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第30話 侯爵家

「はぁ~全然考えが纏まらん。もうあれじゃ全部投げ捨てて何処か遠くの国に行くか?」


 リノセス家に向かう途中の馬車で、ルディールは何度目かのため息を吐き悩んでいた。


「ルーちゃんが何処かに行ったら流石に泣くよ?」


「それは私も悲しいですね」


 ルディールの冗談にミーナとセニアの二人が思った以上に悲しんでいたので慌てて訂正した。


「…しかたありません、一つだけ問題を解決しましょう。リノセス家は本当に信用して大丈夫ですよ」


「ソアレよ、リノセス家の娘さんがいるのに、お主、大丈夫か?」


「この事はリノセス家以外は知りませんが、私の母の妹はリノセス侯爵の妻ですから安心してください」


「なるほどのう…お主…金持ちだったんじゃな!」


「…そうです、私はええとこの子です。リッチな私が保証するので大丈夫ですよ。それに考えすぎるとドツボにはまるので、そろそろ楽にしてやろうかと」


「えっ?セニアさん本当ですか?」


「お父様とお母様が結婚の時に、色々あったようで隠されていますが本当です」


 今の話がバレるとリノセス家に消されるので注意してくださいミーナさん。ソアレがそう言うとそんな事は無いですからと、すぐにセニアが否定していた。


「うむ、楽になったわい。ソアレよありがとう」


「これで、一つ手札が切りやすくなったと思いますよ」


「…気づいておったか。リージュ辺りが気づくと思ったがのう」


 リージュ様は確証はないですが、気がついてないと思いますよ。私も半信半疑ですしと会話していると、ミーナとセニアが頭の上にハテナマークを表示させて何の事と聞いてきたので、この馬車の防音の事を確認してから説明した。


「わらわが、リージュに怒った時の話を覚えておるか?あの時、他に居てこの男を餌に逃げていたらどうしたんじゃ?みたいな事を言ったのを覚えておるか?」


「大貴族の娘さんに怒ってるルーちゃんが凄くてあんまり覚えてない…」


「私も似たような感じですが、言っていた様な気がします」


 実は本当にいたんじゃよと、影に手を入れ中からリージュに渡した男と同じ仮面をつけた男ともう一人は別の男の頭だけ出した。男達も拘束されていて身動きは全くとれなかった。


「…それにルディールさんが二十数人と言っていましたからね。王女様を入れると21人でしたからどうとでもとれますが…よく捕まえましたね」


「正直どこまで王女様を信用していいかは分からぬが、この二人を渡して適当に解決してもらいたいのが本音じゃが、ある程度は情報が欲しいがな。それで信用できる貴族を教えてほしかったんじゃ…ん?お主ら、なんじゃいその顔は」


「いや、ルーちゃんって変な事ばっかり言ってるけど、ちゃんとするとほんとに凄い人だよね…」


「私もそう思います…ソアレ姉様も似たようなものなので少し慣れてますが」


「ソアレよ、魔女っ子シスターズがあのような事を言うておるぞ?」


「…普段の言動に騙されたな馬鹿めと言っておけば良いでしょう」


「普段なら真似して馬鹿めと言うが、ミーナもセニアもいい仕事をしたからのう馬鹿には出来ぬのう」


「あれ?私何かしたっけ?セニアさんは分かるけど…」


「お主、王女様にハイポーションを飲ませたではないか…」


 ルディールはミーナが忘れていたので、思い出させ理由を聞くと思ったとおり、ルディールが普段から人前で自分の力を見せるのを警戒していたので、それを思い出してリージュがいたからハイポーションを飲ませたと説明した。


「そういう理由で勝手に使ったけど大丈夫だったの?」


「うむ、バッチリじゃな花丸をやろう」


 そこでソアレがハイポーション一本金貨50枚ですと余計な事を言って、ミーナを悩ませ、セニアが思った以上に安いんですねと財力を見せつけ、ルディールが金持ち自慢か! と悪態を吐き、馬車にのった頃の雰囲気は何処かにいき、セニアの家のリノセス家についた。


