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第52話 海上都市

 幽霊船の後を追いしばらく船を走らすと、海上にぽつんと浮かぶ街が一つあった。その場所は海図や地図にはのっていない多くの人達が求めた海上都市だった。


「不思議じゃな、ファンタジーと言えばそれまでなんじゃがどうやって浮いておるんじゃろな?亀の背中の上とかか?」


 ルディールがそう言うとソアレがファンタジーって何ですか? と首を傾げたがあの都市も幽霊船と同じようなものですねと教えてくれた。


 そう会話しているとスナップが急に独り言を話し出した。


「ええ、分かりましたわ。そちらでは確認出来ないんですのね」


「スナップよ大丈夫か?そろそろ壊れたのか?」


「壊れていませんわ!ガチトーンでの心配はやめて欲しいですわ!怒るに怒れませんわ!上ですわ上」


 と、ルディールの言葉に少し怒ったが、指をあげ夜空に目をやるように言うと、距離はかなりあったが真上にエアエデンが来ており衛星の様に少し光っていた。


「なるほど、幽霊が怖いからその大元をレーザーで焼き焼きするんじゃな?それは感心できんのじゃ……」


「……スナップさん怖いのはわかりますが、するにしても一度行ってからにしましょう」


「ち・が・い・ま・す・わ!こちらからスイベルに連絡して上空から確認してもらっただけですわ!破壊しようとは……あんまり思ってませんわ!」


 二人の顔が少しは思っているんだという様な表情をしていた。


「今の話の感じじゃと上からは見えぬのじゃな?」


「はい、エアエデンに搭載されてる観測系の装置で海上都市が確認出来たのは魔力だけっぽいですわ、この船は確認できた様ですけど……」


「こういう自分の理解が及ばない物は、怖くもあるがわくわくするのう」


「わたくしは怖い方が多いですわ、非科学的なものはどうも駄目ですわ」


「進みすぎた科学は魔法と同じと言う言葉あるぐらいじゃし、逆もまた然りという感じじゃな」


「ルディール様はアホなのか賢いのか判断に困る事が多々ありますわ……」


「お主の好きな方でええわい。っと着いたようじゃぞ」


 幽霊船ハイレディン号が海上都市の港に入って行ったので、ルディール達の船も追いかけ入港し停泊した。


  そこは全体的にほんのり光っていたが、地面の上もしっかり歩け崩れている建物もあったが、灯台の街と変わらず人々が暮らし生活をしていた。


「こう、目ん玉でろーんな感じか、墓場で運動会しそうな方々を想像しておったが案外ふつうじゃな」


「ほんのり光っていますが、足がタコや半魚人を見ていると普通ですわね」


「……生きてるって本当に何でしょうね」


 そう話しているとバルバス船長とダッチマン船長がルディール達を呼び、酒場に向かう事になった。


 酒場に着くとそこには海賊の格好をした連中が大量におり酒をあおりどんちゃん騒ぎをしていた。


「おお!バルバス船長ここは凄いな!楽園か!?おっ!同期の海賊じゃねーか!ちょっといってくる!」


 ダッチマン船長は酒場の中に自分が知る、先に死んだ海賊達を見かけその中に消えていった。


「あいつ……海上都市の事を聞くんじゃなかったのか?」


 と、過去の亡霊達と酒を飲むダッチマン船長に呆れながらも少し嬉しそうにしていた。


「わらわ達で良ければここの話を聞かせてくれるとありがたいのう」


「ん?ああダッチマンの女か……」


「違いますわ!どこからどう見たらそう見えますの!」


 スナップが怒りながら訂正すると、バルバス船長もダッチマン船長と同じように笑った。


「冗談だよ冗談。何が聞きたいって、まぁここの事だな……じゃあ情報交換だ。俺が死んでからの事を聞かせてくれるか?」


「やはり死んでおるんじゃな?」


「ああ、死んだ記憶はあるし彷徨ってる記憶もあるな……」


「……このメンバーの中だと私が一番詳しいと思いますので説明させてもらいますね」


 ソアレはそう言うと、歴史の教科書にのってる事や大海賊バルバスの悪事や未知の大陸の発見の事など多岐にわたる偉業や悪行を本人に説明した。


