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第66話 消えた聖都

 ルディールが通信用魔道具に出るとソアレが慌て安否を気遣う。


「わらわ達は無事じゃしミューラッカ達も無事じゃ。ソアレ達はどうじゃ?」


「私達もローレットの人々にも特にありませんが……」


「ホーリスフィアの方角で何か起こっておる様な感じじゃが……ソアレは分かるか?」


「いえ……まったく分かりません。ただ何と言いますか……この気持ち悪い感じはあの時ととても良く似ています」


 と、ソアレがそう言って小声になり少し前に貴族が学生達を巻き込んで魔神を召喚した時に魔力の流れや雰囲気がよく似ていると話した。


 その話が聞こえていたスナップも思い出したかの様にそうですわ!と慌てる。


「確かに言われてみれば似ておるか……」


「そっくりです……ただ、ローレットにしろスノーベインにしろホーリスフィアとはかなり離れています。それなのに何かあったと感じ取れると言う事はとても異常かと……それでルディールさん。すぐに王都まで来れますか?王女様から話があるそうなので」


「うむ。わかったすぐに戻る」


 待ってますと魔道具の向こうで頭を下げるソアレを想像してからルディールはミューラッカに話しかける。


「すまんミューラッカ。せっかく遊びに来させてもらったが、わらわ達は王都に戻る。」


「何か分かったのか?」


「全然わからぬが……いや、禁書っぽいのをホーリスフィアが使った可能性が出てきた」


 流石のミューラッカも禁書の危険性を知っているのでその顔がかなり険しくなる。


「こういう悪い予感は大抵あたるか……こちらも一度ノーティアを呼び戻す」


「うむ。それが良かろう。ではミューラッカよ失礼するぞ」


 ミューラッカが小さく返事をし手を上げたのを見てからルディール達は王城の門の前まで転移する。


 するとスティレとカーディフが待っていてくれていたので軽く挨拶をしてから合流し王女様への部屋へと向かう。


 道中でもスティレやカーディフと情報交換をするが、お互いにこれと言って新しい情報は手に入らなかった。


 そして王女様の部屋にたどり着きノックをしてから皆が緊張した面持ちで中へと入っていった。


 そこにはリージュも来ており何故かソアレがリージュの頬を両手で引っ張っておりタリカがその光景を慌てて止める光景が広がっていた。


「まぁいつも通りで良いんじゃが……」とルディールが呆れながら言うとソアレはリージュの頬から手を離し挨拶をする。


 全員が簡単にだが挨拶を交わすと王女様は少し離れている様子だったので先ほどの光景を尋ねた。


「それで……何故ソアレはリージュのほっぺたを引っ張っておったんじゃ?」


「はい。ルストファグナに行くのを邪魔されたので。確かに納得はしていましたがリージュさんの顔を見たら色々と思いだしまして……」


「お主が炎都から戻って時間があったから数日だけじゃが行ったじゃろうに……」


「そうですけど冒険したいじゃないですか。私達は冒険者ですし」


 その話を聞いたリージュが怒り、行ってないと言うから我慢してつねられたのにと軽く喧嘩が始まった。


 いつもの事なのでスティレもカーディフも放置する方向になったが新人のタリカが慌てながらルディールに質問する。


「ちょっと!ルディールさん!公爵令嬢の頬をつねったり髪をひっぱたりして大丈夫なんですか!?というかリーダー止めなくていいんですか!?」


「他の公爵令嬢なら駄目だがリージュ様だから大丈夫だ。ソアレはリージュ様に関節技をかけたりスカートを頭の上で結んだりしているからな」


「なんやかんやであの二人は仲が良いからまぁ大丈夫じゃろ。ルディール六姉妹じゃし」


 そうなんですねとタリカが納得しているとスナップが初めてその単語を聞きましたわと呆れていた。


「いつもの適当ですか……と言うか六姉妹ってなんですか?」


「ミーナにセニア、アコット、リージュ、ソアレじゃな……一人足らぬがわらわが魔法を教えておって王都に平和が来るまでは力を合わすはずの友人達じゃな」


