第73話 カタコンベ
それからルディール達は国王達と別れ、また隙の無いメイドに案内され目的の場所へと向かって行くと妙に機嫌の良いリージュが歩いていたのでルディールは素直に礼を言った。
「リージュよ、来てくれてありがとう。助かったわい」
そう言うとリージュがこの世の終わりでも見たような顔になり一言いった。
「私が言うのもあれですが……ルディールさんが素直にお礼を言うと気持ち悪いですね」
「よし!その喧嘩買った!いくらじゃ?顔面キックでよいか?」
「いえ、前払いで命を助けて貰っているのでいいですよ。あと顔面キックするときは気をつけないと汚いパンツがみえますよ」
「別にええわい、お主の様にうんこついてないからのう!」
「ついてませんよ!」
片方は国のほぼ最高戦力を瞬殺できる魔法使い、もう片方はほぼ国の最高権力の娘が低学年の子供がしそうな口喧嘩をしているので周りが呆れかえっていると、メイドの動きが止まり目的の場所に着いた。その場所は厳重に何重にも封印の魔法がかけられた扉があった。
そしてメイドは国王から借りたアイテムで一時的にその封印を解き扉を開けると一行に説明した。
部屋の中に入り中央まで行くと床が自動的に下がり地下まで運んでくれるとの事だった。
「ミーナ様とセニア様は王女様がお呼びですので、お部屋までご案内します。ルディール様、王妃様をよろしくお願いします」
ミーナもセニアもルディール達と一緒に行きたそうだったが、何があるとも分からないので上に残ってもらった。
「ルーちゃん、気をつけて」
「うむ、大した事はないじゃろうが、お主達は気楽に待っていたらいいぞ」
そう話しルディール達はミーナ達と別れ、部屋に入り中央へと進んだ、そして中央に全員が集まると何かが起動し床だけがエレベーターの様にゆっくりと下降を始めた。
「歴史の本とかにも大きい戦争があったと書いてあったが、その上に城が建っておったんじゃな」
「……大昔の事ですからね、もっと詳しい本などもあったでしょうが、無くなったりして時間と共に記憶も風化していくんでしょうね」
「でも、昔のことの割にはこの床とか綺麗だし、この装置もガタが来てる感じはしないわね、手入れとかされてるかしら?」
「ええ、カーディフさんが言うように、陛下が稀に下に降りて英霊達に花を捧げたりなさるので定期的に点検されてるみたいですよ」
そうしてゆっくり降りていると、バルケが一つの疑問を口にした。
「でも、陛下が下に降りてるって事は安全は確保されてるんだろ?だったら俺達が行かなくても、すぐに破壊出来るんじゃねーのか?」
そう尋ねたのでリージュがまた答えた、安全が確保されているのは降りてすぐの所までで、その先は入り組んだ迷路の様な墓地になっており、そしてその迷路は王都の何処かに続いている道もあると話した。
「私が子供の頃に小隊での探索があったみたいですが、低位のアンデッドがいるのと、内部が複雑過ぎてほとんど何の成果も出ずに終わったみたいですよ」
「あれだな、ルー坊と前に冒険した時と同じで悪い予感しかしないパターンか?」
「……バルケさん、奇遇ですね。私もそう思ってた所です」
「バルケもソアレもそう言う事を言うから、ろくでもない事が起こるんじゃぞ、と言うかそんな危ない所にリージュは行って大丈夫なのか?」
「一応、城の地下ですしそこまで危ないのはいないと思いますよ?それにAランク冒険者が2PTいますし、ルディールさんもいますし、公爵の娘ですがこう見えて結構戦えますよ?学校ではCランク冒険者クラスとは言われていますから」
「周りがよいしょしておるだけでは無いのか?まぁ今回の事もあるし何かあれば助けてやるが、大量に何かが出た時には先陣切って行ってくれると助かるのう」
「私ごと焼き払うんですね!よいしょとかしてもらってませんよ!雷光のソアレさんには劣りますが主席で卒業できますよ!学校内ですが二つ名もあるんですよ!ルディールさんには分からないでしょうが!」
「それなら当てる自信はあるぞ!」
「じゃあどうぞ!」
「【放屁】のリージュじゃな!普段からうんこくさいしのう!」
「はいっキレたー!」
