第85話 パーティー
「ソアレまでは分かるがリージュと王女がいるのが意味不明じゃな……都合は良いんじゃが……」
「ルーちゃんも失礼な事言う所はあんまり変わってなかった……」
ルディールがそう言うとリージュと王女が何か文句を言い出したが、アコットが飛びついて来たので、るるる印の魔道書を渡し簡単に内容を伝えた。
るーちゃんありがとう!とすぐに魔道書を読み始めた。そして姉のセニアもルディールに礼を言った。
「ルディールさん今日はお越し頂きありがとうございました。妹のわがままにお付き合いいただいて……」
「うむ、アコットが大人になって有名になったら色々してもらうから大丈夫じゃわい」
ミーナがそこは気にするなでいいのでは? と少し呆れていたがルディールは次はリージュの方を向きもう一冊の魔道書を渡した。
「ほれ、リージュ。約束と宿題じゃ、魔法を教えてやる約束じゃったからのう。これを解いたら覚えられるぞ。わらわとミーナは明日か明後日には吹雪の国に旅行へ行くからのう」
少し驚きながらありがとうございますと礼をいい、ぱらぱらぱらとその魔道書を見るとそこまで難しくは無かったようで、シャドーステッチはなんとか使用していた。
「ルーちゃん……リージュさんちゃんと学園トップだったね」
「お主は全然分かってなかったのにのう」
「と言うわけで、他の二つは少し難しそうなので私も付いて行きつつ教えてもらっていいですか?」
リージュはルディール達について行く気満々だったが王女から待ったがかかった。リノセス家が公爵になったので各地で色々なパーティーがあるのでリージュは私と共に参加しないと駄目ですよと言われ、セニアも付いて行こうという雰囲気を出していたので王女に釘をさされた。
「リージュも駄目ですがセニアさんも駄目ですよ。二人ともおとなしく公爵家の娘として出てください」
リージュもセニアも断れる筈もなく落胆し落ち込んだが、ソアレの様子だけいつも通りだった。
その姿を見てリージュの勘が冴え渡り、隣の部屋で待機していたスティレを呼び寄せた。
「あの……どうして私が呼ばれたんでしょうか?」
「はい、リージュ・シュラブネルとして火食い鳥のリーダーに依頼します。私達が出席する貴族の宴に護衛として【火食い鳥】は着いて来なさい。行く所は知っている処も多いですが、カタコンベでの貴方達の戦闘を拝見し信用しえる実力だから依頼しました。空いているならの話ですがどうですか?」
リージュがそう言うとソアレは大きく目を見開き抗議の声を上げた。
「……すっごい忙しいです。超忙しいので無理です」
「ええ、ど腐れ魔導……ゴホン。ソアレさんは忙しいかも知れませんが火食い鳥のリーダーはスティレさんですので」
スティレも今の所は護衛の依頼も受けておらず少しゆっくりするつもりだったのだが、大公爵の娘の直々の依頼を断る訳にもいかず……リージュの目がとても怖かったのでその依頼を受ける以外の選択肢は無かった。
「……スティレ見損ないました!」
「いや、普通に考えて口頭だが、シュラブネル家の依頼を断れると思うか?」
「……冷静に考えて私達は自由を求めて冒険者になりました。悪役令嬢の頼みなど聞かなくてよいのでは?」
「ソアレさん、悪役令嬢だからこそ人の嫌がる事をするのが当たり前では?」
「くっ!普段通りにしていた筈なのにどうして!まだ手はあるはず!ルディールさん何とか言ってください」
「ソアレよ諦めい、相手はリージュじゃぞ。どうせ二手三手考えて行動しておるぞ。ここでわらわが言ってもリージュが王女に頼んで王女からの依頼になるだけじゃぞ」
「ふっふっふ、さすがルディールさんですね。もう王手ですよ、ソアレさん貴方だけに美味しい思いはさせません」
そういうと王女は面白い方につきますので今の所はリージュかな?と言ってアコットと遊んでいた。
そしてソアレは私も吹雪の国について行くという計画が! と、自分の負けを悟りかなり落ち込み膝から崩れ落ちた。
「と言うわけでスティレさん。ちゃんとシュラブネル家から依頼が来ると思うのでよろしくお願いします」
リージュにそう言われてスティレはなんとも言えない顔をしていたが、火食い鳥に依頼を出してくれた事に感謝を述べ仲間のカーディフに伝えに行った。
