第48話 思い通りにはいかない
ミーナとセニアに勉強を教え終え雑談しているとルディールは王女様に聞いた話を思い出したので二人に質問する。
「そう言えば王女様に聞いたが……」
「何を?」
「最近、セニアが凄いモテるらしいのう」
令嬢っぽく紅茶を飲んでいたセニアがブフッっと吹き出した。ミーナが大丈夫?と言いながら背中はさするがその瞳はキラキラと輝いていた。
「そうなんだよ!ルーちゃん聞いてセニア凄いモテるんだよ!毎日と言っていいぐらい下駄箱にね!」
「爆弾でも入っておるのか?」
「違うよ!入ってないよ!!何でそんな危険物が入ってるの!?」
「セニアの恋の爆弾が爆発するかも知れんじゃろ」
「あっ!なるほど~流石はルーちゃん」
「ミーナ……お願いだからそんな変な事で納得しないで……」
むせて涙目になるセニアをルディールはまじまじと見つめるがモテない要素が全くといって良いほど無かったので一人で納得する。
「セニアじゃしのう。公爵令嬢なのに村人にも分け隔てなく接するし、シュラブネル家やローレット王女様やスノーベインとも太いパイプがあるしモテない理由が無いのう」
「あー確かに……同じ公爵令嬢でもリージュさんは美人さんだけどセニアはかわいい系だしね」
「ミッミーナ……もういいからね」と言って顔を赤く染めるセニアにルディールは確かにかわいい系じゃなと思いながら次はミーナに質問する。
「逆にミーナは下級生とかに怖がられておるんじゃよな?」
そう尋ねるとミーナは苦虫を潰した様な顔になり、うぐっとなんとも言えない声を上げる。
「もしかして……皆殺したん?」
「皆殺してないから!」
「では何が理由で怖がられておるんじゃ?」
とても言いにくそうにミーナが悩み始めたので次はセニアが説明を始める。
「何と言いますか……ミーナの人脈が仇となっているようです」
そう言われてルディールはピンと来なかったので頭に?マークを浮かべながら話を聞く。
「ミーナって異常なくらい名の知れた方々と知り合いだったりするじゃ無いですか?それが原因になっている様な感じです。例えば……イオード商会の商会長様だったりミューラッカ様だったり学校でも私やリージュ様、それこそを王女様と仲が良いですし」
「あーなるほどのう」
「最近だと王都でアトラカナンタ様と仲が良さそうに話しているのを下級生に見られたりして……」
「ルーちゃんと買い物とか行ったりして高ランク冒険者の人達に私を自慢の弟子!みたいな感じで紹介してくれるでしょ?冒険者の人達って人間できてる人が多いから私を街で見かけたら声をかけてくれるんだよ……そういうのを学生に見られててアイツはもしかしてヤベー奴なんじゃ?って尾ひれが付いてる感じ……」
「……冷静に考えてヤバい奴じゃな」
「ヤバくないよ!」
「村人なのに二大公爵令嬢と親友で、ローレット、スノーベインの王女とも仲良し。しかもローレット国王、王妃に名前覚えられてて、生きる伝説のZランク乱れ雪女王にも気に入られていて雷光とも仲良しじゃし。ローレットのAランク以上の冒険者にはほぼ名前を覚えられておるのがお主じゃぞ?」
「いやいやいやいや」
「付け足すと入学の時にクラス分けの水晶を破壊して、未発表の魔石を提出しましたし学年トップですし……しかも魔王アトラカナンタ様にも街中で話しかけられる」
「お主が第三者の立場だったら近寄るか?」
ミーナはルディールの真似をしてか腕を組んで少し考え諦めた様に声をだす。
「すっごい怖いね……うん、もう諦めよう。同学年の友達は大丈夫だからそれで良い様な気がしてきた。誰からも好かれるって無理だしね……うんうん」
前向きなのか後ろ向きなのかは分からなかったが目から光が消えたミーナが遠くを見つめていた。
「冒険者達にわらわの弟子に気安く話しかけるな!とか言っておいてやろうか?」
「それこそやめて!?」
話が終わったタイミングでバルケが自身の通信用魔道具を持ってルディールの所にやって来る。
詳しく聞くとルディールに王都の冒険者ギルドの受付嬢から連絡だそうで出てみると至急来て欲しいと言われる。
どうして自身の通信用魔道具に連絡しなかったのかを尋ねると連絡はしたが繋がらなかったとの事。
「あっそう言えば壊れておったな」
