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朝起きたら知らない世界でマイキャラでした  作者: 絵狐
三章 知らない大海
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第60話 船出

 翌朝、スナップが朝起きたら知らない世界でマイキャラだった訳では無く、波の音で目覚めルディールを探すとまた何処かに出かけており、昨日の事もあるので少し心配になり足早に一階に降りると、ソアレがくつろいでおりルディールの行き先について訪ねた。


「ルディールさんならまだ早いので、カーディフと魚釣りに行きましたよ」


 とても恐ろしい事になる未来が簡単に想像できたのでスナップはルディールを探しに海に向かった。




「冒険者ギルドはまだ開いてないんじゃったよな?」


「まだ朝も早いからね~。海とかたまにしか来ないからのんびりできていいんじゃない?」


 ルディールとカーディフは海に竿を出し、世間話をしながらのんびりと釣りをしていた。


「そういえばカーディフ達も冒険者じゃったよな?あちこち行っておるのか?」


「そうね~他国まではあんまり行かないかな?吹雪の国はたま~に護衛で行くけどね」


「吹雪の国への閉鎖はもう解かれたんじゃろか?わらわ達が海に出て一ヶ月ぐらい経っておったんじゃろ?」


「まだね。雪は多分溶けてるけど雪解け水で川とか氾濫してて危ないからね、何?次は吹雪の国に行くつもり?」


 ルディールは特に行きたい所はなかったが、この世界と前の世界とゲームの世界の繋がりを探す事にしたが、せっかく異世界にいるので色々と回って見ようと思っていた。


 カーディフから吹雪の国の事を詳しく聞くとローレット王国とは特に仲が悪い訳ではないが、あまり国交はないと話しその理由も教えてくれた。


 一年のほぼ半分は雪が降り続き、作物はあまり育たず国の特産になる物がそんなに無いと話した。


「思った以上に寒そうな所じゃのう」


「行った事あるけど夏でも寒いわよ……後はそういう過酷な環境で育ってるからというのもあると思うけど、冒険者だと個人の力量がやたらと高いわね」


「なるほどのう~。飛空挺とかは出ておらぬのか?」


「こっちから向こうには行けるんだけど、雪が降ってる時期だと帰って来られないのよね、雪が積もるから」


「どちらにしても、しばらくは行けそうに無い感じじゃし王都の図書館で色々調べ物じゃな~。カーディフは古い書物とかそういうのに詳しい所しらぬか?」


 カーディフは少し考えてから、太古の森のエルフ達が古い魔法などに詳しいが、森はかなり深く閉鎖的な空間だから魔法を学ぶなら王都などの方がよほど勉強になると答えた。


「暇になったら一度行ってみるかの~」


「多分無理ね、森が深すぎて上から見えないし、へーんな結界を張ってたりするからろくにたどり着けないわよ。」


 ルディールはカーディフからの情報を少し考えてから、無理に行く事も今の所は無いので礼を言ってから全然釣れない魚釣りを再開した。


「しっかし全然釣れないのう……」


「……そうね、これはアレよ。魚が釣れない時は魚がいないのよ」


「うむ!間違いない」


 二人で話しているとスナップもルディールを見つけ、その表情をみると何処かに行きそうな気配は無かったので二人を少し影ながら見守りソアレ達のいるホテルに戻った。


