第100話 第二次王都大戦その2
王都の空に転移したルデルは城にあるであろう神の気配を感じ取り、ここに主神の奇跡がある事を喜んだ。だがそれを守る様に感じる強者の気配に小さくため息をつく。
百回戦えば九十九回は確実に勝てるが……知っている者達はその一回を引き寄せるだけの実力を持った者だと言う事は本人が一番よく知っていた。
「……まとめて相手をするのはやっかいですからね。良い感じにばらけていただきましょう。……天使達よ!作戦通りに街を狙え!バラストゥエル、ファルナエル、ギアエルは自身のタイミングで城にある主神の奇跡を!」
転移などして主神の奇跡を持って逃げられない様にルデルは王都を囲う様に転移阻害の魔法を発動させた。
そして戦いの雄叫びがあがりいくつもの白い翼が王都の街へと降り注ぐ。
◆◆◆
天使達の襲撃が始まり王都ローレットは激しく動き始める。街の冒険者や傭兵といった者達は協力し天使達やそれらが召喚した虫に近い形状をした魔物? の討伐する為に動き始めローレット軍は民間人の避難や冒険者達の援軍へと向かった。
国王は城に残ると自ら宣言し王妃や王女は避難させる事も考えたが逃げている時に襲われ人質になった時の事を考えると城の中に残る事になった。
「流石に……高ランク帯の冒険者がいると言ってもこれだけの天使がいればきついか」
スティレは城の高台から天使達の動きを見てどう動くのかが最適かを考える。
「やはり戦力の分断でしょう。ここに主神の奇跡がある事は分かっていますから」
「それで私たちはどう動くの?」
カーディフの質問にスティレは少し考える。会議の時に国王陛下からスティレ達火喰い鳥は有事の際は自由に動いてもらってかまわないと許可をもらっていたので行動の幅はかなり広かった。
「城から離れすぎずに天使達との戦闘、民間人の救助が良いだろう。城には騎士や宮廷魔道士もいる。流石にアトラカナンタ殿を戦力に考えるのはどうかと思うが……イオスディシアン殿やハンティアルケーツ殿もいる戦闘になっても駆けつけるぐらいの余裕はあるはずだ」
「ミューラッカ様もいれば良かったんですけれど……昨夜に一旦スノーベインに戻ってしまわれましたし……」
タリカの嘆きにスティレが答える。
「スノーベインの現在の国王はノーティア様だがまだ学生だからな。ミューラッカ様も心配なのだろう。それは良いが……天使ルデルが蘇ったのに前に戦った時の様にルディオント殿やソールを召喚しないのは何故なんだろうな?」
「それもそうね?数の力ってのはあるだけど……下手したらその二人ってルディより強いから呼ばれただけで積みって感じだけど……?」
スティレとカーディフが少々悩んでいると城壁の近くで戦闘が始まった。
「他にも原因あると思いますが……火力が問題でしょう。いくら精神的に支配していると言っても二人が使う魔法や技まで制御できないでしょうから巻き添え食らって主神の奇跡が破壊されるのを避けたいのでしょう。……さてと救援に向かいましょう。私達も今のうちにある程度装備になれておかないと駄目ですからね」
ソアレの言葉に頷き火食い鳥も戦場へと向かう。今がその時では無いかもしれないが……確実にもう一度ぶつかる相手……ソアレの完全上位互換であるソールとの戦いに向けて。
◆◆◆
「う~ん……私達はどう動こうかなー」
窓から火の手が上がる王都を眺め魔王アトラカナンタもどう動くが利益になるのかを考える。人間達を助けて恩の売るのも一つの手だが……現状の戦力は自身と執事である悪魔のセルバンティスと光都アークスライブを観察する為にいる鷲の魔神ヤルトガログだけだった。
戦闘が始まりのんびりしているアトラカナンタを見ながらセルバンティスはどう動くのではなくどうしたいか? で考えれば良いのではと私見を伝える。
「どうしたいかで考えると天使ルデルの体を奪いたい。あの体と能力ならルーちゃんことルディールが魔王にならなくても私でも問題なし」
「成功の確率はとても低いように思えますが?」
「ルデルがルーちゃんならそこまで低くないかな。それが無理なら潰すのはここで潰しておきたい。あれのせいで天使と魔族のバランス狂って天使が超絶有利になってるしね~」
