第80話 行く末
「あの、私がそこのド腐れ魔導に生贄に捧げられて苦労したというのに、ルディールさんはどうしてイチャついているのでしょうか?」
「……はいリージュさん、私がその問いに答えましょう。答えは私が強者だからです」
ルディール達を呼びに来たのは、王女におもちゃにされている筈のリージュだったので、応接室に来た時は少しやつれていたような気がしたが、ルディールの膝の上でくつろぐソアレを見てすぐに元気になった。
そしてルディールの膝の上で横になっていたソアレが立ち上がり、リージュと向かい合うと二人の背後に怪獣王と金色の三首竜の幻が写り一触即発のような雰囲気になった。
その妙な雰囲気を感じ取りバルケは笑い、カーディフとルディールは大きくため息をついた。
「のう、カーディフよ。こういう時は放っておいてええんじゃろうか?」
「ドラゴンの共食いね。変に関わるとこっちも怪我するから戦いが終わるまで放って置くのが無難よ、ぶなん」
「それがいいぞ。陛下も呼んでるしな」
三人は応接室を出るとメイドが待っていて争いそうな二人を放置して国王が待つ部屋へと向かった。そして後からその事に気づいた二人が走ってきてようやく合流した。
「なんかあれよね。ルディとリージュさんが喧嘩しなくなったと思ったら矛先がソアレに代わったのね……」
「人間だれしも心の中にこいつ無理!って言うヤツがおるから、その位置が変わったのかもしれんのう」
「あーなんかそれ分かるけど、ソアレじゃリージュさんに勝てなくない?」
「うむ、もうすでにかなり劣勢じゃしな」
合流した二人の表情を見る限りソアレはぐぬぬ!と言うような顔でリージュはオホホ!とか言いそうな顔をしていたので勝敗は明らかだった。
「ルー坊が男だったらモテモテだな」
「じゃったらこの上無く嬉しいが、同性だから警戒心が緩んでおるだけじゃと思うぞ」
そうバルケと話し苦笑していると、ソアレとリージュを見てカーディフも笑いながら話す。
「そうかな~?同性に嫌われる奴って異性にも嫌われるわよ?」
と言ってそんな話をしながら進んで行き、また国王達が待つ部屋に入り謁見の続きが始まった。
それからの話は最初ほど重要な事は無くリージュやルディール達に対する感謝などだった。
「さて、ルディール・ル・オントよ今回の事での褒美だ。何か欲しい物はあるか?君が望むのであれば宮廷魔道士の地位も保証するが?」
その事に周りの人間は戸惑ったがルディールの性格からして断るのは明確だったが、即座に断ってはよろしくないので少しだけ考えたふりをして丁寧に断った。
「そうかならばこれ以上は聞くのは野暮だな、とはいえ今回の件に大きく関わった君に何も無いと言うのは問題だ」
「でしたら、私の第二の故里のリベット村に飛空艇を呼ぼうと言う計画が村で上がっておりますので、それに力添えして頂ければと思います」
ルディールがそう言うと国王は、ふむと言って、飛空艇の事などを管理している人間を呼び詳しくその話を聞いた。
「なるほど、私が口添えすれば通るだろうが、どの程度村に呼べれば良いと考えている?」
「はい。私のわがままですので、週に一度でも来てもらえればと思います。お恥ずかしい話ですがリベット村には特産と呼べる物もないので数多く来てもらった所で黒字になるわけではないので。国や村に負担がかからないのがその辺りだと思っています」
「そうか、君がそれで良いのなら話は私の方から通しておこう。今回の事に対する褒美はそれだと少ない気がするがそれでよいか?」
「はい、リベット村の方々には世界を旅してふらふらしている私を温かく迎え入れてくれましたので、私が出来る範囲で恩を返せればと思っていたのでそれで十分です」
ルディールがそう言うと国王もそれ以上は言わず確実にリベット村へ飛空艇が飛ぶ様に約束してくれた。
そして、今回の騒動で神殿側に加担したエニアック商会の商会長は死罪とまでは行かないが、二十年弱国に強制労働になり残ったエニアック商会はイオード商会の監視が入り再建していく形となるだろうと話した。
神官達は大神官は死罪が確定しその事に関わった人間達は嘘発見器のような魔道具で暴き出しエニアック商会長と同じように十数年国へ強制労働させると教えてくれた。