 ルディールの答えにその場にいた全員がソアレとリージュを見ながら喧嘩しているんですがと心を一つにした。


 そしてどこから話を聞いていたのか私を入れて六姉妹ですねと元気よく王女様がドアを開けて入って来た。


 そして簡単に挨拶をしようとしたがルミディナとルゼアがいたので前に魔神に襲撃されて以降は会っていなかったので少し話をする。


「ルミディナさん縮みました?」


 縮んではいないが襲撃された時に王女様があったルミディナは別人とは言い辛いので話を合わせて魔法で大きくなっていたと伝える。


 それで信用してもらえたかどうかは分からないがルディールの姪と言うだけそういう所がそっくりですねと王女様は笑った。


 ルゼアとも少し話した後に一息ついてから皆を集めた事を話し始める。


「私が部屋から離れていた理由ですが、国王陛下に何処まで話して良いかを尋ねてきた所です。ローレットとしてもほぼ情報がないので今の所は全て話して大丈夫とは言われましたが……一応ここだけの話に留めておいてくださいね」


 その場にいた全員が頷いたので王女様も頷いてから話し始める。


 ただ本当に今回の異変? については分かっている事は少なく聖都ホーリスフィアに向かった冒険者や商人といった全ての人達と連絡が取れないと言う話だった。


 通信用魔道具の調子が悪いのかとも思ったが他の国は連絡がついた。ヘルテン等にもその事を尋ねたがヘルテンからホーリスフィアに向かった人達とも連絡が取れないとの事だった。


「どういう事なんじゃろな?」


「私が思うに変な障壁か何かが張ってあって通信が出来ないと思っているんですよね。ここにいる皆さんは別ですが……並の冒険者や騎士では今回の異変には気づいていないんですよ」


 そう王女が言うとスティレは首筋がヒリヒリする程度でリージュやタリカや王女様は言われなければ気にもならない程度だと話した。


「ん?それじゃとよくこんな急に王女様は皆を集められたのう?」


「はい。たまたま城にいて宰相さん達からホーリスフィアに行った人達に連絡が出来ないとか宮廷魔道士達や騎士団の隊長達が口をそろえてホーリスフィアの方角が気持ち悪いと言い出したのですぐにソアレさんに連絡し相談しました」


 ソアレに来てもらって話を聞くとやはり同じ様な事を言っていた。次に学校に行っているリージュを呼び出し相談するとシュラブネル家から行って貰ってる人達にも連絡がつかないとの事だったのでそれからルディールに連絡を入れたとの事だった。


「それで、ルディールさんは何か分かりますか?ソアレさんは仮説ですが禁書が使われたのでは無いかと言っていましたが……」


「正直にいうが全然わからんのう……ろくでも無い事が起こっておるのは間違いないんじゃが」


 普段ふざけているルディール達が真面目な顔をしているので王女様も真面目な顔でそうですか……と言って少し考える。


「流石に情報がなさ過ぎますからね。ローレットの動きとしてはA以上の冒険者をホーリスフィアに送り込み情報を得るという形になりました」


「うむ。それが最善じゃろうが……連絡がつかない冒険者にもAやSと言った冒険者はおったんじゃよな?危険ではないか?」


「Aランク冒険者は先に戻って来ていたのでSランク方が残っているので……大丈夫とは思うんですがどう思います?やはり少し待った方が良いですか?」


 情報が無く不安そうな王女様を見てルディールも少し考えた後に答える。


「じゃったらわらわと火食い鳥とでササッと見て来ようか?わらわは入れぬが火食い鳥なら聖都に入れるのでな」


 火食い鳥はそれの方が話が速いとルディールの意見に賛成したが王女様とリージュは少し考え、スナップとルミディナ、ルゼアはルディールについて行くと言う姿勢だった。


 しばらく王女様とリージュは考えたがそれ以上に良い案が無かったのでルディール達にお願いする事になった。


「ルディールさん。すみませんがその案が一番速く安全なのでお願いできますか?」


「うむ。見るだけじゃからな。できるだけ余計な戦闘は避けるから大丈夫じゃな」と言ってすぐにホーリスフィアに向かおうとするが少し強めのノックがあった後に慌てた侍女が王女様を呼びに来た。


