表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
269/306

第67話 事実

「いきなり光都が出現したと言っても意味不明だとは思うんだけど……それしか言い様が無いんだよね」


 ローレットの国王や王女様は先に少し話を聞いておりその事について考えているようだったので、頭に?マークを浮かべるルディールがアトラカナンタに質問する。


「わからぬまま話を聞く方が危険じゃと思うから聞くんじゃが……光都アークスライヴは天界にあって天使達が住む都市なんじゃよな?」


「うん。そだよー。天界って天の世界と言うだけあって大地が無くて空ばっかりで浮いてる島々に天使とかその他の翼人が住んでて、その中で一番大きな都市が光都アークスライヴだね。王都とか魔都に比べれば小さいけどね」


「なるほどのう……それが聖都の上空に現れたと」


 アトラカナンタがそういう事と言ってルディールにウィンクをするが、された本人はとりあえず無視をして王女様の方を向く。


 そのタイミングで国王陛下も王女様も考えがまとまったのでアトラカナンタに王都まで情報を届けてくれた礼を言ってから質問する。


 内容は光都アークスライヴが出現した影響で通信用魔道具が何らかの理由で使えなくなり連絡がつかないのか? というものだった。


 アトラカナンタの表情が少しだけ厳しくなりローレットの国王に告げた。


「そんな生易しい物じゃないよ。聖都ホーリスフィアにいたほぼ全ての生き物が生贄に光都アークスライヴが姿を現したんだよ」


 軽い口調で話すアトラカナンタの言葉を理解出来なかったのか長い沈黙が訪れる。そしてその沈黙を破ったの宰相達で流石に魔王様の言う事でも信じられませんとの事だった。


「まぁそうだろうね。普通だったら信じなくても私達、魔族にはデメリット無いしで終わるんだけど……今回はデメリット大ありだからね。証拠を見せようか?」


 そう言ってから鷲の魔神ヤルトガログに合図を送ると宙にスクリーンの様な物が現れここでは無い何処かに空を映していた。


(おっ?空の写し絵じゃな。ヤルトガログの能力もゲーム中とおんなじなんじゃな?確か……一度でも見た空を映せるとかそんなんじゃったかのう)


