第63話 勉学
ルディールが起きるとスイベルはもう起きており、朝食が準備してあった。
「こう、朝起きてメイドさんが居るのは新鮮じゃな」
ルディールがそう言うとスイベルが少し頭を傾げて聞き返してきた。
「はい?普段は姉さんがいると思いますが?」
「スナップはわらわより起きるの遅いぞ?わらわが起きるのが早いというのもあるがのう」
その事実を聞きスイベルは頭を抱え大きく頭を左右に振ってから大きくため息をつき、姉さんが戻ったら私がしっかりとしつけますのでご安心を、とルディールに言った。
そして朝食が終わり今度はルディールがスイベルに尋ねた。
「わらわはもうすぐ王都に行くがスイベルはどうする?」
「本来なら着いて行かないと駄目なのですが、部屋の片付けや昨日買った物の整理が残っていますので、他のスイベル達も呼び纏めて片付けようかと思っています」
「それで任せた。わらわは適当な時間になったら行って来るわい」
「ありがとうございます」
それから少ししてルディールは転移魔法でリノセス家の部屋まで飛び、いつもの様にメイドに来て貰おうと呼び鈴を鳴らすとセニアがやってきた。
「ルディールさん、いらっしゃいませ。お待ちしていましたよ」
「こう、あれじゃな。呼び鈴を鳴らしてたまにセニアが来ると当たりの様な気がするのう」
「そっそれは喜んでいいんでしょうか?」
「うむ。当たりじゃから喜んでええじゃろ。っと遅くなったが灯台の街ではミーナと共にわらわ達の捜索をしてくれてありがとう」
そう言ってルディールはセニアに丁寧に頭を下げた。その事にセニアは少し驚いたが久しぶりにあったルディールに目頭が熱くなり無事に帰って来た事を喜んだ。そしてミーナを迎えにいくのに屋敷を出た。
「ルディールさん、馬車を出しますか?この前の様に歩いていきますか?この時間だとまだ図書館は開いてないのでゆっくりと向かう時間はありますよ」
「そうじゃな~前のようにのんびり行くかのう。あれじゃな!デートじゃな!」
ルディールがそう言うとセニアは吹き出し、耳まで真っ赤になったのでルディールにからかわれながらミーナのいる寮まで向かった。
向かう途中でルディールは灯台の街へ行った時の話を詳しくしセニアも聞きたい事があればきいた。
「そういえば最近、ソアレ先生の表情が豊かになったような気がします」
セニアとソアレは親族になるのだが公には公表されていないので、家などで会う時は姉様と呼ぶが外では先生と呼んでいた。
セニアに魔法を教えているのはソアレなので違和感は無いのだが、最近距離が近くなったような気がするルディールはソアレが先生と呼ばれているのを聞くと少し笑ってしまった。
「すまぬ、ソアレが先生と呼ばれるのは何か面白くてのう。初めて会った辺りじゃと違和感が無いんじゃが……最近ちょいちょい会話に変な事を混ぜて来るからのう」
「あっそれ分かります。帰って来た時に会った時でも色々言ってましたから……昔はもう少し怖い感じでしたが……ルディールさん何か知っていますか?」
「あれじゃな、世間の荒波が彼女を変えてしまったんじゃろ、とか思っておけば後腐れないじゃろ」
そう言うとセニアは残念そうな顔をして、分かりましたルディールさんの影響で似てきたんですねと言った。
「人のせいにするでないわい。まぁ、今頃くしゃみでもしておるじゃろうな」
ルディール達が歩いている所より少し離れた場所でソアレが可愛いくしゃみをした
「はーくちゅん!」
「……ソアレの見た目で、そんな感じの可愛いくしゃみされたら何かムカつくわね」
「カーディフ……ルディールさんがいたら言われますよ?」
「あん?なんてよ?」
「胸の無いヤツは心の余裕も無いんじゃのうって」
「よし!そのケンカ買った!ルディも言いそうというか絶対言うから見たら殴る!」
同じ王都の中だが全く関係ない所で変な恨みを買いルディールは軽く身震いした。
「それと話は変わりますが、ルディールさん数日前というか学校の校舎の中にいませんでしたか?声が聞こえたんですが?」
「ミーナにも言ったが授業中に寝るのは感心せぬのう……」
「寝てませんから!」