アトラカナンタは主神の奇跡を天使達がどの様に使われるかはあまり興味が無かった。どの様に使われ人間達が敗北しようがこの地が地図から消えようが最後は天使達との戦いになるからだった。
魔界自体も非常に広く竜族や他の魔族などもいる為にアトラカナンタ達が天使達と戦いになった場合でも第三戦力が現れる事などを考えると魔都の戦力は少しでも温存しておきたかった。その為にいま王都に来ているのは必要最小限のメンバーだ。
それからしばらく考えてアトラカナンタはセルバンティスとヤルトガルグに指示を出す。
「セルバンティスはイオスディシアンとかハンティアルケーツがいると思うけどここの王様の護衛を手伝ってあげて。ヤルトガルグは王都で指揮してる人の所に行って街の様子を映してあげて手伝ってきて」
「理由をお聞きしても」
「このまま素直に人間側が敗北するのは考えにくいからね。売れる時に恩を売っておく。それと体は奪うのは無理でもルデルだけは確実に潰しておきたいからヤルトガルグの能力で見つけておきたい」
分かりましたとセルバンティスは素直に頭を下げ部屋から出て行き、ヤルトガルグはお前はどうするんだ? とアトラカナンタに質問する。
「こっちは皮とか余ってるから私の分体入れて戦場を回るかな。ルデルにあの 姉妹 がぶつかればチャンスは広がるからそこを狙いたい」
「同期のよしみで手伝ってやるが……無茶はさしてくれるなよ?」
「あはっ。そのへんは大丈夫かな?まだ奥の手もあるからね~」
文句を言いながら部屋を出て行くヤルトガルグを笑いながらルゼアからもらった皮や捕食し皮になった者に自身の分体を流し込み、本体は動かずにその場から本体とほぼ同等の能力をもつ兵士達を作り出し戦場へと向かわせた。
「ルーちゃん倒す為に勇者の力とか聖女の力とか取り込んだけど……ここまで役に立つとは思わなかったね」
◆◆◆
王都での戦闘がさらに激しさを増していく。住民の避難が終えた場所では範囲攻撃魔法の使用が許可され街のあちこちで火柱が上がり雷が落ち光が激しく輝いた。
ただ現状は天使達が圧倒的に優勢だった為にルデルの思惑通りに騎士や王宮魔道士達も加勢に向かい始めたので少しだが城が手薄になっていった。
そんな戦闘の中、城の一番高い所で二人の姉妹が誰かを待っていた。
「来ませんねー」
「来ませんねー……ではありませんよルゼア。街の方は戦いが激しくなってますけど応援に行かなくていいのですか?」
「ここでルデルさんの気配を感じられないなら戦場みたいな気配が混ざり合っている所で探せる訳はないのです。ここを狙ってくるのは間違いないのでドンと構えて待っておけばたぶん大丈夫です!」
「多分ってなんですかたぶんって……」
「後はまぁ……ここで戦えば城への被害は甚大ですが主神の奇跡もぶっ壊れる可能性もあるので人質としても使えますからね!天使の力を押さえつつ私が全力出せますからね」
やろうと思えばルゼアも攻撃魔法の様な範囲攻撃はできるがルディオントやソールの様に地形が変わる様な災害レベルの魔法は使えない。ただ単純な攻撃においてはルゼアの方が圧倒的に上なので一対一や周りに被害を出せない今の状況はルゼア向きだった。
……油断があった訳では無い。少しだけルミディナに意識を向けたルゼアに向かって収縮された光が城壁や展開されていた魔法防壁を簡単に貫通し融解させ二人を襲った。
直撃すると思われたタイミングでいち早く察知したルゼアが軌道を逸らし上へと蹴り上げ空では大爆発が起こりその衝撃で雲などはすべて吹き飛んで消えた。
「ルゼア!大丈夫ですか!」
「……大丈夫です!と言いたい所ですが!少しミスりました!」
直撃すれば間違いなく地図から王都ローレットが消える様な凄まじい魔法を蹴り飛ばしてルゼア自身も無事なはずはなく綺麗な右足は見る影もなく焼けただれ一部が黒く変色していた。
その攻撃の主である者が静かに現れルゼア達に話しかける。
「人質と言っていましたがそれはこちらも同じです。貴女なら今の攻撃は避けられたでしょう?ですが城にいる人たちの事を考えると……貴女ならそうすると思いましたよ」
「出ましたね……ルデルさん。もし避けてたらどうするんですか?主神の奇跡は壊れやすいって聞きましたよ?」
