第42話 付き合い方
ウェルデニアの話をする前にルディールは世界樹の事を隠していた事を謝り話を続ける。
「ルディールさんはそういう所が真面目ですよね。言わなければバレないですよ?」
「思いっきりバレたから謝っておるんじゃが?」
「それは……まぁ仕方ないですね。自身の不運を恨むしか」
また脱線しそうだったので王妃様が笑いながらコホンと咳をするとルディールも王女様も気づいた様で話を元に戻す。
「結論から言っていいですか?」
「うむ。その方がいいじゃろ……途中の話を入れると脱線するしのう」
「ですよねー……コピオンさんのおかげというのもありますが、怖いぐらい上手くいきましたのでルディールさんは今の所はそのままツリーハウスに住んでいてくれて大丈夫ですよ」
「それはありがたいんじゃが……どうやったんじゃ?」
それは私の人徳ですねと胸を叩いたがルディールと王妃様の視線が冷たかったのですぐに話を戻し続ける。
「話を嘘で繋ぎ違和感が無いように作り直した感じですね。世界樹の種を何処で手に入れた?なると昔にローレットの神官が灯台の街の海域で色々と探してたのを最近になってルディールさんが見つけたみたいな」
「そんなんあったのう」
「それでリベット村の森には森の智者がでるらしいので、私は初めて聞きましたが!しかもルディールさんと仲良しらしいのでその方達が植えたら一気に急成長し現在に至るという話で伝えました」
「なるほどのう」
「色々と省いて簡単に話しているだけなので後でまとめた書類はお渡ししますので、暇な時にでも読んでおいてください」
「うむ。了解じゃな」
そこからは重要な事も多かったので静かに聞いていた。王妃様が話に加わる。
「ローレットの国内には世界樹はありますがウェルデニアから借りているという事になります。それを国民や他国に伝える事は無いですが……やはり世界樹はエルフ達に取って特別な樹なので独占すると言う事はできません」
「それはそうですね。もし必要なら私も自宅を撤去させ移動しますが……その辺りはどうでしょうか?」
「それに関しては世界樹の上に家があるとは誰も思わないので良い隠れ蓑になるのでそのままで大丈夫です。後、ルディールさん宅の庭には希少な植物が沢山生えていると聞きますのでそのまま世話をして貰えればと思います」
「それはとてもありがたい事ですが……」
ルディールがその提案に悩んでいると王女が横から口を出す。
「今は上手くいった事を喜びましょう。それに金のなる木を切る人はいませんよ」
「後、使節団としてウェルデニアから十数人ほどのエルフがリベット村に移住します。使節団というのは形だけで若いエルフ達に外の世界を勉強させるのが目的のようです」
「コピオンさんがウェルデニアから向かうとかなんとか言ってましたので今日か明日に着くと思いますよ。という訳で世界樹の方は思った以上に上手く解決したので私を褒めて崇めてくだい」
あまりにも上手くいきすぎているのでルディールは後からコピオンに詳しく聞こうと思い、自身の為に手を尽くしてくれた目の前のお調子者の王女と王妃様に丁寧に頭を下げ礼を言った。
そこからは雑談となり三人で冗談などを話していたが王女様が天使の事をルディールに質問する。
「そういえば手紙に天使がどうのこうのって書いてましたけど……やっぱり要注意ですか?ローレットはそこまで天使とか信仰してる訳もないですが敵対しないにこしたことは無いですし」
「魔族がおらんかったらそこまで気にせんでも良いんじゃが……」
「あー……今もそうですけど街中に魔王とか魔神が歩いていますからね……でもそれも言い出したらヘルテンも同じでは?あそこも魔神とか悪魔とか多いですし」
「というよりは魔族も天使にも両方気につけろって感じじゃな」
ルディールの忠告がイマイチ分かっていなかったのか王女様の頭には?マークが幾つも浮かび上がる。
「歴史の勉強じゃな。千年前の大戦は何処が戦場だったでしょうか?」
急に勉強の話を振られて王女様は驚いたが……最近、歴史の授業で習った範囲だと人間界で大戦があったと聞いたのでそう伝えると正解だったようでルディールから○をもらう。
