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朝起きたら知らない世界でマイキャラでした  作者: 絵狐
三章 知らない大海
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第53話 大渦へ

 ルディール達は海上都市を探索していると、さっきまでそこに居た人や置いてある物が少しずつ消えていきはじめた。


 その光景が目についたバルバス船長がルディール達に話しかけて来た。


「そろそろ海上都市が消えるな……」


「という事はそろそろ海の底に行く大渦がでるんじゃな?」


「ああ、こうやって夢から覚める様に消えて行くんだ……そして気がつくとまた海を彷徨ってここに流れ着くんだ……ダッチマン!そろそろ準備しろよ!」


 まだ時間的な余裕はあるようだったが、ルディール達は小走りに船に向かい乗り込んだ。


「人が少しずつ消えていきますわ……」


 その言葉通り船に乗り都市を見ると、少しずつ少しずつ人が光の粒子になって消えていった。


「……不謹慎ですが綺麗ですね」


 ソアレがそう言うと皆が頷き、消えて行く海上都市を少しだけ眺めた。


 そしてルディール達の船が港から出ると、追従するように海賊の亡霊達も沖に出て、海から消えゆく海上都市を見守った。


 沖に出た海賊達の船も一隻また一隻と消え、その中のバルバス船長が乗るハイレディン号が近づき声をかけて来た。


「ダッチマン!ここでお別れだ!しくじって俺たちみたいな亡霊になってもいいが、海賊なら狙ったお宝取ってこいよ!」


「ああ!バルバス船長!任せとけ!俺はあんたよりすげぇ!超海賊だからな!しくじらねーよ!」


「なら!大丈夫だな!」


 ダッチマン船長とバルバス船長はそれ以上言葉を交わさずお互いに瞳で会話し終えると、バルバス船長も他の海賊達と同じように光の粒子になって消えた。


「また、酒でも飲みたいもんじゃな」


「流石にわたくしは幽霊にはなりたくありませんわ!」


 と、ルディール達が消えゆく海賊を見守っていると海上都市もゆっくりと消え始めたのでダッチマン船長がかけ声を上げ大渦の出現に備えた。


「……もう少しで都市の全てが消えますね」


「うむ、先ほどまでは海賊達が居てくれたから明るかったが、海上都市も消えると夜空の明かりしか無い暗い中を、大渦に飛び込むと考えると少しゾッとするのう」


「……海の底はあの世と繋がっていると言いますから、最悪帰って来られないかも知れませんね」


「わらわに任せておけ、船の操舵は出来ぬが、帰るぐらいならなんとかしてやるわい」


「ルディール様の手に余る事だったら、わたくし達はどうしようもありませんわ!」


「いや、それは過小評価しすぎじゃぞ……っとそろそろか?」


 その言葉通り海上都市の最後の一欠片が消え海が真っ暗になると大きなうねりが始まった。


「おしゃべりはそこまでだ!大渦がでるぞ!」


 ダッチマン船長の叫びと共に海がねじれ、波を巻き込みはじめ、やがて大きな大きな渦へと変わっていった。


 その大渦はルディール達が思って居たより遙かに巨大で一つの島を思わせるようだった。


「なんで!このサイズの大渦を今まで誰も気がつかなかったんだよ!夜にだとしても漁船とか商船が通るだろうが!」


「船長!飲まれて帰って来れなかったのもあるじゃろう!操舵任せたぞ!」


 大渦があまりにも巨大だったので出現した時にはルディール達の乗る船はもう進む事しかできない状況だった。


 そして渦の流れは凄まじく屈強な船員達も海に投げ出されそうになっていた。


「ルディール様!流石に投げ出されそうですわ!」


「うむ!少し待っておれよ!シャドーステッチ!」


 ルディールはスナップからの問いに即座に答え、捕縛用の魔法を船に居る全員に使い、動きは阻害しないが投げ出されない様に命綱代わりに使用した。


「船長!これで無茶しても大丈夫じゃぞ!気にせず操舵せい!」


 ルディールの声に船長が大きく礼を言い、船員達を気にしなくなった分操舵は荒くなったが確実に波を掴み、大渦に乗った。


「ルディール様、ありがとうございますわ。これで落ち着けますわ」


「いや、まだじゃな」


「……まだですね」


 スナップがそう言うと、ルディールとソアレが船とは少し違う所を見ながらそう呟き船長に向かって叫んだ。


「船長!何かでかいのがくるぞ!」


「なんだ!大海蛇か!大王イカか!?」


 船長が叫ぶと、大渦が割れ大きな何かが姿を現した。


「なっなんじゃ?クラゲか?でかいが……なかなかグロテスクじゃな……」


 その言葉どおりルディールの乗る船より遙かに大きなクラゲだったがその姿はかなり異形だった……クラゲの触手に当たる部分は所々に別の生き物だったもののパーツが組み込まれ傘の部分には人の顔の様な物が大量に写っていた。


「きっ持ち悪いですわ!ソアレ様アレはなんと言う魔物ですの!」


「……わっわかりません!アンデッドなのは確かです!」


 その見た目の悪さに普段は冷静なソアレも少し取り乱してうろたえていた。


「嬢ちゃん達!あれは死んでるがヒュプノバオナスっていう眠りクラゲだ!かなり色々混じっているが元の部分を見ると特徴的な色がでてる!クラゲの魔物で淡い緑が出てるのはそいつだけだ!」


 ダッチマン船長のその言葉を聞きソアレがさらに顔色を悪くしその魔物について教えてくれた。

 

「ルディールさん気をつけてください!災害クラスの魔物です、炎毛猿やガイアロックドラゴンより危険度、難易度共に上です!」


 ソアレがそう叫んだ直後に触手になっていると思われる何かの骨を大きくしならせ船に向かってたたき付けて来た。


「コキュートスウォール!」


 ルディールは攻撃がきた直後に巨大な氷壁を発生させヒュプノバオナスの攻撃を凌いだ。


(くっ!スプリガンには劣るがなかなか重い攻撃じゃな!)


