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第44話 海へ行く準備

「毎回思うのですけれど……」


 ルディールがスナップと朝食の準備をしていると、スナップが急に話を切り出してきた。


「何がじゃ?」


「メイドの仕事はご主人様の世話だと思うんですの!ルディール様はどうしてわたくしより早く起きるんですの!」


「そんな事で怒られても知らぬわい。と言うか、お主、一週間に数時間程度寝るだけで良いとか言ってなかったか?」


「最低限の話ですわ。ちゃんと寝ればその日あった事をアップデートしますから、時間を確保出来るなら睡眠を取るに越した事はないですわ」


 と、スナップの話を聞いているとロケットパンチ撃ったりするし、空も飛ぶが人間と変わらないな~とルディールは思っていた。


 それから二人でのんびり朝食を取っていると、森の中から数匹の獣が出てきて畑の隅に種の様な物を置いていき、代わりにルディールの家庭菜園から数種類の野菜などを取って森に帰って行った。


「前から思っていたんですけど、追い払わないんですの?お野菜食べられましたわ」


「ん?全部食べられる訳ではないしのう……ああいうのは共存するのが一番よいぞ。風船つけて飛ばしたり、川に流したりすると手がつけられないほどに進化するからのう」


「前の世界では農業でもやっておられましたの?」


「農業みたいに大変な事ではないがのう……今の獣も話せば分かってくれたから種を置いていったじゃろ?後で植えておくのじゃ」


「次はどんな物が咲くんでしょうね?食竜植物様のおかげで成長が早いですわ」


 朝食を食べ終わり、獣が持って来た種を植えていると、村の薬屋の薬師の老婆がきてルディールの畑に生えている薬に使える草を数種類ほど売って欲しいと言った。


「草花は詳しく無いから適当に抜いていってくれて大丈夫じゃ」


「なんで植えてるんですの……」


「植えるのが楽しいのと、さっきの獣が種を置いていくからのう」


「オントさんありがとね、最近、村にも人が増えてね、薬とかが良く売れるんだよ。行商さんも私の店で仕入れてくれてるしね」


「なるほどのう、ミーナの家も忙しそうじゃったしな」


 それから少し世間話をして老婆はルディールにお金を支払い帰っていった。


「う~む、あの薬師殿ならこの畑の異常さに気づいてそうなんじゃがな~」


「ルディール様が悪さをしている訳では無いので気にしていないのでは?」


「その内、捕まって打ち首に合うんじゃろうか?その時はその時じゃな」


「冗談でもそういう事を言われるのは感心しませんわ」


 スナップに軽く怒られてから二人で灯台の街に行く準備を進めていると、ルディールはふと友人の事を思い出した。


「一応、ミーナにも声かけといた方がええじゃろな?違う街に行くんじゃし」


「それがいいと思いますわ」


「では、さっそく向かうのじゃ。さすがにいきなり部屋まで飛んだら迷惑じゃろうから、王都のリノセス侯爵家を仲介させてもらうのじゃ」


「親しくても礼儀のある付き合いがある方がいいと思いますわ」


 そう二人で話しスナップの手を取り、ルディールは王都のリノセス侯爵家に転移魔法で飛びそこで置いてあるベルで自分たち来た事を知らせた。


「その内、メイドさんが来てくれるじゃろう」


 スナップは飛んで来た部屋の中が珍しい様でキョロキョロと辺りを見渡していた。


「こう、本当のお屋敷というのは楽しみですわ。お父様の本などで情報を知っているだけでしたわ」


「お土産持って来た時は、お主が寝ておったから一人で来たんじゃったな」


 しばらく待っているとドアが開き、そこには侯爵家長女のセニアがやってきた。


「お久しぶりですルディールさん。ようこそリノセス家へ。そちらのメイドさんは?」


「うむ、我が家のメイドさんじゃな。名前はスナップと言う。スナップこちらは昨日言ってたあの人生勝ち組のセニアじゃ。多少変な事を言っても勝者の余裕で流してくれるぞ」


「なるほどですわ、まさに強者という事ですわね」


「ええと、とりあえずルディールさんがろくな事を言ってないというのはわかりました……」


 セニアとスナップがお互いに自己紹介をして、誤解? が解けた所でセニアがルディールに礼を言ってきた。


「ルディールさん、このブレスレットと妹のおもちゃをありがとうございました。ソアレ先生から聞いていると思いますがもう一度言いたかったので」


「お主はトラブルに巻き込まれるタイプじゃから、それで少しは巻き込まれぬようになるといいのう」


 言い返せない所が難しいですね、とセニアは言っていたがその顔は笑っていた。


「今から、ミーナに会いに行くがお主も行くか?」


「ええ、今日は学校もお休みで時間もありますからお付き合いします。どうしますか?馬車をだしますか?」


「そんなに遠い訳でも無いから、歩いてのんびり行けばええじゃろ。建前上はリノセス家の護衛じゃからしっかりと護衛させてもらうのじゃ」


 ルディールがそう言うと少し嬉しそうに、セニアがよろしくお願いしますと言って、三人でミーナが居る魔法学校の寮へ向かった。


 寮へいく途中の露天やお店で、お菓子などを買い寮の受付でミーナを呼んでもらいしばらく待っていると目的の人物がやって来た。


「はい、ミーナです……って皆どうしたの?」


「そりゃ、お主、女子会をしに来たに決まっておるじゃろ」


「違いますわ」


「でも、強ち間違いとは言い切れないですね」


 そう話し四人でミーナの部屋に向かうと、大所帯に周りから好奇の目に晒されながらミーナの部屋に向かった。


 ミーナの部屋に着くと、相変わらず一人で綺麗には片付けられていたが、魔法関連の本がかなり増えていた。そしてミーナがお茶入れてくるから座って待っててと言ったので、ルディール達は適当な所に座り部屋の主が戻るのを待った。