 ルディールが鷲の魔神の能力を考えているとヤルトガログが手を動かしスクリーンに映る風景を切り替えていく。


 その手の動きが止まるとそこにはエアエデンより遙かに大きな大地が宙に浮いておりその中心には白く輝く城のような建造物が写っていた。


 全員が息を飲みその映された光景に唖然としている中、ルディールはアトラカナンタが言った事を確かめる為にヤルトガログに尋ねる。


「ヤルトガログよすまぬが、聖都の町並みを映せるか?」


 貴女様に名乗った記憶はありませんがと少し不思議そうな顔をしていたが、分かりましたと言ってからスクリーンに聖都ホーリスフィアの街を映す。


 映された聖都には一人の人間も写っておらずに露店や市場には商品や果物が並び、生きる物だけが切り取られた様なとても気味の悪い光景が広がっていた。


 その光景をみて少し我に返った王女様がヤルトガログに頼み他の場所を移してもらったが同じ様に生物の気配は何処にも無かった。


 皆が言葉を無くすなかアトラカナンタが信じてくれた? と言ったのでその場にいた全員が静かに頷く。


 そしてスクリーンを見ていたソアレが妙な違和感を魔眼に捉えた。


「ヤルトガログさんと言いましたか?……申し訳ありませんが、この景色を少し戻してもらえますか?」


 分かったと。ヤルトガログは頷き景色を戻していくと目的の映像があったのでソアレはそこでストップと言って止めてもらった。


 その景色は丁度、光都の真下の風景だったので何の変哲も無いように感じたが、よく観察すると人が歩くぐらいの速度で地面が青白く光り始めていた。


「ん?光っておる様に見えるが……なんじゃ?」


「魔眼で見るとかなり気味の悪い魔力の動きをしていますが……初めてみますね」


 ルディール達がその光景を見て悩んでいるとアトラカナンタが大きくため息をついてからそれについて話し始める。


「それがさっき私が言ったデメリット……聖域って言うんだけどそれが人間界に広がっていくと天使は本来の力が出せるし魔族は弱体化をくらうんだよ」


「まじか……」とルディールが言うとアトラカナンタはおおまじだよと答え、ネルフェニオンもヤルトガログも頷いた。


 聖域については宰相達も知らなかったようで人間には特に害は無いのかと質問する。


「逆に質問するけど……人間が魔界に来るとどうなる?」


「……魔人になったり精神が崩壊すると聞きますが?」


「そういう事、人間が聖域に入ると天使にはなれないけど本気で狂うよ?狂人くるいびとって聞いた事無い?」


 国王も宰相達も聞いた事は無かった様だったが魔法と天使の事に詳しいソアレとタリカが狂人くるいびとと言う言葉に反応する。


「たしか……聖域に入ると神々の声が聞こえ、その声の強さに人間の弱い精神は壊されるんでしたっけ?」


「お?タリカだっけ?前といい君は本当に良く知ってるね」


「むっ昔は真面目な聖職者でしたから……でも聖域と言うのは女神様の力の一部なので女神様がいない今は使えないのでは?」


「それは謎なんだけどね。でも女神の力に比べたら展開が遅いから……天使辺りが真似してやってるって思うけどね。主神から力を分け与えられたんだからそれぐらいは出来るかな?」


「なっなるほど」


 その場にいた宰相達やルディール達が光都アークスライヴについて思い思いに意見を出し合い始めた。


 そしてしばらく意見を交換した後に国王陛下が一旦話をやめる様にいいアトラカナンタに質問する。


「魔王アトラカナンタ。これだけの有益な情報をローレットに教えてくれた貴女の真意がしりたい」


 その質問にアトラカナンタは少し笑ってから答える。


「あはっ。流石に光都が出現し聖域が展開されると魔都ファボスの戦力じゃ勝てなくは無いけどキツいからね。その上でもし人間が天使側につくと勝てる可能性は相当低くなるからね。敵対するつもりなら先にお前達を潰すぞ?と釘を刺しに来たんだよ?」


 そう言って魔力を解放させるアトラカナンタに火食い鳥はすぐに反応し国王を守る様に間に立つ。


 そんな雰囲気とは裏腹に王女とルディールとその娘達は別の事を考えている様だった。


「ルディールさん的にはどうですか?」


「まずはミューラッカに報告じゃろうな。それからウェルデニア、ヘルテンで良かろう。集まってもらって対策するのが一番じゃとは思うが……」


「ですよねー」と王女ルディールが話していると宰相達は王女様……と少し呆れていた。


「大丈夫ですよ。アトラカナンタ様が本気ならルディールさんが来る前に説明しているはずですからね」


「そういう事じゃな。というか本気ならそこのネルフェニオンが吠えれば王都に攻め込まれた時の様に魔法が使えなくなるからのう。それをせんと言う事はアトラカナンタ達も揉める気は無いんじゃぞ」


「そういう事です!嘘つきは嘘つきの嘘がわかるんですよ!」


「ルゼア……それだとルディールさんとシェルビア王女様が嘘つきと言っていますからね……」


 王女様もルディールも事が事だけにいつもの様な元気は無かったが、アトラカナンタもローレットの国王も少しだけ笑った。


 そして国王陛下が口を開き、魔族の全てを知るのは不可能だが、天使達が犯した悪行を考えればローレットは魔族と手を組むと宣言した。


「確かに王都には攻め込まれたが……過去は置いておかねば前には進めまい。魔都ファボスの鉱山のおかげでローレットは豊かになっている。その事を考えればどちらが敵かは明白というもの」


「あはっ。余計な争い事を生まないその姿勢はいいね。今はその言葉を信じるよ」


 そして一度、国王や王女様を含めて魔王と偉い人達でこれからの事を話し合う事になったので火食い鳥を残してルディールは外へと出る。


「……アトラカナンタに体を乗っ取られたら詰みなんじゃが大丈夫なんじゃろか?」


「ソアレ様達もいますから大丈夫だとは思いますけど、大変な事になりましたわ」


 と、ルディールと少し顔の青いリージュが話しているとネルフェニオンとヤルトガログも外に出ていたので会話に混ざった。


「まだ、お腹痛くて本調子じゃねーからたぶん大丈夫だ」


「ルディール様。お久しぶりで」


「うむ。お久しぶりじゃな。まだお腹痛いカナタンなんじゃな。それで?魔界の方には影響とか出ておるのか?」


「びっくりするほど影響ねーな。基本的に人間界も魔界も天界も孤立してるからよほどの事が無い限り干渉とかしねーからな」


「なるほどの~」


 等とルディールとネルフェニオン達が外で世間話をしていると情報が伝わり始めたのか、慌ただしく動き始める。


 そして先ほどまで話し合いをしていた部屋から王女様が現れルディールに頼み事をする。


 こんな大変な時に断る理由も無いので快く了承すると、スノーベインからノーティアとミューラッカ、ヘルテンからドワーフの王、ウェルデニアからも国王がローレットに集まるのでシュラブネル公爵とリノセス公爵を連れてきて欲しいとの事だった。


