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第34話 空中庭園

「ルー坊、どうする?腕ぶった切るか?破壊するか?」


 ルディールの手を掴みしばらく魔力を吸い取っている人形にバルケが背中の大剣に手をかけて聞いてきたが。


「そこまでせんでええじゃろ、確かに魔力は吸われておるが今の所は特に害もないしのう」


「ルーちゃん、大丈夫なの?」


「感覚的に血を抜かれとる気分じゃな、体の中から何か吸われてるのが分かるのう」


 そう言ってミーナ達と話していると、人形の手がルディールから離れまた機械的な音声を発した。


「起動に必要な魔力を確保しました。再起動します……」


 そう話す人形を眺めていると、再起動が終わり抉れていた人の皮膚の様な物と朽ちかけていた服なども綺麗に再生し、人となんら変わりない黒髪の女性型のメイドになった。


 その姿にルディール達が驚いていると、そのメイドが声をかけてきた。


「ありがとうございましたわ、急に腕をつかんで申し訳ありませんでした。非常用の魔力もほぼ底をついていたので、襲うような形になってしまいましたわ」


「いや、手を握られただけじゃからな、別にかまわんよ」


 ルディールはそう言ってその人形の行動を特に気にしてなかったが、バルケはいつでも戦闘態勢に入れる様に警戒していた。


「お前はなんだ?オートマトンか?なぜここにいる?」


 警戒するバルケにメイドの人形は特に気にせず丁寧に答え始めた。


「分類上はオートマトンになると思いますが、正確にはオートマトンとホムンクルスの合成物ですわ、人で言う骨格の部分はオートマトンですが、皮膚や疑似の臓器などは錬金術で作られていますから、後、何故ここにいるか?ですが私が生まれたのがここだからですわ。」


 メイドの問いにそんなの聞いた事ねーぞと、バルケは頭を悩ませたが、ミーナはいまいち分かっておらず、相手に敵意や悪意の様な物がなかったのでルディールはメイドの名前を聞いた。


「お主の名前はなんじゃ?わらわはルディール・ル・オントじゃ」


「私の名前はスナップですわ、形式番号は必要ですか?」


「いらんじゃろ、聞いた所でわからんしのう」


「そうですか、ルディール・ル・オント様はどうしてこちらに?」


 そう聞かれたので、この場所の調査という事にしてミーナとバルケがそれぞれ名乗った。


「そうですか、この場所は空中庭園と呼ばれてるんですね、では話す時はそちらに合わせて空中庭園と呼ぶようにしますわ」


 その呼ばれ方に少しだけ戸惑っていたようだったが気にせずにルディール達は話を進める。


「この空中庭園じゃが、お主の様な意思疎通の出来る者は他におるのか?」


 ルディールの質問にスナップは顎に手をかけ考える様な仕草をしてから答える。


「私のような人形なら数体いますが、休止に入っているか、寄生型の魔物に乗っ取られているかのどちらかですわ、2~3年前まではわたくしも動いていましたが、その時に動けていたのもわたくしだけでしたわ」