などと、たわいも無い話をしているとミーナが居る寮に着きそこから三人で図書館に向かった。図書館につくとミーナとセニアは気がついてなかったがルディールは妙な気配を感じた。
(ん?誰か有名人でもおるのか?数人がこちらを見たよな?この感じじゃと護衛じゃとは思うが……)
と、考えているとミーナ達が話しかけて来たので自分達には危害がないと判断し、ルディールは変な気配を無視して受け付けで音消しのミサンガを借り、思い思いの本を取り学生達が勉強などによく使うスペースに向かった。
そこには先客が一人いてミーナとセニアを見かけると手を振っていた。それが誰か分かったルディールはミーナに文句を言った。
「ミーナ、謀ったなミーナ!」
「謀って無いよ!私も王女様がいるとは思ってないよ!」
慌てる二人をセニアがたしなめまずは挨拶をしないと駄目ですよと注意をし、ミーナとセニアのクラスメイトの王女様に挨拶をした。
「王女様おはようございます、図書館にきていたんですね」
ミーナが最初に挨拶をしてセニアとルディールも続いたのだが、ルディールだけやり直しをさせられた。
「ルディールさんはミーナさん達と話してる時の話し方でおねがいします」
「え?どうしてでしょうか?」
「はい、理由は二つあります。一つは私の前のテストが……赤点ぎりぎりだったので魔法について教えてもらいたいので変に敬語で話されると逆に気を遣います。もう一つは城に影武者を置いているのでこちらに来ているのがバレると少し困ります」
「赤点王女……」
「ルーちゃん!本当に失礼だからね!」
「ルディールさん!駄目ですよ!」
ルディールは思ってた事がポロッと口にでてしまい、ミーナとセニアに怒られたが王女の方を見るとお腹を抱えてうずくまって笑いをこらえていた。
王女が回復するのをまってからルディールは謝ったが今の不敬を許して欲しかったら普通に話せと言われたので仕方なくルディールはいつもの話し方で話した。
「で?王女様はまたなんで図書館におるんじゃ?」
「先ほど言われた様に赤点王女なので勉強をしにきました……」
「王女様は頭良いじゃろ?そんな変な点数取るとは思えんがのう……ミーナやセニアの様に授業中に寝てはおるまい」
二人は抗議の声を上げたがルディールは無視して王女との話を続けた。
「魔法関係がまったくと言っていいほど駄目で、他は楽勝なのですが……」
「実技の方が難しいという感じなんじゃな~」
と二人で話しているとミーナとセニアが不思議そうな顔をしてルディール達を見ていたのでその事について尋ねると、王女様の頼みとは言えいつも通りに話すルディールが凄いというか変だと言われた。
その事に対してルディールは王女様が普通に話すように頼んでいるのに敬語で話すと不敬に当たると説明したがいまいち分かってもらえなかった。
「ルーちゃん、その内捕まりそう……リージュ様にも昨日会ったらため息つくし」
「ルディールさん本当に駄目ですよ……」
ミーナが昨日の出来事を話すと少し気になった王女様が話しに混じってきた。
「ルディールさんは昨日、リージュに会ったんですか?」
「うむ、会ったぞ。いつも通りうんこくさいではなくうんこくさい奴じゃったな、おやっさんにも会って本屋まで送ってもらったぞ」
「ルーちゃん……訂正が訂正になってないからね」
「……何を話されていたか聞いてもいいですか?」
「うむ、正直に言うぞ?信じてもらえるかどうかはわからぬが」
ルディールが含みを持たせ話したので王女は頷いたので話し始めた。
「全く話を聞いて無かったから全然わからぬな、こいつ何言ってんの馬鹿じゃねーの?とは思っておったのは覚えておるが……」
ルディールの言葉に少し沈黙が流れ、ミーナとセニアは大きくため息を付き、王女様は大きく笑い出したので落ちつくまで少し時間がかかった。
「ミーナさんとセニアさんがうらやましいですよ、ルディールさんみたいな面白い人が近くにいるので」
「王女様、おすすめしません……ルーちゃんといると寿命が縮むので……」
「私、そう思う時が多々あります」
「お主の叔父にも言ったがわらわを見て縮む寿命なら元から無いぞ」
「あるよ!ちゃんとあるよ!」
