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第31話 黒い敵

 黒いソレの蹴りをまともに食らいルディールは壁に叩きつけられ、何かが折れる音と鈍い痛みが襲ったが気合いで耐えてSランク冒険者にすぐに伝える。


「リーダー!こいつは本気でヤバい!わらわが引き受けたからテテノとタリカを頼む!」


 そう叫び即座に指輪の力を解放し先ほどの蹴りで数本折れたあばらを治そうとしたが、そこまで優しい相手ではなかったようで追撃にあい回復は間に合わなかった。


 黒いソレの攻撃は凄まじくルディールに攻撃した際に発生した衝撃波の威力で室内にあった石版などは簡単に壊れた。


 このままではピラミッドを修復させるどころかピラミッドその物が簡単に崩壊するのが分かったので、ルディールは一瞬の隙をつき黒いソレの土手っ腹に魔法を叩き込みピラミッドの壁ごと外へ押し出した。


 そしてその隙にテテノに伝える。


「テテノン。すぐにピラミッドを直すんじゃ。その部品が原因で発生したから直せばたぶん消える!さっきの黒いのは正直わらわの手に余る!」


 その言葉にテテノはかなり戸惑った。だが今の攻撃が効いた様に思えなかったルディールはすぐに黒いソレに追撃をする為に空けた穴から砂漠へと出る。


 その事でテテノもタリカも固まってしまったが、Sランク冒険者のリーダーがすぐにテテノに動く様に言う。


「ルディールさんがあそこまで言う相手だ。テテノくん君の事は私達が責任を持って守るからこの装置を直してくれ」


 先ほどの攻撃の衝撃波でまたバラバラになった装置を見ながら直るのか?と言う感覚にテテノはとらわれたが、ルディールの表情を思いだして自分が絶対に直すと意気込み作業に取りかかる。


 それを見ていたタリカも飛び散った部品を集めながらSランク冒険者に少し気になった事を質問する。


「皆さんはSランク冒険者ですから皆さんと組んでルディールさんと戦えば余裕で勝てるのでは?」


「ルディールさんの実力はスノーベインのミューラッカ様に劣らない。そのルディールさんが手に余ると言った相手だ。私達が加勢に行った所で邪魔になる……」


 テテノは直す為に真剣になってその話は聞こえていなかったが、タリカは嘘ですよね? かなり驚きしばらくの間動けなかった。




(蹴りであばらを数本持っていかれるとか……怪人とか怪獣になった気分じゃのう……冗談抜きでミューラッカやアトラカナンタよりこやつの方が強い……)


 黒いソレと対峙しまだ襲ってくる気配が無かったので距離を取ったまま指輪の力で折れたあばらを回復させる。


「クリスタルビット!接近されるとかなり危なそうじゃしな!わらわの得意な距離で一気に潰させてもらう!」


 ルディールの最も得意な中距離で戦闘をする為に百近いクリスタルビットを召喚する。そして一斉に動き始め攻撃を始め黒いソレとの戦闘が再開する。


 召喚したクリスタルビットが七色に光り始めその色に合わせた火や水や土といった属性をレーザーの様に射出し一斉に攻撃を始めるが黒いソレは最小限の動きだけでその攻撃を躱していく。


 ただクリスタルビットの攻撃力もかなりのものなので黒いソレは躱すが砂漠に直撃すると凄まじい量の砂を巻き上げた。


(魔法防御で耐えるならまだしも避けるはないじゃろ……巻き上がった砂のせいで接近されそうじゃな)


 気を引き締めながら巻き上がった砂で大きな影が出来たのでその影を利用し鞭の様な物を魔法で黒いソレに追撃をかけるが全て一撃の下に破壊されていった。


 そして黒いソレがルディールとの距離を詰める為に地面を力いっぱい殴りつけた。


「……嘘じゃろ?」


 そう呟き唖然とするルディールの目の前には山よりも高く砂や石が舞い上がりまるで津波の様にルディールを飲み込んだ。


 正面にコキュートスウォールの様な魔法障壁を張ればその砂に飲み込まれる事は無かったが、ルディールの勘がそれは悪手だといったので砂に巻き込まれるのを覚悟で自身を覆うようにコキュートスウォールとオーロラセブンスウォールを同時に展開する。


 それが正解だったのかは分からないが……その直後にその二つの障壁を破りルディールが意識を失いそうになるほどの衝撃が走り砂の津波を突き抜け砂漠に叩きつけられる。


 そのままゴロゴロと砂漠を転がり青空を見上げる形になった。


 朦朧とする意識の中で青空を見上げどうしてここにいるんだろうと視界に写るエアエデンを見てあそこでゆっくりしたいと考えたが、追撃を仕掛けてくる黒いソレが写ったのですぐに動き黒いソレの攻撃を躱して反撃で蹴りを叩き込んだ。


 ルディールの蹴りではダメージが入った様には思えなかったが距離を取る事には成功し仕切り直しとなる。


「お主……強すぎじゃろ。今更ながら和解とかそういうのは無しじゃよな?と言うかどちらさんじゃ?」


 その声に反応したかどうかは分からなかったが、黒いソレの動きが止まっていたので、その間にルディールは回復魔法で傷を癒やす。そして黒いソレが襲いかかって来たのでまた戦闘が再開しルディールはテテノ達に託した。


(テテノ、タリカ任せたぞ!)