 リノセス家の門を抜け馬車でそこそこ走るとようやく本宅が見えてきた。


「世の中の侯爵は皆こんな金持ちなのか?」


 その疑問にソアレが答えた。


「…いえ、リノセス家は財力だけならそんじょそこらの公爵よりリッチメンですよ」


「え?そうですか?リージュ様や他の貴族方々の家に行った事もありますが、似たようなものでしたよ」


 その台詞を聞いてソアレが比較対象に大公爵をだしたのがお察しですと言ってルディールとミーナの二人を納得させた。


 本宅に着き、メイド達に案内され応接室に案内され待っていると、セニアの母とメイドがやって来た。


 セニアの母とソアレが世間話をしていると、セニアがルディールに父はまだ中央都市にいると教えてくれた。ついでにアコットも王都に買い物に行ったので今はいないと教えてくれたので少し考えていると、セニアの母親がルディールとミーナに話しかけて来た。


「あなたがルディールさんですね。話は娘達から聞いています。山賊の時もそうですが二人の娘をありがとうございました、自分の家だと思ってゆっくりしてくださいね。後、貴方がミーナさんですね。友人が出来たとセニアが喜んでいましたよ。これからもよろしくお願いします」


 セニアの母親は物腰がやわらかく、セニアと良く似ておりセニアが結婚して歳を重ねたらこうなるんだな~と安易に想像できる姿をしていた。


「おっお母様!」


 それからルディールはセニアの母に無礼が無いようにちゃんと対応して、ミーナに出来るなら普段からしたらいいのにと突っ込まれていた。


「ルディールさん、お父様はこちらに向かうようですが、飛空挺ですのでまだ2~3日かかるようです」


「うむ、ソアレに秘密を言わせたからのう、こちらも一つ秘密をだそう」


「…そうですね、私のスリーサイズは上からきゅうじゅ…」


「ソアレさん聞いてないよ!…なんで魔法使いって似たような事いうんだろう…」


 それからルディールはミーナ、セニア、ソアレの手を握り、セニアの母親に少しだけ娘さんをお借りしますといい、転移魔法で中央都市の倉庫に飛んだ。


「えっ?ルディールさんここは?」


 セニアがそう言って周りをキョロキョロ見渡したがそこは見慣れない倉庫だった。


「…ルディールさん、私のスリーサイズとこの秘密では釣り合いがとれないのでは?」


「いや、人によるがその情報の方が価値があるぞ?」


「ソアレさんもルーちゃんも真面目に変なこと言わないで…」


 それから驚くセニアに軽く説明して中央都市のリノセス家の屋敷に向かいセニアの父に会い軽く説明し、一緒に王都のリノセス家まで飛んだ。


「…あるのも使える人も知っていますが、転移魔法で飛ぶのは初めてですね。」


「シャドウダイブと言う魔法じゃな、影が出来ない状況を作られたら潜れないから使えぬが便利じゃぞ」


「…はい便利ですね、と言って覚えられる魔法ではないですが」


「そこのお二人さん?ちゃんと説明しない、とそろそろ怒られると思うよ」


 ミーナに正論を言われ、未だ驚くリノセス家にルディールは今回の事件の事を丁寧に説明した。


「なるほどな…大体は分かったが正直その連中についてはリノセス家では荷が重いぞ」


 そう言ってルディールが捕まえた男達を見ながらセニアの父親が頭を悩ませた。


「お父様はあまり転移魔法に驚かれないんですね」


「ん?ああ、直接見た訳じゃないがリベット村の村長が来る頻度が増えたからな。急用でも無い時でも呼んだら来たから、何かあるとは思っていたから心構えが出来てたんだ」


 その話にルディールが隠していたのに、罰する事はしないのかと聞くと、村長とは昔なじみだし、ガイアロックドラゴンの角を回してもらって、娘達まで助けて貰ってるのに怒る所が何処にあるのか? と逆に聞いてきた。


「…ガイアロックドラゴンとか不穏な単語がきこえましたが、ぶち切れルーちゃんからすれば雑魚でしたね」


 話の腰を折ってきたソアレを無視して、ルディールはドラゴンの事についても尋ねたが、あんな角はそうそう手に入るものじゃないし、村長との付き合いも長いからカマをかけたら詳細を教えてくれたと答えた。


