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第51話 幽霊船

 船に乗り込む前の少し前の話……


「ルディール様、少しいいですか?」


「スナップか、どうしたんじゃ?」


「海に出た時に商船が投げ捨てていた木箱の事ですわ。中は確認しましたの?」


「まだじゃな、少し見てみるか……」


 そう言ってルディール様は周りに、誰もいないのを確認してアイテムバッグの中から大きな木箱を取り出した。


 開けた瞬間に爆発と言う可能性もあったので、念の為障壁や魔法障壁を張りそれから静かに開けた。


「ん?宝石ですの?大量に有りますわね」


 と、スナップはそう言ったがルディールはその箱の中にかなりの数がある宝石の様な物に見覚えが有った。


「魔力封じの宝玉か……う~ん。実にお土産にもならぬし、捨てるに捨てられない物をじゃな……めんどくさっ!」


「イオード商会長様のお土産にしないんですの?」


 そうスナップが質問してきたので、エアエデンに行く前のいざこざを説明した。


「商会長様のお土産にはなりませんわね……」


「後ろめたい事があって見られたり取られたりしたら、駄目じゃから捨てたんじゃろうな……」


「どうするんですの?」


「商会長に渡した所で迷惑がかかるからのう、今はこのまま持っておくのが一番いいじゃろな。帰ったら木箱ごとプレゼントする事に決めたのじゃ」


「こんなのもらって喜ぶ相手がいるんですの?」


「二~三人、心当たりはあるが、いっちゃん偉い子に丸投げしとけばええじゃろ」


「困ったら出来る奴に投げると言うやつですわね。でもそれが一番良いと思いますわ」


「そんな所じゃな。わらわが何かするには事が大きすぎるっぽいからの~」


 そう言ってルディールはミーナのクラスメイトで一癖も二癖も有りそうな王族の女の子の顔を思い出していた。


 それからその木箱を片付けていると、ソアレが夜ですが船長が海に出ると教えに来てくれたついでに、昼間に回収した魔力封じの宝玉をどうするかを伝えると、ソアレもそれで良いと思いますよと言ってくれた。


「……贅沢を言えば魔法封じの宝玉が一つ欲しい所ですね」


「ちょろまかしたら、後々めんどくさくなると思うから渡す時に聞いとくわい、わらわも欲しいしのう」


 そして船場に行き荷物を運ぶ船員達を手伝った。


 


 それからルディール達はダッチマン船長の船に乗り、ふと沖を見ると夜にもかかわらず船を認識出来た。


「ん?なんじゃ漁船か?かなり遠いのう」


「ルディール様どうかしましたか?」


 スナップがそう聞いてきたので、ルディールはその光る船を指さし伝えると、ソアレも来たので説明した。


「昼間も大王イカの子供を見たからイカでも釣るんじゃろうか?」


「……イカってあんな感じで釣るんですね」


 などと沖を見ながら話をしていると船長がやって来てそろそろ出港するぞと教えてくれた。


「なんだ?沖見て珍しい物でもあったか?」


「珍しいかどうかは知らぬが、こっちの国でもイカ釣る時は船が光るんじゃな~と話をしておった所じゃな」


 ルディールがその方向を指さし、あそこに漁船が見えるからイカ釣りと思っていると声をかけるとダッチマン船長の顔が驚愕に彩られ大きな声を上げた。


「あっあれは!漁船なんかじゃねーよ!幽霊船だ!おい!野郎共!錨をを上げろ帆を張れ!出るぞ!」


 そう叫び、舵に魔力を流し少し船を浮かせ帆に風を受け高速で海上に出たが、幽霊船も動いているようでその距離は縮まらなかった。


「速いな!嬢ちゃんもうちょい速度あげる為に操舵に集中するから方向だけ言ってくれ!」


 そう船長が叫んだのでルディールはメインマストに上り声を張りながら幽霊船の方向をしめした。


「……これでも向こうの方が速いですね」


「船長様!逃げられますわよ!」


「くそ!俺より船の扱いが上手い奴なんざ!過去を含めて一人しかいねーよ!空でも飛べたら追いつけるんだがな!」


 それでも少しずつ幽霊船から距離を取られ、離されていったのでルディールがメインマストの上から叫んだ。


「船長!浮かせば追いつけるんじゃな!?」


「ああ!飛んだことはないが!俺なら出来る!」


「その自信はどこから来るんですの!」


 では浮かすぞ!とルディールが叫び魔法を唱えた。


「グラビトロン!」



 巨大な魔方陣が強大な船体を包み浮かせた。


「船長!後は任せたぞ!」


 ルディールがそう叫ぶと水の抵抗がなくなり船の帆が風を掴み急加速した。その速度は船とは思えぬぐらい速く、なれた船員達もバランスを崩し転げたりしていた。


「船長!制御できそうか!?」


「ああ!海の操舵とは全然違うが、なんとかいけそうだ!」


 その言葉通り最初の内はふらふらしていたが、時間が経つに連れ慣れていき幽霊船との距離を縮めて行った。


「まだ遠いがこれならいける!嬢ちゃん!近づいたら声かけるから船を戻してくれ!」


「分かったのじゃ!」


 そう言って少しずつ距離を詰めて行くと幽霊船の全貌が明らかになっていき、船長は操舵することも忘れその船を見て呟いた。


「嘘だろ……ハイレディン号だと……」


 ルディールの魔法で空中に浮きダッチマンの神がかり的な操舵で奇跡的にバランスを取っていたが、船長が幽霊船に気を取られたので大きくバランスを崩し横倒しになりそうだったので、ルディールはとっさに重力制御魔法を解除しゆっくりと海に着水させた。


