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第61話 どこでも天使

 ルストファグナの口が空いている時は転移ができるのでルディールはソアレ達を連れて転移した。


 話も気になったが友人達が物珍しそうに街中を眺めていたので数時間ほど皆で露店などを巡り少し観光を楽しんだ。


 そして喫茶店に入り他の人達から死角になる席に着いて話を始める。


「ルディールさん。ルストファグナまで連れて来てもらってありがとうございます。次は数十年後だと思っていたので……」


「もう数日帰って来るのが遅かったら来られなかったから良かったわい。それで?今は大丈夫そうじゃが……帰って来た時はぐったりしておったが火竜とかと戦ったのか?」


 ドラゴンとかその手の生き物が大好きなルディールが目をキラキラと輝かせ聞く体勢をとっているとソアレは少し笑ってから答える。


「一応は火竜とも戦いましたが……色々とありすぎたので……」


 歯切れが悪いソアレの言い方に他のメンバーもテテノも何度も頷く。そしてどれから話そうかと悩んでいるとルディールが面白い話からとリクエストする。


「面白い話ですか?……そうですね。個人的に面白かったのはテテノンが炎都フレイエンデの若き国王。フラム・フロー・フレイエンデ陛下に求婚されました」

 

ルディールがはい? と返事をする前に当の本人のテテノは飲んでいた物をタリカの顔面に吹きかけた。


 その時の事を思い出してかカーディフはうんうんと頷き、スティレは少し呆れながら顔を掻いていた。


 タリカに土下座でもしそうな勢いで謝り顔を拭くテテノは違うんですよ! とルディールに説明しようとするがルディールが先に質問する。


「……股、ひらいたん?」

 

「ぶっ!何言ってるんですか!開いてませんよ!」


「サンファルテでも王子に声かけられておったではないか」


「あれはちょっとした世間話ですよ!」


「まぁ……サンファルテの王子はメガネっ娘フェチらしいから良いんじゃが何があったんじゃ?」


「えっと……かなり色々ありまして……」


 歯切れの悪いテテノに変わりカーディフが簡単に纏めて伝える。


「すっごい簡単に纏めると。陛下が崩れる点火塔に巻き込まれそうになった所をテテノが助けたって感じね」


「なるほどなんじゃが……修理しにいった点火塔が崩れたのか?」


「ぶっ壊れたわね。でも大丈夫よ。フレイエンデの方から冒険者ギルドに理由を説明してくれたから、ただ働きにはならなかったわね。まぁ……割に合わない仕事なのは間違いなかったけどね」


 その時の事を思い出したのか、こめかみをヒクヒクさせ少し怒っている様だった。


 本当に大変だったな……と大きくため息をついてからスティレが続きを話し始める。


「ルディール殿、先に大きな事から伝えるが炎都フレイエンデは聖都ホーリスフィアと同盟国を止め敵国として近日中に各国に伝えるそうだ」


「おう……歴史が動く瞬間じゃな。けっこうな大事じゃが何があったんじゃ?」


「炎都に二体の天使が出た……そして私達やフレイエンデ騎士達を巻き込んで街に甚大な被害を及ぼす戦いになった。


 ルディールがそっちにも天使が出たのかと口に出すと、皆も興味があったようだが先にスティレは話の続きを話す。


「本当にルディール殿の言った通りだったよ。天使も魔族も違うのは見た目だけだな。陛下が煽ったのもあるが……市街地で襲いかかって来たからな」


 詳しい話を聞くとリージュには伝えられてはいなかったが、シュラブネル公爵に点火塔の修理を頼んだのは国王陛下との事だった。


 火食い鳥達がフレイエンデについてすぐに真っ赤に燃える城に案内され国王陛下から直々に点火塔の修理を頼まれた。


 到着してから二日ほどは長旅の疲れを休めるに休暇をもらい、三日目から国王陛下直々に点火塔に案内されテテノが修復作業を始めた。


「国王陛下直々なんじゃな。優しそうなお方なんじゃな」


 フレイエンデの国王を知らないルディールがそんな事を言うとまるで打ち合わせでもしていたのか五人全員が「全然」と言って首を左右に力いっぱい振った。


 そしてまたカーディフが思いだしてイライラしつつ罵詈雑言を含めルディールに説明する。


「……なんじゃいその人類最古のジャイアニストみたい奴は」


「偉そうなのは良いわよ!実際国王だし!フレイエンデの国王だから別に偉そうなのは別にいいわよ!言い方がいちいちむかつくのよ!」


 と、カーディフが思いだしてブチ切れていたので近くにいたタリカが補足するようにカーディフは国王から呼ばれるときは胸無しと言われてと伝えた。


 荒ぶるカーディフを沈める為にスティレが動いたのでルディールへの説明はソアレは続けた。


「テテノンが点火塔を修理している間に火食い鳥の強さが見たい。我と戦えとか訳の分からない事や無茶振りをしてくる陛下の子守をしながら無事に点火塔は直りました。そして点火塔に魔力を流し火をつけた時に二体の天使達が現れました」