 すると本人は一人で大笑いしたり一人で怒ったりしていた。


「話だけ聞くと普通に大悪党じゃのう……」


「偉業より悪行の方が多いですわね……」


「嬢ちゃんら何言ってんだ、海賊が偉業をこなす方がおかしいだろ」


「……ダッチマン船長と似たような事を言ってますね」


「そうか俺が死んでからもう三十年か……そりゃー、ダッチマンも船長になるわな……」


 少し遠い目をしながらバルバス船長はグイッと酒をのみルディール達にも酒をつぎ、ルディール達もそれを飲んだ。


「なかなか美味い酒じゃが、何で飲めるんじゃ?この酒も幽霊みたいなもんじゃろ?」


「なんでだろな?魂が酒を求めてるんじゃねーのか?」


「てっ適当ですわ」


「……本物と変わりがないので体が錯覚してるんでしょうね」


「さてと、この海上都市についてだったな……ダッチマンはいいのか?」


「駄目じゃろうが……あそこまで気持ちよく歌ってる人間を呼ぶのも気が引けるのう」


 違げーねーや、とその方向をみると他の海賊達と肩を組み、並べたテーブルの上にあがり楽しげに歌を歌い酒をあおっていた。


 そしてバルバス船長はもう一度酒を飲みこの海上都市について話し始めた。


「と、言っても見たまんまだな。海で死んだ連中がここに集まっているだけだ。この海上都市にある物は生前の記憶から形になってるみたいだし、お前らが飲んだ酒も俺のおきにいりの酒だしな」


「なんでこの海上都市はあるんじゃろうな?大昔のおとぎ話からあるんじゃろ?」


「俺が生きてた頃の考察になるんだが、ダッチマンが探している幽船の御霊が関係してると思ってるが確証はねぇな」


「ダッチマン船長も言っておったがそれはどういうお宝なんじゃ?」


「あ~物に心を授けるアイテムだと俺は聞いた事があるぐらいだな……それが関係してこの海上都市を造ってるとは思っているが……俺たちみたいな死人もいるからな~正直わけわからん」


「失礼な話ですけど、バルバス様は生前の悪行が嘘の様に落ち着いておられますわね」


「一回死んでるからな、余計な業も波にのまれたんじゃねーのか?知らんけど」


 とルディール達が真面目に話していると樽や酒瓶が飛んで来たのそちらを向くと、ダッチマン船長が他の海賊達と喧嘩を始めていた。


「海賊を満喫しておるのう……」


「……海賊ですから仕方ないですね」


「こちらに飛んできたらわたくしも参戦いたしまぶっほ」


 スナップが途中まで話すと酒瓶が顔面に直撃したので、少し失礼いたしますわと言って乱闘に入っていった。


「あやつは何をやっておるのじゃ……とバルバス船長、まだ質問よいか?」


「おう、死んでるしな。酒も奢ってくれたら全然いーぞ」


 実体のある酒が飲めるのかとルディールが聞くと、想像したら出てくるんじゃねーかと言われたのでゲーム中によく飲んだソーマの酒を想像すると光が集まり形になったので、バルバス船長についでやると美味いといって飲んだ。


「……ルディールさん美味しいですね、何処で買えますか?」


「ん?わらわのおった国の酒じゃからな~。家庭菜園にそろそろ実がつくから酒造りでもすれば多分作れるぞ」


「……分かりました。帰ったらドワーフを紹介します」


「おっおう。それと聞きたいんじゃが船長達とは別のアンデッド達はここには居らぬのか?」


「あの目ん玉でろーんって奴らか、あいつらと俺たちは別口だな、俺たちは未練タラタラだし意識もあるしな、向こうは意識も未練も無いしただ生き返っただけって感じだな」


「なるほどのう、大海賊にもなると未練タラタラなんじゃな」


「大体の物は手に入れたがダッチマン船長と一緒で幽船の御霊が俺の心残りになってるのかもな」


「なるほどのう……やはり海上都市の何処かにあるのか?」


「大方の見当はついてるがここにはねーな、多分だが海上都市の真下だな。童話にもあっただろ?流れる渦を抜けて取りにきなってな。この都市は定期的に出ては消えるんだが、その時に大渦がでるからたぶんそこだな。と言うかそこしかねーなこの都市には無かったからな」