スナップに壊れた通信用魔道具の修理を頼み。バルケも行くと言ったのでミーナやルミディナ達には留守番を頼み二人で直接、王都の冒険者ギルドに転移する。
幸いいたのは顔見知りばかりだったので内緒やで? と言ってから人が少ない冒険者ギルドの中を見渡すと顔なじみがルディールに話しかけて来た。
「角突き……お前な急に転移してくんなよ」
「至急とか言われたから仕方ないじゃろ。と言うか普通に閑散期にしか見えんのじゃが……」
「個人が好きに依頼を受けるのが冒険者なのに、忙しい時期とか暇な時ってかぶるんだろうな?」
黒点のリーダーのタレスがいたので少し世間話をしているとルディールに気付いた受付嬢が少し駆け足でよって来る。
そしてすぐに頭を下げて礼を言ってからすぐに「こちらです」とルディールを案内する。
案内された場所は見慣れた応接室だったが殺気とかそういうのに鈍感なルディールが認知出来るほどにはピリピリしていた。
「ん?この感じだと火食い鳥の連中か?」とバルケが言うのでルディールもそうじゃろなと相づちをうつ。
受付嬢がドアをノックすると中から返事あったので許可をとって応接室へと入る。
応接室の中には冒険者ギルドのギルマスと副ギルマスと向かい合う様に火食い鳥の三人が座っていた。
「これからピクニックに行くと言う雰囲気ではないのう……」とルディールが言葉に出すが一触即発というほど空気が張り詰めていた。
ルディールとバルケが来た事で若干だが空気が緩んだので全員が挨拶をかわしてから事情を聞く。
一通りどちらの意見も聞くと、困った事にどちらの言い分も分かるのでルディールを悩ませた。
「……正直、平行線じゃろ。わらわが呼ばれたのはソアレ達を説得する為じゃろうが、ソアレ達も間違った事は言ってないからギルマス達の味方は出来ぬぞ」
「そうですが……シュラブネル家の依頼ですので断る訳には行きませんし……かと言って代わりに護衛をつけるにもSランクはもう他の任務があったりしますしAランクも残っていません」
「ソアレ達も断る権利はあるしのう。わらわは行った事がないから詳しくわからぬが今回、ルストファグナに行かなかったら次はまた十数年後なんじゃろ?炎都も遠いと聞くから依頼が終わってから行ける物ではあるまい?」
「はい。私達は炎都フレイエンデに行くのは初めてなので転移は出来ませんし、炎都は火竜などが飛んでいるので聖都までしか飛空挺が出ていないのでかなり時間がかかります」
ソアレが付け加えて教えてくれたのでルディールは礼を言ってから再度話をまとめる。
冒険者ギルド側の言い分は、ここだけの話だが国王陛下の依頼で手が余っているA以上の冒険者はホーリスフィアやサンファルテでどんな小さな事でも良いから情報収集の依頼。その為現状は上位冒険者で手が空いてるの火食い鳥ぐらい。
「陛下も仕事が早いのう……」
「他の高位冒険者が空いていれば良いのですが……まったくと言っていい程いませんし。護衛対象のテテノ・フェリテスさんは死の沼を解明し砂時計のピラミッドを直した程の錬金術師ですので何かあってはローレットの損失になりますと錬金組合からも強く言われていますし、シュラブネル家のリージュ様の依頼でもありますので……」
火食い鳥側の言い分としてはギルド側の言い分も分かるが、今回を逃すと次は無いので流都に行きたい。冒険者と言う者は本来は自由なので断っても問題無い。そもそもSランクに上がったのは面倒な依頼を断る為でもある。
「点火塔の修理など今で無ければ駄目という話ではないので流都に行った後でなら喜んで行きますよ。今回に限ってはリージュさんもテテノンの事を考えて私達に依頼したので悪く言うつもりもありません」
「なるほどの~……ギルマス殿よ。炎都は危険ではないのか?聖都と友好国なんじゃろ?国王陛下も動いて聖都とか砂都で情報収集するぐらいじゃし。塔の修理とか後でもよさそうじゃが……」
ギルマスは小さくため息を付いてから説明する。聖都でもうすぐ大きな祭りがあるのでその時に炎都でも友好の証という形で聖火を点灯するがその時に使用されるのが点火塔との事。
自国の事だから自分達で直せばいいのにな? とバルケが言うとギルマスの隣にいたちょっとポッチャリした副ギルマスが、火と剣の国なのでそこまで技術が無いのかも知れませんと汗を拭き付け足して話す。