「そこから陛下が天使を煽って……そこから戦闘になったと言う訳だ」


 ルディールはそれが国王のする事なんじゃろうか?と、とても呆れていると皆が同じ事を思ったようで頷き、ソアレが苦笑いをしながら続きを話してくれた


「それで二体の天使、大地のバムシェルとその付き人の天使がその場で戦闘を仕掛けてきて塔は崩壊し国王陛下とすぐ近くにいたテテノンが巻き込まれました」


 迂闊に天使と戦闘になるのは避けたかったが、一国の王の命が狙われ市街地で問答無用に高威力の魔法を使ってくる者は魔物と変わらないので火食い鳥達はすぐに戦闘体勢に入る。


 戦闘に入ってすぐ点火塔が崩壊した事を知り、炎都に仕える騎士達が現れたので、まだソアレ達の戦いについていけないタリカが騎士達に説明する。


 騎士達も陛下が埋まっていると知り魔法で即座に瓦礫を動かすとテテノが陛下に覆い被さる様に守っていた。


 ただテテノの足は瓦礫に押しつぶされ意識も無く助からない事は誰の目にも明白だった。


 その話を聞いてルディールは少し待ってもらい近くで話を聞いているテテノに向かって手を合わせる。


「テテノン。お主も良い奴じゃったな……友人が成仏せずに彷徨っておるのはわらわも辛いのでな……未来の事は生者に任せ成仏してくると嬉しい」


 事情を知っているはずの火食い鳥もルディールの真似をしてテテノに向かって手を合わせたので流石のテテノも生きてますよ! と声を荒げた。


 元気そうな友人を見てルディールは笑いテテノを助けたであろう人物に話しかける。


「タリカのおかげで助かったんじゃよな?お手柄じゃな」と尋ねるとそれで正解だった様で、テテノもタリカのおかげで助かりましたと言いタリカに頭を下げていた。


 ただ当の本人はその時の事を思い出したのかその表情はとても暗かった。


「タリカよ……暗いがどうしたんじゃ?」


 タリカの回復量が上がった事は自分が原因だったので、その事で体に異変が出たのでは無いかと心配し尋ねる。


「テテノさんを助けられたのは良かったんですが……その後の天使との戦いを思いだしてぞっとしてますね」


「タリカを悪く言うつもりはないんじゃが……まだお主の力量ではソアレ達と共闘はできんと思うから戦闘には参加してないんじゃよな?」


「私も自分の力量が分かっていますから全然大丈夫ですけど……戦闘において回復役を潰すのは定石だと思いません?」


「まぁ……そうじゃよな……強制参加という訳じゃな」


「……はい。先輩方に守ってもらって即死は免れましたが」


 ルディールは話の続きを聞かなくてもなんとなくは分かったが……タリカが話し始めたの聞くと思っていた通りだった。


 タリカの実力では火食い鳥のメンバーの戦いについていく事はできなかったが、スティレ達が怪我をすると瞬時に怪我を治し戦いに参加させたので途中からタリカばかりが狙われたとの事だった。


「足が二回無くなって手も吹っ飛びましたね……痛覚とか抑える魔法とかもってないので痛くて泣きそうでしたね……嘘です泣いてました。再生が始まると痛くないので大丈夫ですけど……」


「冒険者のランク制度も個人の能力の総合で決められるからその辺りは問題ありじゃな……タリカの場合は回復特化じゃしのう」


「ほんとそれです。砂漠で回復量が上がって以降ものの数秒で再生しますからね……天使も驚いていましたよ。私が一番驚いてますよ!って話なんですが……」


「火食い鳥への加入はお試し期間なんじゃろ?戦いについて行けぬなら抜けるのもありとは思うがどうするんじゃ?」


「ついてはいけませんが……Sランクのお仕事と言うだけあってお給金が素晴らしいので、皆さんからクビと言われるまでは続けます」


 そう言ったタリカの瞳は不純物は一切入っていない本当に綺麗な金貨になっていた。


 あまりの濁りの無さにルディールは感心し新しくできた友人のタリカを頼むとスティレ達にお願いした。


「戦いについてこられないのは当たり前だからな。これから伸ばしていけば良いと私達は思う。ルディール殿に出会った頃の私よりは動けていると思う。それに回復役がいると戦術の幅が広がるからな」