また始まったとバルケとスティレは苦笑しソアレは普通に笑っていたが、カーディフはなんとも言えない顔で二人を見ていたので、ソアレが聞くと私がルディと会った頃を思い出したと言ったので、ソアレがルディールとリージュは同レベルなのであんな感じに喧嘩になるが、カーディフの場合だと余裕で負けていたので……と申し訳なさそうに言った。カーディフもそれが分かっていたからなんとも言えない顔をしていたのだった。
「リージュって娘、学校だと優等生のお嬢様って感じなのにね……ってそれを言ったらソアレも一緒か」
「……えっ?そうですか?私は特に変わらないと思いますが?」
「昔を知ってると別人かなって思う時はあるわね……最近よく笑うし」
「……なるほど、私は過去を振り返らないのでピンと来ませんね」
カーディフがソアレにそういう所よ、と言った所でようやく下に着いたようで止まった。辺りを見渡すとリージュが言った通り墓標があり花が大量に供えてあり定期的に誰かが訪れた形跡があった。
そして隅にぽつんと小さな鉄格子の扉がありそこを抜けるとかなり大きな空間が広がっており根を張るように上へ下へと通路が広がっていた。
「地下にこれだけ大きい空間があると地盤沈下が起こらぬか心配じゃな」
「いや、言いたいことは分かるんだけど……まぁ思ってる以上に深いところにあるからあまり影響無いんじゃないの?」
それから一度、皆で相談し罠があった時などに即座に対応出来るようにカーディフが先頭を歩きカタコンベの探索が始まった。
「ではカーディフよ、すまぬが任せたぞ。こちらで目的の場所への道順と支援はするのでな」
「支援は分かったけど、道順がわかる魔法ってあるの?」
説明するよりも見て貰った方が早いのでルディールは運命の女神の導きを呼び起こし、名前もしらない女の子を召喚し王妃の呪い元になっている物を探すように頼んだ。
すると少し距離があったようで火食い鳥達を探した時のように紙飛行機を折り投げてから消えた。
そしてルディールが皆に伝えあの紙飛行機を追うように言ったがカーディフから少し待ったがかかった。
「ルディ、あの飛んでるのの速度を落とせる?あの速度で飛ばれたら罠の解除とか無理よ」
「分かった少し頼んでみるのじゃ」
ルディールがそう言うと紙飛行機もその言葉が聞こえていた様にゆっくりと飛び始め、罠があったりして立ち止まるとゆっくりと地面に落ち進もうとすると、ふわっと浮き上がり飛行した。
「さてと、カーディフが先頭じゃし何かあってはこまるのう……光よ!我が友を守れ!シャイニング・プロテクション」
ルディールが魔法を唱えると光がカーディフを包み込みほんのり光った。
「本に書いて書いてあった通りじゃと対物対魔の魔法じゃからある程度は防いでくれると思うぞ。わらわは本来は攻撃魔法使いじゃから支援は期待せぬ様に」
「ありがと、切れたらまたお願いね」
そう話し奥へと進み始めるとソアレが魔法の事で少し気になったのでルディールに尋ねた。
「……ルディールさん、普段は詠唱しないのにどうしたんですか?」
「ん?今の魔法はローレット王国に来てから覚えた魔法じゃからな。安定せぬ内はちゃんと詠唱しようと思ってのう」
「なるほど、まだ強くなろうと勉強してるんですね」
「と言うか、お主とバルケなら分かると思うが……わらわの魔法は両極端じゃからな。攻撃魔法を使うと普通に地形が変わるからのう……気軽に使える魔法が少ないからその辺りをカバーするのに勉強しておる感じじゃな……この地下でディストラクションや言祝は使えないじゃろ?」
「またまた~。ルディールさんがいくらSランククラスの護衛を余裕で倒したからと言ってXランククラスの芸当は言い過ぎでは?」
と、リージュが素直に意見を述べたが、バルケとソアレはルディールと一緒に冒険した事もあり、その時の魔法を思い出し少し遠い目をしてから二人同時にリージュの肩に手を乗せ言った、マジだと。
その二人の態度が本当か嘘かの判断がつかなかったのでリージュは少しあたふたしていた。
「そういや、あの猫の魔法も見た目は可愛らしいがアレ(エアエデン)に穴開けてたな……」
「私が教えてもらった魔法も木ぐらいだと気にもせずに前進していきますね……と索敵魔法も役に立ってます、数匹のスケルトンが数体来ます」
「ソアレの方が特訓やら勉強しておるではないか、もう戦闘で使えるぐらいには昇華させておるんじゃろ?」