「ん?でもそう考えると不思議ですよね。どうして人間界が戦場だったんですか?本拠地を潰せば勝ちだから天使も魔神も魔界や天界でドンパチやりそうなんですけど……人間が邪魔と言われればどうしようも無いですけど」
「わらわがよく言う事じゃが相手の得意分野で戦っては駄目というヤツじゃな。魔族じゃと天界に行くと弱くなるし、天使じゃと魔界に行くと弱くなるからのう」
「でもそれは人間界に来ても同じなのでは?いやまぁ……前に攻められた時はボコボコにされましたけども……」
「そうでも無いぞ。ある程度は落ちるが魔神が天界に行くほどは弱くならぬし、魔神とか悪魔は夜になれば全力に近い能力を出せるからのう。逆に天使は昼間は元気じゃし」
「……それって結構ヤバくないですか?」
「うむ。今の所は魔神の方が強いからすぐには何も無いとは思うんじゃが、天使も魔神もかなり喧嘩早いからのう」
「魔神は前から人間界に来ていますから仕方ないですけど天使はどうやって出てきたんでしょうね?」
「ほんとそれなんじゃよな~。正直、見当もつかんわい」
「他国で何かあってもローレットは表だって調べられませんからね……」
それからもしばらく天使の話は続きある程度まとまった所で回復量が増加したタリカの事を質問する。
「その辺りは大事になる事はないですよ。この前の事もありますし神官達は権力も無いですし親分が捕まったのでおとなしいですからね。本人が望むなら聖女にはなれるかも知れませんが……」
「なるほどのう。もし本人が冒険者を続けたいと言うならすまぬが少し口添えしてやってくれぬか?タリカには恩もあるのでのう」
「分かりました。裏でコソッとしておきますよ」
ルディールも天使の歴史を調べる用事があり、王妃様も王女様も今の話を国王や宰相達と相談するとの事なので今日は解散となった。
王女様が直々にルディールを門まで見送りそこで今日の事をもう一度丁寧に礼を言ってから別れた。
そして通信用魔道具でスナップに連絡し合流しようとしたが、壊れているのを思いだし諦め魔王アトラカナンタの気配を探ると市場の方に気配があったのでそちらに向かう。
飛んで行く事も考えたがローレットの町並みが好きなルディールは歩いて向かう事に決めた。
歩いて市場まで向かっていると王女様達との話で時間が経っていたのか、学生達がちらほらと見え帰宅する時間になっている様だった。
見知った生徒がいるとソウ・パーチとして臨時教師をしているルディールは声をかけそうになったりするが思いとどまったりしていると見慣れた馬車がルディールの横に並ぶ。
そして窓がゆっくりと開き中から友人が顔をだす。
「ルディールさんこんにちは。砂漠の旅はどうでした?……というか片方の角が無いんですが?」とシュラブネル家の一人娘のリージュが声をかける。
最初だけ楽しかったと苦笑いでルディールが返答すると乗りますか? と言ってくれたのでその言葉に甘え馬車に乗せて送ってもらう事になった。
「市場まで行ってほしいんじゃが良いか?」
「大丈夫ですよ。アトラカナンタ様のところですよね?」
「そうなんじゃが……まぁ魔王がおれば周りも気付くか」
そういう事ですとリージュが笑う。
馬車の中にはリージュだけだったので外で誰かが聞き耳を立てているという心配もなかったのでサンファルテの王子のことはとりあえず省き話をはじめる。
もちろんリージュもナイン・アンヘルの事は知っているので、ルゼアやルミディナの事を相談する。
「大公爵の娘ですけど、私はまだ学生ですよ?」
「そうは言ってもお主はわらわより賢いじゃろ。別の世界とはいえルミディナとルゼアは貴族じゃからもし戻れん時の為に学校とか行かせた方がよいのかと思ってのう……」
その質問にリージュは目を閉じて少し考えてから答える。
「そうですね……一、二年なら誤魔化しは効くので学校は放置でいいです。食事の作法とかはリノセス家でも学べますし……ごり押しで隠し子とかでもいけるので大丈夫です」
なるほどのうとルディールが納得していると次はリージュが質問する。