 今の言葉にバルケが反応し考え始めたのでミーナがスナップに話しかけた。


「スナップさんは、人では無いんですか?ルーちゃんみたいに表情がころころ変わるから人にしか見えないんですけど…」


「どこを取って人とするかは難しいですわ。ですが先ほども見られたと思いますが、体のつくりは人とは違いますわ」


 そう言って人の居ない方向へ左手を伸ばし、肘から先をロケットパンチのように飛ばし、戻って来た手を右手でキャッチしその肘の付け根をミーナに見せた。


「わたくしが知っている限りでは人はこういう事は出来ないと思いますわ」


 その言葉にミーナは納得したが、角の生えた友人なら万が一出来そうとも思い、その友人の方向をみると、何故か悩んでいたバルケと共に目を輝かせていた。


「おっおい!ルー坊見たか?腕が飛んだぞ!アレはなんだ!」


「あれは、ロケットパンチという技じゃな!」


「そうか、世界は広いな!技を見ただけでこうも心が揺さぶられるのか!」


「あれは、そういう物じゃ!気合いと根性で攻撃力が代わる代表格じゃ!」


 その二人をみて、ミーナはまた変な事いってるな~バルケさんもルーちゃん側か~等と思っていると、スナップに警戒していたバルケが一言あやまり先ほどの事を聞いてきた。


「まだお前のことを信用した訳じゃないが、あんな熱い技を持ってるヤツだ悪人じゃない、すまなかった。聞きたいが寄生型の魔物ってこういうヤツか?」


 そう言って自前のアイテムバッグから紙とペンを出しささっと魔物を絵を描き、スナップに質問した。


「それに似ていますが少し違いますわ、初めて見た頃はその形でしたが、浮島の環境に合わせて進化したようで形がかわっていますわ」


 バルケが描いた絵は粘菌の様な生き物に目がついていた、バルケの絵を見てルディールが落ちていた枝で猫を描いたが、ミーナにルーちゃん魚うまいねと褒められたので、静かに枝を折り少し悲しそうにそうじゃろと言っていた。


 何事も無くルディールが話を進めようとしたが、ミーナがバルケに絵上手いですねと褒めていた。


「バルケさん、絵うまいですね」


「あ~冒険者やってると言葉が通じない所とか行くからな、そういう時は絵描いてみせたら伝わるから描いてたらなんかそこそこ描けるようになったな」


「その、お主が描いた粘菌のような魔物はなんていうんじゃ?」


「ライフイーターって言う魔物だな、生き物に寄生して徐々に命を食っていくヤツだな、人にも寄生するが弱いからすぐ倒せるが、生き物だと手や足が届かない所に寄生してるな」