 そしてその後、釣れない二人組が暴れだし漁業ギルドに怒られスナップが迎えにいった。


 ルディールが商会長のいるホテルに向かうと、商会長よりは少しだけ若く、イケメンと言う言葉が似合う中年のおじさんが商会長と話していた。


 そしてそのイケメン中年がルディールに気がつくと声をかけて来た。


「おー、角付きの嬢ちゃんおはようさん」


 ルディールはその声に心当たりがあり、まさかとは思ったがその人物の名前を声に出した。


「……もしかしてダッチマン船長か?」


「どこからどうみたら別人に見えるんだよ」


「言いたい事は山のようにあるが、自慢の髭はどうしたんじゃ?」


 もう髭はないが癖で髭を触ろうとして空振り、その事で笑いながらルディールに伝えた。


 幽船の御霊を手に入れ自分の生涯の目標を達成したから海賊業を辞めるという事と、次の就職先を教えてくれた。


「イオードの旦那、いや商会長の所で船乗りをさせてもらう事にしたよ、相棒の船も船員達も一緒だ」


 商会長が本来なら海賊のような悪行をしている連中など雇いませんが、ダッチマン船長は民間船や商船などは襲った事は無いのでお誘いしましたと話してくれた。


「なんじゃい、世界のお宝を求めて旅にでも出るかと思っておったわい」


「嬢ちゃん、俺が本気だしたら全部のお宝を取ってきてしまうぞ?後は若い奴の為に残しておいてやんねーとな」


「なるほどの~お主がそれでいいならそれがええんじゃろな」


「この選択が正しいかどうかは分からねーが、自分で考えて出した答えなら良くも悪くも納得できるしな」


 その言葉を聞くとダッチマン船長の後ろにバルバス船長が少し見えた気がしてルディールは少しはにかみ、ダッチマン船長を応援した。


 その笑顔にダッチマン船長も商会長も少し顔が赤くなっていた。


「嬢ちゃんあれだな、普段はアホっぽいのに黙ってるか普通にしてると真面目に美人だな……正妻にしてやろうか?」


 その言葉にルディールはため息を付きながら返事した。


「それは男に金持ってたらイケメンと言ってるのと変わらぬからな?というか小さい子が好きなのか?」


「いや?ストライクゾーンが広いだけだぞ、下は六歳から上は還暦までなら大丈夫だ」


 ルディールと商会長が変な顔をしているとダッチマン船長が冗談だよ、冗談と言って一度話が終わり。そこに火食い鳥のメンバー達も集まり、アンデッド発生の原因の報告に向かった。


 ルディールも付いていっても良かったのだが行く用事も無いので、灯台の街に来た時に買ってまだ読んでなかった本を読んだり、スナップと今後について話したりして時間を潰した。


 それから体感で二時間ぐらいが過ぎた頃、商会長達が戻って来て事の成り行きを説明してくれた。


 結果から言えばルディール達の思惑通りに話が進んだのだが、火食い鳥のリーダーのスティレの顔だけは暗かった。


「オントさん、大方こちらの都合の良い方に話が進みましたよ」


「それはありがたいが、スティレだけ暗いようじゃがどうしたんじゃ?」


「ええ、ソアレ様とダッチマン船長がほとんど解決した事になっているんですが、火食い鳥のメンバーの今までの功績もあり今回の調査報告でAランクに上がるようなのでこのまま飛空艇に乗って王都まで直行ですね」


