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第96話 雪と氷の洞窟

 洞窟の中は凍り付き岩の亀裂から雪が入り込み、生き物の侵入を拒んでいるようだったが、その氷に差し込んだ光が反射し幻想的な光景になっていた。


 その光景を見た、ルディール達はその美しさに少し見入ってしまった。


「うわ~。ルーちゃんこの洞窟、綺麗だね」


「ミーナの方が綺麗じゃぞとか言ってやろうか?」


「遠慮します!」


「いつもの事ですが、緊張感がありませんわ」


「力み過ぎて動けん様になるよりええじゃろ、わらわもミューラッカも索敵をかけておるしのう」


 ルディールがそう言うと、ミューラッカがこの洞窟は守護竜の巣の様な物だからそこまで強い魔物などは居ないと教えてくれた。


「それにこの辺りは氷都の近くだからな、そうそう強敵は出んよ」


「そもそもミューラッカが苦戦するような魔物がでるのか?」


「いや、いないな」


 ミューラッカがそう言うと、雪が舞い上がり、人に少し似た腕の大きく下半身が雪と繋がったモノが数匹現れ、襲いかかってきた。


「これはなんじゃ?」


「フロストジャックという精霊のなり損ないの魔物だ、この国なら何処にでもいるぞ」


「なるほどのー。意思疎通は出来ぬか」


 ルディールがそう言って攻撃しようとした瞬間にはミューラッカが氷らせており、指をパチンとならすと全てのフロストジャックは崩れ落ちた。


「時間の無駄だな」


「いや、楽でいいんじゃが……まぁいいか」


「なんだ、戦いたかったのか?運が良ければスノードラゴンか大氷蛇かヒョウジキ辺りが出てくるだろうよ」


 ルディールはその魔物? に心当たりが無かったので頭に?マークを浮かべていると、ミーナとセニアはそれらについて心当たりがあった様で大きく吹き出した。


「ぶふっ!今、ミューラッカ様が言ったの全部Sランク上位で受けられる魔物ですよね!?」


「さっ最近、学校で習いました!二匹でも街にでたら滅ぶって!」


「それは盛りすぎだ、魔物といえ生物。自分が住みやすい所にしか行かんよ、連中の住むところは山だ。街には出ぬし、出た所で強みは発揮できまい」


「ううっ流石現地の人だ詳しい……けどここに出るんだ……」


「自慢だが、私がお前達の頃には一人で倒していたぞ。励めよルディールの弟子」


「ミーナ頑張ってね……応援してるよ」


「セニアはソアレさんの弟子でしょ!セニアも頑張るんだよ」


 ミーナがそう言うとセニアは公爵家の娘にそこまで戦力はいらないと言ったが、ミーナはそれを言い出したら私は村娘なんですけど! と話しているとミューラッカが愉快そうに笑い私は吹雪の国の元国王だが? と二人に言った。


 そう言われてしまったので、ミーナもセニアも精進しますとミューラッカに言った。


 その光景をミューラッカを知る娘のノーティアやアバランチの精鋭達が不思議そうに見ていたので、ルディールはあの気さくな隊長に話しかけた。


「隊長殿、どうかしたか?」


「いえ、ミューラッカ様が今までで一番機嫌良さそうなので、今言えばボーナスカットされずにすむかと思いましてね」


「もしかして、普段は機嫌悪そうに仕事してるタイプか?」


「昔から知っていますが、まぁ気難しいお人ですからね~。魔法使い殿、ミューラッカ様のご機嫌をよくする魔法でも使いましたか?」


 などと話しているとその話が聞こえていたミューラッカが隊長に次は給料が飛ぶのとクビのどちらがいい?と脅していた。


 隊長がやれやれと言うように首を左右に振り肩をすくめていると、ノーティアがルディールに恐る恐る話しかけ、いつもはルディールの言うように機嫌悪そうに仕事をしているタイプだといった。


「なるほどのう……ノーティア様はミーナ達と同い年じゃったか?」


「はい、お話を聞いている限りでは同じだと思います。僕……いえ私も今年からスノーベインの学校に通い始めたので」


 話し始めたのでルディールは先ほどミューラッカが言ったスノードラゴンなどについて尋ねるとノーティアも知っていたらしくその事について詳しく教えてくれた。


 スノードラゴンは青白いドラゴンで全てを氷らす吹雪のドラゴンだと話し、大氷蛇は雪の上を音も無く移動するとても大きい白い蛇と説明し、最後のヒョウジキは美しく大きな狐の魔物で魔法を使い鋭く尖った槍の様な氷を飛ばしたり雪崩を呼ぶと教えてくれた。


「ほー守護竜の事が片づいたら見てみたいものじゃな」


「普通は遭遇したくない魔物ですけど……さすがお母様と戦える魔法使い様ですね」


「戦わんわい見るだけで十分じゃな。そこまで戦闘狂ではないのじゃ」


 そう話すルディールをノーティアは見ておらず、ミーナとセニアと楽しげに話すミューラッカを見つめていた。


(……余計な事は聞かぬ方がええじゃろな。どこの家でも色々とあるじゃろうし、他人がおいそれと口に出すものではないからのう)