「アメーバっぽいのに知恵はあるんじゃな」


「浮島に出てくるヤツは命は吸いませんが魔力を吸っていきますし相手を操る事もできますわ、私達のような魔力で動くタイプには相性が最悪ですわ」


「って事は魔力を食う魔物だからマナイーターってとこか…」


 ルディールはその単語に心当たりはあった、なぜかよくわからないが!先日、ご飯を奢ってくれた友人の友達の顔を思い出した。


「何というか何というんじゃろな~」


 などと話しているとミーナ以外は何かに気づいたようで顔つきが変わった。


「むっこれか?」


「だろうな、ライフイーターによく似てるからな」


「ええ、この気配ですわ」


 ミーナが何か来たの?聞こうとした所で地面が盛り上がり地中から、数匹のライフイーターの亜種が飛びかかってきた。


 バルケは即座に大剣の腹でアメーバの様な粘菌生物を叩き潰し、スナップも素手で掴みそのまま地面に叩き付けた。


 ルディールは意思疎通が出来るのかを試してみたが、そこまでの知恵は無いようで本能だけで生きてる生物だという事が分かったのでそのまま蹴り潰した。


「意思疎通はできんかったのう、強い訳ではないんじゃな」


「だが、ライフイーターに比べるとかなり動きがはやいな…そこまで警戒する事もないが」


「わたくしは前は魔力が枯渇していましたら、遅れをとりましたが今ならまだ多くても大丈夫ですわ」


 魔物に襲撃されたが、一瞬で片付けた三人にミーナが呆気に取られていた。


「皆さん、凄いですね…」


「ん?強い訳ではないぞ、次きたらお主が倒してみるのじゃ」


「えっ、それは無理じゃないかな?」


「フレイムコッコの方が遙かに強いわい、ケガしそうになったら助けてやるから一度やってみるのじゃっと、お出ましじゃな」


 ルディールがそう言うと、また数匹が地面から出てきて襲いかかってきたが、ミーナが水魔法を唱えて一匹一匹と倒していった。


 それからしばらく襲撃があったがミーナの戦闘訓練には良い相手で最初の内は危ない所もあったが後になると、少し慣れてきてそういう部分も減っていた


「うむ、大方気配はなくなったかのう」


「ですわね、わたくしのセンサーにも引っかかりませんわ」


 その言葉を聞いてミーナは安心して地面に寝転び大空に向かって疲れたと言っていた。


「今の調子じゃな、魔法に関しては言う所はあんまりないが後は戦闘のなれじゃな」


「だな、ミーナちゃんは戦闘の素人だから一つアドバイスだ。多人数で戦う時は一対多人数を一回やるより、一対一を数回やる方が勝率はあがるぞ」


 その言葉を聞いてミーナは冒険者になる訳じゃないけど、がんばりますといい周りを和ませた


それから倒したライフイーターの亜種をバルケが確認するとやはりこの場所に合わせて進化しているようで、ライフイーターと酷似する点が多々見つかった。


 それからスナップを連れて、建造物の方向に向かっていると彼女から一つ提案というかお願い事があった


「強い皆さんに一つお願い事がございますわ、今のライフイーターの亜種を全て倒して頂きたいのです」


「お主でも倒せるのではないか?」


「いえ、戦闘面では余裕ですがあまりにも数が多く、わたくしの様なタイプの人形は一週間に数時間ほど人で言う睡眠に当たる事がありますから、その時に襲われ魔力を吸われたら、もう動けませんわ」


「なるほどのう、わらわの一存では決められぬから少しその辺で相談するから待つのじゃ」


 そういって一度、スナップと離れバルケとミーナの三人で相談を始めた


「さて、バルケはどう思う?」


「そうだな、数で来られたら驚異だがあれぐらいじゃ問題ないな、やっこさんにしても少し思う所はあるが、悪人じゃないと思うし仮に何かされてもお前と俺で対応出来ると思うぞ」


「ふむ、ミーナは?」


「えっ私の意見も聞くの?」


「何をいっとんのじゃ、お主は今はこのPTメンバーじゃろう」


 とルディールが言うと少し嬉しそうにミーナが意見を述べた。


「う~ん、倒してあげていいと思う、何というかスナップさんが動いてた頃って、ここの手入れとかしてたみたいだしここが好きなんだと思うし、見返りじゃないけど倒すかわりに協力してもらってできるだけここを壊さない様にした方がいいのかなって思うよ」


「なるほどのう、では助ける方向でいくのじゃ」


 それからスナップを呼びライフイーターの亜種を討伐する事を伝えると三人に深く頭を下げて礼を言った。


「後、頼まれたいんじゃがここの人工物の案内や説明を頼むぞ」


「ええ、分かりましたわ、こちらもこの施設を壊されては少し困りますのでよろしくお願いしますわ」


 それから少し歩き人工物が見えてくると、大きな門があり奥にはかなり広い庭があった、門から少し離れた所に小さな小屋があり、スナップがそこに向かいましょうと言ったのでその小屋に向かった。


「この場所はわたくしが庭の手入れをする時などに使っていた小屋ですわ、動かなくなってから時間がたって居ますから埃が積もっていますわね…」


 少し悲しげな顔をしながら埃を払い食器等をあらい、全員に紅茶を入れてくれた。


「賞味期限は切れてないですから大丈夫ですわ」


 全員でテーブルに座り、外を見るとライフイーターの亜種の気配はなく、とても静かでさびしい所だった。


「お主、このような所でさみしかったのではないか?」


「ええっ、昔は他の人形も数人おりましたから、さみしくはなかったですが、少し前からは一人ですからね…」


 そう話す人形のスナップは本当に人のようで感情があるようだった、その事がきになったバルケはストレートに聞いた。


「オートマトンは感情がない人形と聞くし、ホムンクルスも感情がほとんど無いと言われているのに、なんでお前は感情のような物があるんだ?」


「わたくしにも少しは感情はございますわ、喜怒哀楽を表現できる程度ですけどね」


 それって感情豊かなんじゃとミーナが思っているとルディールがスナップに質問していた。


「お主はどうしてここにおるんじゃ?浮島の高度までは今の人の技術では来られぬのじゃろう?ここで生まれたと言っておったが…」


 その質問にバルケも頷きライフイーターの亜種が居るのも変だよな、と言っているとスナップがどこからお話しましょうかと少し悩み話し始めた。


「わたくしは、この場所でお父様に作られ生まれましたわ」

次回の更新はたぶん明日の朝になると思います。


サブタイトルを考えるのって難しくないですか?下手したらいっちゃん苦労してます。

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