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09-002-02 俺君剣聖、二才九ヶ月。北の岩場へ石材取りにやってきた!



 朝、港湾都市レンクールを出発し、お日様は中天。

 西方、松の茂みを挟んだ浜からの潮風。俺達三人と二匹はルシアの空調魔法で快適だ。

 ルシア、便利な魔法を本当にありがとう。

 ロシナンとスラぶーの手綱もルシアが引き、俺君達は黒い街道を歩く。

 今日はいつもと変わった事がある。


 そう、俺君が運動のために自分で歩いているのだ!

 だから、歩みはとてもゆっくり! 俺君、みんなの足を引っ張りまくり。

 途中から北への街道はなだらかな丘を登り、東のジャングルの木々は薄くなっていく。

西の海は見えなくなり、今では西を切りたった岩壁が占める。風は西風、海の上を渡って吹いていた。

 北に向かう街道。

 俺達は歩く。そして大きな地形の変化を見る。


 ──目的地に着いた。

 俺たちの西、右手の先に凄まじく大きな岩がせり出し砂浜を横切り、断崖となって視界を遮っている。

 この絶壁。ここから石を切り出そうというのである。


「いやー、時間掛かったな。もう昼過ぎだぜ。歩き通しでライエン様は疲れてないか?」

「大丈夫だ!」 うん、この程度の徒歩。何の問題も無い。

「お師様、弱音を吐かずによく歩かれましたね」

「大丈夫だ!」うん、今日はアリムルゥネの背中を借りなかった。俺としてはまぁまぁである。欲を言えば、俺君の歩みの速さに皆が会わせるのではなく、皆の歩みの速さに俺君が追いつく展開が良かった。


 ──とはいえ。今日は今日の結果に満足しよう。うん、俺君頑張った!


「ライエン様、アリムルゥネ、せっかくだから二人とも、習得途中の風の刃で石を切り出してみないか?」

「それは良いな!」ルシアの提案に俺は乗る。「アリムルゥネ?」

「あー、はい、わたしも頑張ります! ……魔力上手く練れるかな」


 ルシアが頷く。

「あとは大きさだな、同じ大きさで切り出して、細かな形は私が魔法で加工するとしようと思う。ライエン様、それで良いですか? もっとも、細かい部品までライエン様やアリムルゥネが切り出しますか?」


 ──俺君はちょっとだけ考える。


 もう昼過ぎ。夕方までには作業を終わりたい。と、なると。


「細かいところはルシア頼む! 夕方までには切り出しを全て済ませたい!」

「そうですね、ライトで照らしてまで石工の真似をするとなると、いらぬ事故を起すかもしれません。わたしもルシアに意見に賛成します」

 俺君と弟子両名の意見が一致した。よし! やるぞ!!


「よし、みんなでゴーレム二号を造るのだッ!」


 俺君は絶壁を前に座り込む。


「アリムルゥネ、俺君を見ろ!」

「はい!」

 俺君は弟子の元気な返事に頷いて、作業を始める。

 そして、俺君は自分自身が生み出した魔力の流れ、赤い糸を捜す。見つけた。そしてそれを両手の先に分ける。二分した。

 俺君は赤い筋を絶壁に埋め込む。


 ──横に二本の切り込み筋が出来た。


 アリムルゥネも俺君を真似しているようだ。

 俺君は横の弟子を見る。


「ぐぬぬぬぬぬ、こんなに真剣になるのは以前のコップ勝負以来です!」


 弟子の眉間に皺が見える。そして体には……赤い筋などどこにも見られない!


「うーんと、ぐぬうううううううううう!」アリムルゥネ。眉間の血管が切れそうである。


 ──ぐぅううううううう! と、努力を見せて、アリムルゥネは真後ろへ大の字に倒れた。


「ぐはあ、休憩です……魔法難しすぎます……」と、言葉を残し、地面に寝転んで涼むに至る。

「なんだ、早くも勝負を投げるのかよアリムルゥネ」

「だってえ!」


 弟子二人がじゃれている。

 

 ──で。

 残された俺。

 次に俺君は縦に平行な線を赤い糸を紡いで用意した。そしてそれを──。


「ゆけ、魔力。ゆけ、風の真空刃!」


 絶壁に変化が起こった。縦に二本の切り込み筋が出来た。

 俺君は表面の裏側に風を通す。

 すると不思議なことに、岩が浮かび上がってくる。奥の面が切断されたためだ。

 そして、その岩塊を俺君は自分の足元まで持ってくる。


「ぐお、ぐぐぐぐぐ!」ちょっと多めに切りすぎか? 欲張りすぎたが、なんだこの程度!

「浮かべ、ブロック!」


 俺君もアリムルゥネの隣で大の字となり仰向けに倒れる。俺君は体全体で息をした。


「俺君頑張ったぞアリムルゥネ!」

「は、お師様は凄いです! 風も自在に操られるのですね!」

 

 そう。俺君が崖から切り出したもの。

 それは長方形のブロックだ。表面を平らに整形すれば、綺麗なブロックとなるだろう。


「ライエン様、石材の表面加工は私に任せてくれ」と、ルシア。

「アリムルゥネ、そうガッカリすること無いぜ。これからゆっくりと覚えていくと良いからさ?」

「しくしく、どうして出来るのかな、こんなに難しいのに!


 切り出したブロックの表面をルシア同じく風の魔法で平らに削ってゆく。


 俺君疲れた。

 が、俺君頑張る。

 魔力を練っては岩壁に風の魔法を叩きつけ、石材をどんどん……いや、ノロノロと切り出していく。


 そして西の空が赤くなり始めた頃。俺君達──実質俺君とルシアは──石材の切り出しと表面加工を終えたのであった。


---


 ここで一句。

  汗流る 魂祈り 石人形 (ライエン)


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