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第29話 王宮騎士

 セニアのメイドから城へ、王女が誘拐されたと話が伝わり、そこにいた軍団長がすぐに少数精鋭の小隊を組み上げ王女の救出に向かい、王女とシュラブネル公爵の娘とリノセス家の娘の安全確保とそれ以外は、見つけ次第すぐ捕縛と命令を出していたが、突入先から大きな爆発音が聞こえた。


「何だ!今の爆発音は!どこの馬鹿だ!王女様が居られるのだぞ!」


 そう叫び、小隊の副団長に選ばれた男がおかしいですね、攻撃の指示はしていないはずですが、と首をかしげたが、その直後に男達の叫び声やうめき声が聞こえ、一人の王宮騎士が現状を伝えに戻ってきた。


「どうした!何があった!」


「はっはい!王女様、シュラブネル様、リノセス様は無事ですが!本小隊は壊滅しました!」


 軍団長はその言葉を信じられなかったが、今目の前で状況を説明する騎士も王宮騎士でエリートだ、このような所で嘘はつかないと、自分と副隊長を先頭にその場所へ向かおうとした所で報告にきた王宮騎士が影に飲み込まれた。


「なっなんだ…影に飲み込まれた?」


「急ぎましょう、何かいますね」


 そう言って目的地に行く前に、数人に城へ戻り応援を呼ぶように指示をだし向かわせたが、少し走った所で、澄んだ女の声がした。


「逃げられると思ったか?」


 そう聞こえたと思ったら伝令に走らせた騎士達も影に飲まれた。


 それからの軍団長の行動は早く、すぐに目的地に向かった。

 

 そこには王女様や救助対象を守るように結界を張り深紅の眼の角の生えた女が先ほど影に飲まれた騎士達の足の骨を折り動けなくし、積み上げていた。


 女の姿を見た軍団長と副隊長の男は即座に剣を抜き斬りかかった。


 その行動はルディールから見れば敵でしかなく、即座にカウンターで爪を伸ばし反撃にでた。


 甲高い金属の音がして二人がかりでなんとかルディールの爪の攻撃をしのいだが、さらに影から数本の手が伸び魔法を放ってきた、その二人の王宮騎士もかなりの実力の持ち主でギリギリだったがなんとか躱せた。


