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第68話 最後の一つ

「なっ何じゃ!今のは!皆!無事か!」


「私は大丈夫だけど!ルーちゃんや皆は!」


 ルディールの防御魔法は間に合い、ミーナ、セニア、王女、リージュ、バルケ、火食い鳥なんとか無事だったが……周りに目をやると、全ての学生が倒れておりルディール達が確認すると全員死んでいた。


 その事でルディールは少しパニックになりそうになったが、カーディフに何かあると言われていてアイテムバッグの中を整理していたので唯一この状況を打開できる方法を持っていた。


 そしてすぐにスイベルにエアエデンから確認させると王都に生命反応は無かったが近くに高濃度の魔力反応があると即座に転移して知らせてくれた。


「ルディール様!このすぐ近くにいます!」


「皆、この惨状でキツいと思うが、近くに何か怪しい建物あったか!?」


 ルディールがそう叫ぶとまだこの事が理解出来ず、顔の青いカーディフが、ぼそっと貴族の修道院だと思うと力なく答えた。その方角に目をやると悪魔の様な風貌の何かが空にいたが、それに構っている時間は無かった。


「バルケ!何があってもお主はすぐ動けるか?」


 ルディールがそう聞くと、バルケは学生達の死因を調べており、かなり冷静に観察していた。


「ああ!何するかわからねーがいつでも行けるぞ!」


「うむ!王女様!リージュ!この後すぐに貴族の修道院に行くから、もしもの時はバルケを頼む!」


 リージュも王女も座り込み震えていたがルディールの言葉に大きく頷いた。


「ルーちゃん!何するの!」


「失敗したらアウトじゃが、チャンスくらいはあってもよかろう!スティレ!カーディフ!ソアレ!皆の護衛は任せたぞ!」


「ルディールさん私も行きます!」


 ソアレがそう叫んだのでルディールは頷き、すぐにアイテムバッグの中から【時の砂時計】を取り出し発動させた。


 すると緩やかに時間が戻っていき五分前の王都の姿になり街は色を取り戻した、そして即座に戻ったら説明するといい、ルディールは魔力を全て解放しシャドーステッチでバルケとソアレを掴み空へ飛び上がり貴族の修道院へと向かった。


(間に合うか?タイムストップの魔法でもあればのう!ない物は仕方ないじゃがもう少し時間は稼がねば!)


「スロウタイム!」


 そう叫ぶとルディールとバルケ、ソアレは変わらなかったが周りの人や落ちる葉っぱの速度が緩やかになった。


「ルー坊!急いでるのは分かるがわかりやすく説明してくれ!」


「時間を五分戻した!再発する前に元凶を叩く!おk?」


「分かった!」


「それで分かるバルケさんの意味も分かりません!時間を戻すって何ですか!」


 ルディールの説明で理解できたバルケと違い、先ほどまで死んでいた人達が急に生き返りかなり戸惑っていたソアレがそう叫ぶと、原因であろう修道院が見えてきた。


「言っておくがあそこでなかったら、先ほどの悲劇はもう一度繰り返されるぞ!」


「分かった!ルー坊、扉が見えたら俺を思いっきり投げろ!罠があったら引き受ける!」


「分かったのじゃ!」


 修道院には護衛のPTがかなりの数いたがルディールはバルケを信じてシャドーステッチを鞭の様にしならせミーナにもらったブレスレットで障壁を張ってやり思いっきり投げた。


 全力のルディールの投球の速度は凄まじかったがバルケも個人でAランク冒険者になれる実力の持ち主だったので、扉に当たる直前に背中のオリハルコンの大剣を構え、体をひねらせ、扉と壁諸共扉を守っていた数人を即座に真っ二つにしてさらに地面に剣を叩きつけ煙幕を発生させると同時に速度を殺し着地した。


