第39話 宝物
完成した空中庭園いや空中要塞エアエデンはさらに高度をあげ成層圏あたりで停まり、風にのりゆっくりと流れ始めた。
「おっ?上昇がとまって横に流れだしたのう、この辺りが本来の位置か?」
「まだまだ上までいけますが、この成層圏辺りで十分だとお父様はおっしゃっていましたわ」
「なるほどのう、この位置から量産型スナップと量産型スプリガンを送り込んで国落としをするんじゃな?」
「しませんし、するんでしたら敵国の上空に行ってエアエデンのレーザーをぶっ放した方が早いですわ…あっ……今のはカットでお願いしますわ」
「…大賢者ノイマン様って本当に人間が嫌いだったんですね」
「俺もそう思うな…」
などと雑談をしながら書庫から禁書と呼ばれる本を庭に運び出していた。
「お主のとーちゃんはなぜこの兵器を作ったんじゃ?人がめんどくさいなら山の中でもよかったのではないのか?」
兵器ではございませんわ! そうですわねと顎に手を当て少し考えてからスナップは答えた。
「高い所が好きと言うのもありましたが、お父様が居た世界では戦争で大地が荒れ果てて、人が住める環境では無くなったとおっしゃっていましたので、もしかしたらこの世界もそうなるかも知れないと思って道標でエアエデンを作ったと思いますわ」
その言葉を聞くとミーナが驚き、戦争で人が住めなくなる事ってあり得るんですか?と聞いて来たのでスナップが今から焼き焼きする本の中にも大地を腐らす魔法や水を毒に変える物もあると答えて、ミーナの顔色を悪くさせた。
「だから土やら水があってこの上で生活出来るようになってるんだな」
バルケが禁書を持ちながら周りを見渡してそういった。
「ええ、この世界の生き物や植物には魔力が宿っているので、人に必要な栄養が不足しても魔力で補えるからこの程度の庭でもかなりの人が生活出来ると言っていましたわ」
「なるほどの~じゃから王都や中央都市でも人があんなに多くても小さい畑でいけるんじゃな」
「わたくしが生まれたのはこの世界ですから、お父様の世界を知らないのでなんとも言えませんわ」
それからバルケが最後の禁書を持ってきた。
「よし、これであの書庫にあったヤベー本は全部だな。二、三冊ちょろまかして貴族と神殿にわたして同時消滅狙うのもありか?」
「巻き込まれる方々の事を気にしないのでしたらの話ですわ。おすすめは誰でも簡単にできる10万人の生贄で召喚する魔神と数百年たっても草すら生えない大地の作り方ですわ」
「なんで禁書のくせにふざけたタイトルなんじゃろな…」
「バルケさん!スナップさん絶対に駄目ですよ!」
おふざけは終わりにして禁書を積み上げバルケが自分のアイテムバッグからランタンの燃料をだし本にかけ火をつけたのだが……
「さすが禁書じゃのう……普通の火では燃えぬか」
「生半可な火じゃ無理なんだな…ルー坊。魔法で燃やしてくれ」
「了解した、かなりの高火力で消滅させてくれるわ!ナイン・キャット・フレイム!」
魔法を唱えると、九匹の白い炎の猫と黒い炎の猫が現れ一度、にゃ~と鳴き禁書の山に飛びかかると一気に業火に変わり、周りにいたルディール以外全員を吹き飛ばしエアエデンに風穴を開け、大きな警報が鳴り響き休止モードに入っていたスプリガンを起動させた……
ミーナの怒った声が聞こえる中でルディールは草原の上に正座をしていた。
「ルーちゃん!!聞いてますか!物事には限度があるんだよ!」
「はい、すみません。しかしあれはバルケが」
「ルーちゃん!言い訳しない!」
「はい。ごめんなさい」
「確かに燃やせとは言ったが、俺は一言も穴を開けろとは言ってないからな」
それからしばらく草原の上に正座をさせられていると、起動したスプリガンを誘導しまた休止モードにするために兵器庫に行ったスナップが戻ってきた。
