第91話 また面倒事
「いやいやいやいや!ルーちゃん!どうしてあの子も憲兵さんに引き渡すの!」
「そうですよ!ルディールさん!追いかけられてましたよ!」
先ほど男達に追いかけられ両方とりあえず憲兵さんに引き渡したルディールは、抗議の声を上げるミーナとセニアに真面目に説明した。
「ミーナ、セニア、覚えておきなさい。物事というものは一つの方向で捉えては駄目ですよ。今の人達ももしかしたら少女の方がスリと言う可能性もあるでしょう?今のように善悪の判断がつかない状況なら人に任せなさい」
「では、ルディール様。今のをいつものでどうぞですわ」
「うむ、そろそろルディールさんのキャパシティがオーバーしそうじゃから憲兵さんに頼んだ!わらわは旅行に来たのであって面倒事に巻き込まれにきた訳ではない!」
「ルーちゃん!本当に悪い人に追いかけられてたらどうすの!」
「その時の為の憲兵さんじゃ、と言うかあの男達も確信はないがそこそこの身分の人間じゃったぞ。髪や髭はちゃんと整えてあったしあれだけ急いでおったのに通行人を躱しておったから大丈夫じゃろ」
「ルディールさん……よく見てますね」
「うむ、リージュと初めて会った時に学んだからのう。もっと周りを見ると言う事を……まぁ今となっては良い思い出なんじゃが……」
「そういえばルーちゃん逃げようとしてたね……」
そう話しているとちょうど先ほどぶつかった辺りまで戻って来た。
スナップはぶつかられた反動で辛い食べ物を落としてしまったので他のを買おうと言う話になったのだが、その辛い食べ物を売っていた店主がスナップが落としたの見ていたので、厚意でその辛いのをまた持って来て手渡した。
ルディール達は頭をさげ礼を言ったが当の本人は泣きそうだった。
「ありがたいのですけど……せっかくの厚意ですから無駄に出来ませんし、どうしましょう……」
ちょうど四つだったので、ルディールはため息を付き一つもらって頑張って食べると、ミーナとセニアも続きあまりの辛さに全員、涙目になりながら頬張った。
「これ絶対にここまで辛くない方が美味しいと思うんじゃが……」
「味は良いですけど……辛いですわ……」
ルディールとスナップは会話出来る余裕があったが、ミーナとセニアはあまりの辛さに言葉を忘れ泣きながら食べていたが、周り人達から見ると見慣れた光景だった様で笑われながら見られていた。
日が暮れるまで街の中を見て回り新聞や小物などを買って宿に戻った。
宿に戻り夕ご飯とお風呂を済ませルディールはゆっくり本を読んでいると、スナップが話しかけきて来た。
「さて、ルディール様。どんな感じですの?」
「ん?売ってる本や地理的な物を見てもわらわの太陽と月の指輪には関係ありそうじゃな。まぁ明日、図書館に行って詳しく調べればそれなりに出て来そうな感じじゃの」
「ちがいますわ!そんなルディール様の世界の事はどうでも良いですわ!ミーナ様とセニア様がチョメチョメしてるかどうかが聞きたいのですわ!ルディール様も交ざりましょうですわ!」
と意味不明な事を言い出したのでルディールはパタンと本を閉じ。本が壊れない様に防御魔法をかけスナップの脳天に強めに振り落とした。
その衝撃は凄まじく宿全体が一瞬だが揺れ、スナップも体を硬質化させとっさにガードしたがダメージは通った様でうずくまり頭を押さえ涙目になった。
「つうぅぅぅ……ルディール様。ごめんなさいですわ……無言プラスその真っ赤な瞳で怒るのは控えてもらえると助かりますわ」
「仮にあの二人がそういう関係でも見る目が変わる訳でもないし、興味本位でそういうのは言わぬ事。確かに二人の反応は面白いから、からかうのは分かるがのう」
「ご自分の事で怒った訳ではないんですのね」
「うむ、こっちの世界も好きじゃからのう。っと、一応お主には伝えておくが昼間の白髪の追いかけられていた少女がおったじゃろ?」
「いつっっ、何か面白い情報でましたか?」
「城のお偉いさんの娘くさいのう……牢屋でシャドーステッチを解除した時にシャドーラットを数匹放っておいて見ておったが、男達も無事に釈放されて城に戻った感じじゃのう」
「そうでした、何かしたな?とは思いましたけど……なるほどですわ」
「まぁ聴覚まで共有できるわけでも無いからなんとなくの雰囲気しか分からぬがのう」
「……どうします?明日にでも宿を変えますの?」
「う~む、セニアが宿代を払ってくれたからのう……」
そう言って少し悩んでいるとスナップが、では皆さんと相談しましょうと提案し、隣の部屋にミーナとセニアを呼びに行った。
二人はまだ起きて話をしていた様ですぐにルディール達の部屋に来た。
「ルーちゃんもスナップさんもさっき地震なかった?ちょっと揺れたよね?」
「うむ、冥土に隕石でも落ちたんじゃろ」
その言葉にスナップはビクッ反応し頭をさすったので、ミーナとセニアが不思議そうにその光景を見ていた。
「それで相談なんじゃが……昼間に憲兵さんに突き出した少女の事じゃ」
そう話し、簡単に魔法で中の様子を確認した事を伝え、あの少女がお偉いさんの娘っぽい事も伝えた。
「まぁ何も無いとは思うから、このままで良いとは思うが少し用心して別のホテルに行くのもありじゃな~という相談じゃな。セニアに払ってもらっておるしのう」