「うむ。喜んでいくが……どこまで説明して良いんじゃ?」と尋ねると国王直筆の手紙を二枚ルディールに手渡した。


 頷きすぐに転移しようとした所でシュラブネル公爵の所には自分が行くとリージュが言った。


 顔の青いリージュが心配だったが言って折れる様な子では無いのは知っていたのでルディールはリージュを連れてシュラブネル家へと転移する。


「ではリージュよ。頼んだぞ。」


「はい。父親なので私が話した方が早いですからね」


 うむ。と頷きリージュの頭を撫でてからルディールは王都のリノセス家に転移する。


 そして急ぎだったのでいつもの様にメイド達を呼ぶベルは鳴らさずすぐに外へ出ると一人のメイドがいたので簡単に理由を説明しリノセス公爵の元へと案内してもらう。


 そして公爵の元に辿り着くと仕事をしていたようだったがルディールから国王陛下の手紙を受け取るとすぐに読み始めた。


「これ本当だよな……うちのメイドも何人かは違和感を感じていたが……」


「ええ。本当です。これから各国の王がくるので公爵も来て欲しいとの事です」


 断る事は出来ない呼びかけにリノセス公爵は頭を掻きながら少し前まで田舎の貴族だったのにとぼやきルディールと城へと転移する。


 そのまま皆と合流しても良かったが少し思う所があったのでルディールは先に中央都市とリベット村に転移する。


 そして中央都市で虫の魔神イオスディシアンに経緯を説明し一緒に城へ来てくれ無いかと頼むと喜んでと言ってルディールにしたがった。


 続いてリベット村に飛び、ハンモックで昼寝をしているハンティアルケーツとルディールの家の前で待機していたバルケを仲間に引き入れる。


「昼寝してたのに……」


「終わったら永眠できるわい」


「それって死んでるでしょ!」


「ルー坊。それで?これだけ魔神集めてどうすんだ?天使が仕掛けてくるのか?」


「その可能性もあるんじゃが……城では言えぬがアトラカナンタがちょいとうさんくさいからのう……後は各国から王様が来るから何かあっては大問題じゃから警備の強化じゃな」


 ルディールの真剣な表情に三体の魔神達はそれ以上は何も言わずに頷いたので礼を言ってから城へと転移する。


 城へ戻るとスナップが出迎えてくれて、シュラブネル公爵はすでに到着したと話しリージュは少し気分が優れないので横になっていると教えてくれた。


「公爵家の娘とは言え年頃の女の子じゃからのう……」


 これからどうするのかとスナップがルディールに尋ねると王女様が現れたので連れてきた魔神達の事を説明する。


「ルディールさん……流石ですね」


「ん?何がじゃ?」


「え?イオスディシアンさんを呼んだのって他国にローレットは魔神達とも仲良くやってるぞってアピールの意味ですよね?」


 まったくそんな意図はなかったがシェルビア王女が勝手に勘違いしたのでルディールはとりあえず流石はシェルビア王女と褒めた。


「流石はシェルビア王女。わらわの真意に気づくとは……」


「びっくりするぐらい嘘くさいですわ……」


 これからの事を皆で話し合い、バルケとスナップはもしもの為に別室で待機しルディール、イオスディシアン、ハンティアルケーツは会議が始まれば王女様の近くに待機と言う事が決まった。


 そして各国の王が集まるまでは少し時間があったのでルディールはスナップと医務室で横になっているリージュに会いに行く。


 すると先客がおり寝ているリージュの頭にソアレが濡れタオルを乗せていた。


「リージュは大丈夫そうか?」


「はい。大丈夫ですが事が事だけにかなりのストレスで少し熱が出たようです」


「前にも王都で似た様な事があったから思いだしたんじゃろな……規模が違い過ぎるがのう」


「ええ、聖都の人口は五十万人を超えていると聞いた事がありますししかも建国祭だったので各国から大勢の人達が来ていたんでしょう……」


「……人のやる事ではありませんわ」


 本当じゃなと言って気落ちするルディールは少し前に図書館で知り合った女生徒の事を思い出していた。


 そして聖都が消えた事を知っている人達が暗い気持ちに覆われる中、各国から王や宰相などいった人達がローレットに集結する。


 これから始まる会議がどうなるかは誰にも分からなかった。

いつも誤字脱字報告ありがとうございます。


次回の更新は多分明日です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