「貴女たち二人は別の世界とはいえルディールの娘ですが……賢くて考えすぎなのが悪い癖ですね。……壊れたらどうするか?その時はその時ですよ。私は未来ではなく今を生きているので」
「……なるほど!では私達は未来を生きる若者なのでここで倒させていただきます!ルミディナ援護お願いします!」
「ルゼア!本当に大丈夫ですか!足が!」
「気合いと根性です!」
それで大丈夫なら私はここにいませんよと笑いルデルの魔法が容赦なく二人に牙をむく。ルゼアが全力なら多少は善戦できたが……目が潰れているとはいえ主神の奇跡の力によりいくつもの平行世界で戦い傷ついていたルデルの体は完璧に修復され本来の力が遺憾なく発揮された。
ルデルの出現はすぐに城の反対側で戦っていたソアレ達にもわかりルゼア達の援護に向かう為に一緒に戦っていた騎士達にこの場を任せ行動を始めるが魔力の流れが見えた後に透き通った水の様な声が聞こえた。
「リップルプリズン」
火喰い鳥の四人の周り雨が降り足下はすぐに青空を映す水面が広がった。そしてその水面から幾つもの波紋が広がった後に空に向かって水柱が伸びソアレ達を隔離する様に水のでできた牢獄が完成した。
「さてと……腕を切られ殺されかけた礼だ。お前達はここに隔離させてもらう」
水面から水が幾つも盛り上がりそれは何体ものバラストゥエルになった。ソアレの魔眼をもってしても本物と偽物の見分けがつかず全てが本物で全てが偽物であった。
「……思いのほか冷静ですね。一度負けた相手ですから逆上して襲いかかって来るのかと思いましたが」
ソアレの質問にバラストゥエルは笑って答える。
「そこまで馬鹿に見えたか?私は人を見る目は無いが……あの姉妹よりお前達の方が危険と判断しただけだ。いくら強いとはいえまだ子供だ。あの二人ではルデルには勝てんよ。だがお前達が加われば話はべ……」
話し終える前にカーディフが光栄ね! と声を荒げ一瞬で全てのバラストゥエルを燕撃ちの光の矢で射貫いたがそれに意味はなくすぐに同じ数だけのバラストゥエルが現れ話を続けよするが次はスティレが全てのバラストゥエルを切り払った。
だがまた同じ様にいくつものバラストゥエルが現れる。
「まともに戦えば私は負けるが……ただ倒すのが目的で無いならやりようはいくらでもある」
バラストゥエルが指をならすと足下の水はかさを増し始める。このままではバラストゥエルの言うとおりにこの場に隔離され何もできないまま戦闘が終わると判断し、少し荒技ではあったが水でできた監獄を吹き飛ばす為に空から雷を落とした。
……だがその魔法は発動し電撃は発生したがバラストゥエルにダメージを与える事も無くほぼ無意味だった。
「ふむ。最初は疑ったが……たまには人の話を聞くと言うのも大事な事だな」
「……どういう事かお聞きしても?」
「時間稼ぎだからな付き合おう。最近できた友人に聞いたが……水は不純物が無い場合は電気を通さないらしいぞ?」
その新しい友人と言う者に心辺りがあったソアレは今の事も含め少し恨めしげに友人は選べと習いませんでしたが? 言った。
「だから先に言っただろう?人を見るは目ないと……さてとそのまま溺死してくれるほどお前達は素直な人間では無いのは知っているからな。せいぜい足掻いて消耗してくれ」
それは無理な相談ですねとソアレがいい別の世界の友人からもらった杖を掲げると白い稲妻が走った後に辺りの水が凍り始めた。
芸達者な奴らめとバラストゥエルが言いそれを火蓋にここでも激しい戦闘が始まった。
王都での戦いがさらに激しくなっていく……と誰もが思っていたがその戦いは思った以上に早く収束を迎える事になる。
この世界を離れた者の帰還によって……
次回かその次でこの章は終わりになります。そんな感じで次回の更新を気長にお待ちくださいませ
今書いてる話を置いといて新作とか書きたくなる病をどうにかして欲しいと思う今日この頃。
いつも誤字脱字報告、ブクマや★などの評価もありがとうございます。とても励みになり良い燃料になっています。引き続き面白いとか続きが気になると思ったらお付き合いよろしくお願いします。




