表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/306

第37話 スプリガン

「なんで悪い予感ってのは良く当たるんだろな?」


「悪い事の方が目立つからしかたないわいっ!!ちょま!」


 スプリガンが起動して即座に戦闘態勢に入ったルディールとバルケだったが、カメラの部分が光ったと思ったら魔力を凝縮したレーザーの様な光を放ち、ルディール達四人を飲み込んだ。


 レーザーが発射し終わった後には兵器庫の床や壁が融解し高熱を放ち空に向かって大きな穴が空いていた。


 その場所にルディールの姿はなかったが、顔に当たる部分の中心にあるカメラのような物がせわしく動き特定の場所でとまりその場所を目指すように、スプリガンは自分のレーザーで開けた大穴から外に出た。



「あっ危なかったーー!間に合ってよかった!自分を褒めたいわい!」


 スプリガンのレーザーがルディール達を飲み込んだと思った瞬間にシャドーステッチとシャドウダイブをほぼ同時に発動させ、ルディールは自分の影に三人を引き込み、スナップが紅茶を入れてくれた小屋に転移していた。


「お花畑と先に逝ったバルケ様がみえましたわ…」


「まだ生きとるわ!ルー坊すまねぇ、助かった!」


「ルーちゃん!ありがとう!」


 ルディール達は怪我も無く無事だったが、スプリガンの攻撃力の高さに驚きを隠せないでいた。


「やはり追いかけてくるか…スナップよ、今の攻撃は連発できるのか?あと弱点はあるのか?」


「いえ、冷却の時間が必要なので連発は無理ですわ、その代わり他の兵器がタイムラグを埋めますわ!弱点ですがスプリガンのコンセプトが、良い所がないのが良い所なので、弱点らしい弱点はございませんわ!」


「わらわが一番苦手なタイプじゃな…オールマイティは駄目じゃろ!」


「おい、ルー坊!来るぞ!」


 バルケの言葉が届いた瞬間にまた先ほどのレーザーが小屋を焼き空を突き抜けていった。


「スナップさーーーん!連発出来ないって言ってませんでしたか!」


「おっおかしいですわね…」


 小屋を吹き飛ばした一撃をなんとか躱し、スプリガンを確認するとボディーの至る所にライフイーターの亜種がくっついていた。それからスプリガンが空中庭園の地表に降り立つとそこかしこから、ライフイータの亜種が現れさらにスプリガンに取り付き一つの生命体の様になった。


 そのスプリガンをスナップがスキャンするとライフイーターの亜種からスプリガンの動力に魔力を送り込みスプリガンの出力を大幅に上げている事がわかった。


「ルディール様、お気をつけください!出力が三倍近く上がっております!砲身の方も氷の魔法のような物で即座に冷やされていますわ!続けて撃って、きましたわーー!」


 スナップの説明が終わる前にまたスプリガンが高出力のレーザーを放ち空中庭園の地面を貫通し海上に着弾し小さなキノコ雲を発生させた。


「…お主のとーちゃんは人間が嫌いだったんじゃろうな」


「ええっ?急にどうしたんですの!?」


「ルー坊!どうする!この島が人工物って事は何処かで制御してるんだろ?そこに今のが当たったら落ちねーか?」


 バルケの質問がここでの戦闘の危なさを教えてくれ、ルディールは即座に動いた。


「バルケありがとうじゃ!後、すまぬが空中戦を仕掛けるからミーナを任せた!」


 その言葉通りにルディールはシャドーステッチでスプリガンを縛り、その隙に近距離に潜り込み、ガイアロックドラゴンとの戦闘で使ったシュトルムボルグの魔法を唱えスプリガンを空へ吹き飛ばした。


 吹き飛ばしたスプリガンを即座に追いかけ思惑通りにいった様だったが、ルディールの表情は驚愕に満ちていた。


「嘘じゃろ?固すぎるじゃろ…ガイアロックドラゴンの比ではないぞ…」


 スプリガンに少しヒビが入っていたのでダメージは入っていた様だったが、そのヒビにライフイーターの亜種が被さりヒビを塞ぎ、背中や足の裏のバーニアを噴射して空中で静止しルディールの拘束魔法シャドーステッチを力任せに引きちぎった。


