日ばかりは 潜む俺 (ライエン)

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