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09-002-03 俺君剣聖、二才九ヶ月。石材からゴーレムを作ろうとする!

 ──ん。俺君起きた。


 天は満天の星空。

 涼やかな空気があたりを流れる。

 昼間、石を切り出した場、所の近く。俺君達は夜営していた。

 明日一番で人形を組み立てて、支配の呪文をかけた後、港湾都市レンクールの街に戻るのだ! そして『三本松』のマドレスに自慢するんだもんね!


 ──うん、まだ寝よう。両脇の弟子二人はスースーと寝息を立てている。

 俺君が自分の左右を見て、おかしなところが無いかちょっとだけ目を見渡すと。


 ヒュンッ!


 ──ん? 風きり音?


 ヒュン、ヒュン!


 聞こえる! 何事!?

「──起きろ弟子ども!」

 俺君はアリムルゥネの脚を蹴り、ルシアの腕の肉を捻り上げる。


「何事です!」と、ばっと飛び起きて、アリムルゥネは起き上がりざまにライトソードに刃を生やす。

「──んだよッ!」と不機嫌そのものの顔で起きる。

「って、こいつはやばいぜライエン様! そこの人型ッ! 悪い精霊が三体だッ! アリムルゥネ、ライトソードで切り刻め!」ルシアも立ち上がってはアゾット剣を抜く。そして投擲。

 ルシアの魔力に覆われた剣は一体の岩の精の頭に刺さる。


「──ブレイク!」ルシアの指パッチン! 岩の精の頭は爆裂して仰向けに石の体が倒れ行く。粉みじんになった岩の破片と傷一つ無いアゾット剣が転がる。


 ──俺君。

 俺は石材に憑依した二体の妖物相手に魔力を練る。

 俺君は腹に赤い魔力を集め、これなら! と自信を深めるも、敵の剛腕パンチが俺君の顔面に突き刺さる!


「ぎゃああああああああ!」俺君は泣いた。それはもう泣いた。そして鼻の穴から零れる鉄分香る液体がタラリ。ロケットパンチとはなんだよ! オールレンジ攻撃? 知るか化け物め!


「許さん! 俺君剣聖!」


 俺は魔力と鼻血で赤く染まった拳を、


「うぉらぁ!」と二撃目をうとうとして距離をとっていた石の剛腕パンチに叩き付ける。


 ──俺君、相手に触れた瞬間、気合を入れて叫ぶ! 「魔力撃!」拳と拳が衝突、閃光!


 光は白から黄に変わり、石の拳に乗り移っていた岩の精は魔力を失い霧散する。


 ──あと一体!

 そう思った俺君、妖物の残り一体が相手をしているであろうアリムルゥネの姿を探す。


 岩を切ったと思った瞬間、その上にあった大岩が落下。


「痛いですぅううううう!」


 などと、『痛い』で済むはずの無いダメージを受けているはずなのに、聞こえてくるのは弟子の間抜けな声。


 ──おおお、おおおおお。

 俺君があまりのことに何も出来ず突っ立っていると、アリムルゥネを押しつぶしている石材から光が輝いた。

 ライトソードが石材を溶断する輝きである。


 ──アリムルゥネ。幾ら俺君剣聖の弟子だとしても、どこまでも人を捨てた力を得るかッ!


「はあ、重かった」


 二つに分かたれ、アリムルゥネの両脇に転がる石材。そして潰されて怪我をしているであろう俺君の弟子は──。


「アリムルゥネ、無事だったか!」俺君は涙。

「はい、アリムルゥネは大丈夫です!」と、埃を払いながら笑みで俺君に答えてくれたのだ。

 ──てっきり額が割れている者と見たが……逆に割れたのは岩であったというオチか! ドンだけ頑丈なんだアリムルゥネ!


 俺君閃くピッカリーン! ああ、これぞ練気法!

 しまった俺君、もっとしっかり今のアリムルゥネを観察しておけば!

 くぅう! 俺君ビックチャンスをみすみす見逃す! くぅ、俺君痛恨の一撃、ああ残念!


 ◇


 アリムルゥネが焚き火を、ルシアがライトの魔法であたりを照らし出す。

 俺君は周囲を見わたす。そして愕然とした。


 ──おおおおお、俺君とアリムルゥネ、いや、ほぼ俺君だけで切り出した石材が見事、粉微塵に。


 俺君、肩を落とすとはこのことだッ!


 ──また初めからだぜ! うぉおおおお、がっかりだよ!!

 しくしく。また石切か……うん、俺君頑張る。


 ◇


 次の日遅く。


「やったぜ!」俺君は右拳を天に突き上げる。

 髪も体も土埃で真っ黒だ。


 ──見よ!


 俺君の、そしてみんなの前に新たな石人形が!

 俺君は名前をつけた。


『ロックゴーレム大福二号』


 どうだ、強そうだろう!

 ちなみにこの石人形の中に餡子は入っていない。

 獣型にしようか、との意見もあり、俺君も迷ったのだが、結局俺君は人型を選んだのだッ!


 ──何事も基本に忠実に、である。


「ライエン様、また『大福』なのか?」

「当然だ! おめでたいだろ? そうだろ?」

「ああ、お師様の頭の中がですね、わかります。ちなみに私は『グレート・ギガンティック・アトラス・スーパーパワー』が良いと思います」

 ルシアが溜息をつく。

「アリムルゥネ。お前がそんな名前をつけようとするから、ライエン様が『大福』に拘るのかも知れないぜ?」

「え?」アリムルゥネがルシアを振り向き無言。

「いや、別になんでもない。『大福二号』! よろしくな!」

 と、笑みを貼り付けたルシアが『大福二号』の胸をペシペシ叩いていた。


 背丈、およそ三メルテ。ちょっとした巨人である。


「『大福二号』! 一緒に頑張ろうな!」


 俺君も声をかける。『大福二号』からの返事はもちろん無い。だが、俺には『大福二号』の雄姿が浮かぶ。

 うん、頑張れ、大福二号。うん頑張れ弟子たち。


 ……そして俺君!


---


 ここで一句。


 石の像 刻んだあの日 星月夜 (ライエン)


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