 ルディールとスプリガンが向かい合った場所は空中庭園より少し離れただけで庭園自体はまだ目視できる距離だった。


「この場所だとまだ巻き込む恐れもある…か!」


 また話し終わる前にスプリガンがレーザーを放って来たのでそれが開戦の合図になった。


(なんじゃろな…異世界にきたら無双できるとか聞いたのにそんな事ないのう、前も死にかけたしのう)


「次はこちらの番じゃな!クリスタルビット!オールレンジ攻撃!」


 ルディールが相手の攪乱する時などによく使用する魔法を唱え、空中に数十個の半透明のクリスタルを出現させスプリガンにオールレンジの攻撃を仕掛けようとしたが。


 スプリガンのメインカメラが高速で動きルディールが放った全てのクリスタルの動きを捉え、先ほどとはまた違う細く追尾するレーザーが背中から放たれ全てのクリスタルビットを撃墜した。


 その行動にルディールが驚き動きが止まった瞬間にスプリガンがバーニアを噴出させルディールに高速接近し力任せに殴ったがルディールもミーナからもらったブレスレットで障壁を展開させていたので事なきを得た。


「高火力、高防御、高速、か…これはなかなか骨が折れるのう」


 そう言っていると、クリスタルビットを撃ち落とした誘導のレーザーがルディールに放たれ、そのレーザーが止まると高出力のレーザーがルディールを襲った。


 その攻撃を空を飛び軽々と躱していたが、あまりの弾幕に反撃するタイミングは無かった


(あのごんぶとレーザーはまともに食らったらたぶんアウトじゃな、魔法障壁で防御でき無いかもしれぬから、躱せる内は躱す方が無難じゃな、)


「じゃが!反撃させてもらわねばなるまいな!ライトニングワンダラー!」


 その魔法を唱えるとスプリガンを中心に百近くの雷の球が出現し、人が歩くより少し速いぐらいのスピードでゆっくりと範囲を狭めていった


 その速度はかなり遅く脅威にすらならないと判断したスプリガンが無理にその範囲を抜けようとした所で、肩の部分がその球に触れた。


 その瞬間にその球体がスプリガンの体を包み込み雷が落ちた様な爆音を発し放電した。その効果は絶大でスプリガンのボディーは黒く焼け焦げた。


「どうじゃ?なかなか痛いじゃろ?その魔法は動きはかなり遅いがダメージはそこそこでるからのう」


 その言葉通り確かにスプリガンにダメージは入っていたが戦闘を継続出来ないほどではなく、数回ほどライトニングワンダラーに当たりつつ包囲を抜けたがやはり蓄積されたダメージは大きくスプリガンのボディーに亀裂が入り割れ、合体して大きくなったと思われる魔石が見え隠れしていた。


(スナップの量産型のようにあの魔石を破壊すれば戻るかも知れんのう、少し危険じゃが接近して砕く方が速いか?スナップの様に再起動で自己再生するかも知れぬからのう)


 そう考えルディールは露出した魔石に高速で接近し魔法を唱え魔石を砕こうとしたが、それはスプリガンの罠だった。


 接近したルディールに向かって両腕に仕込まれていたパイルバンカーが射出されルディールの障壁を突き破りとっさにガードした腕をへし折り大爆発を起こした。


 あっミスった…こやつの技術は異世界の技術じゃったな…魔法では完全に止まらぬか…と思った所で、スプリガンのモノアイに光が集まり空中庭園を貫通した極太レーザーが発射されようとしていた。


