第69話 説明する
リノセス家の応接室に皆が集まり説明しようとすると、一人のメイドが来客を連れてたので、ルディールは隠しもせず、もの凄く嫌そうな顔をした。
「私も助けてもらった様なので聞く権利はあると思いますが……ルディールさん、せめて無表情にとまでは言いませんがもう少し努力してみては?」
「どこまで嫌な顔できるか努力しておるぞ……リージュよ、別に来なくて良くないか?」
「私も女の子なのでガチめのトーンで言われると本気で凹みますよ?ガラスのハートですよ」
「この国の人には通じぬが、お主のガラスのハートには語頭に防弾、語尾にメイドインジャパンと付くから大丈夫じゃ」
「ルディールさんの国の言葉なので分かりませんが、嫌味を言っているのは分かりました」
そう言ってリージュもしれっと座ったがルディールもしつこく絡みなかなか話が進まなかった……
「えっ?お主、真面目に帰らんの?」
「帰りませんよ!お話を聞きにきましたから!」
「だってお主、とーちゃんにチクりそうじゃし?わらわ割と本気で今回の事、お主の家も関わってると疑っておるしのう」
「ほっ、本人の前でいいますか……」
隠すことも無くルディールがリージュを疑ってると言うと周りはかなり呆れたが、バルケも火食い鳥もリージュの家の事を疑っていたので少し眼差しは緩くなった。
「父は知りませんが、私は今回の事に絡んでいませんしチクりませんよ。というか絶対と言っていいですが、シュラブネル家は無関係です」
「貴族が建てた修道院じゃろ?ちょろっと聞こえたが捕まったのはほぼ貴族という話じゃし、無関係はないじゃろ」
冗談とは分かっていたがルディールのリージュ弄りが変な方向に行き始めたのでセニアとソアレが少し注意して止め、今回の事の説明を求めた。
「先に言っておくがわらわは説明が下手じゃから上手く説明できぬと思うから、分からない事はその都度聞いてくれれば良いぞ。さてとどこから話そうかのう」
そう話しルディールは説明を始めた。王都で全員がほぼ死に絶えた出来事は実際にあった出来事で、ルディールの持っていた時の砂時計というアイテムは五分間だけ時間を戻せるので、貴族達が禁書を使う前まで時を戻し殴り込みをかけ禁書を奪ったと伝えた。
が、ほぼ全員がこの人は何を言っているんだろうと言うような顔をしていた。
「いや、言いたい事はわかるんじゃが……それ以外に言いようがないんじゃが?」
「えっと、私達が覚えてる皆が死んだ記憶は貴族様が禁書を使ったって事?それでルーちゃんが時間戻してもう一度起こる前に止めたって事でいいんだよね?」
「うむ、ミーナが言う事であっておるが……どう説明したらいいんじゃろな?」
そう話し頭を悩ませているとカーディフが手を上げ話しかけてきた。
「何処でそのアイテム手に入れたとか?まだ持ってるの?とかアンタ何者よ?とかあるんだけど……そうなるとルディとソアレとバルケは大丈夫なの?結果オーライかも知れないけど、貴族相手に喧嘩売ったってことよね?」
「正直その辺りは考えておる時間は無かったのう、間に合わねば全員また死ぬだけじゃし、お主達だけなら助けられたがのう」
ルディールがそう言って悩んでいると次はリージュが手を上げ話し始めた。
「その辺りは大丈夫ですよ。ルディールさんがバルケさんを頼むと言ったので、王女様とも相談しましたが、ルディールさんは名目上はリノセス家の護衛ですからね。王女様から国王陛下やその他の偉い方々に話が行く時は、リノセス家の護衛が事前に察知しAランク冒険者を雇い、貴族達が禁書を使用する前に潰したと言う形になると思いますよ」
「そう上手く行くんじゃろうか?」
「時間を戻したとは説明できませんからね、私と王女様は子供ですがそれでも影響力はありますし、実際にルディールさん達と一緒にいた訳ですからね。信憑性は出ますよ」
そう聞くとルディールはリージュに素直に頭を下げ礼を言った。
「自分の事なら雑で良いがバルケやソアレの事が心配じゃったからのう……それが消えただけでもありがたいのう。リージュよありがとう」
「私もルディールさんには助けられてますからね。何処かで返しておかないとは思っていましたので。一応、私の父の方にもそう伝えて有りますが何処まで信じてもらえるか?と言う感じはありますが悪い方向にはいかなさそうです」
そう話してくれたので、次はルディールが修道院であった事を詳しく話し王女が来たあとの事などを説明し皆で情報を共有した。
皆はもうあの夢の様な悲劇がもう起こらないと喜びはしたが、あの未来を見てしまったので手放しで大喜びは出来なかった。
「そういえば、ソアレやバルケは冒険者同士で殺し合いになっておるがギルド的には大丈夫なのか?」