 ◆


「タリカさん!そこの部品とってください!」


「どれですか!」


「ミミズがラッパ咥えて玉に乗ってるようなヤツです!」


「表現が独特過ぎてわかりませんよ!」


 テテノが急いで錬金術で壊れた部品を直しタリカと部品を組み始めたがルディールと黒いソレの戦いの余波がピラミッドまで届き、穴から砂が大量に入って来たり大きく揺れたり細かな作業をするにはとても向いていなかった。


 一緒にいたSランク冒険者達も周りにサンドゴーレムが現れたのでその対処に追われていた。


「ルディールさんが……簡単に倒していたから雑魚かと思っていたのに!」


 タリカの叫びに戦っていたリーダーが返事をする。


「簡単に攻略できるならサンファルテ側もローレットに依頼しないからな!というか嘆く暇があったら手を動かしてくれ。ルディールさんが戻って来られなかったらこっちもかなり危ない!」


 体が砂で出来ており核となる部分を何処かに隠し砂に紛れて襲ってくるサンドゴーレムにベテランのSランク冒険者達もテテノ達を守りながらでは厳しいものがあった。


「わかりましたよ!テテノさんこれですか!」


「それはカバが逆立ちしてるようなヤツです!」


「もう少しわかりやすくお願いします!」とタリカもテテノも色々なものと戦い、地震を思わせるような大きな揺れがあった後に開いた穴から凄まじい風が入り込み部品などを飛んで来た砂で隠した。


「あーもうまた!砂で部品が!」とタリカ叫び開いた穴から外を見ると遠くに六枚の黒い翼が一瞬だけ見えていた。


 ある程度は黒いソレの対応が分かってはきたがルディールの回復量を上回る攻撃に不利に追い込まれていた。


(あぶな!今のまともに食らっておったら胴体と頭が離れておったな……ちょいちょい見た事ある技がでるのう。今のもきりもみキックぽかったしのう……)


 石版にナイン・アンヘルの事が少し書かれており、目の前の者が出現した時に現れた扉の事を思い出すとある程度だったが黒いソレの正体が分かってきたので指輪の力を全て解放し本気で戦う事を躊躇っていた。

 

(たぶん別世界のわらわなんじゃろな?……にしては全然魔法を使わんよな?……)


 ただこのまま戦っても負けるのはルディール自身もわかりきっていたので危険性の少ない指輪の力や自身の魔力を解放し背中に六枚の翼と悪魔のような尻尾を生やし魔法を放つ。


「どこの世界のわらわかは知らぬが結構痛いのは我慢してもらうぞ!ジ・メギド!」


 その魔法を唱えるとルディールと黒いソレを囲む様に握り拳ほどの黒い球体が幾つも現れる。


 そして棘の様な物が一本生えた瞬間に瞬く間に植物が急成長するように黒い茨の棘が黒いソレに向かって一斉に襲いかかる。


 だが次の瞬間に驚いたはルディールだった。


 黒いソレは難なくルディールの中でもかなり上位の魔法を簡単にかわしまるでアニメでも見ている様に黒い茨の上を器用に走って距離を詰めた。


 今までが肩慣らしと言わんばかりに一瞬で加速しルディールの目の前で高く飛び上がった。


 ルディールも慌てて目で追ったが追った先には太陽があり一瞬だが黒いソレが逆光となり見失う。


「くっ!ミスった!」と叫んだ時にはすでに遅く黒いソレに蹴りが流星の様に振ってきた。


 直撃だけは裂ける為に魔法障壁を張り体を捻ったが間に合わずルディールの自慢の角の片方が空を舞う。


 そして一瞬だったが黒いソレに急接近したことでその顔を見え、頭から血を流しながらもその名をつげる。


「わらわの角を蹴りで折るとか良い趣味しておるわ……のう……ルゼアよ」


 拳が届く距離で対峙し、攻撃されれば確実に負けだったが呼びかけられた事で動きが止まった。そしてうめき声を上げながら返事が返ってくる。


「あっ……うっうう……ルディール……おっお母さん?」


「やはりか!ルゼア!」とルディールが問いかけたが、それ以上の返事はなくまた戦闘が始まりルゼアの攻撃がルディールに届く瞬間にピラミッドが金色に光り始めた。


 攻撃はルディールに届いたが先ほどのような力強さはなくペチンと頬に拳が当たり倒れる様にルゼアは崩れ落ちた。


 その倒れていく小さな体をルディールが優しく支えると体を纏っていた黒いモヤはいつの間にか消えていた。


「はぁ~この娘は強すぎじゃろ……テテノ、タリカありがとう……助かったわい」とルゼアを抱えピラミッドの方に向かって頭を下げると意識を失いそうになったが、ここで倒れるとルゼアも自身も死の恐れがあったので踏みとどまる。


「……もう少し気合い入れんとのう。さてとこのまま戻っても良いがルゼアをどうするか?なんじゃよな……テテノン達の所に連れて帰る訳にもいかんじゃろうし……自慢の角なんじゃが……瞬間接着剤でつくんじゃろうか?」


などと言ってルゼアを背負いどうしようかと悩んでいると、砂漠のど真ん中にいるはずのルディールに影がかかる。不思議におもい空を見上げるとそこにはエアエデンがあり、ルディールが持つ通信用魔道具にスイベルから連絡が入った。

いつも誤字脱字報告ありがとうございます。


砂漠のお話はもう少し続きます。次回の更新は未定です。

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