 そして一言二言言葉を交わした後に王女様は驚いた様に声を発した。


「えっ?アトラカナンタ様ですか?」


 聞き慣れた名前が出たのでルディール達が王女様を見るとホーリスフィアに向かうのは少し待ってと言った。


「アトラカナンタ様が二人の護衛と一緒に城の門まで来てるとの事です」


「この忙しい時になんじゃろな?」


「さぁ……私も少し行って来ます。もしもの時の為に火食い鳥の皆さん。護衛をお願いできますか?」


 スティレが分かりましたと返事をしたので王女様と火食い鳥の四人は部屋を出て行き、部屋にはルディール、スナップ、リージュ、ルゼア、ルミディナの五人が残された。


 ろくでもない事が起こってそうじゃなとルディールが言うと皆も同じ事を思っていた様で頷き、そのタイミングでルディールの通信用魔道具にスイベルから連絡が入った。


「ルディール様、今はお話しても大丈夫ですか?」


「うむ。大丈夫じゃぞ」


「分かりました。姉さんとも会話出来る様に通信用魔道具を改造しましたのでそのまま聞いてください。聖都ホーリスフィアの上空にかなり大きな浮遊大陸が現れました」


「どういうことですの?ホーリスフィアの大陸が浮かび上がったんんですの?」


「いえ、ホーリスフィアの大陸は地図と一致していますのでどうにもなっていません。突如として空に大陸が現れ天使達が空を飛んでいます。遠目ですが建造物なども確認出来ました。」


「ん?どういう事じゃろな?ホーリスフィアに天使がおるのは分かっておったが……エアエデンの様な空飛ぶ島を持っておったのか?」


「ルディール様、どうしますか?かなり離れた位置にいますのでこちらは認知されていませんが……もう少し近づけば情報が正確になりますが……」


「いや……もしかしたらわらわ達が聖都に向かうかも知れぬのでな。エアエデンは何かあった時の切り札じゃから、すまぬがリベット村の上空で待機しておいて欲しい」


「分かりました。もし聖都に行かれるのであればお気をつけて。センサー等にかなり障害がでて詳しくは判断出来ませんが……生命の反応がまったくありませんので」


 分かったと言ってスイベルとの通信を切り皆に今の話を伝えるが、リージュも聖都の上空に浮島などがありその上に建造物があるなどと言う話は聞いた事もないと話す。


「ルミディナやルゼアの世界じゃとどうなんじゃ?」


「私の世界ですと……天使はほぼ全滅していますね。天使達が住む都。光都アークスライヴも落ちたと歴史の教科書には載っていますし」


 と、ルミディナが言うとルゼアの世界では魔界と天界の封印が生きているので聖都でたまに見るぐらいで天使達とは付き合いが無いと話した。


「たまーにホーリスフィアからローレットにちょっかいがあるみたいなので、騎士さん達が天使と戦ったと聞きますが……ほとんど付き合いは無いですね。空にエアエデンみたいな建物があるとも聞きませんし」


「生命反応が無いと言うのも凄い気になるのう……」とルディールが頭を悩ませていると先ほどと同じ様に少し強めのノックがあった。


 ルディールが返事をすると先ほどと同じ侍女がルディール達を呼びに来た。


「ルディール様。王女様、アトラカナンタ様がお呼びです」


 そう言われては行かない訳にもいかないので、全員で行って良いのかと尋ねると全員で来て欲しいとの事だったので皆でその侍女についていく。


 目的の場所に着いた様で侍女がドアをノックし「ルディール様達をお連れしました」と声をかけると中から国王陛下の声が聞こえた。


 条件反射の様なものでルディールは帰ろうとしたが帰られることも無いので諦めて中へと入る。


 中に入ると国王陛下と王女様。それと宰相などといったローレットの偉い人達が数人とアトラカンタと別の魔神が二体いた。


 その二体はアトラカナンタと一緒に王都に攻め込んだ狼の魔神ネルフェニオンと鷲の魔神ヤルトガログだった。


 国王陛下と宰相達にルディール達は挨拶をし、手を振ってるアトラカナンタにも挨拶をすると座る様に言われたのでルディール達は断りを入れてから席に着く。


 するとアトラカナンタが立ち上がり話し始める。


「一応、さっきローレットの国王には簡単にいったけどルーちゃん達が来たから言うね」と少しふざけながら言っていたがその顔と声は真剣そのもので、少女を思わせる表情から告げられた。


 聖都ホーリスフィアにいた全ての人が生贄として捧げられ光都アークスライヴが人間界に出現したと。

いつも誤字脱字報告ありがとうございます。


次回の更新はたぶん明日の予定。

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