「後は王宮騎士達の中にも膿がいるようだからな、その辺りもすぐにでも洗い流す予定だ。他に聞きたい事はあるか?」
「私達と戦闘になった冒険者達の事を教えて頂けますか?確か【黒点】と言われる人達だったと思います」
国王は頷き、冒険者達の待遇を語った。ルディール達と戦闘になった【黒点】などは貴族達に雇われていて何を守っているまでは聞かされていなかったとの事だった。国王もそのことを怪しんだので自白の薬や嘘発見器をかけたが特に何も出てこず本人達も協力的だったので冒険者ギルドからしばらく監視が付く形だが特に罰のような物はなく解放させたとの事だった。
それでほとんどの話が終わり、ルディール達が解放された頃には暗くなっていたので、セニアの厚意でリノセス家にルディール達は泊まる事になった。
そしてルディールは部屋でゆっくり本を読んでいるとミーナとセニアがカタコンベで何があったのかを聞きに来た。
「ん?陛下の御前で話したような事しかなかったぞ?」
流石にリージュにも見せていないのに、ミーナやセニアに聖女が沢山いたとか人体実験の施設があったとか大神官から白い液体が飛び出たとか言える訳でもないのでそう答えると、ミーナ達が求める答えでは無かったようでさらに追求された。
「違うんだよ!ルーちゃん!そうじゃないんだよ!リージュさんと何かあったのかを聞きたいんだよ!」
「なんじゃい……昼間に王女のおもちゃにされて色々聞いたのではなかったのか?」
「そうなんだけど、リージュさんが何かこう!可愛くなってたから当事者の口から聞きたいんだよ!」
ミーナがこう無駄にテンションが上がっていたのでセニアの方を向くとセニアも目がキラキラしていた。
「こう、リージュ様は王女様が言うように本当に隙が無い方でしたので、色々聞かれてアワアワしてる姿が新鮮だったの何かあったのかなっと?」
「別に何もないぞ。と言うかお主達が期待する展開があった方がよかったのか?」
ルディールがそう言うと二人は同時にそれは困ると言ったので、さらに大きくため息を付きリージュをおんぶした時の話を簡単したが、納得してもらえず夜遅くまで拘束されようやく朝を迎えた。
ルディールが起きて準備して貰っていた朝食を取り、また本を読みながらゆっくりしていると、ゆっくりさして貰えない人物がリノセス家に文字通り遊びにきた。
「と、言うわけで少し真面目な話がありますのでリノセス家の応接室でルディールさんと二人でお話です」
その人物は王女様だったのでリノセス家の人間は断れる筈も無く、ルディールは王女との対談を開始した。
「まずはお礼ですね、ルディールさんありがとうございました。母の事もですが陛下の前でリノセス家の護衛と言って最高戦力クラスの方々を叩きのめしたので、セニアの家に遊びに来るぐらいの自由は確保できそうです」
「うむ、上手い事いってよかったわい」
「ええ、城より強い人がいる所に行くので安全なので通りましたね。私も少しびっくりです」
「なるほどのう。まぁわらわも常にいるわけでは無いから気をつけてな」
そう言うと王女はルディールさんは母親みたいですねと笑い姿勢を正し王女としてまたルディールに礼を言ったのでルディールもその礼にきちんと答えた。
「それと個人的なお礼になりますがこれをどうぞ」
そう言うと王女は綺麗な小箱に入った小さな指輪を取り出した。
「ん……これは?指輪じゃな?」
「はい、不実の指輪といい魔力を隠せる指輪ですね。私は魔眼持ちでは無いので分かりませんが、ルディールさんは御自分の魔力を隠したりしないので出来れば隠して欲しいのでお持ちしました。魔力が視れるかた曰くルディールさんの魔力は相当らしいので余計な争い事に巻き込まれない様にですよ」
「その忠告はソアレからか?」
「いえ、ルディールさんが天井まで蹴飛ばした宮廷魔道士の方ですね。魔眼持ちでは無いですが、そういう感じの魔法を持っていますので私に教えてくれました。冷静になって考えたらよくあんなのに喧嘩売ったなと焦っていましたよ?」
名前もしらない宮廷魔道士に礼を言うように伝えてもらいルディールは王女にも丁寧に礼をいいその指輪を受け取り装備した。