 進んで行くと、時折フロストジャックの様な比較的弱めな魔物が出て来たが問題は無く、ルディール達は守護竜を目指した。


「このまま何も起こらずに竜まで行けるといいのですけれど、先ほど言われた魔物が出ると大変ですわね」


 順調に進みすぎたので逆に怖くなりスナップがそう呟いた。


「どんな能力があるかは知らぬが、出た所でと言うのはあるのう。ミューラッカが一人で全部倒しそうじゃしな。わらわもお主もおるしのう」


「ルディール様やミューラッカ様のくくりに、わたくしを入れないでもらえると助かりますわ。アバランチの隊長様にも余裕で負けますわよ」


 ルディールとスナップが話しているとミューラッカがスナップを上から下まで眺め、少し考えてから、案外善戦するかもしれんぞ?一度、隊長と殺り合ってみるか? と聞いたがスナップは丁寧に断った。


「ルディール様のメイドという立ち位置なのでわたくしとスイベルはもう少し強くなった方が良いような気もしますわ」


「その辺りはどうなんじゃ?というかそこまで弱い訳ではあるまい」


 周りにミューラッカ達もいるので、エアエデンに関係する事などは話せなかったがスナップ達はほとんど人と変わりないので経験を積めば強くなれる可能性もあると伝えた。


「わたくし達の戦闘はデータによる所も多いので経験を積んでもっと強くなりますわ!スノードラゴンとか大氷蛇とかヒョウジキとか言うのが来たらわたくしがお相手して差し上げますわ」


 スナップはそう言ってシャドーボクシングをするように左手をシュッシュッと何回か空を切った。




 しばらく進んでいると洞窟の中に大きな亀裂があり、その上を巨大な氷の橋が架かっており、渡っているとルディールがスナップに話しかけた。


「……そこのフラグメイド。出番じゃぞ」


「あのー、ルディール様……確かに言いましたけど、どうして三匹まとめて出てくるんですの!」


 橋の向こうにはスノードラゴンが待ち構え、橋の上には大氷蛇が見下ろし、後ろからは追跡するようにヒョウジキが音も無く静かに現れ、ルディール達は囲まれ道を塞がれた。


「あれじゃな神様がスナップの願いを叶えてくれたんじゃろ。一匹はわらわ達が受け持つが残りは任せたぞ」


「もっと他の願いを叶えて欲しかったですわ……と言うか新手のパワハラですわ!どう考えても無理ですわ!」


 ルディール達が戦闘態勢に入った直後に、スノードラゴンら三匹もお互いを認識し、三竦み状態となり一触即発の状態を作り出した。


「ミューラッカよ、どうする?」


「そこまで強い魔物ではない。すぐに仕留める」


 ミューラッカの慢心が引き金となり、三匹が一斉に戦闘を始めルディールが橋の亀裂に気づきマズいと思った瞬間にはヒョウジキが雪崩を呼びルディール達は巻き込まれ洞窟の亀裂に飲み込まれていった。




 雪崩が止まり、飲み込まれはしたが、ルディールはすぐに目を覚まし叫んだ。


「ミーナ!セニア!スナップ!スイベル!どこじゃ!」


 その声にすぐに反応する者はいなかったが、一緒に雪崩に飲み込まれたスノードラゴンがルディールに襲いかかってきた!


「そこをどけーー!」


 そう叫び冷静さを無くしているルディールはスノードラゴンを本気で蹴り飛ばし一撃で絶命させた。


 そしてルディールの叫びに反応する様に雪崩によって運ばれた雪がボコッと盛り上がり、スナップが顔を出した。


「スナップ!無事じゃったか!」


「ルディール様、とりあえず落ち着くですわ。無意識でしょうけど雪崩に巻き込まれた瞬間にルディール様が皆様に防壁を張ったので、絶対と言って良いぐらい無事ですわよ」


 その言葉でルディールは少し冷静さを取り戻し、探知すると近くに数人埋まっており、シャドーステッチで雪の中から引き上げた。


 中から出て来たのは、セニアとノーティアだった、二人とも怪我はなくルディールがホッとしている間に目を覚ました。


「後はミーナ達じゃが大丈夫かのう……」


「そこまで不安そうにしなくても大丈夫ですわ、今スイベルと連絡が取れたので確認しましたが、全員怪我も無く無事だそうですよ。こことは距離が離れているみたいですけどね」


 スナップがそう言うとルディールは大きく息を吐き出した。


「あー良かったわ……飲み込まれた時どうしようかと思ったわい」


 ルディールがそう言ってセニアの手を握り良かった良かったと言って上下に手を振ってるいる間に、スナップはスイベルがミューラッカから言付かった言葉を伝えた。


「ノーティア様、ミューラッカ様から伝言ですわ。お前が案内しルディール達を守護竜の所まで連れて来いとの事ですわ」


「お母様も無事だったんですね……分かりました」


 ノーティアは体についた雪を払い立ち上がり周りを見渡し行き先を探した。


「ノーティア様は方向は分かるのか?」


「ええ、だいたいですが魔力の濃い方向に行けば大丈夫のはずです。というか無理に様を付けなくて大丈夫ですよ」


「お主のかーちゃんが怖いからのう」


 ルディールは冗談を言ったつもりだったがノーティアは、ええ本当に怖い人ですよと苦笑いをするだけだった。


 ルディールは少し思う所もあったが口に出さず、ルディールが先頭を歩き、セニア、ノーティア、最後尾にスナップという列で少し遠くなった目的地に向けてまた歩き出した。

次回の更新はきっと明日です。


最近、一日のPVが3500辺りで落ち着き初めました!前はたまにしか3000超えなかったのに……読んでくれてる皆様方ありがとうございます!誤字脱字報告もありがとうございます!

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