「ルディール様、本当にお気をつけくださいませ。いくらエアエデンが完成してるとは言え、今の魔法クラスが動力炉に直撃したら普通に墜落しますわ…」
スナップも平常を装ってはいたが内心はハラハラしているようだった。
「はい、申し訳ございませんでした」
それからミーナの怒りが収まった頃にルディールが開けた穴を見ると地面が盛り上がりゆっくりと塞いでいった。
「エアエデンにも自己再生が付いておるんじゃな」
「ええ、もう完成していて永久機関のようになっているはずですわ。ですからよほどの事が無い限りはこのまま空にいますわ」
「これで禁書はこの世から消えたな」
「いつかは新しい別のが出てくるし別の禁書が出てくるが、今はこれでええじゃろ」
などと話しているとバルケが思い出したかのようにルディールに聞いてきた。
「そういやルー坊、お前イオード商会の傭兵がどうのこうの言ってなかったか?」
バルケのその言葉にそういえばイオードの傭兵で来るという話しで飛空挺に乗り、空中庭園にくる予定だった事を思い出した。
「何を持って帰ればええんじゃろな?ライフイーターの亜種の魔石でええんじゃろか?流石に墓荒らしする気にはなれんしのう」
などと二人で話しているとスナップがその事を聞いてきたので詳しくその事を話すと、宝物庫とまでは言わないがお父様が生前集めていたコレクションや作った物が置いてある倉庫があると教えてくれた。
「どうします?持って帰られますか?禁書のような超危険な物はなかったと思いますわ」
「その申し出はありがたいんじゃが?お主のとーちゃんがここには眠っておるんじゃろ?墓荒らしになるじゃろ……」
「確かにここにはお父様が眠っておられますが、エアエデンを完成させてくれた方に何を返せばいいのか?と悩んでいると思いますわ、ですから気にせずにお持ちくださいですわ」
そう言って先を歩き、ルディール達を大賢者ノイマンの倉庫に案内した。
倉庫の扉を開けると、煌びやかに光る宝石のような宝などはなかったが、そういう物に劣らない物が大量にあった。
「ここにある物は全てお持ち頂いて結構ですわ、皆様お好きにお選びくださいですわ、それとルディール様には賢者の緋石を頂いたので、交換した賢者の石をお渡ししますわ」
スナップは服の中から賢者の石を取りだしルディールに渡した。
「使い古しだが賢者の石だからそれイオード商会に渡したら面白い事になるぞ」
「うむ、あまりここの物を持って行くのは気が引けるからのう。これを渡しとくのじゃ」
「ルディール様の言いたい事はわかりますが、道具は本来の使用方法で使われるのが一番幸せだとわたくしは思いますので、好きにお持ちくださいですわ」
スナップがそう言うのでルディール達は使えそうな物を探し始めた、その大量の物の中には見ただけでは用途不明の物が大量にあり、気になった物をスナップに聞きながらなので時間がかかった。
「なぁ、スナッポン。俺の剣折れたから直せるような物か代わりの剣は無いか?」
「そうじゃったな、お主のバルケソード折れたんじゃった」
「ルー坊、勝手にダサい名前つけんな!」
ダサくないわ!などと二人で口論していると、スナップが倉庫の中から一本の大剣を引きずって持ってきた。
「直すのは不可能ですが、この剣ならありますわ、スプリガンの試作の短剣ですわ、人からすれば大きすぎる剣ですけど……」
いいのあるな!それでいいぞと両手だが軽々と持ち振り回したバルケを見てルディールがさすがにその剣は大きすぎぬか? と聞いていた。
「ルー坊ー分かってねーな、女の胸と剣はでかい方がいいんだぞ?」
などと余計な事を言って女性陣から白い目で見られていた。
「お主、周り見てから言った方がよいぞ?周りは女しかおらぬぞ?」
「いや、百歩ゆずってミーナちゃんは子供だけど女と言ってもいいと思うが、魔法でオリハルコン製のゴーレムもどきぶっ壊したり、腕飛ばして攻撃してくる奴が女にみえるか?」