「簡単な調整は出来ると思うのでソアレさんに診てもらいながら調整すると良いと思いますよ」
「ありがとう、何かして貰ってばかりですまぬのう」
「そうですか?ではお礼にその指輪を薬指に付けてリージュをからかいに行きませんか?」
「行きません。何というか王女様は変にリージュに似ておるのう……」
「それはそうですよ。小さい頃はリージュに憧れていましたからね。私と少ししか違わないのに作法は完璧ですし、しっかりしていましたからね。それに私が困ったらよく助けに来てくれましたからね。子供心にリージュの様になろうと思っていたのを覚えています」
「なるほどの~得意分野では師匠より強くなった感じじゃな」
「ふっふっふ、口喧嘩などは負けたりしますが策略などは私が勝てる様になりましたね。リージュはなんだかんだで優しいので。私は遠慮しませんから私の方が強いですね」
「いや、リージュは赤点とらんじゃろ」
「ぐふっ……私をここまで追い詰めたのはリージュに続きルディールさんが二人目です、さすがは友人の師匠ですね」
「それと……どうなんじゃ?友人としてミーナ達とは仲良くやって行けそうか?」
「ええ、大丈夫ですよ。確かに身分の違いはありますがミーナさんもセニアさんももちろん私もその辺りは弁えていますからね。その事を踏まえてルディールさん、ありがとうございました」
そう言うとお互いに笑い合い少ししてから聖女の事を話してくれた。
聖女は目覚めた様だがやはり記憶がかなり飛んでいたりあやふやになっていたので、治療の魔法で記憶を安定させ、飛んだ記憶を補う様にやはり学校へ通って貰う事になったとの事。
「元々、聖女様は孤児だったので肉親はいないので城で働く夫婦で娘を亡くした方がいたのでそこで引き取ってもらって学校に通う事になりました。クラスメイト達には神殿の事故に巻き込まれて記憶が飛んだと言う話になりますね」
「なるほどのう……思う所はあるがこれで良かったんじゃろな?」
「と言うか、聖女様が元のままで復活していたらルディールさんと戦闘になってますよ?私は直接みてはいませんが残ってる話だと角狩り信仰の思想にどっぷりはまっていたようなので角生えてる=敵みたいな感じになっていた様でしたので……」
「……一ついいか?それの何処が聖女なんじゃ?」
「それは神殿や国に都合良く強いので聖女ですね。若返って記憶もほぼ無いのでそうならない様に祈るばかりですが、まぁもし同じ道をたどったら私が国王になってから潰しますけどね」
「うむ。超怖い未来の女王がいるからわらわも気をつけるのじゃ」
そういうとルディールさんはもう少し目立ってもよいですよ?それだけ強い人が街中をぶらついてる方が怖いので……と注意された。
そこで王女の話は終わりミーナさん達と遊んで来ますと言ったのでルディールは未来の女王に投資するのと指輪のお礼に一つのアイテムをアイテムバッグの中から取りだした。
「飲むか飲まぬかは王女様しだいじゃが助けにはなると思うぞ」
「これは?なんですか?」
「ん?毒では無いがちょっとやばい酒じゃな。もう作らぬからそれを使うかどうかは王女様にまかせるわい」
「分かりました、帰ったら鑑定して飲んで見ますね。本当にやばかったらすぐに手紙を送りますね」
そう言ってルディールからソーマ酒を受け取り自分のアイテムバッグの中にしまい、ミーナ達のいる部屋に突撃していった。
そして王女の護衛として来ていた宮廷魔道士がやってきて今回の騒動に関係したルディールとバルケとソアレとカーディフを集め、これ以上城に呼ばれる事は無いので行きたい都市があれば転移魔法で送ろうと言ってくれたので、ミーナ達に別れをいい中央都市まで飛んでもらった。
そして中央都市まで連れて行ってもらうと礼を言ってそこで別れた。
「さてとどうする?わらわはこのままリベット村に帰るが?」
「俺達は王様の親書を冒険者ギルドに提出だな、早い方がいいだろうし」
「……そうですね、それが終わったら集まってご飯でもいきますか?」
「あーそれがいいかもね。リノセス家は良い所だけど私達は冒険者だから気使うからね~」