それからしばらく四人で分からない事があればルディールに説明したりして時間が過ぎてミーナとセニアは昼食を買いに行き、ルディールと王女の二人きりになったので少し王女の顔つきが変わり話しかけてきた。
「ルディールさんがこの前、捕獲した二人の話を聞きますか?」
「おーおったのう。王女様がミンチにして埋めたと言う事が分かれば別に聞かんでええわい」
「しませんよ、あの方達は父に任せましたので詳しくは分かりませんが……」
「聞いた所でという感じじゃしな~。所で王女様はかなり多めに荷物持てるアイテムバッグか何か持っておるか?」
「ええ、大丈夫ですよ」
そう言うと王女の後ろに数人の護衛が音も無く現れたので、ルディールが聞くと王族直轄の部隊だから大丈夫だと話した。
ルディールは頷きアイテムバッグの中から魔力封じの宝玉が大量に入った木箱を取り出し見せると王女は驚き目を見開き、護衛達は戦闘態勢に入った。
「えっと……ルディールさんこれは?」
「うむ、お土産じゃな。」
ルディールは灯台の街でエニアック商会の商船を海賊から助けた時に投げ捨てたので、回収し王女と会う機会があれば渡そうと思っていたとも伝えた。
「捕獲した二人と同じようにわらわの手には余るのでな……正直引き取ってもらえるとありがたいが」
「ええ、分かりました。これはこちらで引き取ります。流石にこの量を個人が持つのは見逃せませんので……」
ルディールは王女によろしく頼むと頭を下げ、ついでに自分とソアレが一つずつ欲しいのでその事を伝えると二つほど机の上に載せ他は木箱ごと護衛が持って消えた。
「二つぐらいなら黙って抜いておけば良かったのでは?」
「王女様よ、自分より頭の良い奴はだませぬし、変な事したら後が大変なんじゃぞ?」
「誰かさん曰く赤点王女なのでそこまで気にしなくてもいいのでは?」
「と言っても魔力が少ないから上手く発動せんだけじゃろ?知識だけならミーナやセニアよりもはるかに詳しいのではないか?」
少し一緒に勉強していただけだが、ルディールから見ても王女の知識は凄く、質問も的を射ていた。
「自分ではそういうのは分かりませんが、魔力が人より少ないのは事実ですね……ミーナさんがうらやましいです」
「まぁミーナは王女様と逆の事を思っておるじゃろうな」
「そういうものですか?」
「うむ。そういうものじゃ」
そして二人で情報交換をしていると王女様が持って来ていた本の中に呪いに関する本があり、ルディールに呪いに関する事を聞いてきた。
王女は誰がまでは詳しくは言わなかったが、それは王女の母で王妃の事だと言うのが、話の中に必死さが混じっていたので伝わった。
「ルディールさんは魔法についてお詳しい様ですが、病気や呪い?の様な物にも詳しいのですか?」
「王女様はかーちゃん好きか?」
王女は逆に質問され、しかも王妃の事だとバレたので戸惑ったがルディールの表情が穏やかだったので素直にその質問に答えた。
「はい、厳しくもありますが優しい母ですので私は大好きですよ。今は床に伏せているのであまり会えませんが……」
「うむ、ならば良い。王妃様の状態は呪いじゃ、リージュもかかっておったから問い詰めればはくと思うぞ」
「はい?」
ルディールは王女の顔は一人の少女として母を心配する顔に見えたので、神官や貴族側の思惑をまったく無視して大問題になる事を問答無用でばらした。
「えっと、あのどういう事でしょうか……」
王女が珍しくうろたえながら聞いて来たので、リージュに出会った時の事や関係ありそうな事を事細かく話し、リージュと同じ症状なら自分が治せるとも伝えた。
そして深く考えてからため息を付き、リージュに怒った。
「リージュも母と同じ病にかかったと聞いていて心配していたのですが……騙されました!偶然治ったとか嘘だったんですね」
「まぁわらわの話を王女様が信じるというのが前提じゃがな」
「信じますよ。学校で母の話が出るとミーナさんが何か言いたそうに私を見ていた理由が分かりましたよ」
「あ~あやつの性格上、言いたくてしょうがなかったんじゃろうな」
それからしばらく王女様は怒っていたのでルディールは王女の話に付き合い落ち着くのを待った。
次回の更新は明日か明後日の朝になります。