「そうはさせませんわ!インパクトマグナム!」


 その声が聞こえた瞬間にスナップの右腕のロケットパンチが超高速で飛来しスプリガンのモノアイに直撃し、ルディールに当たるはずだったレーザを空へと反らした。


 もうろうとした意識のままルディールが声の方向を見ると、そこには空を飛ぶメイドと背中にのるバルケの姿があり、バルケはルディールを見るとすぐに指示を出した。


「おい!スナッポン!俺はいいからルー坊を起こせ!脳震盪おこしてるぞ!」


 バルケはそう言ってスナップの背中を蹴り、風を読み気流に乗りスプリガンに張り付いた。


「誰がスナッポンですの!と言うかどうやって戻るんですの!」


「いいからルー坊を起こせ!」


 スナップはその言葉を信じルディールに近づき抱きかかえミーナから預かったハイポーションを飲ませた。その間にスプリガンに張り付いたバルケは自慢の大剣を振り回し、引きずり下ろそうとする手を弾きなんとか時間を稼いでいたが、ルディールの魔法によりダメージを受けて脆くなった部分を発見し、そこに大剣による連撃を浴びせ自慢の大剣と引き換えにスプリガンの片方の腕をぶった切った。


 切った腕はライフイーターの亜種とリンクしていたようで、痛みを感じのたうち回っているようだった、暴れた反動でバルケが空に投げ出され、スプリガンのモノアイがバルケを捉えレーザを発射しようとしていた。


「コキュートスウォール!」


 レーザーが発射される瞬間にまだ意識はもうろうとしていたが、友人のピンチにルディールは魔法で特大の氷壁を発生させ守ったが、まだすぐには動けず、スナップと落ちてゆくバルケを眺めるしかなかった…


 その時、雲の中から一匹の大型の鳥が現れ落ちていくバルケを背中の上にのせた、その鳥は空中庭園を案内してくれルディールが怪我を治した鳥だった。


 その鳥はゆっくりと旋回しこの場から離脱する様にバルケを背に乗せ空中庭園に向かって飛んでいった。


「ナイスじゃ鳥!ありがとう!」


「ルディール様、起きましたか!」


「助かったわい!世話をかけたのう!」


 そう言って即座に指輪の中に眠る【世界樹の祈り】を起こし自身の回復量を上げ回復魔法を唱え即座に火傷や折れた腕を治した。


 スプリガンの方も落下していった腕が磁石と引き合うように戻って来て飾り程度ではあるが元に戻った。


 その様子を確認しスプリガンと同じように飛ぶスナップが声をかけて来た。


「ルディール様、空中庭園の方にはもうライフイーターの亜種は居ないようでしたわ、あれに全てが融合したようですわ」


「なるほどのう、大空なら巻き込む事もあるまいスナップよ後ろにおるのじゃぞ!ディストラクション!」


 地上で使うと周りの地形が変わる為、使うのを控えていた魔法をルディールは唱えると白い光がスプリガンもろとも包み込んだ。


 その光が消え範囲内に入っていたスプリガンのメインカメラは割れ、外装は吹き飛んでいたが、まだ寄生された全てのライフイーターは消滅していなかったようで、戦闘態勢は解除していなかった。


「抑えておったとはいえ今の魔法で壊れぬか…すさまじい兵器じゃな」


「その凄まじい兵器をあそこまで破壊出来るルディール様もどうかと思いますが?まぁ、今の攻撃でほとんどの機能は停止したようですわ」


「じゃと良いんじゃがな、先ほどは勝ちを急いで痛い目にあったからのう…」


「今回は大丈夫と思いますわ、先ほどまでですと、こうやって話してる間にもあのレーザーを撃ってきましたわ」


 その言葉が聞こえたのか、スプリガンがルディール達に向かってレーザーを放ってきたが、その出力は弱々しく二人とも難なく躱した。


「ではルディール様、申し訳ありませんがそろそろあの子を眠らせてあげてください、兵器ですから妹達の様に元に戻る事は無いと思いますので」


 悲しそうな顔をするスナップにルディールは即答した。


「嫌に決まっておるじゃろう、最初から破壊するつもりなら大怪我などしておらんわ。パイルバンカー装備の巨大ロボを破壊する訳ないじゃろ」



 その言葉に、ではどうするおつもりでと聞いて来たので、ここまで弱っていたら大丈夫じゃろといい、シャドーステッチで拘束しシャドーハンドと言う魔法で影の手を作りスプリガンの露出していたライフイーターの亜種の魔石を引きちぎった。


 その瞬間、ライフイーターの亜種の断末魔が聞こえ、魔物だった部分がボロボロと崩れていき機械の部分だけが残り機能を停止した。

次回の更新はたぶん明日になると思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