 そういうスティレにカーディフもソアレもうんうんと頷くが回復を担当していたタリカは私の回復目当てで無茶な特攻を繰り返すのを戦術と言うんですか……と呆れていた。


「ルディール殿から聞いた戦術でな、ゾンビアタックと言うらしい。聞いた時はどうかと思ったがタリカの様な回復がいればなかなか使える戦術だったぞ」


「言ったわらわが悪いが……試すのもどうかと思うんじゃが……」


「治す私も大変でしたよ……治すまでの痛みは消せないので良くあれだけ動けていたなと……」


「ああ。痛いのは我慢できるからな」と言って笑うスティレを見てタリカは就職先を間違えた社会人のような顔をしていた。


 戦った天使はどうなったのかとルディールが尋ねるとソアレが胸を張って倒しましたと言い、ルディールを驚かせた。


「正確にはとどめというタイミングで魔神化のタイムリミットが来ましたので……」


「逃げられたのか?」


「いえ。フレイエンデの国王が首を刎ねて燃やしました」


「聞いた感じ容赦ないと思っておったが仕方ないのう……」


「私が天使バムシェルを受け持って、スティレとタリカが従者の天使を受け持ちカーディフが後方からどちらにも支援という形で戦っていました。強かったですがルゼアさんに比べれば……ですけどね」


「流石にルゼアと比べるとのう……スティレ達も勝ったんじゃよな」


「ああ。こちらは技量では負けていたが即死以外は治るというアドバンテージがあったからな。楽では無いが終始有利に戦っていたな。陛下がバムシェルを倒してからはソアレもカーディフもこちらに加わったので倒させてもらった」


「まぁ一国の王を狙ったんじゃから逃がす選択肢はないからのう」


「ああ。ただ少し離れた所で別の天使が見ていたようでフレイエンデの騎士達が聖都の方角に逃げるのを見ていたそうだ」


「お主達も大変じゃったんじゃな……」


「お主と言う事は……ルディールさんの方も何あったんですか?」とソアレに聞かれたのでルディールは自分達もルストファグナで天使を戦った事を伝えた。


 カーディフは何処にでもいるわねと呆れてはいたが、皆が真剣にルディールの話を聞いていた。


「ルディール殿も大変だったんだな……それで?先ほどバルケ殿を見た時に雰囲気が変わっていたが何かあったのか?」


 スティレがそう聞くので、バルケに通信用魔道具で連絡を入れて伝えて良いのかと聞いて了解を得てからスティレ達にバルケが魔神になった事を伝えた。


 その事にその場にいた全員がとても驚いたがスティレが代表して感想をのべる。


「天使よりその事の方が驚きだが……私も冒険者とは言え女だから少しニヤニヤするな」


「うむ。言いたい事は良く分かるのう」


「今度、バルケにあったら何も言わずにニヤニヤしてあげるわ」


「しかし気をつけぬと。今は魔神になったばかりで加減が難しいみたいじゃから結構痛いから気をつける様にな」


「バルケさんも魔神ですか……かなり強くなってそうですね」


「うむ。剣士じゃからしかたないが……ミューラッカや魔神化したソアレと戦える感じじゃな」


 それは頼もしいですねとバルケが魔神化した事はソアレ達には好評だった。錬金術師のテテノはどういう物で魔神化したかとても気になる様だった。


 タリカは魔神化という事がどういう事かイマイチピンと来ない様で、魔神って歴史の本に載ってても長い名前が多いんですよねと言う。


「魔人バルケさんだと短くないですか?」


「ミューラッカの名よりは短いじゃろ。魔族領の文化で名をつけるからアトラカナンタとかイオスディシアンみたい名前になるんじゃと。一応はセルバンティス殿に聞いたが魔神になったからと言って改名はせんで良いらしいぞ」


「へぇ~そうなんですね。私も魔神化して楽して強くなりたいです!」


「その時はわらわが改名してやろうか?」


「どんな名ですか?」


「そうじゃな~。タリカは入れたいからチチビンタリカとかどうじゃ?」


「はっ倒しますよ!!」


 そんな話をしながらしばらくルストファグナを観光してルディール達はリベット村へと戻った。


 冒険者ギルドには天使の事を伝えたがローレットの王女様にも伝えておくと言う話になったのでテテノを送って行くついでに火食い鳥は王都へと向かった。

いつも誤字脱字報告ありがとうございます。


次回の更新は明日の朝の予定です。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] ここ数話にでてくるバルケのこと。 魔神だったり魔人だったり。どちらでしょう?
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