バルケのその言葉にスナップが怒り言い返していた。
「ちょっとルディール様も何か言い返してくださいですわ!」
それからルディールがバルケに近寄り優しく手を握り少し声を変え笑顔で声をかけた。
「ふふっバルケ兄さん。女の子にそんな事いっちゃ駄目ですよ」
ルディールのその仕草にバルケの動きが止まり顔を少し赤くして、膝から崩れ落ちた。
「なんだと!ルー坊だぞ!ルー坊だぞ!!」
「はん、しょせんはバルケじゃな!このロリコンが!」
「ロリコンですわ!」
その弄りにバルケが立ち上がり、壁に向かって頭突きを始めたのでミーナが必死になって止めていた。
「バルケさん!流血してますから!!」
「うおおおおお!ミーナちゃん!離せ!離してくれ!」
「ルーちゃんは!女の子から見ても見た目は抜群ですから!落ち着いてください!」
バルケが落ち着くまでかなりの時間と血をながしたのでルディールが回復魔法をかけ呆れていた。
次にミーナが何かを探していたので、ルディールとスナップが落ち込むバルケを放置して聞きにいった。
「何をもらっていいか分からない…」
「そうじゃな~お主も魔法使いじゃし装備を揃えたいのう、じゃがここにあるのはミーナには少し早いか?」
でしたらこれはどうですか?とスナップは一枚のマントを持ってきた。
「止水のマントですわ、ミーナ様は水の魔法を使うようなので、魔法をつかったりする時に少しサポートしてくれるはずですわ」
そう教えてくれたのでミーナはそのマントをもらい、あと友達にお土産あげたいんですか珍しいの何かないですか?と聞いていた。
「セニアにでも渡すのか?」
「うん、学校でもお世話になってるから何かないかな~っと思って…」
スナップがその方はどんな御方ですの?と聞いて来たのでミーナが友達の貴族の人でと詳しく話すと、少し考えてからスナップが倉庫の中をガサゴソと漁りティーカップセットを持ってきた、そのカップには細かな装飾がなされ側面にエアエデンのシルエットが描かれていた。
「このティーカップセットが良いと思いますわ。珍しいと思いますわ」
そう言ってそのカップを一つ取り手を離すと落下する事無く宙に静止した。
「お父様が遊び半分で作ったので浮く意味は?と聞かれたら無いとしか言えないんですわ…」
「新しいのが欲しいと言ってたのでそれにします、スナップさんありがとうございます」
「いえいえ、どういたしましてですわ、ルディール様はどれになさいますか?」
一つ二つ何か貰おうと思っておるんじゃがな、こういう時は優柔不断でのうなかなか決められないとルディールが言っていると、積み上げられた物の中にバスケットボールぐらいのエアエデンの模型を発見しこれは? とスナップに訪ねた。
それはですねと言って、その模型を操作するとその模型にもエアエデンからエネルギーが流れ込み宙に浮き同じように回り始めた。
「えっと、エアエデンの模型ですわ。リンクしているので家に置けば方角がわかりますわ」
その説明を聞き終える前にルディールは目を輝かせこれに決めたのじゃ!と宣言した。
「これじゃろ!これしか無いじゃろ!わらわはこれじゃ!何かロマンを感じるのじゃ!」
そう言ってスナップから了解を貰い大事にエアエデンの模型をアイテムバックにしまった。
「ルーちゃん…それ浮くだけだよね?ルーちゃんがいいならいんだけど」
そこに元気になったバルケが帰って来てイチャモンをつけてきた。
「ルー坊、それが良いのは分かるがせっかくだし武器貰おうぜ武器!」
「これ以外の選択肢は無いじゃろ!浮いておるんじゃぞ!」
「そんなの良いから俺の新武器の様にオリハルコン製にしようぜ!」
「そんなでかいだけのロリハルコンの武器などいらん!」
「ロリじゃねーよ!オリだよ!新生バルケブレード馬鹿にすんな!がきんちょ!」
「はあぁぁ!わらわがさっきバルケソード言ったのと変わらんではないか!」