「嬢ちゃん助かった!どうする!ここでやり合うなら近づくぞ!」


 ダッチマン船長はそう提案してきたがルディールは断った。


「いや!船長は操舵に集中して渦の中心へ向かうのじゃ!こっちはわらわ達で対処する」


「あいよ!嬢ちゃんの言葉を信じるぜ!野郎共!手が空いてる奴は大砲で援護してやれ!」


 船員達は船内に入り砲弾を用意してルディール達を援護するのに砲撃を始めた。砲弾は直撃するがダメージを受けた気配は全くといって良いほど無かった……


「ルディールさん!あれがヒュプノバオナスなら私達が使う雷系が弱点だと言われています!まずは、私から仕掛けます!」


 ソアレはそう言うと神鳴りの杖をかざし詠唱を開始した。


「雷よ!我らが敵に裁きの鉄槌を!ライトニング・ジャッジメント!」


 ソアレの神鳴りの杖に呼応するように空に無数の稲妻が発生し、ヒュプノバオナスに向かって一本の巨大な雷を落とし、海が沸騰し水蒸気を発生させ視界を塞いだ。


「……今の所私が使える最上位の魔法ですが……どうですか?」


「まだじゃな!」


 ルディールがそう叫ぶと、水蒸気をわり細い触手がソアレ目がけて飛んで来たが、ルディールがソアレを抱きかけなんとか躱した。


「……すみませんルディールさん、ありがとうございます……重くないですか?」


「思った以上に軽いと思っておった所じゃなっとそれは良いが、効いた気配が無いっぽいぞ」


「……私もそう思ってた所です」


「ならば!わたくしの出番ですわ!エデンブラスター!」


 スナップの胸辺りが青白く光り収束されたエネルギーがヒュプノバオナスの触手に一本を吹き飛ばしたが、水中にいる無数のアンデッドが集まりいびつな触手へと形を変えた。


「なーんかこう最近、無駄に再生するボスが多いのう……」


 そうルディールが呟くとスナップがあのクラゲとスプリガンを一緒にしたらマジで殴りますわよと顔が語っていた。


「じゃが、何かしら理由があるんじゃろうな!少し観察させてもうらうのじゃ!ライトニングワンダラー!」


 スプリガン戦の時のようにその魔法を唱えるとヒュプノバオナスの周辺に無数の雷球が発生しゆっくりと包囲を狭めていった。


「スプリガンの様に高機動ではないから躱すのは無理じゃろう!」


 ルディールのその言葉どおりヒュプノバオナスは雷球を躱す事は出来ず当たった所は吹き飛び体に電流が流れて居るようだった。


 ダメージを受けると電流が通りその一瞬だけヒュプノバオナスの体の中が透き通り中が確認でき、その中に崩れてはいたが人型を確認出来た。


「ん?なんじゃ?一瞬じゃが中心に人の型があったぞ」


「……ルディールさん私も確認しました!あの形が残っている人型が雷を反らし流しているようです!ですがその人型もあのヒュプノバオナスの一部です!」


「そうなると高火力で消滅させるしかありませんわ!ルディール様!わたくし達がいきますわ!防御をおねがいしますわ!」


「分かったが何をするんじゃ!」