「はい。ライトニングワンダラーの方はかなり少ない数になりますが索敵の方はバッチリです」
その言葉通り数匹のスケルトンが目視できた瞬間にソアレから雷が飛び瞬時に攻撃しスケルトンを葬った。
そう言って何事も無かったかのように進み始めるルディール達をリージュが少し驚きながら見ていた……
「何というか皆さん立派にAランクなんですね、スケルトン程度なので私でも倒せますが……目視するまでは数は分かりませんし、どういう敵かさえも分からないので……」
「そうじゃろ!わらわの友人は凄いんじゃぞ!」
「いや、ルディールさんも凄いですが、何でルディールさんがドヤ顔してるんですか?」
「ん?友人が褒められたら嬉しくないか?ああ、そうか……リージュには分からぬか……すまぬ」
「なんで謝るんですか!それぐらい分かりますよ!というか私にも魔法を教えてくださいよ!」
「強がりは良くないのじゃ……一回のレッスン料が黒硬貨一枚なら教えてやるぞ?」
「強がってませんし!それぐらいなら月のお小遣いで余裕なので本当に払いますよ!」
「はああぁぁ!黒硬貨一枚じゃぞ!?金持ちか!」
「大公爵の娘ですが何か!」
また始まったので自分達を友人と言いさらに褒めてくれたので、バルケや火食い鳥は少しだけ照れながら嬉しそうに二人を止めまた奥へ奥へと進んでいった。
すこし歩くとカーディフが罠を発見し、近くいたルディールに注意を促した。
「ルディ、そこの壁に罠があるから触っちゃだめよ」
そう言われてその場所を見たが、ルディールにはただ石が出っ張っているようにしか見えず、触りそうになったがなんとか我慢して触らずにいると後ろから来て気づかなかったリージュが触ってしまった。
風を切る音と共に一本の矢が飛んできてリージュの顔に刺さる寸前にルディールが掴んだ。
「大丈夫か?と言うかお主、何をやっておるんじゃ……」
いくら大公爵の娘といえどもミーナ達より少しだけ年上なだけなので、貴族の為とは言え少し無理をして着いて来たリージュは、今の矢で死の危険を身近に感じ腰が抜け、その場にぺたんと座り込んでしまった。
Cランク並の強さがあるとしても、命の危機を感じるような冒険などはしていないとルディールは分かっていたので、何も言わずにわしゃわしゃとリージュの頭を撫で少し強引に背負った。それが恥ずかしかったのか顔を真っ赤にしルディールの背中に顔を埋め小さく謝った。
「別にこれぐらいで何も言わんわい、恥ずかしいと思うなら背中に顔を隠しておれ、わらわも助けられたからのう。茶化したりはせぬわい」
そういうとリージュは小さく礼をいいルディールの小さな背中に体重を預けた。
「……これがリージュ様でなかったら蹴り入れて私と場所を変わってもらうのですが……」
「まてまて、そこのポンコツ魔法使い~。そう言いながら似たような罠を起動させようとするのは止めような~」
「……何を言いますかカーディフ。私もおんぶされたいとか思っていませんよ」
少し気が緩みだした辺りでスティレが火食い鳥に檄を入れ進み始めた。
それから奥へ奥へ進んで行くとスケルトン達が増え、上位のアンデッドも多数出てきてバルケも戦闘に参戦したが、そこまで脅威はなくルディールはリージュをおんぶしたまま支援するだけで余裕だった。
「ルディールさん、すみません」
「よく言う事じゃが、そこはありがとうと言ってくれた方がわらわは嬉しいぞ。よほどの敵が出れば下ろして参戦するがのう、仲間達が強いから安心じゃな」
そう言うとまた小さくありがとうございますと言いルディールも、うむ。とだけ答えた。
スケルトン達の殲滅が終わりまた少し進むと大きな扉があり紙飛行機もそこで止まり消えた。その扉には向かい合う二人の女性が描かれていた。
その場所には城から探索部隊が出た時に発見された形跡はなく、開けられた様子も無かったが中からは人の気配のような物が感じられた。
リージュや火食い鳥、バルケにもその扉の女性に見覚えは無く、ただのそういう絵柄だと思っていたが、ルディールだけは見覚えがあり声に出た。
「双子の聖女……じゃと?」
次回の更新は、明後日か明日。
名前付きのキャラを出すとルディールと冒険させたくなるので安易に増やせない今日この頃。誤字脱字報告ありがとうございます。