「すまねぇ!すこし呆気に取られた!」


「それは構わんが少し肝が冷えたのじゃ……」


 ルディールの判断は正しくあのままバランスを崩していたら船がひっくり返っていたと船長がまた謝り礼を言った。


「なんでもそうですが、よそ見運転は厳禁ですわ!」


「……船長さん、動揺していましたがお知り合いの船ですか?」


 ソアレがそう聞くと、右手で髭をさわりながら、俺が憧れた海賊だと少しだけさみしそうにそう言った。


 そして何故か幽霊船の速度が落ちたので、船長は船を動かし並ぶように走らせた。


「ほんのり光ってるところ以外は普通の船じゃな……」


「……ですが実体は無いですね、魔眼で見ると魔力の塊の様な存在です精霊に近いですね」


 そういうと少し顔の青いスナップがロケットパンチを飛ばして船に手を触れてみると感触があったので嬉しそうだったが不思議そうな顔をしていた。


「触れるのなら怖くはないですが、何か不思議な感じですわ」


「船長、どうするんじゃ?乗り込むのか?」


 ルディールがそう言うと船長は少し考えてから船首に行き大声を上げた。


「おい!バルバス船長!生きてるなら出てきやがれ!」


 そう叫ぶと、少ししてから幽霊船の船内から人が次々と出てきて、自分たちの仕事を始めた。そしてダッチマン船長に似た男が船首に現れ返事をした。


「死んだけど生きとるわ!」


 その言葉にルディール達はどっち? と思ったが気にしない船長は大喜びし、バルバスと呼ばれた男に話しかけた。


「久しぶりだな!バルバス船長!おれも海賊になったぞ!」


「おおお!ダッチマンか!お前に髭は似合わねーって何回言えば分かるんだよ!その左手はどうした!」


 船長の真似だよと言って右手で左腕のフックを掴み回すと中から生身の腕が出てきたので、バルバス船長がお前、俺の事大好きだな!と二人で大声で笑い合った。


「ダッチマン船長のフックは義手では無かったんじゃな……まぁ船長らしいのう」


 そう感想を述べるとソアレが少し悩んでいたのでスナップが声をかけた。


「ソアレ様もどうかしたんですの?」


「……ハイレディン号にバルバス船長……ダッチマン船長の知り合い……十中八九、大海賊バルバスですね」


 とソアレが呟いたのでルディールがその事を尋ねた。


「大が付くだけあって大賢者とか大公爵並に有名なのか?」


「……ええ、悪名も含めてですね。大賢者ノイマンほどではないですがその海賊版と言った所です、学校の教科書とかにも普通に出てきます」


「ほーそれは凄いのう。その大海賊が超海賊と何故知り合いなんじゃ?」


 そう聞きルディールは船長の方を向くと二人の海賊は大きく笑い合い冗談半分で殴ったりしていた。


「……はい。前にダッチマン船長に聞きましたが、見習いの頃にハイレディン号に乗っていたと教えてくれました、そして隕石……いえ異界の魔神の戦闘に巻き込まれた唯一の生存者だと教えてくれました」


「よくあの戦闘に巻き込まれて生き残っていましたわね」


 と話をしていると船長が戻って来て話に加わり説明してくれた。


「あの時は俺だけ小舟で船を離れててな、そこから双眼鏡で見てたって訳よ。今でもよく覚えてる」


 船長がそう言って教えてくれるとルディールは返す言葉が見つからずに黙ってしまったが当の本人は明るかった。


「何年前の話だよ!もう吹っ切れてるわ。おれも自分の船を持ってる超海賊だしな!」


「ならばこちらも気にせぬ様にしよう。で、船長はこれからどうするんじゃ?」


 ルディールが訪ねると片足と片腕が義肢のバルバス船長が近づいて来た。


「おっ?なんだ尻の青いガキばっかりじゃねーか、ダッチマンお前こういうのが好きだったのか?」


「いや、育ってから食おうと思ってな育成中だ!がははは!」


「ダッチマンお前、天才か!?」


「だろ?自分の才能が怖いな!」


 などと下品だが楽しそうに会話をしている二人を眺めているとダッチマン船長がバルバス船長に頼み事をした。


「バルバス船長、一つ頼み事がある」


「おう、どうせ海上都市に行きたいとかそんなんだろ?」


「なんで分かったんだよ……」


「元でも船員の事ならわかるからな。いいぞ、向こうで何かあっても良いなら案内してやるがどうする?」


「ああ行くぞ、俺の夢は海上都市にあると言われる幽船の御霊だからな」


 ダッチマン船長がそう言うとバルバス船長が、また大きく笑い付いてこいと言って自分の船に戻った。

 

「よかったのう船長、海上都市にいけるのう」


「ああ、もし戻るんなら小舟貸してやるぞ?お前らも戻るなら小舟出すぞ?」


「ここまで来て戻るとかいう選択肢はないじゃろ。わらわも海上都市に行って見たいしのう」


 ルディールがそう言うとスナップもソアレや船員の海賊も同じ気持ちだった様で頷いた。


 そして目の前を進む。光る幽霊船ハイレディン号を追いかけ真っ暗な大海原を伝説の海上都市を目指し進んだ。

次回の更新は明日になると思います。

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