 ルディールが叫び聞くとスナップがまたエアエデンを指さしたので、その仕草に恐怖を覚えとっさにルディールが使える最上位の障壁を展開させた。


「オーロラ・セブンス・ウォール!」


 空に七枚のオーロラが現れ、折り重なる様に船を包み込んだ瞬間にエアエデンからスナップが使うわざと同じ色の光が降り注ぎ、ヒュプノバオナスを包みこんだ!


 その威力は凄まじく一瞬だが大渦さえも消し飛ばした。


「これでどうですわ!エアエデンのレーザーですわ!」


「メイドの嬢ちゃんはなんつー魔法を使うんだよ……」


 その威力に船に乗っている全員が言葉を無くし呆気にとられたが、ヒュプノバオナスはまだ消滅していなかった。


「あっありえませんわ……陸地で撃てば地形がかわりますわよ?」


 だが、大ダメージは受けたようで残っていた数本の触手を船に向いて投げつけたり、囮に使い文字通り、逃げた。


「くっ!潜られたか!じゃがまだ射程内!」


 ルディールが飛び込んでとどめを刺そうとしたが、ソアレが抱きついて止めた。


「ルディールさん!駄目です!あの攻撃で死なない相手の土俵で戦っては!」


「嬢ちゃん!今は底に行くのが先だ!もう会う事も無いかもしれねーからほっとけ!」


「ふぅ……わかったのじゃ。ならば後は船長まかせたぞ、また出たら追っ払ってやるわい」


 まだ大渦という脅威は残っていたが、ルディール達はヒュプノバオナスの排除を喜んだ。


(王の鎮魂を発動させたまま戦っておったが浄化できんかったのう……高位のアンデッドという事じゃな……他のアンデッドは浄化出来ていたが消滅する前に取り込まれたらヒュプノバオナスの一部になるんじゃな)


 そう物思いにふけっていると船の端で体育座りして凹んでブツブツと呟いているスナップが目についた。


「お父様の科学は世界一……お父様の科学は……」


 放っておくか元気づけるか悩んでいるとソアレが近づいて来た。


「ソアレよ先ほどは助かった。ありがとう」


「いえいえ、ルディールさんがアレを追いかけて行った所に襲撃されたら、多分沈みますよ」


「お主やスナップが居るんじゃしいけるじゃろ?」


「……私が使った魔法でもルディールさんの魔法の雷球一発にも及びませんけどね」


「かも知れぬが、わらわは魔眼も持って居らぬしお主ほど冷静に戦局を見れんからのう」


「……そうですか、あとルディールさんの魔法ですがまた教えて貰えますか?」


「ん?ライトニング・ワンダラーか?」

 

「はい、私に使えるかどうかは分かりませんが……」


 少し教えてもらえるか不安そうだったが、この魔法使いにルディールの魔法を教えても悪用される心配はしていなかったので戻ったら教えると約束した。


「……皆で無事に帰りましょう」


 ソアレが嬉しそうな顔をした所で段々と大渦の中心に近づいて行った。


 そしてルディール達が乗る船は誰も行った事の無い知らない海の底へと向かった。

今週もまたよろしくお願いします。次回の更新は明日になると思います。

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