志し半ばで生まれ変わった刀の使い手 take2
「こ、こいつ!」
ああ。まだ足らない。
ビビりながらも警官が威嚇射撃して来たが、当たらないと知っていれば、どうも思う事はない。
俺は無造作に刀を振るうと警官の腕を斬り落とす。
血飛沫が宙に舞い、俺の顔を濡らす。
血が持つ独特の味に舌舐めずりしながら、悲鳴すら上げられない警官を蹴る。
蹴られた事で意識がはっきりしたのか、警官の顔が次第に青ざめて行く。
ああ。そうだ。その表情が見たかったんだ。
ほら、早く悲鳴の一つでも上げろよな?
だが、その警官は痛みに叫びを上げそうな口を閉ざし、堪えやがった。
・・・ウゼェ。
俺は恐怖する人間が見たかったのに。
「見付けたぞ、贋作」
その声に俺は舌打ちする。
まだ奴には勝てない。
ここは逃げる選択を選ぶべきところだ。
ああ。もっと血を獲なければ・・・。
ーーー
ーー
ー
贋作の奴はこのまま逃げる気らしいな。
俺は自身の分身である深紅の刀身を持つ刀を召喚する。
贋作の刃はまだ領域に到達していない。
仕留めるのならば、今しかないだろう。
これ以上、時を与えれば、付喪神である俺も持ち手を得なければならなくなる。
だが、俺を持つ資格のある奴はもう過去の人間だ。
それに時代が乱世と云う都合の良さも後押ししたからな。
俺は赤い着物を翻して奴に向かって跳ぶ。
狙うはこの時代に作られた贋作の村正だ。
だが、奴は俺よりも素早く跳び、俺が斬り掛かるよりも早くビルを飛び越えて消える。
贋作とは云えども銘柄付きは本当に厄介だ。
「・・・」
俺はしばし、考え込んでから傍で虫の息の人間を見る。
確か、警官と呼ばれる役職の人間だったな。
このままではいずれ、出血死するだろう。
このまま死なせてやった方がこの人間の為だろう。
俺は贋作を追おうと前進するーーと、その足を人間に掴まれた。
俺は深紅に輝く瞳でその人間を見下ろす。
死に体にしてはなかなかの目付きだ。
その瞳に写るのは・・・信念か。
ふむ。面白い。
「人間。俺に触れている事が何を意味するか解るか?」
そいつは答えなかったが、次第に冷たくなり、死に掛けているとは思えない真っ直ぐな瞳で俺を睨む。
「俺に触れる事は地獄だ。お前は地獄に進む覚悟があるか?」
俺の言葉に人間が頷く。
最後まで聞かずに事切れたか・・・だが、頷いて見えたのは事実だ。
「・・・良いだろう。お前を妖刀村正の新たな主として試してやろう」
俺はそう告げると刀から血液を滴らせ、人間の口にそれを流し込む。
「ーーぎっ!?」
「今まで斬ったあやかしの血を注いだ。苦しいかも知れんが、これから進む地獄に比べれば、一時の事だ」
俺はそう告げると無理矢理に蘇生され、もがき苦しむ人間を眺めて笑った。