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第87話 国境付近

 ゆっくりと吹雪の国に向かうと言うのは気のせいだったようで、リベット村から少し離れた街道を村長から借りたバイコーンの荷馬車が砂煙を上げまさに爆走していた。


「わらわのRについてこれるか?!ルディール・ル・オントのRは不敗神話のRじゃ!」


「ルーちゃん!誰も周りにいないからね!」


「ルディールさん!速すぎますから!」


 リベット村から出た時はゆっくりと手綱を引いていたのだが、周りには誰もおらず、スナップがこのバイコーン様はどの位の速度が出るんでしょうね?と言ったのが一番の原因だった。


 そしてルディールは動物や魔物と会話できる能力を無駄に活用してバイコーンに最高速チャレンジをさせていた。


「よし!バイコーン自身の最高速度は大方わかった!」


 ルディールがそう言ったので、ミーナとセニアは少しほっとしたが、スナップがルディール様はバイコーン様自身のと言いましたわと言うと、二人もその意味を理解し即座にルディールを止めようとしたが時すでに遅し。


 次は最高速チャレンジじゃ! と叫びスティレ用に考えた試作身体強化魔法をバイコーンにかけ重力魔法で荷馬車を軽くしさらに速く地を駆けた。


「「いやーーー!」」


 そしていつもどおり調子に乗りすぎ、森に近づくにつれ街道は悪くなって行き、少し斜面のコーナに差し掛かりバイコーンの速度では曲がりきれず文字通り空を飛んだ……


 するとまた同じようにミーナとセニアの叫び声が聞こえたが、ルディールは重力魔法を唱え馬車やミーナ達を静止させ、ゆっくりと着地したがミーナに滅茶苦茶怒られた。



「ルーちゃん!聞いてますか!ゆっくりのんびり行くって行ってたよね!」


「はい……言った様な気がします」


「気がします……じゃ無いよ!言ってたからね!スナップさんも!ルーちゃんを煽らないの!ルーちゃんが悪乗りするの知ってるでしょう!」


「はい、ごめんなさいですわ。しかしミーナ様はエアエデンから飛び降りたぐらいですから絶叫系がお好きかと思いまして……」


「引きずり込まれただけです!真実を曲げないでください!」


 ミーナが怒ってルディールとスナップを正座させていたが、セニアが荷馬車の整理が終わってミーナをなだめようやく旅は再開した。


「ミーナの奴め……そこまで怒らんでもええじゃろうに」


 と、聞こえない様に言ったつもりだったがしっかり聞こえていた様で、馬車の中から何か言った!と声が聞こえてきたのでルディールはとりあえず謝るとルディールのが手綱を引く隣でスナップが少し笑いながら意見をくれた。


「ルディール様、そういう時は余計な事を言わずにとりあえず申し訳なさそうに謝っておいたら良いですわ。私も妹に叱られた時は内心は笑っていますが、表面上は申し訳なさそうにしていますので」


「なるほどのう……じゃがわらわは本人の前で言うような事はせぬがな」


 その言葉の意味が分からなかったので頭上に?マークを浮かべていると馬車の屋根の上から声がかかった。


「そうですか、吹雪の国から戻ったらゆっくりお話ししましょうね。姉さん」


 明らかにドスの利いたスイベルの声がスナップの耳に届いた。


「スッスイベル……どうしてこっここに?」


「ええ、姉さんがミーナ様とセニア様の護衛をするという事ですので、不備があってはいけないと転送装置を起動させて様子だけ見に来ました。なかなか面白い話が聞けましたね」


「スッスイベル……言葉のあやですわもしくは冗談ですわじょうだん……」


 スナップの言葉にスイベルは男性がみたら一発で恋に落ちそうな特大の笑顔を見せてから何も言わずに帰って行った。


 その仕草が全てを物語っていたようでスナップは崩れ落ち、気分が悪いから馬車に戻りますわとだけ言って静かに後ろへと下がったが代わりににセニアが前に来てルディールの横に座った。


「ルディールさんは手綱も引けるんですね」


「うむ!凄いじゃろ!村長のバイコーンがわらわが引いてる様に見えるように歩いてくれておるんじゃぞ」


「えっ?本当ですか?」


 セニアがそう聞くとバイコーンがブルル!と鼻を鳴らした。


「ちなみに今のを通訳すると、黙っていればいいのにじゃな」


「ルディールさんの言う事は冗談なのか、本当なのか分からない事が多いですね」


「うむ、選択肢は多い方がよいじゃろ?もう森の中じゃが浅い所なのかのどかじゃな~」


「いえ、先ほどの事をお忘れで?のどかののの字も無かったですが?」


「なんじゃい、セニアは絶叫系は嫌いか?」


「限度があると思いますけどね」


「うむ、確かにのう」


 そこで一度会話は終わってしまったが、悪い雰囲気はなく心地の良い沈黙が流れ馬車は森の奥へと進んで行った。


 ルディールが悪乗りして馬車を爆速で走らした為、思った以上の距離を進んでおり、一度森を抜けその頃には太陽も真上近くになりかなり気温が上がってきた。


 ルディールは海神の羽衣をを装備しているので涼しそうだったが、セニアは少し暑そうだったので魔法で日差しを遮る影をセニアの頭上に出現させ、氷の魔法で周りの温度を下げた。


