01-004-02 俺君剣聖、弟子と魔法の修行を始める?
魔法の修行。
頭より体で覚えろ、はともかく、一度しか教えていないのに二度目で失敗すると「教えただろ?」と怒るのはどうなんだ! 効率低下の原因にでもなっているとしか、思えないぞ。でも、全てのルシアの行為は俺を思ってのことかもしれない。俺の思い込みが強いだけかもしれないということだ。だって、俺君三ヶ月。四の五の言う前に俺が幼すぎるだけとも思えるから。
しかし、今夜も俺といえば、
「ぎゃー!」
今夜も目覚め、お締めを濡らし夜泣きした。ああ哀れ。俺の剣聖マント。かの一品、君●の●衣と並ぶ、実に高級なお締めである。
隣の添い寝してくれていたアリムルゥネが起きる。
空の揺りかご。いつの間にか、俺はアリムルゥネに抱えられ、寝台に移動していたらしい。
添い寝をしてくれたアリムルゥネ。
その呼吸は、以前のへんてこな呼吸であった。
それはまさに、俺に基礎を教えてくれる先生のよう。
練気。体を鍛え、心を落ち着かせ。もしくは体の外に開放し。
剣に敵うとも劣らない技であるのだ。
そして、別の日。
近くで花の香りがする。今夜も変わらずそうだった。
俺はいつもの揺りかごではなく、柔らかい寝台の上で黒のルシアの柔らかくも暖かい肌に包まれながら、ウトウトとしていたのだ
──くーーーーーー……ふーー……くーーーーーー……ふーー……。
寝るしか用の無い、俺に気づいた事がある。なにかって? それはルシアのメチャクチャな呼吸だった。
ルシアの息、変じゃないか?
と思っても、俺もいつの間にかルシアと同じ呼吸を真似し、奇妙な呼吸を寝ているときも、起きている時でさえ、このときのルシア そっくりの呼吸をするようになっていた。
──強制力。ルシアの強制力が働いている。恐ろしい子、ルシア。まさか寝ながら魔道を使うとは。俺君、気がつくと同時に頭がクリアになる。脳内の知恵の泉に魔力がとくとくと流れ込む。
俺の腹に力が入る。腹で、鼻で吸い、息を吐く。
──真似してみて、わかる事がある。何が違うのかと言うと、続けるたびに体の中の気脈が頭から鳩尾まで回り、尾てい骨に至り、物凄い熱量を生み出し始める。熱いからと、この熱量を体内に移動させ続ける。ルシアの魔力は行き先を迷う俺の魔力を導く。すると頭は次第にクリアなものへと変わって来た。そんな日々を何日も続ける。
──すると。
日々の呼吸を不自然な呼吸に切り替える事により、だんだんと自我が研ぎ澄まされてくるのである。意識は混濁から、透き通ったものとなった。
そう。俺は自力で二人の呼吸法を盗んだのだのである。ルシアからは魔法、アリムルゥネからは練気の。どちらも俺のラーニングの力であった。子煩悩なルシアのヒントと導き、、そして何も隠さない無邪気なとアリムルゥネの二人が企む俺・再生計画。その今だ全貌の見えぬ英才教育のおかげなのだろう。二人には感謝しかない。なぜなら、結果として俺は魔法や練気を身に付けつつあるのだから。
──そうして俺君三ヶ月。俺は首が座る前に、魔法使いと武芸者の呼吸を盗んだのである。
でも机の上の本が読みたいな。
机の上の赤い本。
俺が一目目をやると、強烈な睡魔が襲ってきた。
ああ、眠い……寝よ寝よ。
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ここで一句
放置系 寝ているだけで 子は育つ (ライエン)