 話を詰めていたが少し行き詰まった所で、リノセス家の中でもかなり信用できるメイドが走ってやって来て。セニアの父に何かを伝えた。


 その話を聞くと顔色が変わり、この部屋にいる全員はこれからの事は一切口外する事は禁ずと言った。その様子がおかしかったので娘のセニアが尋ねると……一言、


「王女様がいらっしゃった」


 といい、数時間前に助けた王女様と女性の護衛を一人連れ応接間にやってきた、その姿は王女にしては地味で何処にでもいる貴族のようだった。


 全員膝を突いたが、今回はお忍びでしかも影武者を置いてきたので、そこまでしなくて結構ですよといい全員を座らせた。リノセス侯爵がどうしてこちらにと聞くとルディールの方を見た。


「こちらに居ると言う事は中立と言う事でいいんですね?」


「はい、私の勝手な意見ですが、リージュ様、いえ貴族側もかなり怪しいのでミスはしましたが私達はどちらにもつかないつもりです」


「その言葉を信じます。ではリージュに渡した仮面の男について詳しく教えてもらえますか?」


「やはり起きていましたか。説明はできますがその男達に聞く方が早いでしょう」


 そう言ってルディールは部屋の隅に置いてあった男達を二人連れて来て見せた。


「リージュに渡したのでは?」


「はい。一人は渡しましたが、貴族が信用できるかの判断が出来ないので捕獲した事も言わずに連れてきました」


「そうですか、この二人であの現場の犯人達は全てですか?」


「私が認知できる範囲であればこの二人で全員になります」


 そう言って二人である程度のやり取りをしてから王女はルディールに礼を言い、仮面の男の仮面をはずし、もう一人の男との顔を確認し護衛に尋ねた。


 仮面の男は分かりませんが、この男は貴族の集まりで見た事がありますと話していた。


「そうですか…ルディールさんこの二人をつれて帰ってもいいでしょうか?」


「はい、お会い出来る事があれば渡そうかと考えていたので大丈夫ですが、お望みとあれば強制的に話せるようにさせますが?どうしますか?」


 王女の護衛がそんな事が出来るのかと驚いて居たが、心当たりもあり王女に確認を取りルディールに頼み、ルディールがどちらが尋問しますか? と尋ね私がしますと王女が答えた。


「では、失礼します。ヘブンズチャーム!」


 ルディールが魔法を唱えると二人の男達の目から光が消えた。


「…今からお前達の主はあの方だ、全ての質問に答えよ、嘘はゆるさん」


「「あーー」」


 二人の男達は意識がなくだらしなく口を開けていたが、ルディールが何か簡単な質問をしてくださいと王女に頼み、二人の名前を聞くと意識がはっきりし躊躇無く答えた。


「その魔法は一日は優に持つので、どんな事でも聞いてあげてください。ここだと私には必要の無い情報もございますので」


 その心遣いに感謝しますと礼をいい、護衛の女に指示を出しアイテムバッグの様な物に二人を入れた。そのアイテムが何かと聞くと、囚人を運ぶ為の物だと教えてくれた。


「ルディールさん貴方のおかげで、かなりの収穫がありました。ありがとうございます」


「もったいないお言葉です」


「一つ提案ですが、私の護衛になりませんか?」


 その言葉に周りは息をのんだが、ルディールは少し悩み断った。


「いえ、私は強い者の味方ですが、まだ色々な所に行って見たいのでお断りさせていただきます」


 その言葉がつぼだったようで、王女様は大きく笑い目尻に涙をためてルディールに言った。


「ふふふっ、そうですか強い者の味方ですか、今日は来てよかったです。久しぶりに笑わせてもらいました。」


 次回会う時はいつもの方の話し方でお願いしますねと、言って笑顔で去って行き、また護衛がルディールに深く頭を下げていた。


 それから入れ違いのようにアコットが帰って来て、ルディールに飛びついた。


「るーちゃんいらっしゃい!おうとはひとが多くて疲れた!」


「うむ、アコットよ久しぶりじゃし奇遇じゃな。わらわも超疲れた……」


 リノセス夫妻が笑いながらルディールを見ていたが、気にせずにソファーに倒れ込んだ。

次回の更新からは、また朝の内に投稿しようとおもいます。お昼に投稿より朝の方が楽だったので。


いとも誤字脱字の報告ありがとうございます。本当に助かっております。

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