 その話を聞き、自分の勝手な都合でスティレ達に迷惑をかけたのでルディールはスティレ達に頭を下げた。


 その事にスティレ達は驚いたが、カーディフやソアレが笑いながら説明してくれた。


「ルディ、別に謝らなくていいわよ」


「じゃが、わらわのわがままのせいじゃろ?」


「……悪く言えばそうかも知れませんが、私達もそれなりに結果を出していたので、Aランクに上がるのが少し早くなっただけの話でしたから」


「そうなのか?」


「ええ、ギルドの職員さんに話を聞いたらあと何回かクエスト受けて、大型の魔物を倒したらAランクになってたみたいよ」


「なるほどのー。実際カーディフもソアレも戦闘に関しては凄いからのう」


 そうルディールが言うと二人は嬉しそうだったがスティレだけはまだ難しい顔をしていた。


「二人が凄いのは私も認めているが、それでもAランクでやって行けるのか心配だ。無理に背伸びしても大変だと思う」


「なるほどのう……じゃが背伸びしていると思っていても今までが屈んでいただけかも知れぬぞ?と偉そうな事を言ってしまったが本当に申し訳ない」


「いや、ルディール殿が謝るのはお門違いだ……私が心配しすぎなのが問題だし、本来は手柄を譲ってくれてありがとうと言うのが本当だと思う」


「なら、こうしましょう。スティレがリーダーなんだから、あんたが判断してAランクでやっていけないと思ったら降格の申請を出しなさい」


「……それいいですね。私も新しい魔法を覚えたので逃げる時間ぐらいは稼げますよ」


 二人の意見を踏まえてスティレは少し考えてから、その提案に乗りしばらくは様子見でAランクにいる事になった。


「自分達で降格とかできるんじゃな」


「ああ、ランクが上がると危険な依頼も回ってくるからな。生活するだけなら高ランクにならなくても問題はないから駄目なら自分で下げる人達もいるにはいる。まぁSランク並に強いのにCとかBだと流石に駄目だがな」


「なるほどの~冒険者ギルドも色々あるんじゃな」


 そしてアンデッドの件が片づいたのでヒュプノバオナスの魔石と幽船の御霊の件について尋ねた。


 魔石の件は私がと商会長が話し始めた。魔石の鑑定は本物でソアレの雇い主が商会長なので、契約どおり商会長に4、火食い鳥に6でオークションにかけ売り上げを分けると教えてくれた。


「いや~次回のオークションの目玉ができました!災害クラスの魔物の魔石ですからね!いくら付くか楽しみですよ」


「おお、いい感じに収まったのう」


「……ルディールさんの取り分はいらないのですか?私達で三人で割っても恐ろしい額になると思いますよ?」



「前に冒険した時の魔石代もあるし、わらわはありがたい事にお金には困っておらぬからのう。あれじゃ。Aランクになった祝いと思って受け取っておけば良いわい。装備も充実できるじゃろ」


「ルディール様が買う物で高いと言えば本ぐらいですものね、わたくしも特に欲しい物はございませんし」


 そうルディールが伝えると次は火食い鳥のメンバー達が丁寧に頭をさげ礼を言った。


「……お祝いをくれると言うのならルディールさんが欲しかったですが、今回はこれで手を打ちましょう」


「もらってどうすんのよ?ルディは冒険者じゃないからPT組めないでしょうが」


「カーディフ、そういう意味じゃないが……それでいいか」


 そう話す火食い鳥達をながしてルディールは最後にダッチマン船長に幽船の御霊について訪ねた。


「鑑定して貰ったのか?」


「ああ、簡単に言えば魔力を使って死者の魂や精霊を具現化するとかそういう感じのアイテムだったな。鑑定の記録とかも抹消してもらったから周りには漏れないと思うがな」


「なるほどのう……効果がわかると狙ってくる連中もおるから気にせぬのであれば、それが一番いいのかもしれぬのう」


「まぁ、そんな所だな」


 それからしばらく話をして、商会長が呼んでいた飛空艇が到着したのでルディールはダッチマン船長に別れの挨拶をした。


「うむ、ダッチマン船長。世話になったのう」


「おう、俺の方こそ世話になった。嬢ちゃんのおかげで夢が果たせたからな……感謝してもしたりねーよ」


「そうでも無いじゃろ、船長なら遅かれ早かれ見つけておるじゃろな、海底から上がれたかどうかは分からぬが」


「確かにあれは無理な様な気がするな……」


「では、船長よ。灯台の街に来た時はまたよろしく頼む」


「おう。俺の嫁さんになりたくなったらいつでも来いよ」


 その言葉に遠慮すると言い、二人は握手をし別れルディールは飛空艇に乗り、ソアレやスナップも世話になった船長に礼を言い飛空艇は大空に飛び上がった。


 船長は飛空艇が見えなくなるまで手を振っていた。


 商会長の呼んだ飛空艇は高速型だったので乗り心地はイマイチで、中央都市から王都に行くときに乗った飛空艇の様に娯楽施設などはなかったがその分速く夕方には王都に着いた。


 王都にもあるイオード商会の店舗に商会長を送ると、さっそくヒュプノバオナスの魔石のオークションに付いて段取りを立て始めたので火食い鳥の商会長の護衛依頼は達成された。


