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第81話  新しい季節


 ルディール達が大神官と戦ったり、王妃様の呪いを解いたりして数ヶ月が経ち季節は初夏を迎え初めていた。


「おっリージュよ。下に飛空艇が見えてきたぞ」


「わ~ホントですね。飛空艇を空から見下ろす体験ってなかなか出来ないから素敵です~とか言うと思いましたか?」


 その言葉通り、リージュはエアエデンにおりルディールが少し前の約束を守って静かな所に連れてきた感じだった。


「なんじゃい。来た時は子供の様にはしゃいで喜んでおった癖に」


「ええ!静かな所ですし、見上げたら青一色の世界で感動しましたからね!とても喜びましたよ!ここがどこか分かるまでは!」


「自信を持って良い所と言えるぞ」


「あーもう!ありがとうございます!ルディールさん……こういう真面目に国に知られたら駄目な事は控えてくださいね。と言うか空中庭園が上昇したのってルディールさんのせいだったんですね」


「うむ。詳しく教えてやろうか?」


 そう言うと遠慮しますと言ってスナップが入れた紅茶をのみエアエデンの端に設置したイスに座り静かに地上を見た。


「先ほども思いましたけど、地上までかなり距離がありますよね?今はどの辺りにいるんですか?」


「さっきスイベルに聞いた話じゃとリベット村の真上じゃな。ちなみにミーナはここから地上にダイブしておるぞ?リージュもやってみるか?」


「はい?ミーナさん、ここから飛んだんですか?……顔に似合わず恐ろしい事しますね。私は絶対に遠慮します」


 少し怯えながら地上を見下ろしていたのでルディールが静かに近づき悪戯をしようとしたが、リージュは思った以上に怖がり屋だったので変な事は止めておいたら気づかれた。


「ルディールさん?……もしかして押すつもりでしたか?」


「いや?墜ちたら掴んでやろうと思って近づいただけじゃが?」


「まぁだいたい顔見たら分かりますけどね……私に教えて良かったんですか?私が話したらルディールさんかなり危ないですよ?王女様にも言ってないですよね?」


「なんでじゃろな?わらわにも分からん!知っておるのは、ミーナ、バルケ、セニア、ソアレぐらいかのう?よほど困ったらわらわは転移魔法を使えるからのう、ここに転移してよその国に行くわい」


 そう話しているとスナップとスイベルがやって来て私達ももちろん知っていますわと言って話に加わって来た。


 「私からは言いませんから安心してローレット王国にいてください。またここに来たいのでね」


「ルディール様、お話中すみません。後一時間ほどで飛空艇がリベット村に着いて式典が開かれるのでそろそろかと思いますわ」


「もうすぐですね。王女様も来る事になったんですよね?」


 リージュがそう聞くとルディールが大きくため息をつき、机に倒れ込んだ。


「そうなんじゃよな~。よかれと思ってやった事なんじゃが、かなりやばい事だったらしくてのう……王女様が直々に厳重注意という感じじゃな……」


 ルディールがそう話すとリージュが呆れ顔になり何したんですかと言っていた。


 そのやばい事と言うのはルディールが王女にあげた一本のソーマの酒だった。王女も鑑定してから飲むと言っていたが変な所が甘く、ルディールからもらった物だから大丈夫だろうと一口飲むと美味しくて一人で一本飲み干し、酔う事は無かったが何か体の調子というか魔力の調子がよくなり測定したら自身のかなり低い魔力が標準まで上がっていたのだった。


 その事の危険さにルディールに即座に手紙を送ったり、どうやって説明するか等も王女は考え、色々と根回ししてる内にやっと直接ルディールに会うことが出来たのだった。


「流石に王女じゃし来んなとは言えぬのう……」


「普通は辺境の村に王女様は来ませんけどね?灯台の街に発着場ができた時にも王族は行ってないですから、何したか知りませんがしっかり怒られてください。それほどの事と言う事ですよ」


「家を取り上げられたらリージュに養ってもらうかのう」


「では、取り上げられるように説得しますね」


 少し前までの二人のやり取りからは想像できない笑顔でルディールはスナップとリージュの手を取りリベット村の自宅に転位魔法で飛び式典に参加する準備をした。


 準備が終わり式典に参加するために会場に向かうとリベット村の村長が居り、話しかけてきた。


「オントさんが国王陛下やシュラブネル公爵様の親書を持って来た時はどうなる事かとおもいましたが……本当にありがとうございました。シュラブネル様も御助力ありがとうございました」


 村長はそう言ってルディールと隣にいたリージュに深く頭をさげ礼をいったのでリージュも頭を下げ挨拶をした。


「こちらこそありがとうじゃな。図書館も無事とは言いがたいが豪華な物が完成したしのう、こぢんまりしておったはずなんじゃが……」


 初めてリージュがルディールの家に遊びに来た日、村を案内している時にリージュが古い本で良かったらシュラブネル家に大量にありますよ?と言ってくれたのでルディールは確認せずにいらぬのならくれ!と言ったのでシュラブネル公爵家から廃棄されるはずだった大量の本がリベット村に運び込まれ古家の改修では入りきらなかったのでルディールが金額をほぼ負担したので村にあるのがおかしいレベルの図書館が完成したのだった。


 飛空艇が到着するまでルディール達は村の人達と世間話をしたりして時間を潰しているとようやく発着場の塔に飛空艇が到着した。


 そして盛大な演奏がなりまずは護衛達が降りてそれから王女が降りてきた。その護衛の中には見慣れた人物もおり、バルケや火食い鳥もいたので、ルディールのとなりから、あっド腐れ魔導。という声が聞こえて来た。