「今の当たったら死んでたな…」


「でしょうね…」


 などと会話をしていると、ルディールも会話に参加してきた。


「いや、お主達のように血の気が盛んではないから殺しはせんかもしれんが、王女様やシュラブネル様、リノセス様やそのご友人の安全が確保されるまでは敵と見なす」


 そうはなし戦闘を再開させ二人がルディールに気を取られている間に、残りの王宮騎士を影に飲み込ませた。


「この化け物はなんなんだ?」


「なんでしょうね…話せば分かってくれそうですが、もう私と軍団長の二人ですし」


 少し気を抜いた瞬間にもう一人じゃぞと声が聞こえ、その騎士の体に衝撃が走り意識を刈り取られた。


「嘘だろ…少数精鋭できた小隊がものの数分で壊滅だと?お前はなんなんだ?」


「見境無く攻撃を仕掛けてきた馬鹿に答える訳ないじゃろ」


「あれは俺の命令じゃないぞ!王女様がいるのにそんな事するか!」


「はいそうですか、分かりましたと答える奴に見えたか?これで終いじゃ」


 そう言って軍団長に明らかな殺意をもって襲いかかったルディールをミーナが叫び止めた。


「ルーちゃん、駄目ーーーーー!」




 戦闘が終わり、片目から血を流したソアレが話しかけて来た。


「…強いとは前から分かっていましたが、ここまででしたか…あの炎毛猿の時もまだ手加減していたんですね」


 その姿を見てルディールが頭をさげアイテムバッグの中からハイポーションを渡し、飲ませて回復させた。


「眼は大丈夫か?すまぬ」


「……いえ、もう治りましたから大丈夫ですよ。ルディールさんの一気に爆発した魔力で、魔眼の見える量を超えて血がでたんでしょう」


「すまぬ」


「……何をいいますやら。あの魔法を防いでもらって無ければ全員死んでましたよ。お気になさらずに」


 次にミーナとセニアが礼を言いに来たがその足取りは怯えているかと思いきやいつも通りだった。


「ソアレさんに聞いたけど、ルーちゃんまた助けてくれたんだね、ありがとう」


「ルディールさん、私もありがとうございました」


「どういたしましてじゃな、流石に我を忘れたわい。怖くはなかったか?」


「私は、人間はもっと怖いと知っていますから大丈夫ですよ」


「ん?私はすごい怖かったから、ルーちゃんもう怒ったらだめだよ」


「なんじゃい、おしっこでも漏らしたか?」


 ミーナが漏らしてないよ! と反論していると軍団長に爆発の説明を聞きにいったリージュが王女と戻って来た。


「セニア・リノセスこの度は私の救出、大義でありました。私達を狙った魔法を撃った犯人は王宮騎士でしたが、途中で紛れ込んだようです。その人物もリノセス家の護衛のおかげで確保されました。ありがとうございます」


 王女の言葉にその場にいた全員は頭をさげ言葉を聞いた。


 それから王女はルディールの方に目を向け、一人の死者も出さずに誘拐犯を全て捕獲した事に感謝を述べ、王宮騎士との戦闘を不問とした。


 応援で来た王宮騎士に王女が守られ、ルディールにボコられた王宮騎士達が運び出されているのを眺めていると、リージュが軍団長と共にやってきた。


「セニアの護衛さん、少しよろしいでしょうか?」


「リージュ様ですか、どうかなされましたか?」


 余所行きモードのルディールが対応すると軍団長が話してきた。


「護衛さんよ、お前にやられた連中のケガが治らねーんだが何をした?流石にここから運ぶのは骨だぞ」


「そういう魔法ですから魔法やアイテムでは治りませんよ。私にも落ち度はありますが、攻撃を仕掛けて来たのはそちらですから諦めてください」


 その言葉にリージュは驚き本当ですか?と聞いて来たので、本当ですとルディールは答えた。


【古の腐姫の嫉妬】その指輪の効果はルディールが持つ指輪の中で、もっとも最悪でその指輪が解放され攻撃された者は回復魔法、回復アイテム無効の愛をもらう。状態異状の回復も無効で、その効果は相手が死ぬまでなのでゲーム中ならまだしもこの世界では…


「治らない訳では無いので添え木でもつけて安静にしていれば自身の治癒力で治るでしょう」


「そんなのどーするんだよ…」


「王女様が亡くなっていたら、どうするおつもりでしたか?」


 その言葉に軍団長は諦めて追加で来た王宮騎士達に指示を出し、全ての王宮騎士を撤収させた。


 ルディールはセニアと合流して話をしていると、王宮騎士とは少し毛色の違う二人の騎士を連れてやって来てセニアに礼を述べた


「セニアさん、今日はありがとうございました。リノセス家の護衛は強いのですね」


「王女様が無事でなによりです」


 そのやり取りをミーナと見ているとセニアとの話が終わったのか、次はこちらに向かってやってきた。ルディールは即座に膝をつき、ミーナも真似をして膝をついた。


「ミーナさんも護衛さんも、確かに人前ではありますがミーナさんはクラスメイトでしょうに、それと護衛さんにも私の直属の騎士達が聞きたい事があるようなのでお立ちください」


 それから二人は立ち上がると、フルプレートで顔は見えなかったが女性の声の騎士が話しかけてきた。


「セニア・リノセスの護衛、お前が持っている魔力封じ宝玉は何処で手に入れた?その宝玉は神殿がある程度管理している、そうそう流れない代物だ」


 嘘をついても良かったが、まったくメリットを感じない上にルディールの勘だが、この王女はかなりの切れ者と判断し、セニア達が大怪我していた事だけは言わずにかなり詳細に丁寧に説明した。