「ソードとブレードだぞ!ブレードの方がかっこいいだろ!」
二人がしょうもない喧嘩を始めたのでミーナが慌てて止めに行ったが、スナップはそのルディールが選んだ模型が完成した時の事を思い出していた。
「お父様、スプリガン用のダサい名前のゴホン…スプリガン用の短剣のシャノンカリバーが完成しましたわ」
「スナップ、お前今、ダサいって言わなかった?」
「いえいえ?気のせいですわ。何をお作りで?」
「ん?もう出来たよ」
そう言って男が完成した模型から手を離すと模型は宙に浮き男の周りをクルクルと飛び始めた。
「これにはどの様な機能がございますの?」
「えっ?今のところ浮くだけかな?前のティーカップと一緒」
「ゴミを作るのはどうかと思いますわ」
「ゴミいうな!ゴミ違う!浮くんだ!こうロマンがあるロマンが!」
「そういう事にしておきますわ」
「最近、娘が反抗期でパパは辛いがちょっと嬉しいかも知れない…冗談は置いといて、将来このエアエデンに人がたどり着いた時に、この模型を選ぶ奴は私に似ていてイケメンで超天才だと思うから一つプレゼントを組み込んでおいたのだ」
「キモいですし、嫌な予感がしますわ」
「そんな事はない!ちょっとこの模型に将来完成した時に使用できるマスターキーを組み込んでおいただけさ。ロマンがあるだろ?エアエデンの持ち主になれる!」
「はあぁぁぁ!?何してやがりますの!?悪用されたらどうするんですの!」
「ちょっとスナップ!パパが大好きだからって胸ぐら掴むのは!」
と昔の事を思い出していると、ミーナが二人の喧嘩が激化して止められそうにないのでスナップを呼びに来て、現実に戻ってきた。
「スナップさん!あの二人が、かなりくだらない事で喧嘩始めそうなので止めてください!」
「絶対にバルケブレードの方が格好いい!」
「バルケソードじゃろ!」
その二人をスナップが二人を見て盛大にため息を付き笑いながら、別のダサい名前を提案した。
「お二方、どちらも格好いいですから喧嘩せずに。バルケ様の剣ですからバルケカリバーでいいと思いますわ」
それから喧嘩もおさまり……
「ルー坊、どうよ?俺のバルケカリバーは!」
「そう見ると自分の名前が入った武器が欲しくなるのう……わらわじゃとルルルボルグじゃな!」
先ほどの喧嘩が嘘のように仲良くしている二人をスナップがミーナが苦笑しながら持って帰るお土産のティーカップセットを綺麗にしアイテムバックに入れていると、ルディールもお土産持って帰るかと言い出してまた倉庫を探し出した。
「スナップよ、雷系の杖とかそう言うの何か無いか?わらわも友人にやろうと思ってのう、あと子供が喜びそうな物もあればよいが……」
お父様が使う魔法は雷がメインでしたからその手の物は多数ありますわと言って、大賢者ノイマンが生前使っていた神鳴りの杖と、人が乗れる小さな空飛ぶ木馬を渡しルディールはアイテムバックに入れた。
「うむ、ありがとうなのじゃ」
「えっとそれってソアレさんに上げるの?後はどうするの?」
「うむ、杖はソアレで木馬はアコットじゃな」
(ソアレは土産というよりも戦力強化じゃな、この杖がソアレが持つ杖より弱ければしかたないが、貴族や神官の事もあるからのう)
「セニアさんは?」
「お主がティーカップセットやるんじゃし、別にいらんじゃろ?」
「ルーちゃん、絶対にセニアさん泣くよ?」
と脅されたのでスナップと相談してすこし運が良くなる幸運のブレスレットをお土産に貰った。
ではそろそろ帰るか?と話していると、スナップがここは明るいがもう外は夕方だと教えてくれ、ここに泊まると良いですわと言ってくれたので、ルディール達はその言葉に甘えエアエデンに泊まる事にした。
次回の更新はたぶん明日になります。朝には投稿できると思いますが、昼か夜になるかも知れません