 バルケが道を作ったのでルディールは速度を落とす事無く中に突入した。


 中には怪しげな集団が祈りを捧げていたが、一度時間がまき戻り、巻き戻る前の記憶もある為に少し混乱していた。


 その好機にソアレが魔眼で魔力の流れを見ると祈りの先に異常な魔力溜りがありそこには古く禍々しい光りを放つ本があった。


「ルディールさん!あの本が原因だと思います!」


「了解じゃ!あれで駄目なら諦めてもらうしか無いわい!」


 その本を奪う為ルディールは即座に停止魔法を唱え建物内全員の動きを封じる為に動いた。


「シャドーストップ!」


 その魔法を唱えると建物内の全ての影の動きが止まりそれに追従するように本体の動きを止めた。そして本の周りにいた数人を蹴り飛ばし本に近づいた。


「ソアレ!どうやって止めるんじゃ!」


「魔力が流れ込んでいますからルディールさんの魔力で覆ってください!」


 本に両手を突き出しルディールは全開で魔力を放出させ覆うと、本に流れていた魔力が断たれ禍々しい光も消えただ古い本になった。


 あとで王女に渡す為にアイテムバッグの中に仕舞い、ふぅっと一息つくとルディールとソアレに目がけて矢や魔法が飛んで来た。


 ルディールは即座にソアレを抱え躱し距離を取ると、矢や魔法が飛んで来た方向に話しかけた。


「誰かはしらんが、先ほどの記憶があるのじゃろ?あれをもう一度させる訳にはいかんのでな……喧嘩を売って来るなら本気で潰すぞ?」


 そう言ってルディールは背中に六枚の翼を発生させると同時にクリスタルビットも無詠唱で出現させすぐにでも殲滅させる準備を整えると、矢や魔法が飛んで来た方向とは別の所から声がした。


「あれがお前の幻惑という可能性もあるだろ?こっちは雇われの身でね。その本返してくれねーか?」


「気をつけてください。今朝いた黒点達です……さすがSランクPTですね。ルディールさんの意味不明の魔法にも対応してきますか」


 そこには魔法学校に行く前にみた連中が六人おり、戦闘態勢に入ったままルディール達をとり囲んでいた。


 そしてリーダーの様な男がソアレに話しかけて来た。


「ああ、雷光か……そこの角の生えた危ない嬢ちゃんに本を返す様に言ってくれねーか?」


「と、ルディールさん言っていますがどうします?」


「シャドウロック。話し途中に仕掛けて来る奴に慈悲はいらぬじゃろ」


 そう言って自分の影の中からシャドーステッチでぐるぐる巻きにした暗殺者の様な男を投げ返すとそれをきっかけに修道院の中で戦闘が始まった。


(他の連中はまだ動けぬか……バルケも気になるがソアレには少し荷が重い相手じゃな。まぁここにいる連中に手加減などいらぬか……)


 そう考えた後にルディールはソアレを守るように立ち戦った。流石にSランクのPTだったのでほんの数分は善戦したようだったが何せ相手が悪すぎた。


 まず定石通りに回復役を狙い、魔法使いとアーチャーがサポートに入ったら纏めて潰し、後は残りの前衛とリーダーを即座に潰した。


 先ほどのシャドウストップがどうやって回避されたかは分からなかったが、先ほどの虐殺をもう一度起こしては駄目なので、ルディールは黒点全員の手足を魔法で打ち抜き行動不能にした。


「お主達も仕事でやっておるだけじゃろうから、これ以上はせぬが行動は制限させてもらうぞ」


「痛ってー……縛れば良いだろうが……」


「バルケやソアレより強い連中がそれで止まるとは思えんのでな。おとなしくしておれば後で治してやるわい。」


 と言いながらもルディールは魔法を使用して黒点全員の五感を奪った。


 ルディールが修道院を制圧すると、影が動き出し人の形になって話をすると、王女の護衛の一人で、王女もすぐにこちらに向かっていると教えてくれまた影に消えた。そして破壊された扉から先にバルケと見慣れたメイドが入ってきた。