 そして王女様から祝辞の言葉があり小さいながらもパーティーが開かれた。


 パーティーが開かれると小さな村だと少し馬鹿にしていた王女の護衛達も村の料理やルディールの作った果実酒などを絶賛し祭りを楽しんだ。


 そんな姿を見ているとバルケと火食い鳥がルディール達の元にやって来た。


「うむ、久方ぶりじゃな!お主達はなんで王女様と一緒に来られたんじゃ?話だと王女と護衛が来るだけなんじゃろ?」


「おう、ひさしぶりだな。くわしい事は後から話してもらえると思うが、俺と火食い鳥には直接、護衛の依頼が入ってきたからな……王女様から……焦ったぞ。マジで」


「ああ、ルディール殿久しぶりだな」


「私はなんとなく分かったけどね……ここだと聞かれたらマズいと思うから後でルディの家で話があると思うわよ」


 そう聞くとルディールも年貢の納め時かと言って大きなため息を付いたのでソアレが少し笑い訂正した。


「……そこまで悲観的にならなくても多分大丈夫と思いますよ?」


 少しルディールを安心させたが隣にリージュが居たので、またお互いに火花をちらして話していると、とうとう王女様がやって来た。


 そして膝をつこうとしたが王女に止められルディールの家に護衛達を数人とバルケ火食い鳥を連れ向かった。そして屋敷の外には護衛を置きバルケ達を連れ中に入った。


「さて、ルディールさん。手紙でも言いましたが絶対にあのお酒は造っては駄目ですよ」


「うむ、ソアレ達にも注意されたからのう。流石にもう作らんわい、王女様視点でもやっぱり危ないか?」


「完璧にアウトですね。でも私のように魔力が少ないとか、全くない人がいるのでそういう人を助ける用になら有りですが……今は絶対に駄目ですね」


 王女はそれから延々とソーマ酒のあり得る危険性をルディールに伝えた。リージュも隣で聞いて居たのでソーマの酒の効果の危険さには王女と同意だったようだった。


「でも、私が数年後の王位継承の時にはかなり強い武器になるので利用させてもらうのでその時はよろしくお願いしますね」


「王女様言ってる事が違う気がしますが?」


「いいんですよ!私の魔力が増えたのは嬉しいんですがここに来るのにどれだけ大変だったっか……魔力が増えたことを隠すのも大変でしたがバルケさん達を雇ったりと山のようにありましたからね!リージュは学校サボって遊べていいですよね!」


「サボってませんよ!今日の式典にでるのに来たんですよ!」


 二人の話を聞いたソアレがぼそっとサボリージュと言ったので王女は笑いリージュは睨み話は進んだ。


「ルディールさん、親切でしてくれたのも解りますしお礼をいくら言ってもいい足りませんが本当に気をつけてくださいね。国王にバレてたら確実に家宅捜索に入られますからね、今回は式典と被りましたし、王妃の治療のお礼と言う名目で来られたので忠告を」


「王女様、迷惑をおかけしまして本当にすみませんでした」


 とルディールは深く頭をさげ謝罪すると王女は少しあたふたし、そこまで深く頭を下げなくて大丈夫ですよ言ってくれた。


「……でもルディールさんどうして王女様にあのお酒あげたのです?」


 ソアレが聞いて来たのでルディールは王女からもらった不実の指輪を見せるとかなりのレアアイテムだったようで相当驚いていた。


「不実の指輪ですか……それなら納得ですね、それでルディールさんの魔力がほとんど見えなかったんですね。調整しましたか?」


「いや、まだじゃな。ソアレが来たら教えてもらおうと思って居たからのう。頼まれてくれるか?」


「任されました」


 それからルディールの家で王女もしばらく、寛いでから式典の閉会にも出席し帰る時間がやってきた。


「さてと、リージュ帰りますよ。バルケさんと火食い鳥さんはここまでで大丈夫です。宮廷魔道士が迎えに来て転移でかえりますので」


「まだゆっくりしたい所ですが、夏休みになればリノセス家の公爵への任命式もありますからね、ルディールさんありがとうございました。また来ますね」


 そういうとタイミングよく宮廷魔道士がやって来て王女とリージュと護衛達を連れて帰っていった。


 それからバルケや火食い鳥はルディールの家に泊まる事になり、ルディールのもらった指輪の価値をソアレに尋ねた。


「……そうですね、物が少ないのでオークションに出ればロードポーション並の値段ですね」


「高っ!」


「思ったより高かったのう……ソーマの酒がお返しでよかったんじゃろうか?」


「ルー坊、怒られてたしな」


 バルケがそう言うとソアレが少し訂正し、お会いした時に魔法の事を嬉しそうに聞いて居たのであれで良かったんですよと言ってくれた。


「ああ、王女様の弱点が無くなったのだからルディール殿のしたことは国に貢献したと同じだ、王女様が視察したという話になればそれ以下はもう来る事は無いから、怒ったというよりは感謝の忠告だな。私達を護衛に雇ったのもルディール殿の家の中に城の者を入れない為だしな」


「じゃよな~このツリーハウス見ても何も言わなかったし、裏の家庭菜園にも何も無かったしのう。こう助けられて生きるのはありがたい」


 そう話すとルディールは城の方角に向き頭を下げ礼を言いい、少し暑くなり季節の始まりを感じていた。

新章始まりました~。次回の更新はたぶん明日です。


誤字脱字報告ありがとうございます。

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