「ミーナのやつ本ばかり買っておるな?」


「学校でも時間あれば何か読んでますね」


 と、セニアが教えてくれるとスナップが誰かさんと一緒ですわねと言ってルディールの方を向いたが、当の本人はベッドの下に手を突っ込んでガサガサしていた。


「ルディールさん、何をしてるんですか?」


「エッチな本でも出てこぬかな~っと」


 そう言うとセニアが顔を赤くしスナップが呆れルディールに意見した。


「仮に出てきたら気まずいから止めといた方がいいですわ、もしもあったらどうするおつもりで?」


「そうじゃな~。声出し読み?」


「聞く方も恥ずかしいから止めてくださいですわ!」


「そういう本とかってやっぱりあるのか?」


 ルディールは少し顔が赤くなってるセニアに遠慮無く聞いた。


「えっ?……あっはい。教育とは別にそういう本はあると聞いた事があります」


「なるほどのう、セニアも数冊持っておると……」


 ルディールの言葉に返事はしなかったがセニアは顔を真っ赤にした。


 そうこうしている内にミーナがお茶を入れて戻ってきて、顔を赤くしてるセニアにどうしたのと訪ねていた。


「侯爵の娘で主人公属性とは言え、年相応の女の子じゃな~と思っての」


「ルーちゃんの言う事が変なのはいつもの事だけど、今日はいつも以上だよね……」


「お主、またスカイダイビングするか?」


 ミーナが素直に謝りセニアがそれ何ですか? と尋ねてきたので機会があったらやるかと言うことになり、そのままエアエデンの事を禁書の事を含め伝えた。


「まぁ、そんな感じじゃな」


「ルディールさんは大丈夫なのですか?」


「うむ、大丈夫じゃ、というかソアレにも心配されたのう流石三姉妹じゃな」


 と、言うと姉妹じゃ無くても、友人が怪我したら心配しますよと少し呆れていた。


「私にその話をして良かったんですか?」


「聞かれて困る話はあったな……なんでじゃろな?言っておかないと駄目な気がしたのでな」


 ルディール自身も何故、セニアに話したのかは分かって居なかったが、セニアは深く頭をさげ礼を言っていた。


「さてと本題じゃ、ミーナよ。お主……金貨使い切ったな?」


「本題と違いますわ!」


 ルディールがそう言うとミーナは少し動揺した。


「えっえっ?そんな事ないよ?ちゃんと残ってるよ?次のお小遣いまで余裕だよ?」


 ミーナはそう言っていたが、ルディールは部屋の中の本を見渡してニヤリと笑いミーナの肩を叩いた。


「やはり、全部使ったな?お金のありがたみがよく分かったじゃろ?」


「……うん。私が悪いんだけどほとんど使っちゃった。魔法書とか買ってたら……」


「うむ、良い経験をしたな。いる物を買っておるし、いくらか貸してやろうか?」


 ルディールのその提案にかなり悩んだが、ミーナは断った。


「借りるとまた本買うと思うからいいよ。切羽詰まったらお願いします。ルーちゃん先生」


「うむ、良かろう。さてと本題じゃが、六日後に灯台の街に行くがお主もいくか?」


「えっ、海行くの!」


 と、ミーナが目を輝かせたので、その事の経緯を詳しく説明したら行く気満々になっていたがセニアから待ったの声が入った。


「ミーナ、駄目ですよ。来週からテストが始まりますよ」


「あ!ああ!そうだったテストだった……行きたいけど行けない、行くと死ぬ……ルーちゃん、誘ってくれて嬉しいけど無理だよ、セニアが言ったようにテストだった」


 と、二人がいつの間にか名前で呼びあっていたので、ルディールは少し嬉しそうに二人に灯台の街に行く事を自慢した。


「しかたないのう向こうで海のおいしい物でも食べてくるわい。ミーナはテストを頑張るように」


 魔法関係は大丈夫だけど歴史や計算が危ないと言って場を和ませ、テスト前で長居してはいけないとルディール達は家に戻る事に決めた。


「では、そろそろ戻るぞ。ミーナよ頑張るのじゃぞ」


「うん、分かった。ルーちゃんも気をつけてねっと、スナップさんちょっとメイドの事で聞きたいので少しいいですか?」


「ええ、なんでも聞くとよいですわ」


 そう言ってミーナとスナップが少し離れた所で神妙な顔つきで話し合っていた。


「ミーナとスナップさんは何を話しているんでしょうね?」


「あれじゃろ?スナップからエッチな本でも借りようとしておるんじゃろ?」


 ルディールがそう言うとセニアが顔を赤くして否定したが、お主とミーナもそういうの貸し借りしとるじゃろ?と言うと口をぱくぱくさせていた。


「と、からかったがお互いに友人になれたようじゃな」


「……今まで友人と呼べる人が居なかったのでありがたい事です」


 まだセニアの顔は赤かったが、その顔は嬉しそうだった。




「ミーナさん、どうかしましたか?」


「呼び止めてすみません、スナップさんも灯台の街に行くんですよね?」


「ええ、ルディール様といきますわ」


「私も行けたら良かったんですけど、ルーちゃんをよろしくお願いします」


「と、言いますと?」


「ルーちゃんが、何処か遠くへ行きそうな気がして……」




 それから数日が経ちルディール達が灯台の街へ行く日を迎えた。

次回の更新はたぶん明日になります。


誤字脱字の報告ありがとうございます。

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