「おう、ルー坊終わったか?こっちはAランクだったから楽勝だったぞ」


「どこが楽勝ですの!わたくしが来ていなかったら真っ二つでしたわよ!」


「うむ、こっちは制圧完了じゃ。王女様が来てくれるらしいから待っているわけじゃな。というかスナップはいつ来たんじゃ?」


「ルディール様の応援に来たんですけど、そこの剣士がピンチになっていたので加勢してあげましたわ」


「加勢って言う割にはスナッポンもピンチだったけどな」


 それから、スナップとソアレが挨拶をして少し待っていると王女が護衛を多数引き連れて修道院になだれ込んできた。


 そしてルディール達は膝を付きここであった事を説明し奪った古い本を見せた。


「王女様、この本がそこの祭壇に祀られ怪しげな儀式に使われていたようです」


「はい、分かりましたとはすぐには言えないので、王族直轄の鑑定士に見せてよろしいでしょうか?」


 王女はそう話しすぐに鑑定士を呼びその本を鑑定させ、その間にルディール達と自分と直轄護衛で別の部屋に行き説明を求めた。


「ルディールさんの今の表情からすると危険は去ったようですね……と言うか本当に何があったんですか?」


「先ほど皆が見た王都が壊滅した記憶があるじゃろ?あれは紛れもない事実じゃ、たぶんさっきの本で使われた魔法で全員死んだんじゃ」


「えっ?でも今は全員生きていますよね?」


「わらわが最後に一つだけ持っていた時の砂時計と言うアイテムで五分だけ時間を戻し、あれがもう一度起こる前に止めたと言うのが今じゃな」


「それで分かりましたとは言えませんが……こちらに来る前に皆さんとも話しましたが、ルディールさんが守った私達以外は死んだ未来だったのですね」


「もう先ほどの時間よりはすぎておるから今は起こらんと思うから信じてもらうには難しいかもしれん」


 そう話していると先ほどの鑑定が終わったようで護衛が王女を呼びに来たので皆でその場所に向かい説明を受けた。


 そしてその本の説明を受けた内容は簡単に言えば、十万人規模の人間を生贄に使い魔神を召喚する禁書の類いだった……その事実を聞き話が聞こえた全ての人は青ざめた。


 王女はその禁書にまずは封印の魔法をかけすぐに王城に持ち帰らせ、国王陛下に渡すよう命じた。


 城から王宮騎士達が派遣されルディールの魔法で動きを封じられていた全ての人間が捕まり、修道院への立ち入り検査が始まったのでルディールは約束通りに黒点達に回復魔法をかけ引き渡した。


 王女は国のお偉いさんがたと話していたので、ルディール達はとりあえず突っ立っていると前にルディールと揉めた王宮騎士がやって来て後で城へ呼び出しはあるが、いまは解散の指示を受けルディールはミーナ達が待つ学園へと戻った。


(止められてよかったのう……じゃが次があればもう無理じゃな。時の砂時計ももうないしのう……友人達ぐらいはなんとか守ってやれると思うが……)


「やっぱりまだ残ってたんだな……禁書」


「ええ、何処かにあるとは思っていましたが、まさか王都で使われるとは誰も思わないですわ。ちらっと表紙を見た感じですとお父様の書斎にあった前に焼いたのと同じのですわ」


「なるほどな~というかルー坊」


「ん?なんじゃい」


「今はまだいいが、ミーナちゃん達に会う前にその雰囲気とその真っ赤な瞳は止めとけよ。雷光もびびってるし、かなり怖いぞ」


「あら、バルケ様ともあろう者がと言おうと思いましたが……わたくしもできればいつものルディール様に戻って頂けると助かりますわ」


「……はい、わたしは冗談抜きでびびってます。めっちゃ怖いです」


 と、今のルディールの状態はかなり不評だったので、一度止まってもらい目を瞑って何回か深呼吸しようやく血より赤い目は緋色に変わり、いつもの雰囲気に近づくとソアレが大きく息を吐き出した。


「はあぁぁぁ……ようやく戻ってくれましたか、ルディールさんできたら怒らずにいてくださいね」


「わらわはそういうのは鈍いから分からぬのじゃが、分かる物なのか?」


「……私は魔眼で魔力が見えますからね、私も時間が戻る前の上空にいたのを見ましたがアレよりさっきのルディールさんの方が遙かに恐ろしいですからね」


「わかるわかる、さっきまでのルー坊が近くにいるだけで命の危機を常に感じるからな」


「よく分からんと言う事がよく分かったわい」


「ルディール様はそれぐらいの方がちょうどいいと言う事ですわ」


 などと話して魔法学校に向かうと近くであんな事件があったので休校になり学生達は帰りはじめていた。


 そして正門あたりに行くとミーナとセニアがおり二人を守る様に、スイベル、スティレ、カーディフ達がいた。ルディールに気がつくと全員が大慌てで近寄ってたので、ルディールは詳しい話を周りに聞かれては駄目なので大まかに話し。後はリノセス家で詳しく話すと伝えセニアの迎えの馬車に乗り込んだ。


 そして皆があまり話さないままリノセス家に着きセニアに応接室に案内され、ルディールは事の経緯を説明しようとしたが、冷静になって気がつくとバルケやスナップが返り血などでよごれており先にリノセス家の風呂を借りる事になった。


 その間、リノセス家のメイドが心が落ち着くマジックハーブのお茶を入れてくれ少しゆっくり皆と話した。


「ルーちゃん、大丈夫?怪我とかしてない?」


「うむ、説明する時間がなかったから飛び出したが、上手くいったかどうかは知らぬが未然には防げたのう。カーディフが事前に忠告してなかったらと思うと変な汗がでるがのう」


 ルディールがそういうとソアレの心配をしていたカーディフに皆の視線が集まった。


「本当によく分からないんだけど、変な感じは消えたからよかったのかな?と言うかSランクの【黒点】が護衛にいたんじゃないの?あそこの修道院って」


「……あーあれぐらいぶち切れルーちゃんからしたら雑魚でしたよ」

 

「なるほど、どこか行ってたって事ね」


 と、ソアレがふざけたので信じてもらえなかった。そのおかげかはどうかは知らないが皆の緊張もほぐれ、ちょうどバルケ達も戻ってきたのでルディールは事の経緯を説明した。

次回の更新は明後日になると思います。


五千字こえてくるとなかなか毎日投稿は難しいですが、頑張ります。

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