 そのまま王都の冒険者ギルドに向かい火食い鳥達のランクアップを済ませた。話は灯台の街から伝わっており、スムーズに話が進みソアレ達はAランクの冒険者PTになった。


 ルディールとスナップはその事を喜び、これからの予定について訪ねた。


「お主達はこれからどうするんじゃ?」


「せっかく王都にいるから、ここで簡単なクエストを受けつつオークションが終わるまでは王都で活動しようと思う」


「今日はこのまま宿探しね」


「なるほどのう、ではここでお別れじゃな。わらわも王都を散策してから帰るかのう」


 などと話しているとスナップからストップがかかった。


「ルディール様もソアレ様も何か忘れていませんか?ミーナ様とセニア様に無事を報告しに行かないと駄目ですわ」


 そう言って街の方を指さすと下校中の魔法学校の生徒達が目に付いた。


「心配はかけておるからのう、顔ぐらい見せに行っておくかのう……」


「……そうですね、セニアも帰っていると思うので私達もリノセス家に向かいます」


 ルディールはソアレ達と別れミーナがいる学校の寮に向かった。


 寮の受付でミーナを待っていると、どたばたと走る音が聞こえ、目的の人物が姿を見せると同時にルディールに抱きついて来た。


「ルーちゃああん!おがえりーー!」


 ルディールに抱きついた瞬間にはミーナが泣き出したので、部屋まで連れて行き、落ち着くまで頭を撫でてやった。


 そしてスナップが入れてくれた紅茶を飲みつつ、ルディールは何があったのかをミーナに話し説明した。


「そうなんだ……私はとりあえずルーちゃんが帰って来てよかったよ……」


 そう言って目元を赤く晴らしていたがルディール達の帰還を喜んだ。


「うむ、心配かけたようじゃな」


「うむ。心配したよ!というかルーちゃん。少し前にこっち来てなかった?」


「さてどうじゃろな?お主が授業中に寝ていて夢には出てきたかも知れぬぞ?ほれ、出演料はらうのじゃ!」


「払わないし!寝てないよ!お昼時だったからね!セニアも同じように声が聞こえたって言ってたから気のせいじゃ無いと思うんだけどな~。と言うかルーちゃん雰囲気変わった?」


「うむ、一つの恋が終わったからのう。大人になったと言うヤツじゃな!」


 そう言うとミーナが紅茶を吹き出しルディールの顔面に直撃した。


「あっ!熱いのじゃ!……お主!前のヘッドバットの時もそうじゃがわらわに恨みでもあるのか!」


「ごほっ!ゴホゴホ!ごめん、本当にごめん……ルーちゃんが変な事言うから……ごほっ」


 お二人とも何を言っていますのと、スナップが片付け始めた。


「ルディール様の戯言は放っておいてミーナ様の心配も杞憂に終わってよかったですわ」


「ほんとルーちゃんもスナップさんも無事で良かったよ~」


「でもまぁそこのメイドに鼻を折られたがのう……」


 ルディールの余計な一言で二人の目は点になった。


「ルディール様!この感動的な場面で何余計な事を言ってやがりますの!」


「事実は正確に伝えぬと駄目じゃと教えてもらわなかったか?」


「スナップさんそこまでしたんですか!?」


「ミーナ様が殴ってでも連れて帰ってこいと言ったからですわ!不可抗力ですわ!」


「言って無いですから!殴って連れて帰ってこいとか言ってませんから!」


「お主が原因かーー!!」


 そして収拾が着かなくなりルディール達はとうとう寮長に怒られた。




 (同じ世界に似たようなヤツは三人はいると言うが異世界も含めたらいっぱいいるんじゃろうな……)


「ん?ルーちゃん、私の顔に何か付いてる?」


「いや、一つの嵐が過ぎたからまた別の嵐が来そうじゃなっと思ってのう」


「もう騒がないよ!」


 ルディールの一つの船旅は終わってしまったが、新しい世界で新しい色々な風を帆に受け船はまた少しずつ動き出した。

これにて三章閉幕です。四章の開始をお待ちくださいませ。


土曜日か日曜日ぐらいになると思います。


いつも誤字脱字報告ありがとうございます。助かっております。

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