「私は気にしませんが、他の宿が空いてないと少し大変なので別の所見つけてから移動しましょう」
「ルーちゃん……ちゃんとあの子の事を気にかけていたんだね……」
ルディールはセニアに礼をいいもう少しあの少女の事や明日の予定を話し合いその日は過ぎて言った。
次の日は朝から別の宿を探すとセニアのおかげか、図書館の近くの宿が空いていたのでそこの宿に泊まると言う事を伝え、今の宿からバイコーンを連れてすぐに移った。
その宿は大部屋が空いていたので一部屋にベッドが四つあり全員が同じ部屋に泊まれるので、何かあってもすぐに対応できるのでルディールは少し安心した。
「さてと、これでたぶんゆっくりできるのかのう?わらわは図書館に行くがお主達はどうする?」
ルディールが三人に聞くとルディールの調べ物を手伝うと言ってくれたので礼を言い、全員で図書館に向かうことになった。
「ルーちゃん、どんな本を調べたらいいの?」
「この国の歴史と太陽と月に関する事じゃな。一人ぼっちの獣の王様の様な童話のような本でもあったら教えてくれると助かるのう」
ルディールがそう言うと全員が頷き思い思いの場所に、本を探しにいったのだが、太陽や月に関する本の数が異常に多く皆を悩ませた。
「ありすぎる情報は無いのと同じと言う事ですわね……ルディール様どうします?」
「まぁ、今日明日帰る訳では無いからのう、ゆっくりと調べるかのう」
「では、わたくし達もお手伝いしますわ。どういう記述をお調べしますの?」
「歴史に関係しそうなのと、指輪に関する事と、月と太陽に関する魔物の表記があればよいが……歴史的には大昔に大戦があった辺りで良いかもしれぬ」
それから四人で時間を忘れ調べ始めると、太陽と月に関する魔物の事などが書いてある古い本もあり、その中にはやはり太陽と月の指輪の持ち主によく似た挿絵があった。
その辺りを詳しく読むと、大昔の大戦の時に現れ吹雪の国に日の暖かさと夜の安らぎを与えて守護竜にその力を授けたと書いてあった。
(う~ん……時代的には双子の聖女がいた辺りじゃのう……この守護竜は分からぬが力を授けた方は指輪の持ち主くさいのう……というかほぼ確定じゃろうな)
そうやって色々と考え紙に書き写しているとふと二つの視線がこちらを見ていたのでそちらを向くとミーナとセニアがルディール様の方を見ていて少しだけ赤くなっていた。
「ん?どうしたんじゃ?何か面白い事でもあったか?」
「いや……あのね……真面目なルーちゃんが珍しくて……」
ミーナがそう言うとセニアも同じ事を思っていたようでコクコクと頭を縦に振った。
ルディールはイマイチ意味が分からなかったので、スナップに尋ねると辺りを見渡してここは凶器が一杯ありますのでノーコメントですわ。と言って自分の頭をさすった。
スナップの言葉で察したルディールは小さくため息を付き、次はこの国の守護竜の事も視野に入れ調べ始めた。
その頃にはかなりの時間がたっており、もうすぐ閉館だったので司書さん達にまた来ると伝え図書館を出た。
「……お昼ご飯食べてないのじゃ……皆、すまぬ」
「私も外国の本に熱中して忘れてたよ……」
「私もです……」
「今、何か食べると夕食を食べられなくなりそうなので、我慢ですわね」
そして皆に成果があった事を報告して礼をいい、明日は守護竜を中心に調べると言う事を伝え宿に戻った。
それから特に何事もなくゆっくりとした時間が流れ、ミーナの魔法を見たり、セニアにアコットに教えた浮遊魔法を教えたり、スナップに今日の成果を相談したりして無事にその日は過ぎていった。
次の日も朝食を取って少しゆっくりしてから図書館に向かう予定だったが、ルディール達が宿のロビーに行くと武装はしていないが正装した騎士の様な男達が数人いて話しかけてきた。
「そこの角着きの魔法使い殿、先日の事でお礼を申し上げたいので一つご同行願いたい」
「えっ嫌ですが?どの事を言っているのかは分かりませんが、今の言葉で礼はもらった事にしますので大丈夫ですよ、私も忙しいので失礼しますね」
ルディールが余所行きモードでそう言うとミーナ達はまたか……という様な表情をしていた。
騎士達は断られると思っていなかったのか少し戸惑ったが、もう一度丁寧に説明し同行を求めた。
「魔法使い殿、そう言わずに氷城でお礼を申し上げたい人がおられますでご同行をおねがいします」
「私達は旅行中で時間は限られているので無理です。そちらが来なさいとも私は言いませんし、先ほど申し上げたように礼は結構ですので大丈夫ですよ」
そう言うとその男の部下がしびれを切らしルディールにつかみかかって来たので、影の中に引きずり込み丁寧に梱包して返却した。
「ある程度は仕方ないと思いますが、今の方が部下でしたらもう少し教育を。さて私からお話はありませんので、どうぞお帰りを」
ルディールがそう言うと騎士達は諦め去って行った。ルディールは大きくため息を付くとミーナとセニアは少し心配そうにし、スナップはドンマイですわ!と少し嬉しそうだった。
次回の更新は明日かも。
誤字脱字報告ありがとうございます。助かっております。