そして落ち込んでいるソアレをある者は慰めある者は笑ったりしているとパーティーの時間が迫ってきたのでルディール達はメイド達に頼み場所を借りドレスに着替えた。
メイド達に手伝ってもらい着替え終わり、ミーナとルディールが対面するとミーナは言葉を無くし顔を赤くした。
「ええと、ルーちゃん似合ってるね」
「うむ。ミーナも似合っておるぞ」
という様な会話をしているとリノセス家のメイドに新婚さんですか? と言われたのでルディールは祝辞会が終わったら吹雪の国へ新婚旅行に行きますと冗談を言うとミーナが元に戻ってツッコミを入れていた。
そしてホールに向かうとセニア達も着替え終わって集まっていた。
「美女のバーゲンセールじゃな……」
「ルーちゃん……言いたい事はわかるけどかなり失礼だからね」
それから始まるまで少し時間があったのでソアレが誰が一番お好きですか?とルディールに聞いたので、そういう事を聞かない子が好みと答えると、では私ですねと話が通じなかった。
リノセス公爵の話が始まり、王女も来ていたついでに挨拶をしパーティーが始まった。
パーティーが始まるとルディールもミーナも変に絡まれない様に端の方にいたのだが、ミーナはクラスメイトの貴族とセニアに見つかり拉致されて行ったので、ルディールは適当にその辺の豪華な料理を食べあさっていると見慣れた人を見かけたので挨拶に行った。
「商会長殿も来ておったんじゃな、元気にしておったか?」
ルディールがイオード商会の商会長に挨拶したが商会長は誰だか分かっていなかった様で、少し悩みかなり慌てながら答えを確認してきた。
「ももももっもしかしててて!おおおおオントさんですか!?」
「うむ。ルルルのオントさんじゃが?というかこのような話し方で無駄に偉そうなのはわらわぐらいしかおるまい」
そうは言ったが商会長はその真実が受け止められ無いようで何回もルディールを上から下まで確認しかなり頑張って脳がようやくルディールだと認識したようだった。
「失礼ですが、オントさんは普段からでも素敵な女性ですが着飾ると別人の様になりますね……もう話し方を普通にしたら何処かの王族と言っても皆さん信じますよ?」
と商会長が言うのでちょっと本気の余所行きモードになり話しかけてあげた。
「では……この話し方にすれば商会長さんのお眼鏡にかないますか?」
そう言って少しはにかむように笑うと、商会長は赤くなりやめてくださいオントさんと頼み込んできたのでルディールはいつもの話し方に戻した。
「なんじゃい、商会長のリクエストじゃろうに」
「そうそうその声のトーンでお願いします。いつものオントさんで安心しました」
ルディールはいつものオントさんと言うのが気になったが、他に気になっていた事があったのでその事について尋ねた。
その事は神官達と一緒に悪事をしていたエニアック商会のその後の事で、国王陛下からはその後の事は聞いたが商会長視点の話も聞きたかったので出会ったら聞こうと思っていたらなかなか出会わず今になったのだった。
「そうですね、国王陛下からはイオード商会の傘下でとの事でしたが、パラメト商会と一緒にエニアック商会を再生してる感じですね、お互いにライバルですがどれかを蹴落として一商会が力を持つべきでは無いと私は思っていますからね」
「なるほどの~パラメト商会にうま味がないと、いつかエニアック商会と手を組んで潰されるかもしれんしのう」
「そういう事です。小さい商会などは多数有りますが、ローレット大陸三大商会と言えばエニアック・パラメト・そしてその二つから離されてイオード商会ですからね」
「今更じゃが商会長も凄い人じゃよな」
「その私が凄いと思って仕事を頼むルディールさんが無名というのも凄い話ですけどね……そうそうこの前のエリクサーのおかげでと言うか、ミーナさんのおかげと言うか王女様とコネが出来ましたよ」
「そういうのを気軽にわらわに話してええんじゃろか?」
ルディールのおかげで完成したエリクサーとも関係しているからいいですよと話し始め聞くと、ミーナが友人数人を連れ王都の店舗に来店してちょうど商会長が出たらそのメンバーの顔ぶれが何かおかしかったと教えてくれた。
「正直、焦りましたね……リノセス侯爵家元い公爵家の長女、シュラブネル公爵の一人娘……そして王女様ですよ?」