「……無いと言うことも考えられるんですね」


「ああ、その可能性もあるが、大海賊の俺様が言うんだから確実にあるぞ。海上都市が現れたから消える時に確実に大渦が出るから気になるなら行ってみな。俺たちは海上都市が消える時に一緒に消えるからな、まだしばらく大丈夫だから話ぐらい付き合ってやるよ」


 船長がそう言うと次は大樽が飛んで来て、ソアレに直撃しソアレが少し行って来ますと神鳴りの杖を握りしめ乱闘に参戦した。


「……もはや何も言うまい」


「海上都市を満喫してていいんじゃねーか?で、嬢ちゃんはこっちの世界の人間じゃねーな?」


 と、何の前触れもなくバルバス船長がルディールに訊ねた。


 ルディールは酔っていたのもあったが、それを聞かれた所で不利益にならないと思ったので素直に答えた。


「うむ、そんな所じゃなどうして分かったんじゃ?」


「俺も生前は悪党でかなりの人間を見てるから雰囲気とかそういうので分かるのと、嬢ちゃんの雰囲気というか魂の色が俺を殺した奴と一緒なんだよな。まぁもう死んでるし周りには言わねーよ」


「ありがとうなのじゃ。それと聞こうと思っておったんじゃが、異界の魔神と呼ばれた奴はどんな奴だったんじゃ?」


 ルディールがそう聞くと、船長は目を瞑り髭を触りながら思い出し話してくれた。


「クラゲのような女だったな……目があった瞬間に殺されて気がついたら幽霊船になってたからそれ以上は解らないがな」


「クラゲの様な女のう、最後は討伐されたと言う話じゃったな」


(そういえばゲーム中にもそんな感じの居たのう、この世界にもバイコーンやエルフとかおるし似たようなのがおるんじゃな)


 と、少し考えているとバルバス船長がダッチマンの方を息子を見守る父の様な顔で見ていた


「死んでからの方が良い事あるってどうなんだろうな?」


「それは夢のような物じゃからのう、なんとも言えんわい」


 二人で乱闘をみながら酒を飲み、終わる気配が無かったのでバルバス船長が、いいかげんウザいからちょっくら行ってくらーと言って乱入し全員ボコボコにして乱闘は収まった。


「さすがは大海賊じゃな……」


「さてとそこの角付きの嬢ちゃんにも言ったが、海上都市が消える時に大渦が出るからな、ダッチマン!幽船の御霊が欲しいんだったら準備しとけよ!」


「ああ!まかせとけ!」


 そう言って一度、酒場から出て海上都市を探索する事になり、そのついでにダッチマン船長にバルバス船長から聞いた話を全て話した。


「ここの真下か……海上都市ですら見つけるのもほぼ不可能だし普通に見つけるのは不可能か……」


「この場所で潜っては駄目なのか?」


 ルディールがそう質問すると、バルバス船長がこの辺りの海は一番深く海流も複雑で底に行く事も不可能だし戻って来るのも不可能だと教えてくれた。


「さすが大海賊じゃな」


「おう、生前に喧嘩売ってきた海賊を沈めて試したから間違いないぞ」


「やはり海賊ですわ……」


「……海賊ですね」


 都市が消えるまでまだ時間があったのでルディール達はこの幻のような夢のような島をしばらく堪能した。

 日曜日は作者もお休みですね


 今週も読んで頂きありがとうございました。次回の更新は月曜日になります。

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