「それでミーナさんやセニアさんには説明するんですか?」
「それなんじゃよな……セニアは分かったようじゃから良いかもしれぬが、別の世界の娘と言っても同い年ぐらいじゃしその辺りが悩み所なんじゃよな……」
「だったら伝えましょう。私だったら自分だけ隠し事されても悲しいですし、ルミディナさんもルゼアさんも会いたいと思いますからね。というか絶対こっちの世界で不安だと思いますよ」
リージュの話に納得できたのでルディールもミーナ達にも伝える事を決める、そしてもう少しで市場に到着という所でリージュが思いだした様に質問する。
「ルディールさん。知り合いに腕の良い錬金術師さんか鍛冶屋さんをしりませんか?」
「ん?知っておるがどうしたんじゃ?」
「はい。炎都フレイエンデにいる知り合いの貴族の頼みで直してもらいたい物があるんですよ」
「なるほどのう。ローレットならフェリテスさん家のテテノさんじゃろな。ヘルテンまで行けばガンテツさんがおるが……遠いしのう」
「点火塔の修理らしいのでそこまで難しくないと言ってましたからヘルテンまで行くのは遠いですね」
そこまで話すとちょうど市場にたどり付いた。そこでリージュがそこですと言うとアトラカナンタが市場を物色しスナップがこちらに手を振っていた。
リージュは一度テテノの錬金工房にいって依頼を受けてもらえるか聞きに行くとの事などでルディールは送ってくれた事と相談に乗ってくれた事に礼を言ってから別れる。
それからリージュはそのままテテノの工房に行きルディールはスナップ達と合流する。
「それでルディール様。これからどうするんですの?教会で天使達の事を聞くツテはあるんですの?」
「うむ。この前わらわと砂漠に行ったタリカが詳しそうじゃったから、まずは冒険者ギルドに行って聞いてみようと思う」
その意見に反対する者はいなかったので四人は冒険者ギルドへと向かう。
その道中での屋台で見慣れた大剣を背負った剣士がいたので声をかける。
「おーい!バルケよ!こっちじゃ!」
呼ばれて振り返ったバルケがはルディール達を見るとその人数を数えてから屋台で串焼きを頼んでからルディール達と合流する。
「おう。久しぶりルー坊は元気そうだが角はどうした?魔王様と喧嘩したのか?」
と言って串焼きを全員に配りルディールは礼を言って食べながら簡単に説明する。
「なるほどな~。俺も大変だったがお前も大変だったんだな」
「と言うかお主もスナップも久しぶりの再会を喜んで街中でチューしてもええんやで?」
ルディールの台詞にスナップもバルケも大きくため息をつき反論する。
「お前な……仮にやったとしたら絶対に引くだろ」
「うむ。全力で引くのう!それで今から冒険者ギルドにタリカと言う冒険者を探しに行くんじゃが知らぬか?殴りプリなんじゃが……」
「知ってるぞ。ソロで聖職者だから冒険者としても珍しいから覚えてるぞ。たしか……さっき冒険者ギルドにいたと思うがどうなんだろうな?」
そう聞いたので当初の目的通り冒険者ギルドに剣士の仲間を増やし出発する事になった。
そして冒険者ギルドにたどり付き窓から中をのぞき込むと人は少なく、顔なじみの冒険者数人と目的の人物が張り出された依頼を見ているだけだった。
目的の人物がいて周りは顔見知りばかりだったのでルディールの悪戯心に火がつく。
そしてそのまま正面玄関の重厚な扉を開け魔法でバン!と大きな音をだし目的の人物を呼ぶ。
「Cランク冒険者のタリカはいるか!!」
大きな声とあげいきなり名を呼ばれたのでタリカはとても驚き声が上ずりながら返事をする
「はっっはい!ここにいます」とタリカが驚きながら振り返るとそこには数日前まで一緒にいたルディールがいた。
「うむ。元気そうでなによりじゃな!」
短い期間だったがルディールの性格を知ったタリカはからかわれたと知りこめかみをヒクヒクとさせ苦笑いする。
「あははっ……ルディールさんもお元気そうで!!」
ランキングとか乗ってみたいと思う今日この頃。いつも誤字脱字報告ありがとうございます。
次回の投稿は本日の12時過ぎぐらいになると思います。