断る理由もなかったので頷き、どうせならカーディフが前にルディールの家を気に入ってくれたので家で食べるか? と皆を誘った。
バルケ達も断る理由もなかったのでルディールの家で打ち上げになり買い出しなどを含め、一時間後に冒険者ギルド前に集合となった。
そして一時間が経ち、ルディールが冒険者ギルド前に来ると一人増えていた。
「ルディールさん!どうして私を放って行くんですか!」
「……リージュさん分からないんですか?ここからは大人の集いの打ち上げですよ」
「いえ、ソアレさんには聞いてません。と言うか姉弟子ならもう少し余裕ある態度を取ってもらえませんか?」
そうリージュが言うとソアレが神鳴りの杖を取り出したのでカーディフに頭を掴み握られていた。ルディールはとりあえず自分の家に帰りたかったので何も言わずにリージュもいつもの倉庫に連れ、転移魔法でリベット村の家まで飛んだ。
「バルケとリージュは我が家は初めてじゃったな。本ぐらいしか無いがゆっくりしていってくれ」
リージュはルディールが転位魔法を使える事を知らなかったのでかなり驚いたが、ルディールに話があったので、家で帰りを待っていたスナップとスイベルに案内され二人で応接室に行った。
「で?リージュはなんで中央都市におったんじゃ?まだ色々あるじゃろ?」
「色々あるからルディールさんを探していたんですよ。リノセス家に行ったら王女様が居て、からかわれて中央都市に行ったと言ったので宮廷魔道士様に頼んで送ってもらいました」
少し怒っているような感じだったがルディールの家が知れたので嬉しいような表情もしていた。
「それでですね。飛空艇の発着場の件ですが、父も思う所があったようで国王陛下から許可をもらいシュラブネル家が主体となって建築を任されましたからその親書などをもってきたんですよ」
そう言ってアイテムバッグの中からシュラブネル家の紋章が入った親書と陛下直筆の親書などが出て来た。
「う~んありがたいが、大事になったのう……」
「大事を解決したから大丈夫ですよ、ここの村長さんに渡せばいいですよ」
「うむ、了解した。後で届けようお主はどうする?帰るなら送るが少ししたら、簡単な打ち上げをするが参加するか?」
「はい、絶対に参加します。というか神官達のせいで一週間ほど学校お休みなのでしばらくルディールさんの家でゆっくりします。正直私も疲れました」
ルディールは特に断る理由もなかったので了承はしたが両親には連絡しておくのじゃぞと言うと、放任主義なので大丈夫ですよとは言ったがすぐに両親に手紙を書きルディールのマジックポストを借り手紙を送った。
そして庭で準備をしているとマジックポストが光りリージュの父から手紙が来たのでリージュが目を通した。
「なんと書いてあったんじゃ?」
「ルディールさん、父が簡単に言えば飛空艇の発着場はいいの作ってやるから名前はルディールさんが考えろと書いてありますね。あと二、三日ならお泊まりは大丈夫みたいです」
ルディールが少し考えてからその言葉を言った。
「わらわの国の言葉じゃが、ノーブレス・オブ・リージュでいいと思う。娘の名前も入っておるし、意味は貴族たるもの身分にふさわしい振る舞いをしなければいけないとかじゃったかな?今回は貴族も神官もやらかしたからのう……」
ルディールがそう言うとリージュは自分の名前と同じ言葉が入っていたので少し恥ずかしそうだったがそれ以上に嬉しそうだった。
「では、父に後で確認しておきますね」
「……飛空艇の発着場の名前はノーパンツ・オンブ・リージュですか、とても良い名前ですね。私もそれでいいと思いますよ、ねぇリージュ様」
その言葉が開戦の引き金になった様でソアレとリージュはお互いの視線が交差する中心で火花が散っていた……
バルケは笑い、カーディフとルディールは呆れ、前とは少し変わったかも知れないが自分が好きな雰囲気が戻って来た事を喜び、ルディールは村長の家に親書を届けに向かった。
無事に4章終わりました~お読み頂きありがとうございました。
次回の更新は少し空いて、水曜日か木曜日かな?っと思っていますが少し休憩を挟むかも?
誤字脱字報告ありがとうございます。本当に助かっております。