「これぐらいなら大丈夫か?馬車の中の方が冷房の魔法が効いておるから涼しいぞ」


「はい、ありがとうございます。景色を見る方が好きなのでここが良いです」


「では寒くなったりしたら言うのじゃぞ、というか、セニアは本当に令嬢って感じじゃのう。リージュも令嬢じゃがちょっと違うしのう、王女様は王女じゃし、ミーナは村娘改じゃし」


「ルディールさんの言ってる意味がイマイチ分かりませんが、ずっと令嬢だったので」


「なるほどのう、では久々に羽が伸ばせると言う感じじゃな。と言うかミーナ寝ておらぬか?村娘改とか言ったらまた変な事言ってるとか言いそうなんじゃが?」


 そう言うとセニアは確認してきますねと言って馬車の中に入ってそしてすぐに戻ってきた。そして先にルディールさん飲み物をどうぞとコップに冷えた液体を注いでくれた。


 ルディールは礼を言い、その液体を飲むと柑橘系の爽やかな飲み物だった。


「ミーナもスナップさんも気持ちよさそうに寝てました」


「ならば、ミーナには近づいては駄目じゃぞ。前に馬車の中で膝枕してやったら顔面に思いっきり頭突きを食らったからのう」


 そう言うと頭突きですか?と目をパチパチして少し驚いていたが、消え入りそうな声でミーナが羨ましいですと呟いた。


「ん?膝枕してやろうか?わらわが端によれば十分出来るスペースはあるぞ?と言うか眠たいなら中の方が快適じゃぞ」


 その甘い誘惑にセニアは赤くなり、でも見られると恥ずかしいので少し耐えたが負けてしまい、ルディールに膝枕をお願いした。


「おっお願いします……」


 ルディールが端によりセニアが横になりルディールの太ももに頭を預けた。そしてルディールはミーナと同じようにセニアの頭を撫でてやった。


「何というか、セニアの髪は触り心地が抜群じゃな……こうずっと触っていたい髪の毛みたいな」


「そっそうですか?……私は恥ずかしすぎてそれどころでは無いですが、ルディールさんさえ良ければどうぞ」


 本人の許可をもらったのでルディールはセニアと世間話をしながら頭を撫でたり髪を触ったりしてると、少しずつセニアの反応が無くなっていき、セニアもいつの間にか寝てしまっていた。


「うむ、可愛い寝顔じゃのう……リージュかバルケかカーディフ辺りじゃったら顔にお絵描きコースなんじゃがな……」


「バルケ様は良いですが女性の顔に落書きされるのは関心しませんわ」


 と、いつの間にか起きていたスナップが後ろから身を乗り出しルディールに話しかけてきた。


「ミーナ様もですが、セニア様も負けじと劣らず可愛い寝顔ですわね」


「二人も元が良いからのう何をやっても高レベルに収まる気はするのう」


「確かにそうですわね……さて、ルディール様はどちらをお選びに?元気いっぱいの田舎娘か?非の打ち所がない令嬢か?」


「何じゃその……どこぞの魔物使いが選ばされそうな選択肢は……わらわは二つの選択肢を出されたら三つ目を選べるように生きようと思っておるが?」


「ちなみにわたくしとスイベルはどこぞの剣士いわくロリババァなので選択肢には入りませんわ。未来は若者の為の物ですわ」


 そう言ったので、スイベルはロリで無かろうと言おうとしたが、スナップの目がそれを言葉にしたら殴るといっていたので余計な事は言わず黙った。


「ちなみにここにいないメンバーは駄目ですわよ」


「では、吹雪の国で三つ目の選択肢が出てくる可能性にかけるかのう」


「なるほど、ルディール様はへたれですわね」


「お主はわらわに何を求めておるんじゃ……女同士じゃぞ?」


「えっと……交尾?」


「……スナッポンコツとスイベルの二択じゃったら間違いなくスイベル一択じゃな。吹雪の国から戻ったらスイベルにお主の精密検査を依頼しておくわ!」


「はああぁ!わたくしの何処が妹に劣っていると言うんですの!?」


「上から下まで全部」


「カッチーン!ガチトーンで言いやがりますか!」


 二人がかなりしょうもない喧嘩を始めたので、まずはセニアが目を覚ましそしてミーナが目を覚ました。それでも口喧嘩は収まらなかったので妹のスイベルがまた転送されてくると少しだけ顔が赤かった。


 ようやく口喧嘩が収まり馬車は進んで行くとようやく死手の大滝が見える場所までたどり着き、大樹の根を編み込んで作られた生きた巨大な吊り橋を渡った。


「よくこんな所に橋を架けられたのう……根っこで出来ておるから橋自体も生きておるから壊れにくいのか?」


「確か、エルフの建築方式だったと思いますよ。太古の森のエルフの国の城壁も生きた植物で出来ていると聞いた事があります。生きているので燃えにくいとか有るんでしょうね」


 そしてようやく橋を渡り終えるなと思っていると対岸に人影があり大きな声でルディールを怒鳴りつけた。


「ようやく会えたな!あの時の忌々しい人間め!貴様が森に入って来た時から待っていたぞ!」

次回の更新は多分あしたです。


誤字脱字報告ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] いつか出てきそうだった川に流された可哀想な子の再登場かな? ビアンカかフローラならビアンカ派だけどデボラもいいですよね リメイクはやってないんですけども
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