 ルディールの説明に王女は深く考えその宝玉をよく見せて欲しいと頼んできたので、断る理由もないので直属の騎士に渡した、そして騎士達が深く観察し王女に何かを伝えた。


「ルディールさん、この魔力封じ宝玉を譲って頂く事は可能ですか?」


 王女がそう聞いて来たので、断れるはずも無くその宝玉を渡した。


「ありがとうございます、このご恩はいずれ。後、参考程度にききたいのですが、今回の誘拐どう思いますか?」


 そうですねと少し考えてからルディールは答えた。


「今回、王女様が一人になる原因を作った人物に、心当たりがあるのでしたらお気をつけください。それがご学友でしたら少し距離を取る事をおすすめします」


「ええ、私も母に友達は選べと教えられましたのでそう思います」


 それからミーナにクラスでお会いしましょうと言い、ルディールに皆さんと話している時の話し方の方が魅力的ですよ、といい去っていった。その時に直轄の騎士がルディールの方を向き深く頭を下げていた。


 王女達と別れて地上に出ると、シュラブネル家の馬車が止まっておりそこにルディールとリージュが乗り込み当初の予定通り捕縛した仮面の男を渡し、すぐに尋問するといい去っていった。


「ルーちゃん、やっと終わったね」


「まったく終わってないがのう…あの王女様かなり切れ者じゃな…」


「…まったくですね」


 ルディールのその台詞にソアレは分かっていたようだったが、ミーナとセニアはイマイチ分かっていなかった。


「王女様、最後にわらわの事をルディールと呼ばなかったか?」


「あっ呼んでたね。それがどうかしたの?」


「わらわが確認できる範囲では誰も呼んでないんじゃ。となると救出したどこかで起きて寝たふりしておって話を聞いておったんじゃ」


 その事にセニアが驚いていたが、セニア自身も言った覚えはなくそうかも知れないと納得した。


「後はとうとうセニアの家に行って、おやっさんに会わないといけないのう」


「えっ?どうしてですか?」


「王女様がセニアの護衛と言わずにリノセス家の護衛と言ったじゃろ?たぶんじゃが今回の襲撃は貴族側か、神殿側か、まだ分からないので中立ならリノセス家ですよ。と言う意味じゃと思う。大公爵の娘が居たのにもかかわらずにのう」


「えっ?だとすると…もし貴族側だったらリージュ様が関係してるって事?」


「う~む。うんこくさいではなく、うさんくさい奴じゃし、今日の行動を振り返ると真っ黒なんじゃが…人は悪い所を見つけると全部つなげて悪にしようとするからのう。確証では無い限り決めつけてはだめじゃろな。まぁ、そこまで悪い奴には見えんしのう」


「…ルディールのその甘さが、後に自身を窮地に陥れるとはこの時は誰も思っていなかった」


「ぐっそれを言うな…わらわもミスったから地味に凹んでおるのじゃ…」


「…私の眼ですか?それなら気にしていませんが?」


「それは気にしておるが、あの仮面の男をリージュにやったのが失敗じゃったな、あとの祭りじゃが王女様に渡した方が安全じゃったな、まぁその話も聞いておったと思うがな」


 ソアレがそうですかと納得していると、その事に気づいて無かったのに何故変なナレーション入れたのかと問うと、ルディールさんの真似をしたといい皆を脱力させた。


「後はソアレかセニアに信頼できる貴族を紹介してもらうのと、リノセス家に行って説明せねば駄目じゃのう…」


「…でしたら、私がさっき心当たりがあると言ったのはリノセス家なのでそこに向かいましょう」


 後は馬車の中でお話しますといい、セニアの馬車に乗り込みリノセス家に向かった。

次回も明日のお昼には投稿できそうです。

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