「確かにリージュ様が依頼に来られましたが、炎都の貴族とお知り合いなのはシュラブネル公爵なのでシュラブネル公爵家の依頼なのでこちらとしても断れないんですよ……ここにいる皆さんにしたら見栄やくだらないプライドかも知れませんが……」
「そのくだらないもののおかげで平和なんじゃから馬鹿にはできんじゃろ。それで?スティレやカーディフ的にはどんな意見なんじゃ?」
と、尋ねると静かに話を聞いていたスティレが意見する。
「私の意見としてはギルドの意見も分かるが……今回はソアレの意見を優先しようと思う。毎回毎回、私の意見ばかり押し付けるのは仲間では無いからな。ソアレが流都に行くと言うならそれに従おう」
「カーディフは?」
「私はどっちでもいいかな?両方行った事無いしね~。ルディ達が流都に行くなら私達も流都で良いとおもうけどね」
そしてソアレに意見を聞こうとすると先にソアレが話し始める。
「ここにルディールさんを呼んだ時点で詰みですよ?もしここでルディールさんが自身の意見を変えて私達と炎都に行くと言ったら私は冒険者やめてここを破壊します」
「炎都に火竜を見に行きたいが……ルミルゼコンビが気になるから行くなら夜都か流都なんじゃよな……というか暴れたら駄目じゃろ」
そう言うとバルケがギルマスを指さして昔に先代ギルマスと大喧嘩して冒険者ギルド半壊させたぞと話す。
それから陽が傾き始めるまで議論したが決まる気配が無かったので呼ばれたルディールが決めてくれと言う事になった。
それは駄目じゃろ……と呆れたが火食い鳥もギルマスも本気だった。
そして少し時間をもらって考え自身の考えを伝える。
「今回に限ってじゃが……ソアレよすまぬがテテノンの護衛についてもらえるか?」
ルディールの意見にソアレは静かに理由を聞いてもと尋ねる。
「まずお主達と流都に行きたいのは間違いんじゃが……テテノやテラボア殿には世話になっておるし、たぶんじゃがテテノは天使に顔を見られておるからもしもの時はお主達ぐらいしかまともに相手はできんからのう……」
天使と聞いて少しは驚いていたがギルマスも副ギルマスもイマイチよく分かっていない様で何も言わずに話を聞いていた。
短い様で長い時間ソアレは何も言わずに黙っていたがようやく答える。
「私がルディールさんだったらそうしますし……今回だけは私達が冒険者ギルドに折れましょう」
そういうとギルマスと副ギルマスは横から見ていて分かるほどに雰囲気が変わる。
只、親友の意見を変えさせてしまった事に後悔の念が生まれたのでルディールはそれを謝り尋ねる。
「良いのか?流都にも行きたいんじゃろ?」
「行きたいですが……半分は私のわがままでしたからルディールさんは気にしなくてもいいですよ。ルディールさんが私ならどういう気持ちかわかるでしょう?」
「ルディールさんの水着をみたいか?」
「正解」
「それは冗談じゃが……親友に頼られると嬉しいからのう」
「そんな所です。実際テテノンは元クラスメートですし……何かあれば悲しいですからね」
と言って屈託の無い笑顔のソアレにすこしルディールは少しドキッとする。
それからもう一度ソアレに礼を言ってから話を詰めていった。
ようやく話がまとまったので今日は解散という事になり外に出ようとするとルディールだけがギルマス達に呼ばれる。
仲間達には先に外で待ていてと頼んでルディールが残ると、ギルマスと副ギルマスに大きく頭を下げられ礼を言われる。
「別にマウントを取ろうと思っておらんからそこまで丁寧に頭さげんでもええんじゃが……」
「でも足を組んで礼を言うのは違うでしょう?」
「たしかにのう。ギルマス達も色々としがらみはあるじゃろうが……次はソアレ達の意見も聞いてやらんとのう」
ルディールはタリカの事やローレットから何処まで話を聞いているか? と情報交換してから冒険者ギルドを後し、外で待っていたソアレ達と合流してリベット村に戻る。
そしてそれから火食い鳥達と海に泳ぎに行ったり、スノーベインに情報提供……煽り……遊びに行ったり、色々あって火食い鳥にタリカが加入したり、特訓という名の名目でタリカが炎毛猿と戦わされたりと、かなり色々とあってようやくルディールは流都ルストファグナへと向かう日がやって来た。
次回の更新は正午過ぎぐらいになると思います。
いつも誤字脱字報告ありがとうございます。本当に助かっております。