ルディールがそう聞くとそういうのに詳しいスティレが簡単にだが教えてくれた。
「実際は結構マズいが……事が事だけに大丈夫だとは思う、リージュ様や王女様に口添え頂くか、一筆もらってギルドマスターに説明すれば確実だ」
そういうとリージュも断る理由もなかったのでいつでも言ってくださいと言い話しを続けた。
「後は何か……聞きたい事と話しとく事はまだまだあるのう……」
そう話すと次はセニアが上空にいた悪魔の様な風貌の何かについて尋ね、もう出ないのか?とも聞いてきたので、実際の所ルディールはその悪魔の様な奴に見覚えはなく、詳しくは説明できなかったが王都の住人の命で召喚されたので、たぶん現れる事は無いと伝えた。
そう聞くとセニアは安堵のため息をつき、自分が聞きたい事はもう大丈夫ですと伝えた。
するとリージュが思い出した様にルディールにまた話しかけた。その内容はここにいるメンバーは確実に王城に行き国王陛下に謁見になるとのことだったので、ミーナが私もですか? とかなり焦りだした。
「リージュ様!私も行くんですか!?」
「次から様付けなしで呼んでくれたら理由を教えますが?どうします?」
「ミーナよ、リージュは無視してよいぞ。毒牙にかかる事は無いぞ」
「ルディールさん、毒も分量変われば猛毒……いえ、薬ですよ?」
「流石に国王陛下に会うとか意味が分からないので、教えてくださいリージュさん」
ミーナも大公爵の娘になれなれしくするのは戸惑ったが国のトップに村娘が会うとか本当に意味不明だったので考える事を諦めた。
「そうですねー、簡単に言えばルディールさんの弟子だからですね」
「はい?」
「今回の事で確実にルディールさんとバルケさん、火食い鳥の方々は謁見しなければなりませんし、ルディールさんがリベット村にいる事を証明しないと駄目ですし、王女様のご友人ですし、他も色々ありますけどね」
「……私、あんまり関係ないような」
「そんなに話をする事はありませんから大丈夫ですよ、たぶん。それと行かないと言う選択肢は無いので諦めてください」
リージュの説明がおわるとミーナが頭を抱えソファーに倒れ込んだので友人のセニアが慰めに行くと今度はルディールがセニアに頭を下げた。
「その考え方じゃとセニアも行くというかリノセス侯爵も巻き込んでしまったのう」
ルディールがそう言うとセニアも頭に? を浮かべたのでリージュが説明した。
「ミーナさんはもしかしたら呼ばれない可能性もありますが、リノセス家は確実ですね……ルディールさんはリノセス家の護衛ですからね」
そう言うとミーナは最後のチャンスに望みをかけ元気になり、代わりにセニアがソファーに倒れ込んだ。
「なんじゃ、セニアは侯爵の娘じゃろ?陛下にお会いした事ぐらいあるじゃろ?」
「遠目で見た事があるぐらいですよ、侯爵の娘ってそれなりにいますから……」
「確かに気を使うのは確かですが、国王陛下は王女様の親と言うだけあって、切れ者ですが温和な方ですので大丈夫ですよ、周りはキツいですが。ちなみにルディールさん、切れ者だったら今回の様な事はおこらんのでは?というのは御法度ですよ」
そう言ってルディールの方を向くと図星だった様でならない口笛を吹いていた。
「冒険者としては光栄な事なんだけど、国王陛下にお会いするとか大丈夫なのかな……」
と、カーディフが心配したが、スティレもソアレもバルケも一度は会っているので大丈夫だと伝えた。
「はあぁぁぁ!いつお会いしたのよ!」
「……私は魔法学校首席ですからね、学年が上がる度に成績一位はお会いするので数回はお会いしていますよ」
「スティレは!」
「私は没落したが昔は貴族だったからな、子供の時にお会いしているぞ」
「じゃあ!じゃあ!バルケは!」
「ん?前にライフイーター亜種の魔石を、ギルドに持って行った時にかなりの発見だったらしくてその功績をたたえられてお会いしたぞ」
「裏切り者がいっぱいいるわね……」
それからしばらく皆で不明な事を話し合い、日も暮れてくるとリージュが一度帰りますねと言い帰って行った。
それに続きバルケや火食い鳥達も宿に帰ろうとしたが、呼び出しがあった時にすぐに行けるように今日からしばらくはリノセス家に泊まる事になった。
そしてリノセス家にも学校から連絡が入り、貴族達から禁書が見つかるという大事件が発生したので、落ち着くまでは休校と言う事になった。
ルディールはどうしようかと悩んでいると、リノセス家のメイドがスイベルを連れて来てくれたのでスイベルとスナップと中庭に向かった。
「さてと、姉さん帰りますよ」
「まだ何が起こるか分かりませんわ!ルディール様のおそばにいますわ!」
スナップがエアエデンに戻るのを嫌がっているようだったのでルディールが問い詰めると、精密検査は終わったが、メイドの勉強をしていてルディールの応援に行くと言う名目で逃げたとの事。
