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01-004-01 俺君剣聖、だけど欲張りな俺は魔法の修行を始めたい

「ぎゃー!(魔法の本には手が届かないぜクソ!」


 俺は、仕方が無いので気を練る事にした。気と魔力の練成は似て異なるものだという。少なくとも、俺は師匠を始め、同じ事を何人かの魔法使いに聞いた事がある。俺は魔法にも興味があったが、師匠を一時でも早く越える事に精一杯で。その中で出来た事といえば、剣をひたすらに振ることだけであった。いや、違うな。俺は修行の途中で剣気に酔い、魔力の修行をおろそかにしてしまったのだ。……惜しい事をしたものだ。


『この馬鹿弟子があ!』

「……ぎゃー!(ひっつ、師匠!)」


 夜中に俺は、夢見心地で目が覚めた。懐かしい声だった。俺はいつも、そうやって起こられ、鍛えられてきた。


 今の声は空耳だろうか。師匠の怒鳴り顔。ああ、幻聴ですね、俺君寝不足ですか、わかります。


 ──そう、昔師匠一人でし一人で世界を旅した頃の夢である。


 もう過ぎたことだ。こんな体に成ろうとも、俺も剣聖。昨日より前に。昨日よりも強く。昨日よりも魂を鍛えるべし! ほら、ルシアが火の消えた燭台を持って来た。ほら、俺にも見えなかった魔力の流れが見え……るはずも無い。て、え!? それは聞き慣れない言葉を聞いたときだ。


「火の精よ、火種を分けろや呆けナスが」


 ──シュボッ。恐らく精霊語だろうが、酷いものである。パワハラものだ。


 蝋燭の芯に火がついた。

 驚く。ルシアの掲げる燭台だ。俺には魔素の流れがはっきり見えた!

 ルシアの目線、それから右手、そして燭台の上の蝋燭の先に魔力が集ったところを!

 そして、一瞬だけ爆発的に燭代が輝いた。残りには中央で揺れる火種が一つ。そう。爆発じゃないよ? 火の粉も飛びちっていないし。


「ライエン様? また起きたのかよ。だんだん睡眠時間が長くなってきたとはいえ、持って三から五時間とはな」


 ルシアが俺を見る。銀髪で彫が深い麗貌。ちらりと目線、深い溜息。


 ──そして、左眼の中にハートを残し、微笑む。


「それにしても……今の私の魔力の流れ、盗ったな? ばれてるぜ、ライエン様。でも自力でそこまで辿り着くなんてな。まだ三月だぞ。凄いぜ。ライエン様は凄い才能だ、」


 ルシアはなんでもわかっている、とでも言うように首を前後に何度も振り、


「では、このような芸はどうだ? 魔力の流れが見えるか?」


 ルシアは右手を燭台の上の炎を通過させ、


「来やがれ光の精霊よ……」


 ルシアの精霊語(聞き慣れない言葉)が響く。俺はまん丸お目目にになってそれを見届けた。

 そして、燭台を置いたルシアの右手の上に、光の珠が輝き出す。純粋な白い光。暖かくも無く、冷たくも無い。

 光の精霊球だ。

 俺には精霊の言葉はわからない。コレも修行してみようかな、などと考える。ダークエルフで魔法に長けるルシアは良い師匠になってくれるだろう。


 視線で集中し、息を吸いながら耳も、鼻も。そう、五感の全てを頭に浮かんだ暗闇の中の光の一点に集中して、力を練る。弱々しも優しい木漏れ日のような光。それを輝くように──!


 ──ピッカー! 

 

「ぎゃ!(なに!?)」


 ──なんだなんだ!? 稲妻ピカピカエレキテルネズミの悪戯か!?


「ぎゃー!(なんともなさそうだが……」


 動揺しまくりの俺の思いは無視されて、俺はルシアの胸に抱っこされた。左右から挟まれて潰される俺の顔。ヘブンの中で、抗議の声を上げる俺。ああ、観音様観音様……。若返る……。


「ふふふ、見たぞ? 確かに見たからなライエン様。今、魔力を使ったよな?」


 ──どうしてばれてるんだよ! もしかして魔法使いは全員他人の魔力の流れがわかるものなの!? 聞いて無いし知らないよ!!

 畜生それこそ俺の不勉強! 知らないなんて、知っているよりも無知が、自分の無知が怖い。で、対する弟子は──。

 顔を見た。眼帯の右目が白く淡くぼおっと光っている。


「なんだ、邪気眼の見立て違いか。ライエン様が魔法なんて使えるわけがないものな。アハハ、ありえない話だぜ」


 でも、ルシアはニンマリと。


 ──そんなルシアの顔を見て一つ。どうして怯える必要がある。


「ぎゃー!(俺も魔法使いたい!)」

「あー?、なんだ、お締めかよ。はいはい、わかりましたよ、っと!」

「ぎゃぎゃー!」


 ──ち・が・う! 違うんだ、どこかズレれいるのかルシア、それともお得意の悪戯か! ほら、ルシアの横顔を見ろ! あれは何か企んでる目だ! そうだろ?

 

「ぶっ! ライエン様って、可愛い」


 ほら、堪えきれずにルシアは口から思い笑い。口元だけが綻んでいる! 決して可愛い野一言で許されることではないはずだ!

 ……だよな!?


「ぎゃー! (畜生め! こうなったらルシアの魔力もアリムルゥネの気も根こそぎ習得してやる!)」


 俺は、汚れていたお締めを取って、天花粉をお尻につけられているときには睡魔のヘブンな気持ちに包まれて、こくりこくりと始めていた。



 とはいえ、この日以来、ルシアがたまに俺の目の前で魔法を使ってくれることが多くなった。倣うより、見て覚えろ。そう感じなくも無い。

 

──


ここで一句。


魔光でなく蝋燭の灯 夜な夜なと。その違いにこそ極意あり (散文詩 ライエン) 


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