その時の事を思い出し地味に商会長は顔を青くした。
「ミーナはそういう縁に恵まれておるんじゃろ」
「なっなるほど……卒業したらイオード商会で働かないか聞いてみます。それで話を戻しますが、その時に王女様からエリクサーのお礼を言われ、色々あってコネが出来たわけで、それで王城に行ったりしてなかなかオントさんと会えなかったという訳ですね」
「確かに忙しそうじゃな、王女様は人使い荒らそうじゃしなっと……そうそう商会長、吹雪の国に遊びに行こうと思っておるが馬車だとどこからが楽なんじゃ?」
そういうと少し考えてからリベット村から行くのが馬車だと一番楽で景色もいいですよと教えてくれ見所はなんといっても死手の大滝と教えてくれ、帰ったらすぐに地図を送りますねと言ってくれたのでルディールは感謝を込めて余所行きモードで挨拶したら商会長はまた赤くなり地味に不評をかった。
それから商会長と別れ一人で色々と食べているとやたらと男の貴族に絡まれるようになったので面倒くさくなってルディールはリノセス家の屋根の上に逃げた。
上に逃げると警護や護衛のメイドが数人隠れていたが、ルディールに気がつき一人が音も無く現れた。
「おお、メイドさんご苦労さまじゃな」
「はい、オント様でしたかどうしてこちらに?」
「うむ、面倒くさいのに絡まれ出したから逃げてきたから警護に加わろうかと思っての」
「そうですか、私達の他にも王女様やシュラブネル家の護衛もきていますが、オント様から見て怪しい気配はありますか?」
「うむ、しいて言うなれば屋敷の屋根でドレス着てお皿もってご飯食べてるわらわが一番怪しいのう」
そういって何も無い中庭の木の影に目をやり手を振った。するとそこの影がため息を付くように動き手を振るような仕草をした。
「今のは?」
「王女様の護衛じゃな。前にセニアとミーナを護衛してくれておったから見かけたから手ぐらい振ってやったわけじゃ、冗談が通じる様で挨拶はしてくれたのう」
そう言って特に話があるわけでもなく、ぼーっと護衛をしているとテラスに人影が見えそれはセニアだった。
「さてオント様、あそこに美女がいますのでダンスに誘ってみては?」
「踊れんのじゃが?」
「踊るだけがダンスでは無いでしょう。お嬢様をよろしくお願いします」
そう言うと風に流されるようにメイド達は消えて行ったので、ルディールは任されたといって静かにセニアの前に降り立った。
「見かけないと思ったらルディールさん外にいたんですね」
「うむ、歌って踊れる魔法使いでは無いからのう、屋根の上に避難しておった訳じゃな。セニアは社交辞令にお疲れか?」
ルディールがそう言うと少し困ったように笑いそうですねと頷いた。そしてその小さな手を取り空へと舞い上がった。
「ルッルディールさん!」
「うむ、好みの美女がおったからのう少し独占したくてな……わらわは踊れんが踊って頂けますかセニアさん?」
ルディールの仕草が面白くてセニアは吹き出したが、喜んでとそのお誘いを受けた。
「セニアよ、手は離しても大丈夫じゃぞ。アコットに教えた飛行魔法の上位版じゃ、空に足場が出来ておるぞ」
その言葉を信じ恐る恐るセニアは手を離した、すると見えないが確かに足場のような物が存在し固くも柔らかくも無い物を踏んだような感覚だったので少しだけ戸惑った。
そして二人は手を重ね、月夜の空でルディールの不格好なステップをセニアがリードしながら静かに踊り始めた。
「ルディールさん、今日もお綺麗ですね」
「ふふっ、流石に今日のセニアには負けるのう」
その言葉通りドレスを着飾り少し化粧をし頬が薄いピンクにそまったセニアは、ルディールが心奪われそうになるぐらい美しかった。
「そうですか?ではこのままルディールさんの心を奪いますね」
二人で笑いそれからしばらくの間、静かにダンスを楽しんだ。
そして祝辞会が終わる少し前まで、二人は夜空でこれまでの事やこれからの事を話しバレない様に戻ったつもりだったが、空気を読む気がまったくない友人達におもちゃにされたのはまた別のお話。
次回の更新は明日には投稿したいけど、明後日になるかも。
誤字脱字の報告ありがとうございます。本当に助かっております。