それからしばらくそのやり取りが続いたので、エアエデンからスイベル全員が召喚されスナップを捕獲し連れて帰ろうとしたので笑いながら見ていたバルケが一言お礼を言った。
「スナッポン、昼間は助かった!」
「そう思うのなら助けるのですわ!」
その言葉を最後にスイベルが一人残りスナップはエアエデンに強制送還された。
「あれだな、あの感じだとあの話し方は治らないような気がするな」
「奇遇じゃのう、わらわもそう思っておった所じゃ、スイベルは普通なのに不思議じゃのう」
「妹の私が一番不思議に思っています」
そしてリノセス家でセニアの母と食事を取り、時間を戻した事までは言わなかったが出来る範囲でルディールは説明しこれから迷惑をかけることになると頭を下げると、正しい事をしたのだから頭を下げずに前を見なさいと激励された。
食事もおわりルディールは家に帰ろうかと思ったが、ミーナもしばらくは泊まる事になったと聞き、一番大事な事を忘れていたのでミーナが借りてる部屋に向かった。
ミーナが借りた部屋の前につきコンコンとノックをして中にいるのを確認してから中に入れてもらった。
「あれ?ルーちゃん、どうしたの?」
「お主が貴族様の家で気を使ってないかとチェックしに来た所じゃな」
「変な話だけど……王女様とかリージュさんとかとお昼ご飯食べたりするから、貴族様になれて来てる自分が怖い」
などと話ながら二人はソファーに腰掛けてしばらく話をした。
それからルディールはミーナを抱きしめ自分の胸元に頭をもって来て、ミーナを優しく撫でた。
「ちょ!ちょっと!ルーちゃん!どうしたの!」
ルディールの行為にミーナはかなり慌てたが、ルディールは優しく話しかけた。
「うむ、わらわがこうしたいだけじゃ。……ミーナよ、もう大丈夫じゃ」
そう話しゆっくりあたまを撫でるとミーナの抵抗が無くなり静かに語り出した……
「ルーちゃん、あのね……クラスで仲良くなった子が他にもいてね……」
ミーナの話をうんうんと頷きながらルディールは話を聞いた。
「その子達とね、今度……一緒に……遊ぼう……話になって……ぎょうの食堂で」
それから先は言葉にならずミーナはルディールの胸で小さな子供の様に声がかれるまで大泣きした。ルディールもミーナが泣き止むまでずっと頭を撫でてやった。
それからしばらくミーナは泣き続けようやく落ち着き、ルディールに膝枕をしてもらい少しずつ話しだした。
「もう大丈夫か?」
「うん、ルーちゃんありがとう……まだ怖いけどね、皆死んじゃったのってもう大丈夫なの?」
ミーナの問いに確証はなかったがこれ以上心配させる必要も無いので、ルディールはいつもの様に自信を持って力強く答えた。
「うむ、大丈夫じゃな。わらわがおる間は任せておけ」
「流石はルーちゃんだね!……思い出すのも怖いよ。どうやったらあんな事できるんだろうね」
「何処の世界でも何処の国でも、ああいう事は起こるからのう。わらわがいた国でもあったからのう……集団が出来て周りを見下すようになったらああなるんじゃろうな……」
「なんで仲良く出来ないのかな?貴族と神官に、皆巻き込まれたんだよね?」
「詳しくは分からぬから決めつけは駄目じゃがな。自分が一番正しいと思っている人間が間違うとああなるのかもしれんのう……後は自分達は特別とかのう」
「人間って怖いね……」
「そうじゃな……でもその怖さを癒やしてくれるのも人間じゃからな難しいんじゃぞ」
「あーそうか、今、ルーちゃんに癒やされてるもんね……ルーちゃんのこと前は妹かなって思ってた時期もあったけど、お姉ちゃんだったね」
「うむ、たまになら甘えさせてやるわい」
「うん、毎回だと絶対恥ずかしいからたまにお願いします」
「それと、今回の事が本当に辛いならセニアの部屋で一緒に寝るとよいぞ」
「ん?どうして?」
「うむ、前にセニアに悪夢や辛い記憶を薄くしてくれるアイテムをやったからのう」
そう説明していると扉がノックされたので、ルディールの膝の上で寝ているのを見られたら恥ずかしいので飛び起き、前と同じようにルディールの顎にヘッドバットをぶちかました。
そして扉が開きセニアが現れたのだが……
「ミーナ、今日から一緒に寝ない?前にルディールさんから……って二人ともうずくまってどうしたの?」
「ルーちゃん、ごめん……本当にごめん……だっ大丈夫?」
「大丈夫とは言いがたい……お主、本当に何するんじゃ……」
ルディールは顎を押さえうずくまり、ミーナはおでこに手を当てうずくまり、セニアは不思議そうな顔をして少しだけ日常に戻っていった。
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